プチコミ情報局

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「国葬」に法令上の根拠は無い

2022-08-21 | Weblog
シリーズ本音トークー「国葬」に法令上の根拠は無い
 <はじめに> 政府は、故安倍議員(元首相)の「国葬の儀」を内閣が決めるとしている。その法的根拠として内閣府設置法(第4条第3項第33号)を挙げ、「国の儀式並びに内閣の行う儀式及び行事に関する事務に関すること(他省の所掌を除く)」と規定してあるとしている。これは単に内閣府は、内閣で決めた儀式の事務を致しますとしているだけで、内閣が国葬を決められるとは一切言っていない。内閣法制局は、あとは内閣で故安倍議員(元首相)の国葬の儀を行うことを決めて下さいと言っているようだ。しかし全額国民の税金を使う以上、「国葬」を内閣が決定して良いという法的根拠が必要だろう。(2022.7.20.追記)

 岸田首相は、故安倍晋三元首相の国葬を行うことを明らかにしたが、9月に武道館で行われるようだ。
 同元首相の死を悼みご冥福を祈ると共に、同夫人に心からのお悔やみを申し上げたい。しかし増上寺で葬儀は行われ1,000名内外の関係者も参列し、別途一般国民向けの献花台が設けられ多くの国民が献花し涙した。
 悼む気持ちに変わりは無いが、今更国葬と言われても、一体あの国民の涙は何だったのだろう。「国葬」となると全額政府予算で国民の税金が使われることとなるが、国葬について法令上の根拠はない。旧帝国憲法のもとで大正天皇により「国葬令」が出されたが、現行の新憲法となった後、1947年12月に失効し、それに代わる法令はない。
 法令上の根拠のない「国葬」を内閣だけで決定することは出来ないと見られ、また法令上の根拠無く税金を使ってよいのだろうか。少なくても国会の承認が必要と思われるのだが。国葬となるとコンセササス承認が望ましい。
 戦後、1967年に故吉田茂元首相に例外的に国葬が挙行された。吉田首相は1953年のサンフランシスコ平和条約などを実現し、戦後の米国を中心とする米国による占領統治が終わり、新憲法の下で独立国として国際社会に復帰した出発点となった。例外的な措置も理解できる。
 安倍元首相と業績を比較するわけではないが、同元首相は在任期間が最長とされるものの、その間の政策においてアベノミクスは成功とは言えず、家計所得も年金も減少し、金利はマイナスとなり公的債務が1,200兆円に膨れ上がり、そのレガシーは現在物価の高騰と円安として現れている。外交面では精力的に外国訪問され、日米関係は促進されたが、北朝鮮拉致問題、北方領土問題などは何ら前進せず、靖国参拝問題などで中国と韓国の関係悪化を招くなど、評価は分かれる。他方同元首相は、森友学園への国有地安値払い下げ問題で同元首相夫妻の名が記載されている公文書書き換えと書き換えを指示された担当公務員が自殺しており、民事訴訟では公文書書き換えが認定されている。また「桜を見る会」への多数の地元有権者の招待と前夜祭での参加費肩代わり問題などに関係し、各種の訴訟が提起されている。卓越した政治家だが、評価が分かれても仕方がないように見える。(2022.7.15.)
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企業の内部留保が過去最大でも賃金上がらず!! (再掲)

2022-08-21 | Weblog
シリーズ本音トーク―企業の内部留保が過去最大でも賃金上がらず!! (再掲)
<はじめに>2022年になってコロナ禍での社会・経済活動の回復がみられ、平均賃金は2.1%増、また最低賃金も増額改定がなされる等、一定の改善がなされたことは評価出来る。しかし消費者物価は4、5月以来日銀のインフレ・ターゲットを越え、2.3%水準となっており、賃金、家計所得は未だ低迷している一方、日銀の大規模金融緩和策、マイナし金利は維持され、円安傾向と相まって物価の上昇が家計を圧迫している構図は変わっていない。今後、物価高騰が継続することになると、円安による貿易赤字が継続すると共に、国内消費は抑制され、インフレ下の景気低迷スタグフレーションに陥る可能性もあり、きめの細かい経済金融政策と企業の対応が望まれる。このような状況から本稿を再掲する。(2022/08/21)

