シリーズ本音トーク―国民酷使政策を強行する自・公連立政権!?
金融庁は、2019年6月3日、金融審議会がまとめた「人生100年時代を見据えた資産形成を促す報告書」公表した。これによると、「95歳まで生きるには年金収入だけでは足りず、夫婦で約2千万円の金融資産の取り崩しが必要になる」との試算を示すとともに、資産増加の方法として株式投資や信託投資という長期には不安定で元本を失うリスクの高い民間任せの方法を提示した。政府自体が、100年安心としてきた年金制度にダメ出しをし、また自・公政権が打ち出した「1億総活躍社会」が‘まぼろし~’であることを暴いた形だ。
その上、安倍首相(当時野党)が2012年11月、国会において民主党政権(当時野田首相)に対し、解散・総選挙と引き換えに「税と社会保障制度改革」を約束したが、2013年以来自・公連立政権では何も実行されていないどころか、改悪、国民酷使の方向に動いて来たことを国民に明らかにし、国会で国民に約束した約束を果たしていないことを指摘した格好だ。
1、改悪された年金制度と医療保険制度
2016年11月25日、自民・公明両党は、年金支給額の抑制などを目的とした年金制度改革法案を日本維新の会を除く野党が反対する中で衆議院で強行採決し成立した。
同法案は、年金支給額を従来の物価スライド制から賃金スライド制に変更するもので、産前産後期間の国民年金保険料の免除などの手直しも行われるが、
賃金が低下すると年金支給額も削減し、年金支給額を将来抑制することが最大大の制度的変更点だ。
現在、自・公政権は、2013年以来、インフレ率2%を目標とする金融財政政策を実施し、インフレによる景気浮揚を推進して来ているが、インフレ・ターゲットにより物価スライド制による年金支給額が増加する恐れがある。
他方現政権の下で、円安が進み、輸出産業を中心とする復調により大企業の賃金は若干上昇したものの、中小、零細企業の賃金にはそれ程変化はない一方、消費増税と日常物価の上昇により、実質所得は縮小ないし停滞状況にある。
従ってこの‘年金改革案’は、特に中小、零細企業就労者にとっては‘年金改悪法案’となる可能性が強い。もともと年金支給額の抑制を目的としているのでそうなることは明らかだ。
このような国民全体の福祉に関係する制度変更については、与党のみが独りよがりで強行に採択すれば良いというものではなく、与野党でより多くの国民の意見を汲み上げて制度設計することが望まれる。そもそも年金制度は、戦後長期に政権を維持していた自民党の下で形成され、そして今日では制度不安、年金不安が生じているので、同党は制度設計上の責任と年金破たんの責任を有していると言えよう。今回年金支給のルールの変更は、いわば後出しジャンケンをしているに等しい。現実的には野党の支持層に多いと見られる中小、零細企業就労者への影響が大きいので、野党とも十分協議をし、真に国民的な年金制度として行く努力が望まれる。こんなことをしていても、国民の年金不安は解消されない。逆に年金への安心感が低下し、年代を問わず消費を委縮させるであろう。
更に政府、与党は、高齢者の医療負担を引き上げる意向であり、年長者であっても高所得者については自己負担の引き上げは仕方がないのかもしれない。しかし現在、厚労省は、‘70歳以上の医療費の自己負担の月額上限について、住民税を払っている全ての者を対象に加え、自己負担を引き上げる方針と伝えられている。
厚労省は、既に‘年収約370万円以上の現役世代並みの所得層’については、医療費負担を‘現役並みの3割’に引き上げている。しかし、この‘年収約370万円以上の現役世代並みの所得層’の370万円の年収には、年金所得が含まれており、就労で得た所得だけではないので‘現役世代並みの所得’とは言えない。国税庁の民間給与実態調査では、2013年度ベースで少し古いが、日本の平均給与収入は、男性511万円、女性272万円で、日本人全体では平均414万円であり、それよりもさらに低い370万円として‘現役世代並みの所得’としている上、年金所得を含めない所得では270万円内外の実質所得でしかない老齢者に‘現役並み’の‘3割’の負担をさせていることになる。老齢者に対し過酷な年収基準を付している。現自・公政権は、‘現役世代並み’と称する限界的な所得がある人に加え、年収約370万円未満でも住民税を支払っている約1200万人にも‘現役並みの3割’の自己負担を課そうとしている。老齢者からささやかな楽しみを奪い、過酷な負担を強いるものである。実質的には年金支給額の減額、天引きに等しい。これでは福祉政策ではなくて、国民酷使政策と言えないだろうか。
自民・公明連立政権は、民主党政権時代に「社会保障と税制の一体改革」に同意し、また議員定数の実質的削減にも同意し、2011年12月の総選挙で勝利し政権の座に返り咲いた。しかしいずれについても進んでいないばかりか、消費増税を実施し国民に負担を求めた一方、社会保障については反福祉の福祉切り、国民酷使政策に向かっている。
2、国民に負担のみを負わせた消費増税
