平成の「変」-民主党代表潰しか、強制捜査の「変」-
1、必要な公正な捜査
3月4日、東京地検特捜部は、民主党小沢代表の公設第一秘書(資金管理担当)他を政治資金規正法違反の疑いで逮捕すると共に、資金管理団体である陸山会や岩手県の民主党支部などを強制捜査した。容疑は、西松建設が関係する2政治団体より「陸山会」が献金を受けているが、同社からの「企業献金」であることを「認識」した上での献金であり、議員に対する企業献金を禁じる規正法に反し、「虚偽記載」の疑いがあるなどの理由となっている。明らかな不正があるのであれば、厳正に捜査されるべきであろう。特に、西松建設側の不適正な資金の捻出方法(外為法違反や脱税等)などについては厳正に対処されるべきであろう。
明年度予算や第二次補正関連法案が衆議院を通過し、衆院選が現実味を帯び始めている時期だけに政界に緊張が走った。これら2団体から寄付等を受けているのは小沢代表事務所だけでなく、与党自民党の二階経産大臣、森元総理、山口首相補佐官などの要路も受領しているから、与党への波及も懸念される。
事実、同社が関与していると見られている献金や政治パーテイ券の購入額(04-06年)は、議員別では小沢代表側が2,400万円(全て献金)と最も多く、次いで二階経産大臣側(パーテイ券838万円)となっている。しかし政党別では自民党議員側への献金総額は、報道されているものだけでも3,800万円を超えており、小沢代表側への献金額を大幅に上回っているばかりか、民主党議員側への合計3,000万円をも上回っている。同社の自民党側への傾斜は明らかであり、小沢代表への献金が問題であれば、自民党議員側への多額の献金(パーテイ券購入を含む)についても、証拠隠滅などの余裕を与えることなく速やかに総合的に同様の捜査が進められるべきであろう。
2月5日、「政府高官」が、この件で「捜査が自民党議員にまで拡大することはない」と述べたと報道されている。理由として、公設秘書より会社側に「請求書」があったとしており、捜査上の具体的内容まで知り得る立場の「政府高官」の発言と見られる。しかし、事実は、自民党議員側に流れている金額の方が多いので、捜査の公正さを確保するためには、同様の強制捜査が行われても仕方がないところである。と同時に、官邸の事務方がこの種の問題に公正な立場を保てるような体制にすることが不可欠であろう。発言を慎しめば良いという問題ではない。首相官邸には、現在、官房副長官(事務方のトップ)に前警察庁長官が当てられているが、公正さが確保出来るか否かの問題であろう。
2、曖昧さを残している政治資金規正法
そもそも政治資金規正法が改正されるに当たって、企業よりの献金を政党に限定したが、「政治団体」よりの献金を議員側が受けることは禁じられてはいない。「政治団体」には、「支援団体」を含む政治、政策活動を行う団体が含まれるが、自由な政治活動を容認する立場から、具体的な制約は課せられていない。当時各方面からザル法として批判されたが、政府与党はそれを容認した形で押し切った経緯がある。「政治団体」の登録は、都道府県の選挙管理委員会への報告のみで、政治団体の背景などが審査されるわけではない。従って、それら団体からの議員の資金管理団体への寄付は合法であり、多数の与党議員も各種の「政治団体」から寄付やパーテイ券の購入などを受けているのが現実である。
政治資金規正法、特に企業献金をどのように改善すべきかは今後の課題となろうが、現行法に従えば、政治団体からの議員の資金管理団体への寄付という形式が整えば合法であり、実質的な資金の出所が企業かそうでないか、そして受領側がそれを「認識」しているか否かなどに関しては、全ての寄付ついて精査しなくては判断出来ない。しかし政治資金規正法にはその点についての明確な規定はない。検察当局が、小沢代表側が企業からの資金であることを認識しての「虚偽報告」の疑いがあるなどとしているようであるが、本来そうあるべきか否かは別として、法律上は「政治団体」からの献金は議員の「資金管理団体」が受領し、その旨記載、報告しなくてはならないことになっており、その限りにおいては合法である。検察当局の解釈は、「あるべき論」に基づいた狭義の法解釈であり、立法趣旨を超えているとも言えなくはない。そうであれば恐怖政治を招く恐れがある。法が不備であればまず法を改正するのが筋であろう。