 就労者の実質所得が低下し、実質家計所得が減少する中、企業が内部余剰をため込み続けている。
 財務省は、9月2日、2018年度の法人企業統計で、企業の内部留保(利益剰余金)が7年連続で過去最大を更新したと発表した。金融業、保険業を除く全産業ベースで、17年度比3.7%増、総剰余金463.1兆円を記録した。分野別では、製造業の内部留保が6.7%増となり、潤沢な資金を蓄えている。
 2011年3月の東日本大震災で、輸出をけん引していた製造業が打撃を受けた上、オバマ政権の下で対中国元でドル安誘導したことにつられて円高が進み、輸出が停滞した。行き過ぎた円高は、2012年10月頃より円安方向に動いていたが、2013年1月、安倍自・公連立政権が発足したのに伴い、「異次元」の金融緩和による円安により、輸出を中心とする製造業が回復した時期と一致する。しかもこの間、2014年4月に消費税が8%に増額され、消費者が消費抑制に向かっていた時期に、企業は内部余剰を積み上げていたことになる。
 1、日本の国民総所得にほぼ相当する企業の内部留保は過剰!
 企業の内部留保は、企業の総収益から原材料費、機材費や給与、役員報酬、配当、税金などを引いた利益剰余金であり、企業が自由に使える資金である。その企業内部留保だけで日本の国民総所得に近い水準を継続しているのはいかにも過剰だ。家計所得が低迷する中、企業の一人勝ちと言える。また政府も消費増税により税収が増えている。
 企業としても、事業を継続、発展させるために研究開発や新規投資を行う資金を留保して置くことは不可欠であろうし、為替変動や景気変動に備えて若干の積み立てをして置くことは必要であろう。しかし就労者の実質所得が低下し、実質家計所得が減少し、消費増税で国民負担が増加している中で、企業のみが内部余剰をため込み続け、一人勝ち状態であることは、経営者の保身、社会責任意識の欠如と言えないだろうか。

 2、企業経営者は企業の存続以外に株主及び従業員に応分の責任を負う
 企業経営者は企業或いは事業が継続できれば良いというものではない。資本面で株主、生産やサービス提供において従業員、更に提供した製品やサービスの面で消費者に対し責任がある。
 従って、消費者に良い製品やサービスを提供すると共に、株主、従業員・役員、及び企業の内部留保への利益配分を公正に行うべきであろう。現在、内部留保比率を下げつつ、給与・役員報酬と配当へ今まで以上に増額されることが期待される。
 特に従業員給与については、2008年9月の米国発のリーマンショックに伴う日本経済への打撃を凌ぐため、従業員を派遣社員等の非正規社員に切り替え、解雇しやすいと同時に正規社員以下に賃金を抑え安くしたことが、平均給与所得の低迷、利益余剰金の増加に繋がっていると見られる。
 日本は、世界第3位の経済大国でありながら、労働生産性は欧米諸国に比し、非常に低いことが知られている。それは、単位時間当たりの賃金・報酬が相対的に低いからに他ならない。利益をもっと賃金や役員報酬に配分し、人をもっと大切にすべきであろう。危機を凌いだら、その間苦労をした者を適正に処遇するのも企業の責任であろう。
 また日本の労働生産性が低いのは、例えば元号と西暦という2つの年号の使用が商取引や一般生活の分野にまで残っていることに象徴されるように、古い風習や規則・法令・通達など政府による中央統制経済的な制度・規則が多く残っていることにある。これらのほとんどが、一本化するなり廃止するなりすることができるものであるので、諸制度・規則の簡素化、廃止が不可欠と言える。5年に1度程度、定期的に諸制度の大掃除が必要だ。それがなければ労働生産性は改善しない。

 3、必要となっている企業の社会的貢献意識の回復
 1990年代半ばよりのバブル経済の崩壊、そして2008年9月のリーマンショック以来、企業の社会的貢献意識は後退し、利益剰余金が7年連続で過去最高を記録している今日でも後退したままである。
 企業の社会的貢献意識の改善が待たれる。それは経営陣の責任であろう。
(2019.9.12.)
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日銀の金融緩和策、底が抜けた危険な運営!(再掲)