そもそも社会保障の改善のために消費増税を実施したとされているので、国民の負担が増加することは仕方ないが、年金他の社会保障サービスの向上、充実が図られるのであればという期待感が国民サイドにあった。しかしその期待は見事に裏切られている。自・公連立政権の下では、受益者へのサービスや給付額の改善は行わず、逆に個別に利用者、受給者の「負担増・給付縮小」を強いており、国民を騙しているに等しいのではないだろうか。
年金が破たん状態になっており、また医療などの社会福祉支出が財政を圧迫し、今後更に財政が厳しくなることが予想されるのであれば、政府がまずやらなくてはならないことは、抜本的な経費節減、無駄の削減ではないだろうか。どの事業でも、業績が振るわず、赤字が増加し破たん状態になれば、まず人件費、管理費などのコスト削減を行うのが常識だ。
3、少子化、人口減に不可欠な人件費を含む行政管理費、議会歳費の削減
国民に更なる負担を強い、年金やその他社会保障サービスの抑制をする前に、両院の議員定数の大幅削減や議員歳費・諸手当の引き下げ、政党補助金や政務調査費の廃止などを実施して、国民に誠意を示すべきであろう。また独立行政法人や特殊法人を含む公務員・準公務員の新規採用の段階的な削減など、定員の削減や給与の引き下げを実施すべきであろう。定員削減が出来ないのであれば、3~5年間で人件費を含む行政管理費の3割削減を実施することを真剣に検討して欲しいものだ。定員と給与のいずれを削減するかは各省庁に選択させればよい。人件費を除く管理費全般についても、公務員宿舎他国有財産の売却などにより、2020年度までに総額で4割程度を段階的に削減することをまず実施すべきではないのか。事業経費については削減できないところは維持するということで良いが、ニーズのある事業は、民間事業に転換することにより維持出来る。国民のニーズのある事業であれば、事業化を望む企業家は多いであろう。
この点は地方公共団体においても検討、実施されるべきであろう。2040年までに、全国1,748の市区町村の約3割が消滅するとの予測もあり、多くの地方の人口減は深刻で現実味がある。中央にしても地方にしても、少子高齢化対策の上で財政の節減が不可欠な対策と言えよう。
自・公連立与党は衆参両院で多数を占めており、抜本的な経費節減、無駄の削減を断行できる立場にありながら、過去3年半、その面での実績は見られない。政府、与党や官僚がそれを行わないのであれば、国民としては10%への再増税が実施されれば、節約と節税を図るしかなさそうだ。
(2016.12.10. 2019年6.11.一部改訂)
金融庁は、2019年6月3日、金融審議会がまとめた「人生100年時代を見据えた資産形成を促す報告書」公表した。これによると、「95歳まで生きるには年金収入だけでは足りず、夫婦で約2千万円の金融資産の取り崩しが必要になる」との試算を示すとともに、資産増加の方法として株式投資や信託投資という長期には不安定で元本を失うリスクの高い民間任せの方法を提示した。政府自体が、100年安心としてきた年金制度にダメ出しをし、また自・公政権が打ち出した「1億総活躍社会」が‘まぼろし~’であることを暴いた形だ。
その上、安倍首相(当時野党)が2012年11月、国会において民主党政権(当時野田首相)に対し、解散・総選挙と引き換えに「税と社会保障制度改革」を約束したが、2013年以来自・公連立政権では何も実行されていないどころか、改悪、国民酷使の方向に動いて来たことを国民に明らかにし、国会で国民に約束した約束を果たしていないことを指摘した格好だ。
1、改悪された年金制度と医療保険制度
2016年11月25日、自民・公明両党は、年金支給額の抑制などを目的とした年金制度改革法案を日本維新の会を除く野党が反対する中で衆議院で強行採決し成立した。
同法案は、年金支給額を従来の物価スライド制から賃金スライド制に変更するもので、産前産後期間の国民年金保険料の免除などの手直しも行われるが、
賃金が低下すると年金支給額も削減し、年金支給額を将来抑制することが最大大の制度的変更点だ。
現在、自・公政権は、2013年以来、インフレ率2%を目標とする金融財政政策を実施し、インフレによる景気浮揚を推進して来ているが、インフレ・ターゲットにより物価スライド制による年金支給額が増加する恐れがある。
他方現政権の下で、円安が進み、輸出産業を中心とする復調により大企業の賃金は若干上昇したものの、中小、零細企業の賃金にはそれ程変化はない一方、消費増税と日常物価の上昇により、実質所得は縮小ないし停滞状況にある。
従ってこの‘年金改革案’は、特に中小、零細企業就労者にとっては‘年金改悪法案’となる可能性が強い。もともと年金支給額の抑制を目的としているのでそうなることは明らかだ。
