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シリーズ「新年金機構」ー心機一転、信頼回復を図れるか?ー

2008-07-25 | Weblog
シリーズ「新年金機構」ー心機一転、信頼回復を図れるか?ー
 社会保険庁の「日本年金機構」への移行は10年1月に迫っているが、政府・自民党は「戒告を含め、懲戒処分者は不採用」との方針をだしている。一方、1年越しの年金記録問題については、社保庁は8億5千万件に及ぶ「年金手書きの台帳」の照合を10年度より行う意向を明らかにした。政府、自民としては新機構への移行に当たり心機一転を図る姿勢であり、評価出来るところではあるが、年金記録問題については新機構に先送りされる恐れがあり、このままでは心機一転とは行きそうにない雲行きだ。
 1、心機一転を図れるか日本年金機構
新機構の発足に当たっては、公的年金の信頼性回復の観点から国民が納得する構成にすることが不可欠だ。
 現職員の再雇用につき、当局側からは「停職、減給処分者のみ不採用」、「その他については1年間の採用、その後正規化可能」との計画案が示されたが、自民党側は「戒告を含め、懲戒処分者(867人)は不採用」との意見が強く、政府としてもその方向で計画案を承認する方向のようだ。当局側は年金業務には「専門的な能力のある者が必要」などとしていたが、処分を受けた者が年金業務に必要とは思えない。法律上の「戒告」以上でなくても、各省庁レベルで出している訓告、厳重注意などを複数回受けている者は不採用で良いのであろう。
 一方「30人に延べ9億円の給与を支払った」とされる「ヤミ専従」慣行が問題とされ、自民党はこれに関係した職員全員を不採用にすべしとしている。労働組合への「専従」職員は民間企業にも存在するが、専従者は「復職」を前提として一旦「休職」し、労働組合より給与を得ているのが通例のようだ。円滑な組合活動を維持するために専従を置くことは必要な場合が多いであろうが、給与を公金から支払うのは筋違いである。この慣行は、恐らく同省の中枢幹部なども黙認した形で継続されていたと思われるが、筋論からすれば、管理責任を含め、まず厚労省、人事院は、専従経験者、労組幹部、及び管理関係者それぞれに処分を検討すると共に、給与として支払った9億円については、旧厚生省・社保庁労組が、例えば今後20年間で国庫に弁済するよう措置することが必要であろう。またその他省庁に同様の慣行がないか調査すべきであろう。新機構への採用、不採用の判断は、この問題に対する処分に基づき行うこととしても遅くはないであろう。
 年金機構の職員については、確かに専門的な知識、能力のある者が必要となるが、公募による民間よりの事務経験者の中間採用の他、地方在住者を含め、共済年金や民間の年金業務経験者の退職者なども対象として、事務内容に沿って俸給(職能制)を設定し、5年の有期限雇用(その後は1年毎の再雇用)など、職能を基準とした雇用・賃金体系を導入することを検討し、人材を広く求めることも必要であろう。他方、不採用となった者については転職を斡旋するなどの支援も必要であろう。
現在の公務員制度は、「新卒」をベースとした硬直した年功序列、終身雇用体制であり、一般行政・政策職などについては修士課程などの高学歴者が適正に評価されない上、中間採用は庶務職や専門・技術職などを除き申し訳程度しかなく、国民に開かれた公務員制度とはなっていない。更に省庁間の人事交流も申し訳程度にしかなく、長期に亘ると封鎖的、硬直的な組織となり易い。
「新卒」至上主義をベースとした「年功序列」制度を排し、「職能」や「業務の種類」に基づいた「職能別」の給与・昇進制度とし、また65歳以上の退職者についても職能に基づき3年から5年の一定期間(その後1年毎の更新可)門戸を開くなど、人材を広く求められる公務員制度を検討すべき時期であろう。特に年金機構その他の独立行政法人など、行政に代わって特定分野の業務を行う機関については「職能別」体制が適すると言えよう。
 いずれにしても心機一転を図る上でも、社保庁の全職員より一旦退職届を取りまとめ、その上で採用、不採用を決定すべきであろう。長期に亘る記録漏れとそれを放置して来たのは、社保庁と(旧)厚生省当局の責任であり、これまで懲戒処分を受けた者だけの責任とは言い切れない。社保庁と(旧)厚生省年金関係部局の職員は、新機構発足以前に国民の前に組織としての責任を明らかにすべきではないだろうか。
 2、これ以上の先送りは許されない年金記録漏れ問題
 年金記録漏れ問題については、昨年7月以降、政府当局は本年3月末までに「名寄せ」が完了するとしていたが、コンピューター記録のチェックでは限界があることが判明した。そして昨年12月より受給者約300万人に「特別便」を発出したものの、少なくても2千万以上は特定困難となることが明らかになり、結論を3月以降に先送った形となった。結局、4月から10月までに現役世代を含め約9,500万人にも「ねんきん特別便」を発送し、確認作業を継続することとした。そのための予算は約300億円にも及ぶ。
 更に社保庁は、これまでの作業結果を明らかにしないまま、7月17日、10年度から8億5千万件にも及ぶ「手書きの台帳」と照合する意向を明らかにした。全件照合には約3,300億円が掛かると試算されている。要するに「ねんきん特別便」では確認作業が思ったほど進まないことを事実上認めたに等しい。しかも全件照合を新機構発足後としているので、新機構発足までには最終的な確認結果を出せないことになる。ずるずると結論を引き延ばしていることが公的年金への不信感を益々募らせている。信頼を回復する上でも、記録問題に関する政府としてのこれまでの作業結果と今後の方針を国民に速やかに説明されることが望まれる。
「ねんきん特別便」において生存する加入者への照会は行っているので、加入者への確認作業は一応それで終えていると言えよう。他方各種の不備があるので、異議を申し立てている者について明確な反証がない限り認める一方、これまでに異議申し立てのない者についても今後とも異議申し立ての道を開いて置くなどにより、本件記録問題を一応終結すべきであろう。
 8億5千万件余に及ぶ記録の全件照合については、もし行うとすれば第三者機関に委託して行うべきであるが、更にずさんな記録や不正な記録が発見され、収拾がつかなくなる恐れもある上、費用対効果の観点からも強い疑問が残る。
 いずれにしても新機構の発足は、記録問題に対する結論を出し、その上で社保庁、厚労省の一連の責任を明らかにしてからとすることが望ましい。照合のための追加的経費についても本来であれば社保庁、旧厚生省職員が何年掛かっても弁済すべきであろう。この問題の対応を新機構発足後に先送りすれば、単に責任逃れとなり国民の公的年金に対する不信感は消えない。
 もし新機構発足予定までに記録漏れ問題への対応方針が示せないのであれば、発足を凍結し、作業を記録漏れ問題に集中すべきであろう。
ところで今回改めて問題となるのが、「政府の有識者会議」の役割である。新年金機構のあり方などを検討する「年金業務・組織再生会議」(座長、本田日本たばこ相談役、前社長)は、6月30日、最終報告書を行革担当大臣に提出したが、検討の過程で社保庁側に押され、「懲戒処分歴のある者を有期限雇用」とし、将来は正規雇用のとなる道を残しており、現職員の9割が新機構に移行する内容に後退していた。要するに事務方が作成した案をほぼ丸呑みし、ラバー・スタンプを押す形となっている。そもそも「懲戒処分歴のある者」も人材確保の上で必要とする社保庁側の省益重視の姿勢は、国民の利益や信頼回復を最優先するものではなく、新機構に移っても実態は何も変わらないという印象を強く与えるものである。その上「政府の有識者会議」なるものが形式的なものとなり、「最強の抵抗勢力」と言われ始めた官の抵抗の前では効果的な役割を果たせないことが明らかになっている。
「地球温暖化問題に関する懇談会」(座長、奥田トヨタ自動車相談役・前会長)が7月の洞爺湖サミットを前にして「提言」を提出したが、総理がプレスに表明していた「ビジョン」より後退した内容となっており、官や民の抵抗の前には総理の「ビジョン」や考え方が反映されない「懇談会」になっている。