2022-08-21 | Weblog
日銀の金融緩和策、底が抜けた危険な運営!(再掲)
<はじめに>日銀は、2013年1月からの「異次元の金融緩和」を実施しているが、安倍政権が管、岸田政権に変わっても終って、9年間に亘り大盤振る舞いの金融緩和を継続している。欧米各国は、コロナ禍により後退している経済社会活動の浮揚を図っており、消費が戻り始めている一方、人手不足等により供給不足により一部物資が値上がりしている上、石油価格が上昇しており、インフレ圧力が高まっているので、緩やかな金利引き上げを含む金融引き締めに転換している。
日本においても、石油価格の上昇や円安による輸入物資の値上がり、電気料金の引き上げ等により、家計所得が減少している中で1.1%の物価上昇を招いている。日銀は、この状況を「良い円安」、「良い物価上昇」などとしているが、膨大な信用を長期に供給しているにも拘わらず、家計所得は増加していない。日銀は産業優先であり、家計や消費者は重視していないのであろうが、9年間もの長期に亘り一本調子で金融緩和を継続し、所得が上昇しない中での2%のインフレターゲットは、更に家計を圧迫し、消費節約により家計を守るしかない状況を理解していないのであろうか。2%のインフレターゲットは、家計を圧迫するばかりであり、もはや賞味期限切れと言えよう。(2022.1.19.補足)

 日本銀行は、2020年6月16日、金融政策決定会合において、「大規模な金融緩和政策の維持」を決定した。日銀は、安倍自・公政権において、2013年1月以来大幅な金融緩和策を継続してきたが、新型コロナウイルス対応として3―5月に一層の緩和策を導入し、更に企業への資金繰り支援として総枠を75兆円から110兆円に大幅に引き上げた。
 資金供給の主要なものは、市中(銀行や信託投資会社等)からの「株価指数連動型上場投資信託(ETF)」の買い入れであるが、既に2013年から大規模な買い入れを実施し、市中に資金を放出してきており、それが株価や信託投資証券の価格を押し上げて来た。流動性過多、金余りの中で、資金供給の総枠110兆円に引き上げた。それがコロナ大不況の中で、意味の分からない株高に繋がっている。
 日銀は、金利もマイナス金利としており、大幅な量的緩和も7年間続け、実体経済の伴わない金余りの中での大幅緩和であり、金利面でも量的にも節度を失い、底が抜けた金融緩和政策といえよう。
 日本経済は、世界経済の大幅低迷の中で、大幅な後退が予想されており、その中で実体経済に裏打ちされない形で株価と信託証券などの価格が人為的につり上げられている形であり、危険な状態となっている。何かのきっかけで、大幅に下落する恐れがある。個人投資家としては非常に危険な状態にあることを認識する必要がありそうだ。
 日銀総裁は、「投資家のリスクテイクの動きが弱い」などとコメントしているようであるが、実物経済を理解していないか、その知識はあるが善意の投資家の損失など気にも掛けていない発言としか考えられない。まともな経済人であれば、大損が予想される中で投資はしない。(2020.6.18.、2022.1.19.冒頭補足)
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世界の公的債務激増、世界経済への暗雲

