大阪発達支援センターぽぽろブログ ぽぽろ番

ぽぽろはNPO大阪障害者センターの子育て・教育支援部門です。
大阪市鶴見区今津北にあります。

いつも悩む問題…

2012年07月08日 | ノンジャンル
 こわがりのMaちゃんは犬のラッキーの散歩はFくんとYくんに任せて、ひたすら運んできたトーマスの貨車をガラガラいわせて公園内をぐるぐる押して回っていた。
 そして、あることを思いついてラッキーのおっちゃんに散歩用の長い紐を貨車に結び付けろと頼んだ。このおっちゃんは一人ひとりの子どもたちの特徴をよく知っていて、付き合い方も上手だ。Maちゃんが繰り出すジェスチャーと動作と表情を読み取ってちゃんと台車に紐をくくりつけてくれた。
 Maちゃんは嬉しそうにトーマスの台車を引いて公園内を散歩し出した。

 一方、FくんとYくんはラッキー散歩に興じていたがしだいに飽きたのか、ラッキーが嫌がり出したのかFくんが突然ラッキー散歩を放棄して、Maちゃんがせっかくここまで運んできたトーマスの貨車を取り上げて走り出した。
 
 呆然と立ちすくむMaちゃんの横をYくんが追いかける。全く言うことを聞かなくなってブレーキばかりかけるラッキーよりは、引っ張ればガンガン走るトーマス貨車の方が面白いと思ったのだろうか?


 今度は木の枝に紐を引っかけてエレベーター遊びだ。Maちゃんは横取りされてちっとも面白くない。鼻くそでもホジホジしてヒマつぶしでもしようかいな…。


 次は近所の子らに混じって「綱渡り」。…と、身軽なFくんも降りることができません。そこへ俺もとかなりの勇気をふりしぼってやって来たYくんでしたが、後戻りしようにもスイスイとわたってきた女の子に直面して立ち往生。
 どのようにして降りたのでしょうか?①こわごわながら自力でなんとか降りた。②女の子について行き、引き返して降りた。③私に「抱っこ!」と言ってしがみついて降りた。正解は…。





 さて、本題はここからです。
 この「大東3人組」(組み合わせはたまたま)の写真は2週間前の土曜日のものだ。この3人を連れてぽぽろの改修工事現場を見学してからラッキーのおっちゃんのところへ寄り、ラッキーと一緒に公園散歩した時のものだ。おっちゃんは私に向かって「あんた一人かいな?!」と言わはったが、そうなのだ、スタッフは私一人だった。なんと無謀なことをと思われますか?

 1週間前にはこの話を聞いてか、学生スタッフのUくんがFくんとMaちゃんを一人で連れて散歩していた。「やっぱ、一対一で出かけるよりは複数で出かける方がお互いに牽制し合ったりするからええやろ?」と聞くと「ハイ」と応えた。内心はヒヤヒヤもんだったかもしれない。かく言う私は(も?)「神経を使った」。

 私は往き道で走らないことという約束に重ねて「Fくん!今日は3人のリーダーやで、頼んだよ。」と頼めないことを承知でお願いした。しょせん、「約束なんて破るためにあるもの」と言った誰かのことを思い出しながら競歩で追いかけた。でもFくんはリーダーの約束を工事現場の見学が終わるまで20分も守ってくれた。150点や!見学が終わってラッキー&ラッキーのおっちゃん大好きモードに切り替わったFくんは、もう約束など忘れて先頭を走っていた。

 この経験をこの日の「発達保障を学ぶ学習会」で話した。
 大人と子どもの一対一だと双方の意図が正面からぶつかり合ってなかなか折り合いがつけられるものではない。Fくんの場合、特に遊びの切り替わりの時が更に難しいのです。だから、私はできるだけFくんと散歩するときには友だちを誘って複数で行くようにしていると。そうすると、3人だと三角形になって向き合う心が友だちにも向き、友だちとの関わりを調整するようになり、「しゃぁないなぁ、待ってやろうか…。」「おい〇〇、いっしょにやろうぜ!」というふうになってお互いに楽な気持ちで遊べるようになるからいいよ…と。

 確かにものすごく神経を使うときもある。例えばこの日もFくんが収納用のコンテナの陰に隠れた瞬間があった。瞬間といっても5〜10分で見失いそうになりながら探し、他の二人のことも気にしつつ対応したのだが、どうも様子がおかしいのでつかまえて聞くと、「ウンチしたい」なのだ。ズボンをコンテナの陰で下げようとしていたので、帰っていたら間に合いそうにない。で、ラッキーのおっちゃんもやりとりを聞いていたので、「F、うちに来い。便所貸したるわ。」と言っていただいてセーフ。もし、おっちゃんが言ってくれなかったら、又私がうろたえようものなら、どうしたらいいか分からなってFくんは「多動」のスイッチが入ったに違いない。



 この日の事例検討の対象は運のいいことにたまたまFくんだった。

 そして、たまたま「行方不明事件」があった直後でもあった。だからあえて散歩はできるだけ友だちと複数でやろうという私の持論を証明したくて3対1を受け入れたのだが…。

 子どもの安全管理はしっかりやらねばならない。その点を指摘されると行方不明にした当方の責任と落ち度は免れるものではない。また、迷惑も心配もおかけしてしまった。

 その議論の後に、なかなか言いにくかったが、私はあえてこう提起した。

 「もし、知り合いの方に発見されず、時間が経って我にかえったときに彼は窮状をどう切り抜けただろうか?一人でまた帰ってこれただろうか。自分の名前やぽぽろのことを伝えられただろうか。」「どんなに注意しても一瞬のスキを見て居なくなることはこれからもあるかもしれない。そんなときに何か手渡せるような緊急連絡先証明書のようなものを持たせたらどうだろうか。そんな時にはこうするというロールプレイをしてもいいかもしれない。」と。困ったときに人に頼れる力をどうつけていくのか?「自立」をあえて自律ととらえる見方に立つと、自分の行動を可能な限りコントロールし、失敗しても立ち直る、困ったときには誰かに救いを求める、そんな力をつけて欲しいと思っている。

 ぽぽろではまさか安全管理だと言って狭い(今は)部屋の中に閉じ込めておくなんてできないし、外遊びをしないなんて考えられないことだ。そんなことをしたら子どもたちはぽぽろに来たくなくなるだろう。ぽぽろらしさを失わないようにちゃんと説明し、「事件」以来のここに書いたような出来事も参考にご家族に理解していただくしかない。
 3人との外出につき合い、みんな少しずつ自分をコントロールする力を付けてきていると確信もしたのですが、子どもたちの要求を大切に遊びの中で友だちやスタッフなどと折り合いをつける、「自律の力」をつけていくとりくみは子どもたちの失敗経験も大いに力にする取り組みであるし、時間がかかるのです。
 そうではなく安全・安心ばかり求めるあまり子どもを管理ばかりしていると、これから先どうなるんだろう?というようなことも考えた「事件」でした。安全が確保されたので、彼の側から前向きに方向性を出そうとするならば、今回の件は「Fくんの大冒険事件」と呼んだらいけないのだろうか?


 次回の学習会では、Fくんの発達検査をさせていただいた上でもう一度、事例を深めることになりました。関係者の皆さん、7月28日(土)時間を少しずらして午後5時半から放出で待っています。


 別件ですが、11月24日(土)の晩に学習会のテキスト『やわらかい自我のつぼみ』をお書きになった白石正久先生がいらして下さることになりました。具体的な事例を誰にするか?テキストのどの部分をふかめるか?公開にするかどうか?などみんなで決めたいと思います。

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