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シリーズ「新年金機構」ー心機一転、信頼回復を図れるか?ー

2008-07-25 | Weblog
シリーズ「新年金機構」ー心機一転、信頼回復を図れるか?ー
 社会保険庁の「日本年金機構」への移行は10年1月に迫っているが、政府・自民党は「戒告を含め、懲戒処分者は不採用」との方針をだしている。一方、1年越しの年金記録問題については、社保庁は8億5千万件に及ぶ「年金手書きの台帳」の照合を10年度より行う意向を明らかにした。政府、自民としては新機構への移行に当たり心機一転を図る姿勢であり、評価出来るところではあるが、年金記録問題については新機構に先送りされる恐れがあり、このままでは心機一転とは行きそうにない雲行きだ。
 1、心機一転を図れるか日本年金機構
新機構の発足に当たっては、公的年金の信頼性回復の観点から国民が納得する構成にすることが不可欠だ。
 現職員の再雇用につき、当局側からは「停職、減給処分者のみ不採用」、「その他については1年間の採用、その後正規化可能」との計画案が示されたが、自民党側は「戒告を含め、懲戒処分者(867人)は不採用」との意見が強く、政府としてもその方向で計画案を承認する方向のようだ。当局側は年金業務には「専門的な能力のある者が必要」などとしていたが、処分を受けた者が年金業務に必要とは思えない。法律上の「戒告」以上でなくても、各省庁レベルで出している訓告、厳重注意などを複数回受けている者は不採用で良いのであろう。
 一方「30人に延べ9億円の給与を支払った」とされる「ヤミ専従」慣行が問題とされ、自民党はこれに関係した職員全員を不採用にすべしとしている。労働組合への「専従」職員は民間企業にも存在するが、専従者は「復職」を前提として一旦「休職」し、労働組合より給与を得ているのが通例のようだ。円滑な組合活動を維持するために専従を置くことは必要な場合が多いであろうが、給与を公金から支払うのは筋違いである。この慣行は、恐らく同省の中枢幹部なども黙認した形で継続されていたと思われるが、筋論からすれば、管理責任を含め、まず厚労省、人事院は、専従経験者、労組幹部、及び管理関係者それぞれに処分を検討すると共に、給与として支払った9億円については、旧厚生省・社保庁労組が、例えば今後20年間で国庫に弁済するよう措置することが必要であろう。またその他省庁に同様の慣行がないか調査すべきであろう。新機構への採用、不採用の判断は、この問題に対する処分に基づき行うこととしても遅くはないであろう。
 年金機構の職員については、確かに専門的な知識、能力のある者が必要となるが、公募による民間よりの事務経験者の中間採用の他、地方在住者を含め、共済年金や民間の年金業務経験者の退職者なども対象として、事務内容に沿って俸給(職能制)を設定し、5年の有期限雇用(その後は1年毎の再雇用)など、職能を基準とした雇用・賃金体系を導入することを検討し、人材を広く求めることも必要であろう。他方、不採用となった者については転職を斡旋するなどの支援も必要であろう。
現在の公務員制度は、「新卒」をベースとした硬直した年功序列、終身雇用体制であり、一般行政・政策職などについては修士課程などの高学歴者が適正に評価されない上、中間採用は庶務職や専門・技術職などを除き申し訳程度しかなく、国民に開かれた公務員制度とはなっていない。更に省庁間の人事交流も申し訳程度にしかなく、長期に亘ると封鎖的、硬直的な組織となり易い。
「新卒」至上主義をベースとした「年功序列」制度を排し、「職能」や「業務の種類」に基づいた「職能別」の給与・昇進制度とし、また65歳以上の退職者についても職能に基づき3年から5年の一定期間(その後1年毎の更新可)門戸を開くなど、人材を広く求められる公務員制度を検討すべき時期であろう。特に年金機構その他の独立行政法人など、行政に代わって特定分野の業務を行う機関については「職能別」体制が適すると言えよう。
 いずれにしても心機一転を図る上でも、社保庁の全職員より一旦退職届を取りまとめ、その上で採用、不採用を決定すべきであろう。長期に亘る記録漏れとそれを放置して来たのは、社保庁と(旧)厚生省当局の責任であり、これまで懲戒処分を受けた者だけの責任とは言い切れない。社保庁と(旧)厚生省年金関係部局の職員は、新機構発足以前に国民の前に組織としての責任を明らかにすべきではないだろうか。
 2、これ以上の先送りは許されない年金記録漏れ問題
 年金記録漏れ問題については、昨年7月以降、政府当局は本年3月末までに「名寄せ」が完了するとしていたが、コンピューター記録のチェックでは限界があることが判明した。そして昨年12月より受給者約300万人に「特別便」を発出したものの、少なくても2千万以上は特定困難となることが明らかになり、結論を3月以降に先送った形となった。結局、4月から10月までに現役世代を含め約9,500万人にも「ねんきん特別便」を発送し、確認作業を継続することとした。そのための予算は約300億円にも及ぶ。
 更に社保庁は、これまでの作業結果を明らかにしないまま、7月17日、10年度から8億5千万件にも及ぶ「手書きの台帳」と照合する意向を明らかにした。全件照合には約3,300億円が掛かると試算されている。要するに「ねんきん特別便」では確認作業が思ったほど進まないことを事実上認めたに等しい。しかも全件照合を新機構発足後としているので、新機構発足までには最終的な確認結果を出せないことになる。ずるずると結論を引き延ばしていることが公的年金への不信感を益々募らせている。信頼を回復する上でも、記録問題に関する政府としてのこれまでの作業結果と今後の方針を国民に速やかに説明されることが望まれる。
「ねんきん特別便」において生存する加入者への照会は行っているので、加入者への確認作業は一応それで終えていると言えよう。他方各種の不備があるので、異議を申し立てている者について明確な反証がない限り認める一方、これまでに異議申し立てのない者についても今後とも異議申し立ての道を開いて置くなどにより、本件記録問題を一応終結すべきであろう。
 8億5千万件余に及ぶ記録の全件照合については、もし行うとすれば第三者機関に委託して行うべきであるが、更にずさんな記録や不正な記録が発見され、収拾がつかなくなる恐れもある上、費用対効果の観点からも強い疑問が残る。
 いずれにしても新機構の発足は、記録問題に対する結論を出し、その上で社保庁、厚労省の一連の責任を明らかにしてからとすることが望ましい。照合のための追加的経費についても本来であれば社保庁、旧厚生省職員が何年掛かっても弁済すべきであろう。この問題の対応を新機構発足後に先送りすれば、単に責任逃れとなり国民の公的年金に対する不信感は消えない。
 もし新機構発足予定までに記録漏れ問題への対応方針が示せないのであれば、発足を凍結し、作業を記録漏れ問題に集中すべきであろう。
ところで今回改めて問題となるのが、「政府の有識者会議」の役割である。新年金機構のあり方などを検討する「年金業務・組織再生会議」(座長、本田日本たばこ相談役、前社長)は、6月30日、最終報告書を行革担当大臣に提出したが、検討の過程で社保庁側に押され、「懲戒処分歴のある者を有期限雇用」とし、将来は正規雇用のとなる道を残しており、現職員の9割が新機構に移行する内容に後退していた。要するに事務方が作成した案をほぼ丸呑みし、ラバー・スタンプを押す形となっている。そもそも「懲戒処分歴のある者」も人材確保の上で必要とする社保庁側の省益重視の姿勢は、国民の利益や信頼回復を最優先するものではなく、新機構に移っても実態は何も変わらないという印象を強く与えるものである。その上「政府の有識者会議」なるものが形式的なものとなり、「最強の抵抗勢力」と言われ始めた官の抵抗の前では効果的な役割を果たせないことが明らかになっている。
