平成の本音―森友学園への国有地安値払い下げ、深まる忖度疑惑!
3月23日、国有地を破格の安値で購入し、小学校を建設している森友学園の籠池理事長が、証人喚問され、衆・参両院で 証言した。また翌24日には、財務省の前理財局長(現国税庁長官)と前近畿財務局長(現国際局長)が参考人として証言した。
この森友学園問題については、まず国有地の安値売却について、行政当局(理財局、近畿財務局、及び国土交通省)の対応が適正、公平であったか、関係文書の廃棄は公文書保管義務に反しないか、及び学校建設の‘条件付き認可適当’等を決めた大阪府(私学審、私学課)の対応は適正であったのか等の国及び地方の行政事務が適正だったか否かが問われなくてはならない。
そしてこれに関連し、森友学園の天皇中心の保守的教育方針に傾倒する首相夫人、及び首相自身が行政による優遇措置に直接関与していなくても、国及び大阪府が、破格の行政判断に首相及び首相夫人の存在が‘忖度’されなかったか否かが問題となろう。
1、国有地管理のずさんさと不誠実な行政
国有地の格安売却が行われた発端は、大阪府の私学審が小学校建設につき条件付きで‘認可適当’としたことにある。小学校建設には、土地の確保等が条件であったが、国有土地が確保される前に‘認可適当’が出された。その前に、近畿財務局の担当官が大阪府(私学課)を訪問し、‘認可が下りれば国有地売却は可能’との趣旨を伝達したとされている。大阪府側には重要な認可条件に関することであるので、記録は残っているはずだ。
大阪府側が、規則にのっとって認可保留を継続していれば、今回の国有地の格安売却なども起こらなかったであろう。結果的には森友学園側にも悲劇となった。松井知事も認めている通り、その時点で例外的な‘忖度’があったのは明らかだ。同知事が属する維新の会も、橋本前代表を始めとして、思想的には保守であり、安倍首相の考えに近いことは広く知られている。
松井知事は、国有地の格安売却問題が表面化した後、森友学園側の対応や近畿財務局の対応に批判的な発言をし、距離を置き始めているが、最大の問題は、国家、国民の財産である国有地の安値売却である。
担当の財務省理財局長は、適正に売却した旨繰り返し、‘忖度’等はないとしている。当時の理財局長(現国税長官)は、一連の話について、そのような報告等は受けていないとしている。また前近畿財務局長(現国際局長)は、報告は受けているが、忖度はしていない等としている。担当局の責任者が、こぞって国有地安値売却を巡る背景等を知らないとは驚きだ。怠慢、無責任である。知らなくとも、管理責任が厳しく問われる。逆に、安値で売却される国有地に建てられる小学校に、首相や首相夫人の名が出ていることも知らないというのも無神経で、仕事を真面目にやっているとも思えない。
国有地、国有財産の管理方法を抜本的に透明化、適正化する必要がある。
またもし財務省等が、首相や首相夫人の名に対する‘忖度’はないとするのであれば、売却時の決裁書類、価格や大幅値引きの根拠を含む資料を提出し、説明すべきであろう。敷地から‘ゴミが出た’ので減額したというのであれば、ゴミの種類や量、及び撤去費用の積算根拠や領収書や請求書類を提出し、説明すべきである。財務省は、これら文書を‘廃棄’したとしているが、公文書の保管義務違反であり、国有財産に係るものだけに、厳重な懲戒処分に相当する。不誠実、無責任な業務振りであり、国家、国民に対する背任行為と言えよう。
財務相を含め、この政権は、公務の管理能力や内部統制が欠如している。防衛相によるスーダンからの日報の廃棄問題もあった。
首相始め内閣が、このようなずさん、無責任な行政について、関係事務当局を厳重に注意し、国民の納得が得られるような行政事務を行うと共に、誠実な説明と改善措置を提示するよう指示すべきであろう。政権与党である自民、公明の両保守党もまた、ひたすら首相側を弁護しているだけでなく、事務当局に対し実質的な改善を求めるべきではなかろうか。内閣にも政権与党にもそのような姿勢は見られない。
現在、保守勢力である自民・公明両党や大阪府側等が、森友学園側の不正や偽証などにつき追及する構えだが、それはそれとして、行政当局による不正の可能性をこの際徹底的に解明するすることこそが、国民全体に影響する行政の適正化とって必要ではないだろうか。
2、明らかとなった行政当局、大阪府の過度の‘忖度’
籠池理事長は、小学校建設及び国有地の払い下げについて、‘驚くほどの良い対応で’‘神風が不吹いた’との認識を示している。
それに先立つ大阪府の建設認可については、大阪府知事が、近畿財務局の係官が同府私学課を訪れるなど、好意的な対応をしており、‘忖度’があったのではとの印象を囲み記者に述べている。
