原子力発電の普及を地球温暖化対策のカードとすべきか-問われるG-8サミットー
7月4日、5日、一部紙は、日本がサミットで打ち出す温暖化対策の一つとして、中国、インドなどの新興国で原子力発電所を導入する場合、国際原子力機関(IAEA)を中心として各国が協力体制を作り、平和利用への限定や安全の確保を促すことが盛り込まれる方向で検討されていえると伝えている。 その背景として、1月9日、外務省の助成機関である国際問題研究所は、サミットで主要テーマとなることを前提として同省関係の専門家グループに検討を委託し、「温暖化対策として原子力を促進する政策メカニズムの創設」を求める提言をまとめている。しかし、その提言は、同省の委託予算による同省助成機関の下で同省関係者などがまとめたもので、いわば身内の提言であり、国民の支持や理解を得ているものとは言えない。
確かに原子力発電は炭酸ガス削減については効果が期待出来るエネルギー源であり、その推進は政府の基本政策の一つでもある。
しかし原子力発電の普及については、環境上その他で大きな課題がある。直接的な問題は、大量に発生する放射性廃棄物の処理方法である。日本でも、短期的には原発施設内に保管しているものの、中・長期的には漏れ出さないような容器に入れ、地中に埋めたり、深海に投棄するなどが検討されている。それを引き受ける地方には国より交付金や補助金が出されているが、住民の環境問題への懸念は強い。また操業中の放射能漏れなども厳重に管理されなくてはならない。要するに、原子力発電は、炭酸ガス削減には効果的であっても、その他の「環境問題」を抱えているということである。従ってその普及については国民的な理解が不可欠であろう。
また、日本や中国、インド北部、インドネシアなどの地震多発国・地域については耐震上の問題があろう。また、米国スリーマイル島(1989年3月)や露チェルノブイリ(86年4月)の原発事故などを勘案すると、新興国などについては、一定の技術協力を行っても、事故発生の場合を含めて中・長期の管理・統治能力が課題になろうし、国際テロ等からの攻撃への対策や核不拡散に対する担保も不可欠であろう。中国で原発が更に普及し、将来何らかの原発事故が起きれば日本への放射能飛来は避けられない。インドについても影響は避けられない。北朝鮮も原発建設支援への要求を強めるであろう。日本の安全保障にも関係して来る恐れもある。
このような諸点を勘案すると、新興国などへの原発の普及は限定的なものとすることが望ましい。途上国へのエネルギー支援としては、むしろ水力、太陽電池、風力、或いは地熱という自然エネルギ・ミックスの普及に重点を置き、支援して行く体制を整えることが望ましい。また、今後、温暖化ガス排出目標の設定など、国際的な環境改善努力において協力しない途上国については、援助についても緊急な人道的なもの以外は行わないなどの援助規律を検討すべきなのであろう。(Copy Right Reserved.)
7月4日、5日、一部紙は、日本がサミットで打ち出す温暖化対策の一つとして、中国、インドなどの新興国で原子力発電所を導入する場合、国際原子力機関(IAEA)を中心として各国が協力体制を作り、平和利用への限定や安全の確保を促すことが盛り込まれる方向で検討されていえると伝えている。 その背景として、1月9日、外務省の助成機関である国際問題研究所は、サミットで主要テーマとなることを前提として同省関係の専門家グループに検討を委託し、「温暖化対策として原子力を促進する政策メカニズムの創設」を求める提言をまとめている。しかし、その提言は、同省の委託予算による同省助成機関の下で同省関係者などがまとめたもので、いわば身内の提言であり、国民の支持や理解を得ているものとは言えない。
確かに原子力発電は炭酸ガス削減については効果が期待出来るエネルギー源であり、その推進は政府の基本政策の一つでもある。
しかし原子力発電の普及については、環境上その他で大きな課題がある。直接的な問題は、大量に発生する放射性廃棄物の処理方法である。日本でも、短期的には原発施設内に保管しているものの、中・長期的には漏れ出さないような容器に入れ、地中に埋めたり、深海に投棄するなどが検討されている。それを引き受ける地方には国より交付金や補助金が出されているが、住民の環境問題への懸念は強い。また操業中の放射能漏れなども厳重に管理されなくてはならない。要するに、原子力発電は、炭酸ガス削減には効果的であっても、その他の「環境問題」を抱えているということである。従ってその普及については国民的な理解が不可欠であろう。
また、日本や中国、インド北部、インドネシアなどの地震多発国・地域については耐震上の問題があろう。また、米国スリーマイル島(1989年3月)や露チェルノブイリ(86年4月)の原発事故などを勘案すると、新興国などについては、一定の技術協力を行っても、事故発生の場合を含めて中・長期の管理・統治能力が課題になろうし、国際テロ等からの攻撃への対策や核不拡散に対する担保も不可欠であろう。中国で原発が更に普及し、将来何らかの原発事故が起きれば日本への放射能飛来は避けられない。インドについても影響は避けられない。北朝鮮も原発建設支援への要求を強めるであろう。日本の安全保障にも関係して来る恐れもある。
このような諸点を勘案すると、新興国などへの原発の普及は限定的なものとすることが望ましい。途上国へのエネルギー支援としては、むしろ水力、太陽電池、風力、或いは地熱という自然エネルギ・ミックスの普及に重点を置き、支援して行く体制を整えることが望ましい。また、今後、温暖化ガス排出目標の設定など、国際的な環境改善努力において協力しない途上国については、援助についても緊急な人道的なもの以外は行わないなどの援助規律を検討すべきなのであろう。(Copy Right Reserved.)