「地球温暖化問題に関する懇談会」(座長、奥田トヨタ自動車相談役・前会長)が7月の洞爺湖サミットを前にして「提言」を提出したが、総理がプレスに表明していた「ビジョン」より後退した内容となっており、官や民の抵抗の前には総理の「ビジョン」や考え方が反映されない「懇談会」になっている。
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 社会保険庁の「日本年金機構」への移行は10年1月に迫っているが、政府・自民党は「戒告を含め、懲戒処分者は不採用」との方針をだしている。一方、1年越しの年金記録問題については、社保庁は8億5千万件に及ぶ「年金手書きの台帳」の照合を10年度より行う意向を明らかにした。政府、自民としては新機構への移行に当たり心機一転を図る姿勢であり、評価出来るところではあるが、年金記録問題については新機構に先送りされる恐れがあり、このままでは心機一転とは行きそうにない雲行きだ。
 1、心機一転を図れるか日本年金機構
新機構の発足に当たっては、公的年金の信頼性回復の観点から国民が納得する構成にすることが不可欠だ。
 現職員の再雇用につき、当局側からは「停職、減給処分者のみ不採用」、「その他については1年間の採用、その後正規化可能」との計画案が示されたが、自民党側は「戒告を含め、懲戒処分者(867人)は不採用」との意見が強く、政府としてもその方向で計画案を承認する方向のようだ。当局側は年金業務には「専門的な能力のある者が必要」などとしていたが、処分を受けた者が年金業務に必要とは思えない。法律上の「戒告」以上でなくても、各省庁レベルで出している訓告、厳重注意などを複数回受けている者は不採用で良いのであろう。
 一方「30人に延べ9億円の給与を支払った」とされる「ヤミ専従」慣行が問題とされ、自民党はこれに関係した職員全員を不採用にすべしとしている。労働組合への「専従」職員は民間企業にも存在するが、専従者は「復職」を前提として一旦「休職」し、労働組合より給与を得ているのが通例のようだ。円滑な組合活動を維持するために専従を置くことは必要な場合が多いであろうが、給与を公金から支払うのは筋違いである。この慣行は、恐らく同省の中枢幹部なども黙認した形で継続されていたと思われるが、筋論からすれば、管理責任を含め、まず厚労省、人事院は、専従経験者、労組幹部、及び管理関係者それぞれに処分を検討すると共に、給与として支払った9億円については、旧厚生省・社保庁労組が、例えば今後20年間で国庫に弁済するよう措置することが必要であろう。またその他省庁に同様の慣行がないか調査すべきであろう。新機構への採用、不採用の判断は、この問題に対する処分に基づき行うこととしても遅くはないであろう。
 年金機構の職員については、確かに専門的な知識、能力のある者が必要となるが、公募による民間よりの事務経験者の中間採用の他、地方在住者を含め、共済年金や民間の年金業務経験者の退職者なども対象として、事務内容に沿って俸給(職能制)を設定し、5年の有期限雇用(その後は1年毎の再雇用)など、職能を基準とした雇用・賃金体系を導入することを検討し、人材を広く求めることも必要であろう。他方、不採用となった者については転職を斡旋するなどの支援も必要であろう。
現在の公務員制度は、「新卒」をベースとした硬直した年功序列、終身雇用体制であり、一般行政・政策職などについては修士課程などの高学歴者が適正に評価されない上、中間採用は庶務職や専門・技術職などを除き申し訳程度しかなく、国民に開かれた公務員制度とはなっていない。更に省庁間の人事交流も申し訳程度にしかなく、長期に亘ると封鎖的、硬直的な組織となり易い。
「新卒」至上主義をベースとした「年功序列」制度を排し、「職能」や「業務の種類」に基づいた「職能別」の給与・昇進制度とし、また65歳以上の退職者についても職能に基づき3年から5年の一定期間(その後1年毎の更新可)門戸を開くなど、人材を広く求められる公務員制度を検討すべき時期であろう。特に年金機構その他の独立行政法人など、行政に代わって特定分野の業務を行う機関については「職能別」体制が適すると言えよう。
 いずれにしても心機一転を図る上でも、社保庁の全職員より一旦退職届を取りまとめ、その上で採用、不採用を決定すべきであろう。長期に亘る記録漏れとそれを放置して来たのは、社保庁と(旧)厚生省当局の責任であり、これまで懲戒処分を受けた者だけの責任とは言い切れない。社保庁と(旧)厚生省年金関係部局の職員は、新機構発足以前に国民の前に組織としての責任を明らかにすべきではないだろうか。
 2、これ以上の先送りは許されない年金記録漏れ問題
 年金記録漏れ問題については、昨年7月以降、政府当局は本年3月末までに「名寄せ」が完了するとしていたが、コンピューター記録のチェックでは限界があることが判明した。そして昨年12月より受給者約300万人に「特別便」を発出したものの、少なくても2千万以上は特定困難となることが明らかになり、結論を3月以降に先送った形となった。結局、4月から10月までに現役世代を含め約9,500万人にも「ねんきん特別便」を発送し、確認作業を継続することとした。そのための予算は約300億円にも及ぶ。
 更に社保庁は、これまでの作業結果を明らかにしないまま、7月17日、10年度から8億5千万件にも及ぶ「手書きの台帳」と照合する意向を明らかにした。全件照合には約3,300億円が掛かると試算されている。要するに「ねんきん特別便」では確認作業が思ったほど進まないことを事実上認めたに等しい。しかも全件照合を新機構発足後としているので、新機構発足までには最終的な確認結果を出せないことになる。ずるずると結論を引き延ばしていることが公的年金への不信感を益々募らせている。信頼を回復する上でも、記録問題に関する政府としてのこれまでの作業結果と今後の方針を国民に速やかに説明されることが望まれる。
「ねんきん特別便」において生存する加入者への照会は行っているので、加入者への確認作業は一応それで終えていると言えよう。他方各種の不備があるので、異議を申し立てている者について明確な反証がない限り認める一方、これまでに異議申し立てのない者についても今後とも異議申し立ての道を開いて置くなどにより、本件記録問題を一応終結すべきであろう。
 8億5千万件余に及ぶ記録の全件照合については、もし行うとすれば第三者機関に委託して行うべきであるが、更にずさんな記録や不正な記録が発見され、収拾がつかなくなる恐れもある上、費用対効果の観点からも強い疑問が残る。
 いずれにしても新機構の発足は、記録問題に対する結論を出し、その上で社保庁、厚労省の一連の責任を明らかにしてからとすることが望ましい。照合のための追加的経費についても本来であれば社保庁、旧厚生省職員が何年掛かっても弁済すべきであろう。この問題の対応を新機構発足後に先送りすれば、単に責任逃れとなり国民の公的年金に対する不信感は消えない。
 もし新機構発足予定までに記録漏れ問題への対応方針が示せないのであれば、発足を凍結し、作業を記録漏れ問題に集中すべきであろう。
ところで今回改めて問題となるのが、「政府の有識者会議」の役割である。新年金機構のあり方などを検討する「年金業務・組織再生会議」(座長、本田日本たばこ相談役、前社長)は、6月30日、最終報告書を行革担当大臣に提出したが、検討の過程で社保庁側に押され、「懲戒処分歴のある者を有期限雇用」とし、将来は正規雇用のとなる道を残しており、現職員の9割が新機構に移行する内容に後退していた。要するに事務方が作成した案をほぼ丸呑みし、ラバー・スタンプを押す形となっている。そもそも「懲戒処分歴のある者」も人材確保の上で必要とする社保庁側の省益重視の姿勢は、国民の利益や信頼回復を最優先するものではなく、新機構に移っても実態は何も変わらないという印象を強く与えるものである。その上「政府の有識者会議」なるものが形式的なものとなり、「最強の抵抗勢力」と言われ始めた官の抵抗の前では効果的な役割を果たせないことが明らかになっている。
「地球温暖化問題に関する懇談会」(座長、奥田トヨタ自動車相談役・前会長)が7月の洞爺湖サミットを前にして「提言」を提出したが、総理がプレスに表明していた「ビジョン」より後退した内容となっており、官や民の抵抗の前には総理の「ビジョン」や考え方が反映されない「懇談会」になっている。
