株式会社プランシードのブログ

株式会社プランシードの社長と社員によるブログです。
会社のこと、仕事のこと、プライベートのこと、あれこれ書いています。

その40.お客さまは神様

2012-08-22 08:20:19 | 制作会社社長の憂い漫遊記
すでに業界人となって30年を過ぎるが、学ぶことはいまだに多い。
人の数だけ愛があるように、女性の数だけ美があるように、
作品の数だけ苦労がある。
それでも好きこそモノの上手なれ、継続は力なり。
仕事をするたびに様々な発見がある。



(TVドラマ「北の国から」で、冬は熊しか入らないという秘湯。
 愛しの宮沢りえさんも入った湯に浸かり幸せ満喫の私。スペシャルやなぁ)

さすがに30年も業界人をやっていると、出会うスポンサーの数もハンパない。
中には「スポンサーの俺がルールだ。俺の言った通りにしろ」と
絶叫する勘違いさんや、
「息子が二代目ですのでわがまま言いますが、
言った通りにしてやってください。お金は支払います」と言う親バカ会長、
さらには「ほらね」と上司の指示を事前に自分が指示済みだと
暗に主張する小役人的担当者もいたが、そういうお馬鹿さんはむしろ稀で、
たいていは我々作り手をしっかり取込んで、
自分の作りたい物をカタチにする「出来た担当者殿」がほとんどだ。
というのもビデオ制作にはかなりの経費がかかるので
決済権を持っていなければならないし、
会社を横断的に取材するので調整能力も必要になる。
だから、それなりの人物が担当者になる。
そういう担当者殿と仕事のたびに格闘するのだから、
学ぶことも多種多様。実体験を基に作り手に指示してくるので、
ウカウカ下手な対応をしていると返り討ちに合うことも…
しかし、あちらの常識はこちらの非常識で、
こちらの常識はあちらの非常識という事も多く、やりとりは実に楽しい。



(スポンサー自演のコント撮影で
 スポンサーの皆さんと記念撮影)

スポンサーのイエスマンを巧みに演じる狸監督もいるが、
意味も解らずイエスマンに成り下がっている若手・中堅監督も多い。
イエスマンになっている若手・中堅監督のほとんどは、
「助監督」として経験を積んできたのではなく、
「制作進行」としてプロデューサーのアシスタントを経て
演出になっている人が多い。
プロデューサーのイエスと、監督以下作り手スタッフのイエスは
意味が違うことを全く理解していない。
作り手が下手にイエスと言ってしまうと、十中八九、
取り返しのつかない事態に陥る。
まさに底無しの泥沼に、自ら入っていくようなものだ。



(スポンサーと一緒になって誰目線のカットなのかを議論中)

私はスポンサーの言うことは基本「眉唾で聞く派」である。
突き詰めて聞いていくと事実ではなく、
担当者の願望ということがよくあるからだ。
そこで私は担当者殿の話を鵜呑みにしないで
必ず聞き返し確認するようにしている。
事実なのか、願望なのかをハッキリさせた上で、
担当者殿とグルになってハッタリをかましたいのだ。

そんなお互いの思惑がまだよくわからないまま
ジャブの応酬で打合せは始まるのだが、
担当者殿とは最初にかなり激烈にぶつかることが多い。
しかし口では言っても、お客さまの一言一句を聞き逃さず、
あらゆることを想定して真面目に取組む姿勢がジワジワっと伝わり
(実際毎回真面目に取組んでいる)
これまで、一度仕事をすると次もオーダーをくださるお客さまも多い。
シリーズになるので次第に気心も知れ、適切な提案さえ欠かさなければ、
2作目以降はいいサイクルになっていく。


(スポンサーの参加意欲を高めてもらうため、
 インタビューする時はスポンサー担当者にも
 必ず横で立ち会っていただき、最後に自分の聞きたいことを
 担当者自らインタビューしてもらう当社の伝統的?シーン)

担当者殿は、我々とは違う業界の方ではあるが、
その世界では実体験を積み重ね一本筋が通っているので、
シビアーかつ適切な意見を述べるし、加えてたいてい義理・人情にも熱い。

例えば、私がまたフリー監督時代、他の海外ロケが続き、
疲労で一ヶ月入院したが、プロデューサーが監督の変更を
申し出たにも関わらず「監督は変えないで欲しい」と、
なんと6ヶ月も納期を伸ばしてくれたお客さまがいた。
さすがにこの時ばかりは、入院中のベッドで涙した。お客さまは神様です。

例えば、阪神淡路大震災で私自身が被災者になって2ヶ月程たったある日、
私の携帯が鳴り
「交通費込みで日当を出すので、福井まで打合せがてら蟹でも喰いにこい」と
呼んでくれたお客さまもいた。
打合せとは名目で久方振りの熱燗と蟹三昧の上、ギャラまでいただいた。
壊れかけた自宅マンションのある神戸市東灘区まで、
まだ鉄道がつながっておらず、梅田からはタクシーに乗り、
瓦礫の街をひた走り、越前蟹の手土産を持ち帰った。お客さまは神様です。

例えば、個人事務所から会社にするときに
「よし、わかった!出来る限りの応援をするので
いい作品を作ってください!」と仕事を発注いただいた
お客さまがいらっしゃった。
いつも仕事をするスタッフではなく、
仕事を発注してくれるプロデューサーでもなく、
スポンサーが私に熱く接してくれるのだ。お客さまは神様です。

こうした方々がいなければ今の私も、今の会社も、今の社員たちもいなかった。
本当にありがたい。お客さまは神様です。
この恩返しは、仕事でお返しするしかない。
お客さまの思いを、見てわかるモノに視覚化する。
見てわからんモノは聞いてもわからん。
そうならないように五感をフルに回転させ、お客さまの思いを咀嚼し、
最高の表現をしたい。お客さまは神様なのだから…


(廃線になった幸福駅でスタッフと共に。
 仕事をしている時はいつも幸せです!!)

いつの時代でも、安定だの優良だのはない。
いつ不安定になるか紙一重だ。
その紙一重をかいくぐって零細企業は雄々しく生き残らねばならない。
そのため社長たるもの、仕事に対しても、お客さまに対しても、
スタッフに対しても、社員に対しても、
常に真摯に向かい合わなければならない。



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