2022-08-21 | Weblog
シリーズ本音トークー世界の公的債務激増、世界経済への暗雲
 世界通貨基金(IMF)の報告書によると、2020年の先進工業諸国(日米欧など27か国)の国民総生産(GDP)に対する政府の債務残高の比率が、前年よりも23.5ポイント上昇し、128.2%になるとしている。第2次世界大戦直後の1946年に記録した124.1%を上回る。
 同報告書によると、世界各国の武漢発コロナウイルス禍に対応する経済対策の総額は、少なくとも11兆ドル(約1,170兆円)に達する。財政出動(減税を含む)の対GDP比率では、米国が12.3%、次いで日本(11.3%)、ドイツ(9.4%)、豪州(8.8%)、ブラジル(6.5%)、英国(6.2%)の順となっている。
武漢型コロナウイルス禍は安全なワクチンや効果的な治療薬が実用化されるまでは継続すると見られ、米国初め多くの国が追加的経済対策を検討、実施する可能性が高いので、各国の公的債務残高は更に積み上がる可能性が高い。IMFは一方で未だ危機を脱したわけではなく財政措置は必要とし、感染拡大の収束が見通せるまでは景気下支え策が不可欠としているが、際限なく公的債務残高を増やすことは世界経済にとり危険であり、難しい舵取りが必要になっている。
 1、際限ない公的債務の積み上げは国民への負担への転嫁となり懸念大
 問題は、こうした政府支出が税収から賄われている限り問題はないが、国・
公債などによる政府の借金により捻出される場合が問題となる。
 日本の場合、公的債務総額は既に1,114兆円を超え、国民総生産の2.4年分を超える膨大な借金を抱えている。更に2020年度予算では、コロナ禍対策で2度の補正予算を組み、それだけで約25兆円規模の国債を発行し、本予算を含め何と約180兆円にも及ぶ戦後最大の国債を発行し、世界の借金大国の座を不動のものとしている。
 世論調査では、財界や自・公与党支持層を中心として、これまでの経済政策の継続を希望する向きが強いようだが、それは国民総生産の2年半分を超える政府の借金で賄われており、目先の支持は得られるだろうが、いずれ国民が税や高インフレなどにより負担を強いられるもことになる。国民はそれを十分認識する必要があろう。
 2010年1月にギリシャで従来よりの放漫財政が表面化し、債務残高も国内総生産の113%に達していることが明るみに出るなど、経済危機に陥り、EUから緊縮財政が求められた。結局、一番困るのは国民だ。武漢発のコロナの感染拡大後、既にレバノンやアルゼンチンが債務不履行に陥るなど、世界各国で財政危機に陥り始めている。財政の規律、財政の健全化に留意する必要がある。

 2、IMFが語っていない膨大な信用増発による世界インフレの危険
 更に、IMFの報告書に今回書かれていないことがある。それは中央銀行等による信用の増発だ。アベノミクスでは、中央銀行による「異次元の金融緩和」が行われ、下がり始めていた円安が更に円安となり、輸出やインバウンドの外国人観光客などで関連産業が潤い、株価も上昇し、一定の経済効果があったと言えよう。金融緩和は2008年のリーマンショック後、継続して取られてきた政策で、アベノミクスで金融が更に緩和され、7年8ヶ月に亘り一本調子で金融緩和が維持されてきた。金利もマイナス金利となったままだ。更に1月以来のコロナ禍対策の一環で金融緩和が一層強化され、もはやタガが外れ、無制限に膨大な信用供給が行われている。株価はコロナ禍以前の水準を取り戻し、一部の機関投資家や株屋、大株主などにだぶだぶと金が溜まっている。他方、実体経済は年率マイナス30%前後が予想され、財政支出と金融緩和の恩恵を受けている企業を除き、ほとんどの企業が大幅な赤字予想となっている。航空、観光、外食産業などは減収にあえいでいる。信用が増発されても金の行き場がないので株やゴールド、骨董などに流れるのも分からないではない。
そんなことが長続きする訳もないし、一部の機関投資家や株屋、大株主などにだぶだぶと金がため込まれているのも問題視されそうだ。またハイパーインフレの危険性もあり、銀行預金を含む金融資産は紙くず同然になる恐れがある。国債なども紙くず同然になろう。