いずれにしても、「万人のための正義」であるべきであり、小沢代表側への寄付が問題であれば、自民党議員側への寄付も同様の問題を抱えている上、政党とすれば自民党議員がより多額の献金を受けているので厳正且つ速やかな対処が必要であろう。
3、問われる企業献金自体のあり方
政党への企業献金は一定の限度はあるが、認められている。個々の企業はもとよりであるが、日本経団連は、政党の政策を分野毎に評価し、それに従って献金額の目安を設定し、傘下の企業による政党側への献金を制度的に実施している。圧倒的に政府与党への献金(パー券購入を含む)が多くなっている。政策評価にある程度の差があることは仕方がないが、合法であるにしても、与野党への献金に巨額の差をつけることが健全な民主主義の発展や公正な政策を促進することになるのか疑問も残る。
更に、その上で具体的な景気対策や補正予算、雇用対策などを政府与党に要請することが制度化して来ていると共に、財界幹部が経済諮問会議や改革検討委員会など、首相の下での各種の重要な委員会の政府委員として参画している。参画するのは良いとしても、利害が衝突する恐れがある場合には、少なくても企業の役員を辞するべきであし、何らかの宣誓が行われるべきであろう。また企業のトップ経験者などが、郵政など民営化会社や特殊法人など、政府関係機関の要職に抜擢され、いわば「天上がり」も頻繁になっている。これでは献金により、税金の使途を誘導し、或いは政府関係の要職を獲得している結果となっているので、企業献金のあり方や経済団体の政治圧力団体としてのあり方が問われても良い。
労働組合が一定の政治的な立場を取り、或いは個別政策に一定の立場を表明することがあり、それが過度になると労働者の経済的福利を向上させるという本来の組織目的を離れることになる。一方、それに対応し日本経団連が政治的圧力団体や利益団体としての性格を過度に強めることにも弊害があろう。(09.03.) (Copy Right Reserved.)
1、必要な公正な捜査
3月4日、東京地検特捜部は、民主党小沢代表の公設第一秘書(資金管理担当)他を政治資金規正法違反の疑いで逮捕すると共に、資金管理団体である陸山会や岩手県の民主党支部などを強制捜査した。容疑は、西松建設が関係する2政治団体より「陸山会」が献金を受けているが、同社からの「企業献金」であることを「認識」した上での献金であり、議員に対する企業献金を禁じる規正法に反し、「虚偽記載」の疑いがあるなどの理由となっている。明らかな不正があるのであれば、厳正に捜査されるべきであろう。特に、西松建設側の不適正な資金の捻出方法(外為法違反や脱税等)などについては厳正に対処されるべきであろう。
明年度予算や第二次補正関連法案が衆議院を通過し、衆院選が現実味を帯び始めている時期だけに政界に緊張が走った。これら2団体から寄付等を受けているのは小沢代表事務所だけでなく、与党自民党の二階経産大臣、森元総理、山口首相補佐官などの要路も受領しているから、与党への波及も懸念される。
事実、同社が関与していると見られている献金や政治パーテイ券の購入額(04-06年)は、議員別では小沢代表側が2,400万円(全て献金)と最も多く、次いで二階経産大臣側(パーテイ券838万円)となっている。しかし政党別では自民党議員側への献金総額は、報道されているものだけでも3,800万円を超えており、小沢代表側への献金額を大幅に上回っているばかりか、民主党議員側への合計3,000万円をも上回っている。同社の自民党側への傾斜は明らかであり、小沢代表への献金が問題であれば、自民党議員側への多額の献金(パーテイ券購入を含む)についても、証拠隠滅などの余裕を与えることなく速やかに総合的に同様の捜査が進められるべきであろう。