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 社会保険庁の「日本年金機構」への移行は10年1月に迫っているが、政府・自民党は「戒告を含め、懲戒処分者は不採用」との方針をだしている。一方、1年越しの年金記録問題については、社保庁は8億5千万件に及ぶ「年金手書きの台帳」の照合を10年度より行う意向を明らかにした。政府、自民としては新機構への移行に当たり心機一転を図る姿勢であり、評価出来るところではあるが、年金記録問題については新機構に先送りされる恐れがあり、このままでは心機一転とは行きそうにない雲行きだ。
 1、心機一転を図れるか日本年金機構
新機構の発足に当たっては、公的年金の信頼性回復の観点から国民が納得する構成にすることが不可欠だ。
 現職員の再雇用につき、当局側からは「停職、減給処分者のみ不採用」、「その他については1年間の採用、その後正規化可能」との計画案が示されたが、自民党側は「戒告を含め、懲戒処分者(867人)は不採用」との意見が強く、政府としてもその方向で計画案を承認する方向のようだ。当局側は年金業務には「専門的な能力のある者が必要」などとしていたが、処分を受けた者が年金業務に必要とは思えない。法律上の「戒告」以上でなくても、各省庁レベルで出している訓告、厳重注意などを複数回受けている者は不採用で良いのであろう。
 一方「30人に延べ9億円の給与を支払った」とされる「ヤミ専従」慣行が問題とされ、自民党はこれに関係した職員全員を不採用にすべしとしている。労働組合への「専従」職員は民間企業にも存在するが、専従者は「復職」を前提として一旦「休職」し、労働組合より給与を得ているのが通例のようだ。円滑な組合活動を維持するために専従を置くことは必要な場合が多いであろうが、給与を公金から支払うのは筋違いである。この慣行は、恐らく同省の中枢幹部なども黙認した形で継続されていたと思われるが、筋論からすれば、管理責任を含め、まず厚労省、人事院は、専従経験者、労組幹部、及び管理関係者それぞれに処分を検討すると共に、給与として支払った9億円については、旧厚生省・社保庁労組が、例えば今後20年間で国庫に弁済するよう措置することが必要であろう。またその他省庁に同様の慣行がないか調査すべきであろう。新機構への採用、不採用の判断は、この問題に対する処分に基づき行うこととしても遅くはないであろう。
 年金機構の職員については、確かに専門的な知識、能力のある者が必要となるが、公募による民間よりの事務経験者の中間採用の他、地方在住者を含め、共済年金や民間の年金業務経験者の退職者なども対象として、事務内容に沿って俸給(職能制)を設定し、5年の有期限雇用(その後は1年毎の再雇用)など、職能を基準とした雇用・賃金体系を導入することを検討し、人材を広く求めることも必要であろう。他方、不採用となった者については転職を斡旋するなどの支援も必要であろう。
現在の公務員制度は、「新卒」をベースとした硬直した年功序列、終身雇用体制であり、一般行政・政策職などについては修士課程などの高学歴者が適正に評価されない上、中間採用は庶務職や専門・技術職などを除き申し訳程度しかなく、国民に開かれた公務員制度とはなっていない。更に省庁間の人事交流も申し訳程度にしかなく、長期に亘ると封鎖的、硬直的な組織となり易い。
「新卒」至上主義をベースとした「年功序列」制度を排し、「職能」や「業務の種類」に基づいた「職能別」の給与・昇進制度とし、また65歳以上の退職者についても職能に基づき3年から5年の一定期間(その後1年毎の更新可)門戸を開くなど、人材を広く求められる公務員制度を検討すべき時期であろう。特に年金機構その他の独立行政法人など、行政に代わって特定分野の業務を行う機関については「職能別」体制が適すると言えよう。
 いずれにしても心機一転を図る上でも、社保庁の全職員より一旦退職届を取りまとめ、その上で採用、不採用を決定すべきであろう。長期に亘る記録漏れとそれを放置して来たのは、社保庁と(旧)厚生省当局の責任であり、これまで懲戒処分を受けた者だけの責任とは言い切れない。社保庁と(旧)厚生省年金関係部局の職員は、新機構発足以前に国民の前に組織としての責任を明らかにすべきではないだろうか。
 2、これ以上の先送りは許されない年金記録漏れ問題
 年金記録漏れ問題については、昨年7月以降、政府当局は本年3月末までに「名寄せ」が完了するとしていたが、コンピューター記録のチェックでは限界があることが判明した。そして昨年12月より受給者約300万人に「特別便」を発出したものの、少なくても2千万以上は特定困難となることが明らかになり、結論を3月以降に先送った形となった。結局、4月から10月までに現役世代を含め約9,500万人にも「ねんきん特別便」を発送し、確認作業を継続することとした。そのための予算は約300億円にも及ぶ。
 更に社保庁は、これまでの作業結果を明らかにしないまま、7月17日、10年度から8億5千万件にも及ぶ「手書きの台帳」と照合する意向を明らかにした。全件照合には約3,300億円が掛かると試算されている。要するに「ねんきん特別便」では確認作業が思ったほど進まないことを事実上認めたに等しい。しかも全件照合を新機構発足後としているので、新機構発足までには最終的な確認結果を出せないことになる。ずるずると結論を引き延ばしていることが公的年金への不信感を益々募らせている。信頼を回復する上でも、記録問題に関する政府としてのこれまでの作業結果と今後の方針を国民に速やかに説明されることが望まれる。
「ねんきん特別便」において生存する加入者への照会は行っているので、加入者への確認作業は一応それで終えていると言えよう。他方各種の不備があるので、異議を申し立てている者について明確な反証がない限り認める一方、これまでに異議申し立てのない者についても今後とも異議申し立ての道を開いて置くなどにより、本件記録問題を一応終結すべきであろう。
 8億5千万件余に及ぶ記録の全件照合については、もし行うとすれば第三者機関に委託して行うべきであるが、更にずさんな記録や不正な記録が発見され、収拾がつかなくなる恐れもある上、費用対効果の観点からも強い疑問が残る。
 いずれにしても新機構の発足は、記録問題に対する結論を出し、その上で社保庁、厚労省の一連の責任を明らかにしてからとすることが望ましい。照合のための追加的経費についても本来であれば社保庁、旧厚生省職員が何年掛かっても弁済すべきであろう。この問題の対応を新機構発足後に先送りすれば、単に責任逃れとなり国民の公的年金に対する不信感は消えない。
 もし新機構発足予定までに記録漏れ問題への対応方針が示せないのであれば、発足を凍結し、作業を記録漏れ問題に集中すべきであろう。
ところで今回改めて問題となるのが、「政府の有識者会議」の役割である。新年金機構のあり方などを検討する「年金業務・組織再生会議」(座長、本田日本たばこ相談役、前社長)は、6月30日、最終報告書を行革担当大臣に提出したが、検討の過程で社保庁側に押され、「懲戒処分歴のある者を有期限雇用」とし、将来は正規雇用のとなる道を残しており、現職員の9割が新機構に移行する内容に後退していた。要するに事務方が作成した案をほぼ丸呑みし、ラバー・スタンプを押す形となっている。そもそも「懲戒処分歴のある者」も人材確保の上で必要とする社保庁側の省益重視の姿勢は、国民の利益や信頼回復を最優先するものではなく、新機構に移っても実態は何も変わらないという印象を強く与えるものである。その上「政府の有識者会議」なるものが形式的なものとなり、「最強の抵抗勢力」と言われ始めた官の抵抗の前では効果的な役割を果たせないことが明らかになっている。
「地球温暖化問題に関する懇談会」(座長、奥田トヨタ自動車相談役・前会長)が7月の洞爺湖サミットを前にして「提言」を提出したが、総理がプレスに表明していた「ビジョン」より後退した内容となっており、官や民の抵抗の前には総理の「ビジョン」や考え方が反映されない「懇談会」になっている。