 3、財政規律、金融規律の回復が不可欠
 本来であれば、安倍自・公連立政権の間に財政・金融規律を回復し、財政の健全化と金融の正常化が図られるべきであったのであろう。自・公連立政権は国会で圧倒的な多数を保ち、権力を維持してきたので、それが出来たはずだ。一般家庭でも、将来の困難に備え、貯蓄をし、節約をする。それを行っていた人はコロナ禍もなんとかしのげる。国家レベルでは全国民の生活のためであるので、財政・金融規律を回復し、財政の健全化と金融の正常化は不可欠であったのだろう。
 もっとも、国民が選んだ政権が行った政策とも言えるのだが、果たして国民に政策の意図や副作用の危険性、国民に戻ってくる負担などについて公正に伝えられていたか疑問である。
 最近のマスコミの報道や論評などはどうも政権への忖度が強く、企業利益優先で短絡的で無気力に響き、マスコミ力が低下しているように映る。知識人と言われる国・公立の教授等も所詮教職に従事する公務員であるので自然に政府寄りであり、また専門家やコメンテーターなども仕事優先で世論迎合型になるのも仕方が無いのかもしれない。情報番組にお笑い系のコメンテーターが多くなっているが、視聴率稼ぎでしかないのであろう。だが1局や2局であればまだしも、NHKを含むほとんど全局でお笑い系が登場しているので、笑えない。民間研究機関に至っては、ほとんど全てが企業利益優先で、公正な研究機関としての役割を果たしているとは思えない。従って、多くの国民は一定方向の情報や分析、政策の選択肢しか見聞きすることはない状態になっているのではないか。
 それぞれの報道機関が特定政権や政党を支持、擁護する形で報道することは企業体である以上仕方ないことであるが、論調を国民に押しつけるのではなく、対立する意見や選択肢を提示して、国民に選ばせる姿勢が欲しいものだ。それがマスコミ力というものであろう。マスコミ力の低下は、民主主義の発展を妨げる。(2020.9.10.)
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マイナンバー、官庁のためのユアーナンバーにしてはならない! (追補版)

2022-08-21 | Weblog
マイナンバー、官庁のためのユアーナンバーにしてはならない! (追補版)
 <はじめに>2021年11月10日、新内閣発足に伴い、与党自民党と公明党がマイナンバー普及のため、総額2万円のポイントをそれぞれの段階で付与することで基本合意した。マイナンバーカード実施から6年近くになるが、登録率は未だに40%程度でしかない。
 その普及のため、2万円のポイント付与をこの時点で行うことは、この制度自体への国民の理解が進んでおらず、広範囲の個人情報の国家把握、相続税を含む徴税強化、情報流出と悪用、及び煩雑な操作・行政事務などが危惧されていることを如実に示している。行政当局は、その普及のため更に税金を使うのでは無く、税申告に関係する所得や個人財産を含む広範囲な個人情報を包含するマイナンバーは、制度設計上の誤りであり、国民に理解されていないことをただちに認め、適用範囲を社会福祉関係に限定し、国民の理解を得やすいよう、簡素化することが望ましい。このまま税金を使って奨励・普及することは2重の不効率であると共に、何時起こるかも分からない大災害の時の安否確認や救済・支援には中途半端にしか役だたないこととなるので、早急な対応が必要となっている。大災害は待ってはくれない。
 
 コロナ禍対策のため実施された一律10万円給付が、4月30日の第1次補正予算成立を受けて実施に移されたが、一律給付が最も早く配賦できるとの触れ込みにも拘わらず、日時を費やし、7月になってようやく見通しがついた。この配賦の遅れの原因の1つとしてマイナンバーの普及率の低さ(約16%)に加え、申請システム設計の複雑性などが指摘された。そのため総務省を中心として、銀行口座登録の義務化や個々人の医療関係情報の記載などによる適用分野の拡大などが検討されている。
  1、一律10万円給付の遅れはマイナンバー制自体の問題ではない
マイナンバーの普及率は、実施から4年半以上経過しているのに16%程度の低率に止まっている。従って、仮にマイナンバーの利用により迅速に給付できたとしても、全体の16%程度しかカバーできなかったはずである。残りの84%が問題だったということになるが、実際はマイナンバーも機能しなかったことが、マイナンバーに労力が集中され、それが煩雑で機能しなかったため、郵便等への対応が遅れた事による。マイナンバーが複雑で国民に受け入れられていないことが明るみに出たと言えよう。
 米国は、大統領選挙の年でも有り、日本に先立ち一律給付を実施したが、ソシアルセキュリテイ・ナンバーに基づき、「小切手」が直接各個人に送られている。ソシアルセキュリテイ・ナンバーは、米国民や米国で働く者が誰でも加入できるもので、これがないと将来的な年金と公的機関からの社会保障が得られないのでほとんどの人が所持している。
 恐らく、日本も郵送等により実施していたら、もう少し円滑であった可能性がある。行政が普及率の低いマイナンバーに固執したことが一律給付を阻害した形となった。行政が、マイナンバーの普及率が16%でしかないことへの認識不足とこれに固執するミスジャッジを認識することが必要だろう。