このような国民全体の福祉に関係する制度変更については、与党のみが独りよがりで強行に採択すれば良いというものではなく、与野党でより多くの国民の意見を汲み上げて制度設計することが望まれる。そもそも年金制度は、戦後長期に政権を維持していた自民党の下で形成され、そして今日では制度不安、年金不安が生じているので、同党は制度設計上の責任と年金破たんの責任を有していると言えよう。今回年金支給のルールの変更は、いわば後出しジャンケンをしているに等しい。現実的には野党の支持層に多いと見られる中小、零細企業就労者への影響が大きいので、野党とも十分協議をし、真に国民的な年金制度として行く努力が望まれる。こんなことをしていても、国民の年金不安は解消されない。逆に年金への安心感が低下し、年代を問わず消費を委縮させるであろう。
更に政府、与党は、高齢者の医療負担を引き上げる意向であり、年長者であっても高所得者については自己負担の引き上げは仕方がないのかもしれない。しかし現在、厚労省は、‘70歳以上の医療費の自己負担の月額上限について、住民税を払っている全ての者を対象に加え、自己負担を引き上げる方針と伝えられている。
厚労省は、既に‘年収約370万円以上の現役世代並みの所得層’については、医療費負担を‘現役並みの3割’に引き上げている。しかし、この‘年収約370万円以上の現役世代並みの所得層’の370万円の年収には、年金所得が含まれており、就労で得た所得だけではないので‘現役世代並みの所得’とは言えない。国税庁の民間給与実態調査では、2013年度ベースで少し古いが、日本の平均給与収入は、男性511万円、女性272万円で、日本人全体では平均414万円であり、それよりもさらに低い370万円として‘現役世代並みの所得’としている上、年金所得を含めない所得では270万円内外の実質所得でしかない老齢者に‘現役並み’の‘3割’の負担をさせていることになる。老齢者に対し過酷な年収基準を付している。現自・公政権は、‘現役世代並み’と称する限界的な所得がある人に加え、年収約370万円未満でも住民税を支払っている約1200万人にも‘現役並みの3割’の自己負担を課そうとしている。老齢者からささやかな楽しみを奪い、過酷な負担を強いるものである。実質的には年金支給額の減額、天引きに等しい。これでは福祉政策ではなくて、国民酷使政策と言えないだろうか。
自民・公明連立政権は、民主党政権時代に「社会保障と税制の一体改革」に同意し、また議員定数の実質的削減にも同意し、2011年12月の総選挙で勝利し政権の座に返り咲いた。しかしいずれについても進んでいないばかりか、消費増税を実施し国民に負担を求めた一方、社会保障については反福祉の福祉切り、国民酷使政策に向かっている。
2、国民に負担のみを負わせた消費増税
そもそも社会保障の改善のために消費増税を実施したとされているので、国民の負担が増加することは仕方ないが、年金他の社会保障サービスの向上、充実が図られるのであればという期待感が国民サイドにあった。しかしその期待は見事に裏切られている。自・公連立政権の下では、受益者へのサービスや給付額の改善は行わず、逆に個別に利用者、受給者の「負担増・給付縮小」を強いており、国民を騙しているに等しいのではないだろうか。
年金が破たん状態になっており、また医療などの社会福祉支出が財政を圧迫し、今後更に財政が厳しくなることが予想されるのであれば、政府がまずやらなくてはならないことは、抜本的な経費節減、無駄の削減ではないだろうか。どの事業でも、業績が振るわず、赤字が増加し破たん状態になれば、まず人件費、管理費などのコスト削減を行うのが常識だ。
3、少子化、人口減に不可欠な人件費を含む行政管理費、議会歳費の削減
国民に更なる負担を強い、年金やその他社会保障サービスの抑制をする前に、両院の議員定数の大幅削減や議員歳費・諸手当の引き下げ、政党補助金や政務調査費の廃止などを実施して、国民に誠意を示すべきであろう。また独立行政法人や特殊法人を含む公務員・準公務員の新規採用の段階的な削減など、定員の削減や給与の引き下げを実施すべきであろう。定員削減が出来ないのであれば、3~5年間で人件費を含む行政管理費の3割削減を実施することを真剣に検討して欲しいものだ。定員と給与のいずれを削減するかは各省庁に選択させればよい。人件費を除く管理費全般についても、公務員宿舎他国有財産の売却などにより、2020年度までに総額で4割程度を段階的に削減することをまず実施すべきではないのか。事業経費については削減できないところは維持するということで良いが、ニーズのある事業は、民間事業に転換することにより維持出来る。国民のニーズのある事業であれば、事業化を望む企業家は多いであろう。
この点は地方公共団体においても検討、実施されるべきであろう。2040年までに、全国1,748の市区町村の約3割が消滅するとの予測もあり、多くの地方の人口減は深刻で現実味がある。中央にしても地方にしても、少子高齢化対策の上で財政の節減が不可欠な対策と言えよう。
自・公連立与党は衆参両院で多数を占めており、抜本的な経費節減、無駄の削減を断行できる立場にありながら、過去3年半、その面での実績は見られない。政府、与党や官僚がそれを行わないのであれば、国民としては10%への再増税が実施されれば、節約と節税を図るしかなさそうだ。
(2016.12.10. 2019年6.11.一部改訂)