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シリーズ「新年金機構」ー心機一転、信頼回復を図れるか?ー

2008-07-25 | Weblog
シリーズ「新年金機構」ー心機一転、信頼回復を図れるか?ー
 社会保険庁の「日本年金機構」への移行は10年1月に迫っているが、政府・自民党は「戒告を含め、懲戒処分者は不採用」との方針をだしている。一方、1年越しの年金記録問題については、社保庁は8億5千万件に及ぶ「年金手書きの台帳」の照合を10年度より行う意向を明らかにした。政府、自民としては新機構への移行に当たり心機一転を図る姿勢であり、評価出来るところではあるが、年金記録問題については新機構に先送りされる恐れがあり、このままでは心機一転とは行きそうにない雲行きだ。
 1、心機一転を図れるか日本年金機構
新機構の発足に当たっては、公的年金の信頼性回復の観点から国民が納得する構成にすることが不可欠だ。
 現職員の再雇用につき、当局側からは「停職、減給処分者のみ不採用」、「その他については1年間の採用、その後正規化可能」との計画案が示されたが、自民党側は「戒告を含め、懲戒処分者(867人)は不採用」との意見が強く、政府としてもその方向で計画案を承認する方向のようだ。当局側は年金業務には「専門的な能力のある者が必要」などとしていたが、処分を受けた者が年金業務に必要とは思えない。法律上の「戒告」以上でなくても、各省庁レベルで出している訓告、厳重注意などを複数回受けている者は不採用で良いのであろう。
 一方「30人に延べ9億円の給与を支払った」とされる「ヤミ専従」慣行が問題とされ、自民党はこれに関係した職員全員を不採用にすべしとしている。労働組合への「専従」職員は民間企業にも存在するが、専従者は「復職」を前提として一旦「休職」し、労働組合より給与を得ているのが通例のようだ。円滑な組合活動を維持するために専従を置くことは必要な場合が多いであろうが、給与を公金から支払うのは筋違いである。この慣行は、恐らく同省の中枢幹部なども黙認した形で継続されていたと思われるが、筋論からすれば、管理責任を含め、まず厚労省、人事院は、専従経験者、労組幹部、及び管理関係者それぞれに処分を検討すると共に、給与として支払った9億円については、旧厚生省・社保庁労組が、例えば今後20年間で国庫に弁済するよう措置することが必要であろう。またその他省庁に同様の慣行がないか調査すべきであろう。新機構への採用、不採用の判断は、この問題に対する処分に基づき行うこととしても遅くはないであろう。
 年金機構の職員については、確かに専門的な知識、能力のある者が必要となるが、公募による民間よりの事務経験者の中間採用の他、地方在住者を含め、共済年金や民間の年金業務経験者の退職者なども対象として、事務内容に沿って俸給(職能制)を設定し、5年の有期限雇用(その後は1年毎の再雇用)など、職能を基準とした雇用・賃金体系を導入することを検討し、人材を広く求めることも必要であろう。他方、不採用となった者については転職を斡旋するなどの支援も必要であろう。
現在の公務員制度は、「新卒」をベースとした硬直した年功序列、終身雇用体制であり、一般行政・政策職などについては修士課程などの高学歴者が適正に評価されない上、中間採用は庶務職や専門・技術職などを除き申し訳程度しかなく、国民に開かれた公務員制度とはなっていない。更に省庁間の人事交流も申し訳程度にしかなく、長期に亘ると封鎖的、硬直的な組織となり易い。
「新卒」至上主義をベースとした「年功序列」制度を排し、「職能」や「業務の種類」に基づいた「職能別」の給与・昇進制度とし、また65歳以上の退職者についても職能に基づき3年から5年の一定期間(その後1年毎の更新可)門戸を開くなど、人材を広く求められる公務員制度を検討すべき時期であろう。特に年金機構その他の独立行政法人など、行政に代わって特定分野の業務を行う機関については「職能別」体制が適すると言えよう。
 いずれにしても心機一転を図る上でも、社保庁の全職員より一旦退職届を取りまとめ、その上で採用、不採用を決定すべきであろう。長期に亘る記録漏れとそれを放置して来たのは、社保庁と(旧)厚生省当局の責任であり、これまで懲戒処分を受けた者だけの責任とは言い切れない。社保庁と(旧)厚生省年金関係部局の職員は、新機構発足以前に国民の前に組織としての責任を明らかにすべきではないだろうか。
 2、これ以上の先送りは許されない年金記録漏れ問題
 年金記録漏れ問題については、昨年7月以降、政府当局は本年3月末までに「名寄せ」が完了するとしていたが、コンピューター記録のチェックでは限界があることが判明した。そして昨年12月より受給者約300万人に「特別便」を発出したものの、少なくても2千万以上は特定困難となることが明らかになり、結論を3月以降に先送った形となった。結局、4月から10月までに現役世代を含め約9,500万人にも「ねんきん特別便」を発送し、確認作業を継続することとした。そのための予算は約300億円にも及ぶ。
 更に社保庁は、これまでの作業結果を明らかにしないまま、7月17日、10年度から8億5千万件にも及ぶ「手書きの台帳」と照合する意向を明らかにした。全件照合には約3,300億円が掛かると試算されている。要するに「ねんきん特別便」では確認作業が思ったほど進まないことを事実上認めたに等しい。しかも全件照合を新機構発足後としているので、新機構発足までには最終的な確認結果を出せないことになる。ずるずると結論を引き延ばしていることが公的年金への不信感を益々募らせている。信頼を回復する上でも、記録問題に関する政府としてのこれまでの作業結果と今後の方針を国民に速やかに説明されることが望まれる。
「ねんきん特別便」において生存する加入者への照会は行っているので、加入者への確認作業は一応それで終えていると言えよう。他方各種の不備があるので、異議を申し立てている者について明確な反証がない限り認める一方、これまでに異議申し立てのない者についても今後とも異議申し立ての道を開いて置くなどにより、本件記録問題を一応終結すべきであろう。
 8億5千万件余に及ぶ記録の全件照合については、もし行うとすれば第三者機関に委託して行うべきであるが、更にずさんな記録や不正な記録が発見され、収拾がつかなくなる恐れもある上、費用対効果の観点からも強い疑問が残る。
 いずれにしても新機構の発足は、記録問題に対する結論を出し、その上で社保庁、厚労省の一連の責任を明らかにしてからとすることが望ましい。照合のための追加的経費についても本来であれば社保庁、旧厚生省職員が何年掛かっても弁済すべきであろう。この問題の対応を新機構発足後に先送りすれば、単に責任逃れとなり国民の公的年金に対する不信感は消えない。
 もし新機構発足予定までに記録漏れ問題への対応方針が示せないのであれば、発足を凍結し、作業を記録漏れ問題に集中すべきであろう。
ところで今回改めて問題となるのが、「政府の有識者会議」の役割である。新年金機構のあり方などを検討する「年金業務・組織再生会議」(座長、本田日本たばこ相談役、前社長)は、6月30日、最終報告書を行革担当大臣に提出したが、検討の過程で社保庁側に押され、「懲戒処分歴のある者を有期限雇用」とし、将来は正規雇用のとなる道を残しており、現職員の9割が新機構に移行する内容に後退していた。要するに事務方が作成した案をほぼ丸呑みし、ラバー・スタンプを押す形となっている。そもそも「懲戒処分歴のある者」も人材確保の上で必要とする社保庁側の省益重視の姿勢は、国民の利益や信頼回復を最優先するものではなく、新機構に移っても実態は何も変わらないという印象を強く与えるものである。その上「政府の有識者会議」なるものが形式的なものとなり、「最強の抵抗勢力」と言われ始めた官の抵抗の前では効果的な役割を果たせないことが明らかになっている。
「地球温暖化問題に関する懇談会」(座長、奥田トヨタ自動車相談役・前会長)が7月の洞爺湖サミットを前にして「提言」を提出したが、総理がプレスに表明していた「ビジョン」より後退した内容となっており、官や民の抵抗の前には総理の「ビジョン」や考え方が反映されない「懇談会」になっている。
