シリーズ平成の本音 問われる検察審議会のあり方
小沢議員(民主党幹事長)の政治資金管理団体陸山会の過去の政治資金報告書の記載問題で、東京地検は2月に「嫌疑不十分」として不起訴処分とした。しかし3人の元秘書が逮捕、起訴されていることから、一部メデイアや野党が同議員の責任について連日のように報道される中で、11人の一般人で構成される検察審議会で起訴すべきか否かの検討が行われて来た。
その結果、検察審議会は小沢議員(民主党幹事長)の過去の政治資金報告書の記載問題で、同議員を「起訴相当」との結論を出した。これを受けて検察当局は、同議員他について改めて任意の事情聴取を行ったが、新たな証拠が見付からなかったことから、再度不起訴とする意向と伝えられている。検察当局は、1月の通常国会を前にして元秘書の石川議員を逮捕し、同議員を含む3秘書の関連事務所を広範に亘り家宅捜査の上書類等を押収しており、それらの押収書類をもってしても起訴を断念した経緯があるので、今更事情聴取しても新たな証拠を見付けることは困難であろう。というよりは、あれだけの強引で広範な捜査を行っても、不正な資金と見られるような証拠はなかったということであろうから、不起訴の結論は変わらないと予想される。本来、記載上の不備を理由にあれだけの関係者の逮捕、家宅捜査を行えば、どの議員でも何かが出てきても不思議はない。しかし起訴できるような証拠はなかった。あのようなことが繰り返されれば冤罪を引き起こす可能性も高くなり、当事者の人権や社会的被害との関係においても課題を残したと言えよう。特に、政府組織の一部である検察当局が、まず野党の代表を狙い撃ちにし、次いでその野党が政権に就くと政権与党の幹事長となった要路を同じ容疑で執拗に捜査を繰り返したことは、政権交代を阻み、健全な民主主義政治の発展を阻害する非常に政治的な対応であり、健全な政党政治を否定する官僚支配擁護のための動きと見られても仕方が無い。
いずれにしても検察が今回も不起訴とすれば、もう一度検察審議会で審議されることになる。委員の半数は交代することになるが、もし検察審議会が再度「起訴相当」との結論を出せば強制的に起訴される可能性がある。
しかし第一回目の審議を含め、検察審議会の審議については公正を欠く。審議委員は一般人から選ばれるので、新たな証拠などは提出できるわけがない。とすると、証拠や嫌疑の有無などについては検察側が提示し、説明することになり、検察側のさじ加減一つでどの様にでも出来る。疑われている側の弁護や説明は誰がするのか。誰にでも自らを弁護する権利は保証されるべきであろう。更にそもそも当初の捜査段階で、不正な資金の流れや議員の関与を臭わせる情報が次々と一部プレスに流され連日のように報道されているので、一般国民には嫌疑が強く印象付けられている。いわば政治的、社会的な風評被害が広まっており、審議委員をどのように選ぼうとも、審議委員は先入観をもって臨むことになる。世論操作とも言える。従って、検察審議会が存在することを前提として、検察側は捜査段階から起訴に至るまでは、国民に特定の印象を与えるような情報の直接、間接の提供を控えるべきではないだろうか。
2001年7月に起こった明石花火大会に際する歩道橋事故で多数の死傷者を出した事件で、明石警察署の警備体制の不備が問題とされ、マスコミに大々的に報道されたが、同署の責任者であった副署長(当時)は不起訴となった。しかし1月に検察審議会で「起訴」の決議がなされ、同副署長は強制的に起訴されることになった。被害に遭われた方々やご遺族、関係者には深く、深く同情するところだが、明石警察署の同副署長は主催者ではなく、主催者側より交通規制等の具体的な要請がなければ、歩道橋にそれほど多くの人が殺到し大事故となることは通常の以上の注意を払ったとしても想定外であろうし、警察署の警備上の故意や過失があったとは思えない。起訴をされても有罪となる可能性は低い。
また05年4月に起きた福知山線の大惨事については、不起訴となっていた安全担当役員以外の社長他関係役員についても、検察審議会の審議結果により強制的に起訴されることになった。事故被害の大きさから言って会社側の補償や誠意ある謝罪、改善措置などは行われるべきとしても、刑法上の起訴となると上記と同様のことが言える。
これらの強制的な起訴に基づき無罪となった場合、被告側の苦痛や被害はどう償われるのか。検察審議会という国の制度で強制的に起訴されたのであるから、無罪となればその間の苦痛、被害等については国家が補償すべきではなかろうか。
同時に捜査段階での情報のリークや検察審議会の審議の公正性と当事者の弁護、弁明の権利などの問題についても検討されて良い。特に、刑法犯は別としても、政治資金規正法違反など、政党や議員の公的な活動や警察を含む公務員の公務に関する案件については、公的性格から情報が事前に流され、世論を左右する可能性が強いので、健全な政党政治、民主主義政治の発展と公正な公務の確保の観点から、検察審議会のあり方や事前の情報の流布などについて改善される必要があろう。(05.10.)