籠池理事長は、建設用の国有地を当初定期借地していたが、定期借地をなんとかできないか、首相夫人に電話で問い合わせ、直接返事はなかったものの、後日、同夫人付き係官(経産省出身)より、ファックスで、財務省に問い合わせたところ現在は困難との回答を得ている旨連絡している。
首相側は、‘ゼロ回答であるから、忖度はない’としているが、このファックスを受けた後、籠池理事長は、2016年3月に財務省理財局の国有財産審理室長と面会し、その面談後、同理事長は、借入から購入に切り替えて申請し、短期間で破格の安値での国有地購入が実現している。ファックスが送られた時点での‘忖度’はなかったとしても、結果を見れば明らかであり、この小学校建設には首相、及び首相夫人が関係していると見られることが‘忖度’され、‘神風が吹いた’のであろう。そもそも国との借地契約には、「ゴミがある」などとは一切書かれていなかった由であり、値引きのために生活ゴミ問題が出され、土地価格を8億円強も割り引いたことになる。
首相側は、同夫人付き係官によるファックスでの回答は、同夫人付き係官の‘個人の行為’で、夫人とは関係ないなどとしている。まず100%あり得ない。そもそも財務省には首相夫人付というタイトルを言わなければ担当室長などは相手にもしてくれないだろうし、苦し紛れの言い訳としか映らない。もし‘個人の行為’であったとすると、上司である首相夫人に内緒で行った行為であり、公務員給与を受けながら勝手な個人の行為をしていたということになるので、いずれにしても懲戒に値する。そもそも首相自身が、当初‘夫人は私人’と言っていたのであるから、常勤で2人、非常勤で3人の公務員が首相夫人に付いているのも変な話ではある。首相は、議員報酬や秘書費、政務活動費なども受給しているので、必要であれば首相側が秘書を付けた方が合理的に見える。
いずれにせよ、行政側がどう説明しようとも、結果から過度な忖度があったことは明らかだ。行政当局が‘忖度’はなく、適正だというのであれば、上述の通り、関係資料を付して国会、国民にきちんと説明すべきであろう。
他方、首相側もどうして‘忖度’があったこと自体を否定し続けるのであろうか。‘過度な忖度’があったとしても、その責任は行政当局にあり、首相側が具体的な要請や要望、或いは何らかの示唆をしていない限り、首相側の問題ではない。それを否定するのは、その背後にある意図を隠そうとしているからではないのだろうか。
3、「教育勅語」の暗唱やその下での‘修身教育’復活は問題
それ以上に問題であるのは、首相夫人が一時森友学園の幼稚園を複数回訪問し、教育方針に賛同し、小学校の名誉校長となり、また首相自体もそのような教育方針を評価する発言をしていたことであろう。それがなければこの問題も起こらなかったであろう。
森友学園の幼稚園では、「教育勅語」を判断力もない幼稚園児に暗唱させている。「教育勅語」は明治天皇の名で出されたものであり、その中に「公のために奉仕し」というくだりがあり、それ自体は理解されるところである。しかしその次に「永遠に続く皇室の運命を助けるようにしなさい」などとあり、要するに万世一系、天皇独裁を擁護しなさいとの勅語である。その下で‘修身教育’が行われ、天皇中心の専制君主国家の精神的な支柱となっていたが、明治憲法が廃止され、現行憲法が公布されたことにより、戦後廃止されている。信条、信仰の自由であり、私的にこれを教えることは自由であろうが、これを教え、従わせるような教育を行う幼稚園や小学校等に国(行政府)が補助金を与えたり、特別の優遇措置を与えることは、国が特定の信条、思想を教える教育機関を擁護、助成することになるので問題であろう。
文科省が「教育勅語」を教えることは法令上問題ないなどとしたり、稲田防衛相が「教育勅語」にも良いことが書いてあるなどとしているが、行政当局や閣僚が廃止になった「勅語」を教えることを容認する姿勢は、現行憲法に照らし適正を欠くと見られ、その是非が厳しく問われなくてはならなそうだ。
信条、信仰の自由があり、私的にこれを教えることは自由であろうが、これを教え、従わせるような教育を行う幼稚園や小学校等に国(行政府)が補助金を与えたり、特別の優遇措置を与えることは、国が特定の信条、思想を教える教育機関を擁護、助成することになるので問題であろう。
首相及び首相夫人についても、「教育勅語」を唱えさせるような森友学園の保守的教育方針に心情的に賛同し、鼓舞していたことは明らかだ。一議員ではなく、憲法や関連法規、基本的な教育政策を遵守すべき地位にありながら、国民の目の届かない所でそのような教育の場を拡大しようとしていたわけであるので、国会、国民に対し、説明をすべきであろう。
(2017.3.31.)(All Rights Reserved.)