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 社会保険庁の「日本年金機構」への移行は10年1月に迫っているが、政府・自民党は「戒告を含め、懲戒処分者は不採用」との方針をだしている。一方、1年越しの年金記録問題については、社保庁は8億5千万件に及ぶ「年金手書きの台帳」の照合を10年度より行う意向を明らかにした。政府、自民としては新機構への移行に当たり心機一転を図る姿勢であり、評価出来るところではあるが、年金記録問題については新機構に先送りされる恐れがあり、このままでは心機一転とは行きそうにない雲行きだ。
 1、心機一転を図れるか日本年金機構
新機構の発足に当たっては、公的年金の信頼性回復の観点から国民が納得する構成にすることが不可欠だ。
 現職員の再雇用につき、当局側からは「停職、減給処分者のみ不採用」、「その他については1年間の採用、その後正規化可能」との計画案が示されたが、自民党側は「戒告を含め、懲戒処分者(867人)は不採用」との意見が強く、政府としてもその方向で計画案を承認する方向のようだ。当局側は年金業務には「専門的な能力のある者が必要」などとしていたが、処分を受けた者が年金業務に必要とは思えない。法律上の「戒告」以上でなくても、各省庁レベルで出している訓告、厳重注意などを複数回受けている者は不採用で良いのであろう。
 一方「30人に延べ9億円の給与を支払った」とされる「ヤミ専従」慣行が問題とされ、自民党はこれに関係した職員全員を不採用にすべしとしている。労働組合への「専従」職員は民間企業にも存在するが、専従者は「復職」を前提として一旦「休職」し、労働組合より給与を得ているのが通例のようだ。円滑な組合活動を維持するために専従を置くことは必要な場合が多いであろうが、給与を公金から支払うのは筋違いである。この慣行は、恐らく同省の中枢幹部なども黙認した形で継続されていたと思われるが、筋論からすれば、管理責任を含め、まず厚労省、人事院は、専従経験者、労組幹部、及び管理関係者それぞれに処分を検討すると共に、給与として支払った9億円については、旧厚生省・社保庁労組が、例えば今後20年間で国庫に弁済するよう措置することが必要であろう。またその他省庁に同様の慣行がないか調査すべきであろう。新機構への採用、不採用の判断は、この問題に対する処分に基づき行うこととしても遅くはないであろう。
 年金機構の職員については、確かに専門的な知識、能力のある者が必要となるが、公募による民間よりの事務経験者の中間採用の他、地方在住者を含め、共済年金や民間の年金業務経験者の退職者なども対象として、事務内容に沿って俸給(職能制)を設定し、5年の有期限雇用(その後は1年毎の再雇用)など、職能を基準とした雇用・賃金体系を導入することを検討し、人材を広く求めることも必要であろう。他方、不採用となった者については転職を斡旋するなどの支援も必要であろう。
現在の公務員制度は、「新卒」をベースとした硬直した年功序列、終身雇用体制であり、一般行政・政策職などについては修士課程などの高学歴者が適正に評価されない上、中間採用は庶務職や専門・技術職などを除き申し訳程度しかなく、国民に開かれた公務員制度とはなっていない。更に省庁間の人事交流も申し訳程度にしかなく、長期に亘ると封鎖的、硬直的な組織となり易い。
「新卒」至上主義をベースとした「年功序列」制度を排し、「職能」や「業務の種類」に基づいた「職能別」の給与・昇進制度とし、また65歳以上の退職者についても職能に基づき3年から5年の一定期間(その後1年毎の更新可)門戸を開くなど、人材を広く求められる公務員制度を検討すべき時期であろう。特に年金機構その他の独立行政法人など、行政に代わって特定分野の業務を行う機関については「職能別」体制が適すると言えよう。
 いずれにしても心機一転を図る上でも、社保庁の全職員より一旦退職届を取りまとめ、その上で採用、不採用を決定すべきであろう。長期に亘る記録漏れとそれを放置して来たのは、社保庁と(旧)厚生省当局の責任であり、これまで懲戒処分を受けた者だけの責任とは言い切れない。社保庁と(旧)厚生省年金関係部局の職員は、新機構発足以前に国民の前に組織としての責任を明らかにすべきではないだろうか。
 2、これ以上の先送りは許されない年金記録漏れ問題
 年金記録漏れ問題については、昨年7月以降、政府当局は本年3月末までに「名寄せ」が完了するとしていたが、コンピューター記録のチェックでは限界があることが判明した。そして昨年12月より受給者約300万人に「特別便」を発出したものの、少なくても2千万以上は特定困難となることが明らかになり、結論を3月以降に先送った形となった。結局、4月から10月までに現役世代を含め約9,500万人にも「ねんきん特別便」を発送し、確認作業を継続することとした。そのための予算は約300億円にも及ぶ。
 更に社保庁は、これまでの作業結果を明らかにしないまま、7月17日、10年度から8億5千万件にも及ぶ「手書きの台帳」と照合する意向を明らかにした。全件照合には約3,300億円が掛かると試算されている。要するに「ねんきん特別便」では確認作業が思ったほど進まないことを事実上認めたに等しい。しかも全件照合を新機構発足後としているので、新機構発足までには最終的な確認結果を出せないことになる。ずるずると結論を引き延ばしていることが公的年金への不信感を益々募らせている。信頼を回復する上でも、記録問題に関する政府としてのこれまでの作業結果と今後の方針を国民に速やかに説明されることが望まれる。
「ねんきん特別便」において生存する加入者への照会は行っているので、加入者への確認作業は一応それで終えていると言えよう。他方各種の不備があるので、異議を申し立てている者について明確な反証がない限り認める一方、これまでに異議申し立てのない者についても今後とも異議申し立ての道を開いて置くなどにより、本件記録問題を一応終結すべきであろう。
 8億5千万件余に及ぶ記録の全件照合については、もし行うとすれば第三者機関に委託して行うべきであるが、更にずさんな記録や不正な記録が発見され、収拾がつかなくなる恐れもある上、費用対効果の観点からも強い疑問が残る。
 いずれにしても新機構の発足は、記録問題に対する結論を出し、その上で社保庁、厚労省の一連の責任を明らかにしてからとすることが望ましい。照合のための追加的経費についても本来であれば社保庁、旧厚生省職員が何年掛かっても弁済すべきであろう。この問題の対応を新機構発足後に先送りすれば、単に責任逃れとなり国民の公的年金に対する不信感は消えない。
 もし新機構発足予定までに記録漏れ問題への対応方針が示せないのであれば、発足を凍結し、作業を記録漏れ問題に集中すべきであろう。
ところで今回改めて問題となるのが、「政府の有識者会議」の役割である。新年金機構のあり方などを検討する「年金業務・組織再生会議」(座長、本田日本たばこ相談役、前社長)は、6月30日、最終報告書を行革担当大臣に提出したが、検討の過程で社保庁側に押され、「懲戒処分歴のある者を有期限雇用」とし、将来は正規雇用のとなる道を残しており、現職員の9割が新機構に移行する内容に後退していた。要するに事務方が作成した案をほぼ丸呑みし、ラバー・スタンプを押す形となっている。そもそも「懲戒処分歴のある者」も人材確保の上で必要とする社保庁側の省益重視の姿勢は、国民の利益や信頼回復を最優先するものではなく、新機構に移っても実態は何も変わらないという印象を強く与えるものである。その上「政府の有識者会議」なるものが形式的なものとなり、「最強の抵抗勢力」と言われ始めた官の抵抗の前では効果的な役割を果たせないことが明らかになっている。
「地球温暖化問題に関する懇談会」(座長、奥田トヨタ自動車相談役・前会長)が7月の洞爺湖サミットを前にして「提言」を提出したが、総理がプレスに表明していた「ビジョン」より後退した内容となっており、官や民の抵抗の前には総理の「ビジョン」や考え方が反映されない「懇談会」になっている。