2月5日、「政府高官」が、この件で「捜査が自民党議員にまで拡大することはない」と述べたと報道されている。理由として、公設秘書より会社側に「請求書」があったとしており、捜査上の具体的内容まで知り得る立場の「政府高官」の発言と見られる。しかし、事実は、自民党議員側に流れている金額の方が多いので、捜査の公正さを確保するためには、同様の強制捜査が行われても仕方がないところである。と同時に、官邸の事務方がこの種の問題に公正な立場を保てるような体制にすることが不可欠であろう。発言を慎しめば良いという問題ではない。首相官邸には、現在、官房副長官(事務方のトップ)に前警察庁長官が当てられているが、公正さが確保出来るか否かの問題であろう。
2、曖昧さを残している政治資金規正法
そもそも政治資金規正法が改正されるに当たって、企業よりの献金を政党に限定したが、「政治団体」よりの献金を議員側が受けることは禁じられてはいない。「政治団体」には、「支援団体」を含む政治、政策活動を行う団体が含まれるが、自由な政治活動を容認する立場から、具体的な制約は課せられていない。当時各方面からザル法として批判されたが、政府与党はそれを容認した形で押し切った経緯がある。「政治団体」の登録は、都道府県の選挙管理委員会への報告のみで、政治団体の背景などが審査されるわけではない。従って、それら団体からの議員の資金管理団体への寄付は合法であり、多数の与党議員も各種の「政治団体」から寄付やパーテイ券の購入などを受けているのが現実である。
政治資金規正法、特に企業献金をどのように改善すべきかは今後の課題となろうが、現行法に従えば、政治団体からの議員の資金管理団体への寄付という形式が整えば合法であり、実質的な資金の出所が企業かそうでないか、そして受領側がそれを「認識」しているか否かなどに関しては、全ての寄付ついて精査しなくては判断出来ない。しかし政治資金規正法にはその点についての明確な規定はない。検察当局が、小沢代表側が企業からの資金であることを認識しての「虚偽報告」の疑いがあるなどとしているようであるが、本来そうあるべきか否かは別として、法律上は「政治団体」からの献金は議員の「資金管理団体」が受領し、その旨記載、報告しなくてはならないことになっており、その限りにおいては合法である。検察当局の解釈は、「あるべき論」に基づいた狭義の法解釈であり、立法趣旨を超えているとも言えなくはない。そうであれば恐怖政治を招く恐れがある。法が不備であればまず法を改正するのが筋であろう。
いずれにしても、「万人のための正義」であるべきであり、小沢代表側への寄付が問題であれば、自民党議員側への寄付も同様の問題を抱えている上、政党とすれば自民党議員がより多額の献金を受けているので厳正且つ速やかな対処が必要であろう。
3、問われる企業献金自体のあり方
政党への企業献金は一定の限度はあるが、認められている。個々の企業はもとよりであるが、日本経団連は、政党の政策を分野毎に評価し、それに従って献金額の目安を設定し、傘下の企業による政党側への献金を制度的に実施している。圧倒的に政府与党への献金(パー券購入を含む)が多くなっている。政策評価にある程度の差があることは仕方がないが、合法であるにしても、与野党への献金に巨額の差をつけることが健全な民主主義の発展や公正な政策を促進することになるのか疑問も残る。
更に、その上で具体的な景気対策や補正予算、雇用対策などを政府与党に要請することが制度化して来ていると共に、財界幹部が経済諮問会議や改革検討委員会など、首相の下での各種の重要な委員会の政府委員として参画している。参画するのは良いとしても、利害が衝突する恐れがある場合には、少なくても企業の役員を辞するべきであし、何らかの宣誓が行われるべきであろう。また企業のトップ経験者などが、郵政など民営化会社や特殊法人など、政府関係機関の要職に抜擢され、いわば「天上がり」も頻繁になっている。これでは献金により、税金の使途を誘導し、或いは政府関係の要職を獲得している結果となっているので、企業献金のあり方や経済団体の政治圧力団体としてのあり方が問われても良い。
労働組合が一定の政治的な立場を取り、或いは個別政策に一定の立場を表明することがあり、それが過度になると労働者の経済的福利を向上させるという本来の組織目的を離れることになる。一方、それに対応し日本経団連が政治的圧力団体や利益団体としての性格を過度に強めることにも弊害があろう。(09.03.) (Copy Right Reserved.)