(All Rights Reserved.)(不許無断引用)
小沢議員(民主党幹事長)の政治資金管理団体陸山会の過去の政治資金報告書の記載問題で、東京地検は2月に「嫌疑不十分」として不起訴処分とした。しかし3人の元秘書が逮捕、起訴されていることから、一部メデイアや野党が同議員の責任について連日のように報道される中で、11人の一般人で構成される検察審議会で起訴すべきか否かの検討が行われて来た。
その結果、検察審議会は小沢議員(民主党幹事長)の過去の政治資金報告書の記載問題で、同議員を「起訴相当」との結論を出した。これを受けて検察当局は、同議員他について改めて任意の事情聴取を行ったが、新たな証拠が見付からなかったことから、再度不起訴とする意向と伝えられている。検察当局は、1月の通常国会を前にして元秘書の石川議員を逮捕し、同議員を含む3秘書の関連事務所を広範に亘り家宅捜査の上書類等を押収しており、それらの押収書類をもってしても起訴を断念した経緯があるので、今更事情聴取しても新たな証拠を見付けることは困難であろう。というよりは、あれだけの強引で広範な捜査を行っても、不正な資金と見られるような証拠はなかったということであろうから、不起訴の結論は変わらないと予想される。本来、記載上の不備を理由にあれだけの関係者の逮捕、家宅捜査を行えば、どの議員でも何かが出てきても不思議はない。しかし起訴できるような証拠はなかった。あのようなことが繰り返されれば冤罪を引き起こす可能性も高くなり、当事者の人権や社会的被害との関係においても課題を残したと言えよう。特に、政府組織の一部である検察当局が、まず野党の代表を狙い撃ちにし、次いでその野党が政権に就くと政権与党の幹事長となった要路を同じ容疑で執拗に捜査を繰り返したことは、政権交代を阻み、健全な民主主義政治の発展を阻害する非常に政治的な対応であり、健全な政党政治を否定する官僚支配擁護のための動きと見られても仕方が無い。
いずれにしても検察が今回も不起訴とすれば、もう一度検察審議会で審議されることになる。委員の半数は交代することになるが、もし検察審議会が再度「起訴相当」との結論を出せば強制的に起訴される可能性がある。
しかし第一回目の審議を含め、検察審議会の審議については公正を欠く。審議委員は一般人から選ばれるので、新たな証拠などは提出できるわけがない。とすると、証拠や嫌疑の有無などについては検察側が提示し、説明することになり、検察側のさじ加減一つでどの様にでも出来る。疑われている側の弁護や説明は誰がするのか。誰にでも自らを弁護する権利は保証されるべきであろう。更にそもそも当初の捜査段階で、不正な資金の流れや議員の関与を臭わせる情報が次々と一部プレスに流され連日のように報道されているので、一般国民には嫌疑が強く印象付けられている。いわば政治的、社会的な風評被害が広まっており、審議委員をどのように選ぼうとも、審議委員は先入観をもって臨むことになる。世論操作とも言える。従って、検察審議会が存在することを前提として、検察側は捜査段階から起訴に至るまでは、国民に特定の印象を与えるような情報の直接、間接の提供を控えるべきではないだろうか。
2001年7月に起こった明石花火大会に際する歩道橋事故で多数の死傷者を出した事件で、明石警察署の警備体制の不備が問題とされ、マスコミに大々的に報道されたが、同署の責任者であった副署長(当時)は不起訴となった。しかし1月に検察審議会で「起訴」の決議がなされ、同副署長は強制的に起訴されることになった。被害に遭われた方々やご遺族、関係者には深く、深く同情するところだが、明石警察署の同副署長は主催者ではなく、主催者側より交通規制等の具体的な要請がなければ、歩道橋にそれほど多くの人が殺到し大事故となることは通常の以上の注意を払ったとしても想定外であろうし、警察署の警備上の故意や過失があったとは思えない。起訴をされても有罪となる可能性は低い。
また05年4月に起きた福知山線の大惨事については、不起訴となっていた安全担当役員以外の社長他関係役員についても、検察審議会の審議結果により強制的に起訴されることになった。事故被害の大きさから言って会社側の補償や誠意ある謝罪、改善措置などは行われるべきとしても、刑法上の起訴となると上記と同様のことが言える。
これらの強制的な起訴に基づき無罪となった場合、被告側の苦痛や被害はどう償われるのか。検察審議会という国の制度で強制的に起訴されたのであるから、無罪となればその間の苦痛、被害等については国家が補償すべきではなかろうか。
同時に捜査段階での情報のリークや検察審議会の審議の公正性と当事者の弁護、弁明の権利などの問題についても検討されて良い。特に、刑法犯は別としても、政治資金規正法違反など、政党や議員の公的な活動や警察を含む公務員の公務に関する案件については、公的性格から情報が事前に流され、世論を左右する可能性が強いので、健全な政党政治、民主主義政治の発展と公正な公務の確保の観点から、検察審議会のあり方や事前の情報の流布などについて改善される必要があろう。(05.10.)
(All Rights Reserved.)(不許無断引用)