3月23日、国有地を破格の安値で購入し、小学校を建設している森友学園の籠池理事長が、証人喚問され、衆・参両院で 証言した。また翌24日には、財務省の前理財局長(現国税庁長官)と前近畿財務局長(現国際局長)が参考人として証言した。
この森友学園問題については、まず国有地の安値売却について、行政当局(理財局、近畿財務局、及び国土交通省)の対応が適正、公平であったか、関係文書の廃棄は公文書保管義務に反しないか、及び学校建設の‘条件付き認可適当’等を決めた大阪府(私学審、私学課)の対応は適正であったのか等の国及び地方の行政事務が適正だったか否かが問われなくてはならない。
そしてこれに関連し、森友学園の天皇中心の保守的教育方針に傾倒する首相夫人、及び首相自身が行政による優遇措置に直接関与していなくても、国及び大阪府が、破格の行政判断に首相及び首相夫人の存在が‘忖度’されなかったか否かが問題となろう。
1、国有地管理のずさんさと不誠実な行政
国有地の格安売却が行われた発端は、大阪府の私学審が小学校建設につき条件付きで‘認可適当’としたことにある。小学校建設には、土地の確保等が条件であったが、国有土地が確保される前に‘認可適当’が出された。その前に、近畿財務局の担当官が大阪府(私学課)を訪問し、‘認可が下りれば国有地売却は可能’との趣旨を伝達したとされている。大阪府側には重要な認可条件に関することであるので、記録は残っているはずだ。
大阪府側が、規則にのっとって認可保留を継続していれば、今回の国有地の格安売却なども起こらなかったであろう。結果的には森友学園側にも悲劇となった。松井知事も認めている通り、その時点で例外的な‘忖度’があったのは明らかだ。同知事が属する維新の会も、橋本前代表を始めとして、思想的には保守であり、安倍首相の考えに近いことは広く知られている。
松井知事は、国有地の格安売却問題が表面化した後、森友学園側の対応や近畿財務局の対応に批判的な発言をし、距離を置き始めているが、最大の問題は、国家、国民の財産である国有地の安値売却である。
担当の財務省理財局長は、適正に売却した旨繰り返し、‘忖度’等はないとしている。当時の理財局長(現国税長官)は、一連の話について、そのような報告等は受けていないとしている。また前近畿財務局長(現国際局長)は、報告は受けているが、忖度はしていない等としている。担当局の責任者が、こぞって国有地安値売却を巡る背景等を知らないとは驚きだ。怠慢、無責任である。知らなくとも、管理責任が厳しく問われる。逆に、安値で売却される国有地に建てられる小学校に、首相や首相夫人の名が出ていることも知らないというのも無神経で、仕事を真面目にやっているとも思えない。
国有地、国有財産の管理方法を抜本的に透明化、適正化する必要がある。
またもし財務省等が、首相や首相夫人の名に対する‘忖度’はないとするのであれば、売却時の決裁書類、価格や大幅値引きの根拠を含む資料を提出し、説明すべきであろう。敷地から‘ゴミが出た’ので減額したというのであれば、ゴミの種類や量、及び撤去費用の積算根拠や領収書や請求書類を提出し、説明すべきである。財務省は、これら文書を‘廃棄’したとしているが、公文書の保管義務違反であり、国有財産に係るものだけに、厳重な懲戒処分に相当する。不誠実、無責任な業務振りであり、国家、国民に対する背任行為と言えよう。
財務相を含め、この政権は、公務の管理能力や内部統制が欠如している。防衛相によるスーダンからの日報の廃棄問題もあった。
首相始め内閣が、このようなずさん、無責任な行政について、関係事務当局を厳重に注意し、国民の納得が得られるような行政事務を行うと共に、誠実な説明と改善措置を提示するよう指示すべきであろう。政権与党である自民、公明の両保守党もまた、ひたすら首相側を弁護しているだけでなく、事務当局に対し実質的な改善を求めるべきではなかろうか。内閣にも政権与党にもそのような姿勢は見られない。
現在、保守勢力である自民・公明両党や大阪府側等が、森友学園側の不正や偽証などにつき追及する構えだが、それはそれとして、行政当局による不正の可能性をこの際徹底的に解明するすることこそが、国民全体に影響する行政の適正化とって必要ではないだろうか。
2、明らかとなった行政当局、大阪府の過度の‘忖度’
籠池理事長は、小学校建設及び国有地の払い下げについて、‘驚くほどの良い対応で’‘神風が不吹いた’との認識を示している。
それに先立つ大阪府の建設認可については、大阪府知事が、近畿財務局の係官が同府私学課を訪れるなど、好意的な対応をしており、‘忖度’があったのではとの印象を囲み記者に述べている。