2、国民のためではないマイナンバー!
 政府(総務省)は、一律給付金の配賦のもたつきへの反省から、銀行口座記載の義務化や、医療診療関係情報の記載などの分野の拡大などを検討している。同時に普及促進のため、新加入者がキャッシュレス決済のカード等を登録するとポイント付与(マイナポイント)とテレビなどでの普及を行っている。
 政府の認識が大分ずれているのではないだろうか。実施後4年半以上経って普及率が停滞しているのは、国民側が、メリットを余り感じない一方、機微な個人情報の流出や国家管理の強化を恐れているからであろう。政府側がまずこの点を理解しない限り、改善、改革などと行ってみても、国民の財産把握を含めて国家管理し易くする所詮政府寄りのもので、システムが複雑化し、関係官庁には好都合であろうが、国民にとってはほとんどメリットとはならないものになってしまう恐れがある。関係官庁はまず、国民が不安、不要と感じている諸点をそぎ落とし、国民に不安がないようにすることが求められる。
 マイナンバーには既に、住所や本籍、家族構成、年金、健康保険や一部銀行口座・カード情報、所得、税金関連情報等が入っている。これだけでも外部に流失し、犯罪グループの手に入ったら、大きな被害を受ける可能性がある。マイナンバーは法律上加入「任意」としているが、税の申告に当たっては記入事項とされ、また銀行口座や証券投資の際には執拗にマイナンバーを執拗に照会してくるので、登録した人は納税申告関係や銀行口座、不動産を含む資産情報など、個人にとっては大変重要な情報が記録されることになる。
 現状でも、マイナンバーを日常的な支払いやポイント記録などに使用すると、流失や紛失の恐れが高くなるので、持ち歩くことは大変危険であろう。
 更に総務省は、決済サービスのためキャッシュレス使用を登録するとポイントが付くマイナポイントが9月1日より実施されている。そのためにテレビ広告やポイント付与のため、税金を使うということであり、筋が違う。国民がマイナンバーに利点を感じれば加入するだろう。総務省がポイント付与をしてまで普及を図っている事実こそが、国民がマイナンバーに利点を感じていない証拠である。いずれにしても納税関系では、マイナンバー保持者が亡くなると、銀行口座、証券、不動産等があっというまに凍結され、残された者は一円も自由にならず、銀行口座については少額の引き出しは可能になったが、諸費用捻出に苦労することにもなる。
 また医療・診療情報も入れることが検討されているが、医療・診療情報は非常にプライベートなもので、他人に見られるのは気が進まない。ましてや政治家や入社試験、管理職候補などについては、医療・診療情報が万一にでも外部に流出すると昇格・昇進等にとって致命傷になる恐れがある。

 3、現在のカードは官庁のためのユアーナンバーでしかない!
しかし現在のマイナンバーは、税金関係の役割が強く、投網のごとく税申告者を把握し、確実に徴税するために好都合になっている。5年に1度、国勢調査が実施されているが、国勢調査で記載された個人情報は国税庁、警察・公安には明らかにされず、徴税や犯罪調査には利用されないことになっている。国民の協力を得やすくするためだ。
現在のマイナンバーは、国税庁(税金)を含め全ての行政分野が対象で、対象で所得、年金・医療保険、銀行口座、証券、不動産などが全ての個人情報が記載される。国民には年金掛け金納付、健康保険料納付や納税義務があることは分かっているが、このように網羅的に資産状況が国家に把握され、義務の履行が管理、監視されることになると、国民の国家管理の色彩が強くなる。その上情報流失の危険性がある。少なくても国勢調査同様のものとし、国民の生命、安全を守ること中心とする個人の存在基盤と福祉分野に目的を絞り、抜本的に簡素化することが望ましい。
また情報管理のため各種の防護措置が講じられてはいるが、それは逆に操作を複雑にしている。1つ入力を間違えると前に進められなくなり、複数回誤入力すると凍結されてしまい、解除に時間と労力が掛り、悩まされることになる。結局は、利用者の手間や負担を増やし、行政側を楽にするシステムでしかない。その意味でも現在のマイナンバーは、行政のためのユアーナンバーでしかない。
関係官庁の担当官や専門家が集まり、官庁側に必要な個人情報を網羅し、その上に本人確認やその他のなりすまし排除のための防護措置を掛けるのだから、普通人には理解困難な緻密で複雑な制度設計、システムとなる。それでなくても各種申請書は複雑で、馴れている人でもなければ記載に手間取る。それがインターネットとなると、各種のチェック措置が加わるので、一般人には操作が複雑で難しくなる。書類によるアナログ世代にとってはなおさらのことだ。