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 社会保険庁の「日本年金機構」への移行は10年1月に迫っているが、政府・自民党は「戒告を含め、懲戒処分者は不採用」との方針をだしている。一方、1年越しの年金記録問題については、社保庁は8億5千万件に及ぶ「年金手書きの台帳」の照合を10年度より行う意向を明らかにした。政府、自民としては新機構への移行に当たり心機一転を図る姿勢であり、評価出来るところではあるが、年金記録問題については新機構に先送りされる恐れがあり、このままでは心機一転とは行きそうにない雲行きだ。
 1、心機一転を図れるか日本年金機構
新機構の発足に当たっては、公的年金の信頼性回復の観点から国民が納得する構成にすることが不可欠だ。
 現職員の再雇用につき、当局側からは「停職、減給処分者のみ不採用」、「その他については1年間の採用、その後正規化可能」との計画案が示されたが、自民党側は「戒告を含め、懲戒処分者(867人)は不採用」との意見が強く、政府としてもその方向で計画案を承認する方向のようだ。当局側は年金業務には「専門的な能力のある者が必要」などとしていたが、処分を受けた者が年金業務に必要とは思えない。法律上の「戒告」以上でなくても、各省庁レベルで出している訓告、厳重注意などを複数回受けている者は不採用で良いのであろう。
 一方「30人に延べ9億円の給与を支払った」とされる「ヤミ専従」慣行が問題とされ、自民党はこれに関係した職員全員を不採用にすべしとしている。労働組合への「専従」職員は民間企業にも存在するが、専従者は「復職」を前提として一旦「休職」し、労働組合より給与を得ているのが通例のようだ。円滑な組合活動を維持するために専従を置くことは必要な場合が多いであろうが、給与を公金から支払うのは筋違いである。この慣行は、恐らく同省の中枢幹部なども黙認した形で継続されていたと思われるが、筋論からすれば、管理責任を含め、まず厚労省、人事院は、専従経験者、労組幹部、及び管理関係者それぞれに処分を検討すると共に、給与として支払った9億円については、旧厚生省・社保庁労組が、例えば今後20年間で国庫に弁済するよう措置することが必要であろう。またその他省庁に同様の慣行がないか調査すべきであろう。新機構への採用、不採用の判断は、この問題に対する処分に基づき行うこととしても遅くはないであろう。
 年金機構の職員については、確かに専門的な知識、能力のある者が必要となるが、公募による民間よりの事務経験者の中間採用の他、地方在住者を含め、共済年金や民間の年金業務経験者の退職者なども対象として、事務内容に沿って俸給(職能制)を設定し、5年の有期限雇用(その後は1年毎の再雇用)など、職能を基準とした雇用・賃金体系を導入することを検討し、人材を広く求めることも必要であろう。他方、不採用となった者については転職を斡旋するなどの支援も必要であろう。
現在の公務員制度は、「新卒」をベースとした硬直した年功序列、終身雇用体制であり、一般行政・政策職などについては修士課程などの高学歴者が適正に評価されない上、中間採用は庶務職や専門・技術職などを除き申し訳程度しかなく、国民に開かれた公務員制度とはなっていない。更に省庁間の人事交流も申し訳程度にしかなく、長期に亘ると封鎖的、硬直的な組織となり易い。
「新卒」至上主義をベースとした「年功序列」制度を排し、「職能」や「業務の種類」に基づいた「職能別」の給与・昇進制度とし、また65歳以上の退職者についても職能に基づき3年から5年の一定期間(その後1年毎の更新可)門戸を開くなど、人材を広く求められる公務員制度を検討すべき時期であろう。特に年金機構その他の独立行政法人など、行政に代わって特定分野の業務を行う機関については「職能別」体制が適すると言えよう。
 いずれにしても心機一転を図る上でも、社保庁の全職員より一旦退職届を取りまとめ、その上で採用、不採用を決定すべきであろう。長期に亘る記録漏れとそれを放置して来たのは、社保庁と(旧)厚生省当局の責任であり、これまで懲戒処分を受けた者だけの責任とは言い切れない。社保庁と(旧)厚生省年金関係部局の職員は、新機構発足以前に国民の前に組織としての責任を明らかにすべきではないだろうか。
 2、これ以上の先送りは許されない年金記録漏れ問題
 年金記録漏れ問題については、昨年7月以降、政府当局は本年3月末までに「名寄せ」が完了するとしていたが、コンピューター記録のチェックでは限界があることが判明した。そして昨年12月より受給者約300万人に「特別便」を発出したものの、少なくても2千万以上は特定困難となることが明らかになり、結論を3月以降に先送った形となった。結局、4月から10月までに現役世代を含め約9,500万人にも「ねんきん特別便」を発送し、確認作業を継続することとした。そのための予算は約300億円にも及ぶ。
 更に社保庁は、これまでの作業結果を明らかにしないまま、7月17日、10年度から8億5千万件にも及ぶ「手書きの台帳」と照合する意向を明らかにした。全件照合には約3,300億円が掛かると試算されている。要するに「ねんきん特別便」では確認作業が思ったほど進まないことを事実上認めたに等しい。しかも全件照合を新機構発足後としているので、新機構発足までには最終的な確認結果を出せないことになる。ずるずると結論を引き延ばしていることが公的年金への不信感を益々募らせている。信頼を回復する上でも、記録問題に関する政府としてのこれまでの作業結果と今後の方針を国民に速やかに説明されることが望まれる。
「ねんきん特別便」において生存する加入者への照会は行っているので、加入者への確認作業は一応それで終えていると言えよう。他方各種の不備があるので、異議を申し立てている者について明確な反証がない限り認める一方、これまでに異議申し立てのない者についても今後とも異議申し立ての道を開いて置くなどにより、本件記録問題を一応終結すべきであろう。
 8億5千万件余に及ぶ記録の全件照合については、もし行うとすれば第三者機関に委託して行うべきであるが、更にずさんな記録や不正な記録が発見され、収拾がつかなくなる恐れもある上、費用対効果の観点からも強い疑問が残る。
 いずれにしても新機構の発足は、記録問題に対する結論を出し、その上で社保庁、厚労省の一連の責任を明らかにしてからとすることが望ましい。照合のための追加的経費についても本来であれば社保庁、旧厚生省職員が何年掛かっても弁済すべきであろう。この問題の対応を新機構発足後に先送りすれば、単に責任逃れとなり国民の公的年金に対する不信感は消えない。
 もし新機構発足予定までに記録漏れ問題への対応方針が示せないのであれば、発足を凍結し、作業を記録漏れ問題に集中すべきであろう。
ところで今回改めて問題となるのが、「政府の有識者会議」の役割である。新年金機構のあり方などを検討する「年金業務・組織再生会議」(座長、本田日本たばこ相談役、前社長)は、6月30日、最終報告書を行革担当大臣に提出したが、検討の過程で社保庁側に押され、「懲戒処分歴のある者を有期限雇用」とし、将来は正規雇用のとなる道を残しており、現職員の9割が新機構に移行する内容に後退していた。要するに事務方が作成した案をほぼ丸呑みし、ラバー・スタンプを押す形となっている。そもそも「懲戒処分歴のある者」も人材確保の上で必要とする社保庁側の省益重視の姿勢は、国民の利益や信頼回復を最優先するものではなく、新機構に移っても実態は何も変わらないという印象を強く与えるものである。その上「政府の有識者会議」なるものが形式的なものとなり、「最強の抵抗勢力」と言われ始めた官の抵抗の前では効果的な役割を果たせないことが明らかになっている。
「地球温暖化問題に関する懇談会」(座長、奥田トヨタ自動車相談役・前会長)が7月の洞爺湖サミットを前にして「提言」を提出したが、総理がプレスに表明していた「ビジョン」より後退した内容となっており、官や民の抵抗の前には総理の「ビジョン」や考え方が反映されない「懇談会」になっている。
