手乗り猫はじめました

手のひらサイズのリアルな猫人形製作記
猫人形工房Progress Unlimitedのブログ

獣毛を入手しました

2013年08月06日 23時26分16秒 | 羊毛、道具

時間軸が前後しますが、子猫4号が完成した頃の話です。

子猫4号の記事中にも書きましたが、メリノで植毛すると、製作中や完成後に触っている間に植毛した毛がフェルト化してきてしまい、毛のフワフワ感が無くなってきてしまいます。

そこで、目標とする諸先輩方の使われている獣毛(一部羊毛も)を試してみる事にしました。

 

こんなマニアックなアイテムは近くの手芸店に在庫されているはずもありませんので、インターネットで扱っている所を探します。

何件かヒットしたのですが、僕はその中から群馬県にある「羊の工房 パオ」さんを選びました。

注目したのは送料です。

他の所は宅配便のみでしたが、パオさんだけは定形外郵便でも発送してくれます。

お試しに少量だけ購入するつもりだったので、宅配便では商品代金よりも送料の方が高くつくというのも理由の一つですが、パオさんのウェブショップには「できるだけお安い送料でお送りするように心がけています」と書かれてあり、お客の出費を少しでも少なくしようという気持ちが感じられました。

宅配便は業者が集荷に来てくれますが、定形外郵便だとわざわざ郵便局へ持って行かなくてはなりません。その手間をかけてでもお客の利益を優先してくれるお店なら、きっと客本位の商売をされていて、商品についての相談にも快く応じてくれるのではないかと考えたのです。

 

まず、どの種類が一番直毛に近く、植毛に適しているのかを聞こうと電話で相談してみたところ、とても丁寧にそれぞれの毛について説明して頂き、羊毛見本を薦めて頂きました。

最小単位の10gづつを購入しようと考えていたのですが、見本なら同じ予算でよりたくさんの色や毛を見る事ができるので、薦められたとおり見本をお願いしました。

で、届いたのがコレです。

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ウェブショップの画像にある物とは違う物が送られてきました。

最初は仕様変更かと思いましたが、どうやら僕専用にわざわざ手作りして頂いたようなのです。

電話やその後のメールで、できるだけ直毛の毛を探している事を伝えていたので、従来の見本よりも直毛具合が確認しやすいよう、このように毛を房の形にしてくれたのだと思います。

 

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その甲斐あってとても見やすく、この見本を見ているだけでワクワクして製作意欲が湧いてきます。

 

僕がパオさんにお願いした条件は、

1、出来るだけ直毛

2、触っていてもペシャンコになりにくいフェルト化しにくい毛

3、一般的な猫の毛を再現できる毛色

4、出来るだけ純白に近い白い毛

5、黒猫用にツヤのある黒い毛

という物でした。

その条件に合いそうな獣毛、羊毛を見繕って見本を作って頂いたようです。

 

見本を眺めてみた感じでは、

直毛具合はモヘア、アルパカ、ロムニー(トップ)が良い感じです。

毛色ではコリデールとアルパカ。

白さでもアルパカ、コリデールが良くて、モヘアは半透明で少し黄色い感じです。

黒のツヤはモヘアが最高で、見本の毛束を見ていると小さい人形の黒髪にそのまま使えるのではないかと思うくらい艶々です。

 

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お願いした見本と一緒に、植毛テスト用に色々な種類の毛の少量サンプルも入っていました。

きっと良いお店だろうと予想しましたが、僕の予想を遥かに上回る良心的さです。

パオさん凄すぎます。

 

 

その少量サンプルの中から良さそうな物を使ってフェルト片に植毛テストをしてみました。

↓まずは比較用にハマナカさんのファインメリノです。

細くて、とてもウネウネしています。

携帯のカメラなので、イマイチ違いがわかりにくくてスミマセン。

↓アルパカです。柔らかくて手触りは最高です。そこそこ直毛です。

 

↓コリデール。アルパカに比べるとウネウネしています。メリノやアルパカに比べると少し硬いです。

↓モヘア。一番直毛に近いです。艶がすばらしいです。コシがあるのに硬い感じはなくて手触りが良いです。

↓ロムニー(トップ)羊ですがあまりウネウネしていません。かなり硬いです。太め。

実際に植毛してみて、総合的にはアルパカが一番良いと思いました。

ただ、アルパカだけでは茶トラなどの色が揃わないので、コリデールやメリノなどの染色羊毛と混毛しようと考えています。

黒猫にはモヘアのツヤツヤを使いたいです。

ロムニー(トップ)は耳毛に良さそうです。

 

使用する毛が決まったので、もう少し実際的な植毛実験です。

使用したのはアルパカの「茶」と「黒」です。

「茶」には白っぽい毛も混じっていてリアルな動物の毛の感じがします。

架空猫のキジトラなら混毛して色を作らなくても十分そのままいけます。

↓非植毛作品と比較。

↓植毛作品(メリノ)と比較。

メリノよりも毛の一本一本がハッキリしていて格段に良い感じです。

毛がウネウネしていない事で、毛先に空間が生まれやすい事が良い結果になっているように思います。

ただ、アルパカとモヘアは直毛な分だけニードルのバーブに引っ掛かりにくく、植毛するのに非常に時間がかかります。

羊毛はそのウネウネのおかげで、ニードルが引っ掛かる領域が広いですが、直毛に近くなればなる程、毛をピンポイントで引っ掛けなければいけないので、植毛の一房を刺す回数が多くなります。

特にモヘアが引っ掛かりにくく、アルパカは少しだけマシです。

諸先輩方が仰っているように、羊毛と混毛する事で引っ掛かりにくさは改善しますが、羊毛の配合比率が高くなると折角の獣毛の良さが半減してしまうので、植毛作業の効率を最低限維持できる程度の低比率にするのが良いと思います。

 

獣毛は確かに扱いの難しい上級者アイテムだと感じましたが、それを上手く使えれば格段にリアルな作品が作れるのは間違いないと思います。

挑戦する価値のある、とても魅力的な素材だと思います。