籠池理事長は、建設用の国有地を当初定期借地していたが、定期借地をなんとかできないか、首相夫人に電話で問い合わせ、直接返事はなかったものの、後日、同夫人付き係官(経産省出身)より、ファックスで、財務省に問い合わせたところ現在は困難との回答を得ている旨連絡している。
首相側は、‘ゼロ回答であるから、忖度はない’としているが、このファックスを受けた後、籠池理事長は、2016年3月に財務省理財局の国有財産審理室長と面会し、その面談後、同理事長は、借入から購入に切り替えて申請し、短期間で破格の安値での国有地購入が実現している。ファックスが送られた時点での‘忖度’はなかったとしても、結果を見れば明らかであり、この小学校建設には首相、及び首相夫人が関係していると見られることが‘忖度’され、‘神風が吹いた’のであろう。そもそも国との借地契約には、「ゴミがある」などとは一切書かれていなかった由であり、値引きのために生活ゴミ問題が出され、土地価格を8億円強も割り引いたことになる。
首相側は、同夫人付き係官によるファックスでの回答は、同夫人付き係官の‘個人の行為’で、夫人とは関係ないなどとしている。まず100%あり得ない。そもそも財務省には首相夫人付というタイトルを言わなければ担当室長などは相手にもしてくれないだろうし、苦し紛れの言い訳としか映らない。もし‘個人の行為’であったとすると、上司である首相夫人に内緒で行った行為であり、公務員給与を受けながら勝手な個人の行為をしていたということになるので、いずれにしても懲戒に値する。そもそも首相自身が、当初‘夫人は私人’と言っていたのであるから、常勤で2人、非常勤で3人の公務員が首相夫人に付いているのも変な話ではある。首相は、議員報酬や秘書費、政務活動費なども受給しているので、必要であれば首相側が秘書を付けた方が合理的に見える。
いずれにせよ、行政側がどう説明しようとも、結果から過度な忖度があったことは明らかだ。行政当局が‘忖度’はなく、適正だというのであれば、上述の通り、関係資料を付して国会、国民にきちんと説明すべきであろう。
他方、首相側もどうして‘忖度’があったこと自体を否定し続けるのであろうか。‘過度な忖度’があったとしても、その責任は行政当局にあり、首相側が具体的な要請や要望、或いは何らかの示唆をしていない限り、首相側の問題ではない。それを否定するのは、その背後にある意図を隠そうとしているからではないのだろうか。
3、「教育勅語」の暗唱やその下での‘修身教育’復活は問題
それ以上に問題であるのは、首相夫人が一時森友学園の幼稚園を複数回訪問し、教育方針に賛同し、小学校の名誉校長となり、また首相自体もそのような教育方針を評価する発言をしていたことであろう。それがなければこの問題も起こらなかったであろう。
森友学園の幼稚園では、「教育勅語」を判断力もない幼稚園児に暗唱させている。「教育勅語」は明治天皇の名で出されたものであり、その中に「公のために奉仕し」というくだりがあり、それ自体は理解されるところである。しかしその次に「永遠に続く皇室の運命を助けるようにしなさい」などとあり、要するに万世一系、天皇独裁を擁護しなさいとの勅語である。その下で‘修身教育’が行われ、天皇中心の専制君主国家の精神的な支柱となっていたが、明治憲法が廃止され、現行憲法が公布されたことにより、戦後廃止されている。信条、信仰の自由であり、私的にこれを教えることは自由であろうが、これを教え、従わせるような教育を行う幼稚園や小学校等に国(行政府)が補助金を与えたり、特別の優遇措置を与えることは、国が特定の信条、思想を教える教育機関を擁護、助成することになるので問題であろう。
文科省が「教育勅語」を教えることは法令上問題ないなどとしたり、稲田防衛相が「教育勅語」にも良いことが書いてあるなどとしているが、行政当局や閣僚が廃止になった「勅語」を教えることを容認する姿勢は、現行憲法に照らし適正を欠くと見られ、その是非が厳しく問われなくてはならなそうだ。
信条、信仰の自由があり、私的にこれを教えることは自由であろうが、これを教え、従わせるような教育を行う幼稚園や小学校等に国(行政府)が補助金を与えたり、特別の優遇措置を与えることは、国が特定の信条、思想を教える教育機関を擁護、助成することになるので問題であろう。
首相及び首相夫人についても、「教育勅語」を唱えさせるような森友学園の保守的教育方針に心情的に賛同し、鼓舞していたことは明らかだ。一議員ではなく、憲法や関連法規、基本的な教育政策を遵守すべき地位にありながら、国民の目の届かない所でそのような教育の場を拡大しようとしていたわけであるので、国会、国民に対し、説明をすべきであろう。
(2017.3.31.)(All Rights Reserved.)