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 社会保険庁の「日本年金機構」への移行は10年1月に迫っているが、政府・自民党は「戒告を含め、懲戒処分者は不採用」との方針をだしている。一方、1年越しの年金記録問題については、社保庁は8億5千万件に及ぶ「年金手書きの台帳」の照合を10年度より行う意向を明らかにした。政府、自民としては新機構への移行に当たり心機一転を図る姿勢であり、評価出来るところではあるが、年金記録問題については新機構に先送りされる恐れがあり、このままでは心機一転とは行きそうにない雲行きだ。
 1、心機一転を図れるか日本年金機構
新機構の発足に当たっては、公的年金の信頼性回復の観点から国民が納得する構成にすることが不可欠だ。
 現職員の再雇用につき、当局側からは「停職、減給処分者のみ不採用」、「その他については1年間の採用、その後正規化可能」との計画案が示されたが、自民党側は「戒告を含め、懲戒処分者(867人)は不採用」との意見が強く、政府としてもその方向で計画案を承認する方向のようだ。当局側は年金業務には「専門的な能力のある者が必要」などとしていたが、処分を受けた者が年金業務に必要とは思えない。法律上の「戒告」以上でなくても、各省庁レベルで出している訓告、厳重注意などを複数回受けている者は不採用で良いのであろう。
 一方「30人に延べ9億円の給与を支払った」とされる「ヤミ専従」慣行が問題とされ、自民党はこれに関係した職員全員を不採用にすべしとしている。労働組合への「専従」職員は民間企業にも存在するが、専従者は「復職」を前提として一旦「休職」し、労働組合より給与を得ているのが通例のようだ。円滑な組合活動を維持するために専従を置くことは必要な場合が多いであろうが、給与を公金から支払うのは筋違いである。この慣行は、恐らく同省の中枢幹部なども黙認した形で継続されていたと思われるが、筋論からすれば、管理責任を含め、まず厚労省、人事院は、専従経験者、労組幹部、及び管理関係者それぞれに処分を検討すると共に、給与として支払った9億円については、旧厚生省・社保庁労組が、例えば今後20年間で国庫に弁済するよう措置することが必要であろう。またその他省庁に同様の慣行がないか調査すべきであろう。新機構への採用、不採用の判断は、この問題に対する処分に基づき行うこととしても遅くはないであろう。
 年金機構の職員については、確かに専門的な知識、能力のある者が必要となるが、公募による民間よりの事務経験者の中間採用の他、地方在住者を含め、共済年金や民間の年金業務経験者の退職者なども対象として、事務内容に沿って俸給(職能制)を設定し、5年の有期限雇用(その後は1年毎の再雇用)など、職能を基準とした雇用・賃金体系を導入することを検討し、人材を広く求めることも必要であろう。他方、不採用となった者については転職を斡旋するなどの支援も必要であろう。
現在の公務員制度は、「新卒」をベースとした硬直した年功序列、終身雇用体制であり、一般行政・政策職などについては修士課程などの高学歴者が適正に評価されない上、中間採用は庶務職や専門・技術職などを除き申し訳程度しかなく、国民に開かれた公務員制度とはなっていない。更に省庁間の人事交流も申し訳程度にしかなく、長期に亘ると封鎖的、硬直的な組織となり易い。
「新卒」至上主義をベースとした「年功序列」制度を排し、「職能」や「業務の種類」に基づいた「職能別」の給与・昇進制度とし、また65歳以上の退職者についても職能に基づき3年から5年の一定期間(その後1年毎の更新可)門戸を開くなど、人材を広く求められる公務員制度を検討すべき時期であろう。特に年金機構その他の独立行政法人など、行政に代わって特定分野の業務を行う機関については「職能別」体制が適すると言えよう。
 いずれにしても心機一転を図る上でも、社保庁の全職員より一旦退職届を取りまとめ、その上で採用、不採用を決定すべきであろう。長期に亘る記録漏れとそれを放置して来たのは、社保庁と(旧)厚生省当局の責任であり、これまで懲戒処分を受けた者だけの責任とは言い切れない。社保庁と(旧)厚生省年金関係部局の職員は、新機構発足以前に国民の前に組織としての責任を明らかにすべきではないだろうか。
 2、これ以上の先送りは許されない年金記録漏れ問題
 年金記録漏れ問題については、昨年7月以降、政府当局は本年3月末までに「名寄せ」が完了するとしていたが、コンピューター記録のチェックでは限界があることが判明した。そして昨年12月より受給者約300万人に「特別便」を発出したものの、少なくても2千万以上は特定困難となることが明らかになり、結論を3月以降に先送った形となった。結局、4月から10月までに現役世代を含め約9,500万人にも「ねんきん特別便」を発送し、確認作業を継続することとした。そのための予算は約300億円にも及ぶ。
 更に社保庁は、これまでの作業結果を明らかにしないまま、7月17日、10年度から8億5千万件にも及ぶ「手書きの台帳」と照合する意向を明らかにした。全件照合には約3,300億円が掛かると試算されている。要するに「ねんきん特別便」では確認作業が思ったほど進まないことを事実上認めたに等しい。しかも全件照合を新機構発足後としているので、新機構発足までには最終的な確認結果を出せないことになる。ずるずると結論を引き延ばしていることが公的年金への不信感を益々募らせている。信頼を回復する上でも、記録問題に関する政府としてのこれまでの作業結果と今後の方針を国民に速やかに説明されることが望まれる。
「ねんきん特別便」において生存する加入者への照会は行っているので、加入者への確認作業は一応それで終えていると言えよう。他方各種の不備があるので、異議を申し立てている者について明確な反証がない限り認める一方、これまでに異議申し立てのない者についても今後とも異議申し立ての道を開いて置くなどにより、本件記録問題を一応終結すべきであろう。
 8億5千万件余に及ぶ記録の全件照合については、もし行うとすれば第三者機関に委託して行うべきであるが、更にずさんな記録や不正な記録が発見され、収拾がつかなくなる恐れもある上、費用対効果の観点からも強い疑問が残る。
 いずれにしても新機構の発足は、記録問題に対する結論を出し、その上で社保庁、厚労省の一連の責任を明らかにしてからとすることが望ましい。照合のための追加的経費についても本来であれば社保庁、旧厚生省職員が何年掛かっても弁済すべきであろう。この問題の対応を新機構発足後に先送りすれば、単に責任逃れとなり国民の公的年金に対する不信感は消えない。
 もし新機構発足予定までに記録漏れ問題への対応方針が示せないのであれば、発足を凍結し、作業を記録漏れ問題に集中すべきであろう。
ところで今回改めて問題となるのが、「政府の有識者会議」の役割である。新年金機構のあり方などを検討する「年金業務・組織再生会議」(座長、本田日本たばこ相談役、前社長)は、6月30日、最終報告書を行革担当大臣に提出したが、検討の過程で社保庁側に押され、「懲戒処分歴のある者を有期限雇用」とし、将来は正規雇用のとなる道を残しており、現職員の9割が新機構に移行する内容に後退していた。要するに事務方が作成した案をほぼ丸呑みし、ラバー・スタンプを押す形となっている。そもそも「懲戒処分歴のある者」も人材確保の上で必要とする社保庁側の省益重視の姿勢は、国民の利益や信頼回復を最優先するものではなく、新機構に移っても実態は何も変わらないという印象を強く与えるものである。その上「政府の有識者会議」なるものが形式的なものとなり、「最強の抵抗勢力」と言われ始めた官の抵抗の前では効果的な役割を果たせないことが明らかになっている。
「地球温暖化問題に関する懇談会」(座長、奥田トヨタ自動車相談役・前会長)が7月の洞爺湖サミットを前にして「提言」を提出したが、総理がプレスに表明していた「ビジョン」より後退した内容となっており、官や民の抵抗の前には総理の「ビジョン」や考え方が反映されない「懇談会」になっている。
(08.07)  (Copy Right Reserved.)
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