4、国民を守るためのマイナンバー制度に限定すべし
 国民の年金・医療保険などの厚生福祉、緊急時の安全確認など、国民の基本的な権利と行政手続きの簡素化など、国民の福利に絞ったナンバーであれば、国民もこぞって加入し易くなろう。それを支えるのが国や地方自治体の業務であり、義務ともなる。またカバーする分野を絞ることにより、利用者側は普段持ち歩く必要も、情報流失の際も影響が限定され、犯罪グループへの露出度を少なく出来る。それでも米国のソシアルセキュリテイ・ナンバーよりも複雑だが、国民の福利にとって心強いものとなる。そのような改革が望まれる。

5、行政のIT化促進は行政の更なる肥大化、複雑化の恐れ
 IT化は、情報を多量に処理できるので、仕事をどんどん増やし、行政の肥大化を呼ぶ恐れが強く、万能ではない。
(1) IT化とともに、旧来事務の廃止、整理を行うことが不可欠であろう。
同時に、制度設計の簡素化、単純化に常に留意しなくてはならない。
 デジタル化は、一見効率的に見えるが、そのためには膨大な情報入力作業に加え、情報の迅速な更新が必要であり、必ずしも省力化には繋がらない。情報が常に更新されないと適正な情報把握も対応も難しい。国民年金については、ペーパーからデジタルに移行が図られた際に膨大な記録ミスやご記載があり、多くの年金が消えた事例や、年金情報の漏出や犯罪への利用なども見られている。
 行政当局は、情報の入力、更新を直接できないので、外部委託し、その業者は国内外の会社に再委託するなどが通例となっている。そのためには追加的な予算が必要となり、国民の負担となる。
(2)ITにより一律のサービスを確保出来るが、プログラムから少しでも外れるとエラーとなり、凍結してしまうなど、融通が利かず、非常に硬直的、事務的となる。
(3)保秘やデジタル攻撃に留意する必要がある。そのためにパスワード等を加えると、更にシステムが複雑になる。セキュリテイを強化すればするほど、煩雑となり、エラー、凍結なども多くなり、利用者の負担が大きくなる。
(4)公文書、公的文書類の保存・管理の問題が深刻だ。森友学園問題での公文書改ざんや自衛隊の日報問題、或いは「桜を見る会」などでは、コンピューターに蓄積された記録でさえ廃棄されたと報告された。そのようなことはほぼあり得ないが、問題が生じた時にすべての関連コンピューターを押さえ、調査できるようにするなど、文書管理が非常に難しくなるので注意が必要だろう。重要な文書は、アナログの紙で保存する必要もあろう。 

6 、ITの脆弱性
 更にIT化により電気と電波への依存が大きくなり、電気や電波という生活インフラがダウンするとITは動かなくなる。大規模災害が起こり、基礎的生活インフラが破壊されると、麻痺状態になることはこれまでも経験している。またシステム管理・維持と共に、サイバーテロ等への備えも必要となり、それに問題が生じるとITは作用しなくなる。どんなにセキュリテイを強化しても、それはいずれ誰かに破られる。これらのITの脆弱性を認識する必要がありそうだ。
 従ってITへの過度の依存は国民生活全般を麻痺させる可能性を高めることを十分認識する必要がある。
 マイナンバーカードの安全と普及のためには、機能を国民の本籍と住所に基づく福利厚生に限定し、機能を分散することが不可欠だ。
 (2020.9.1.&9.19.及び2022.2.15.加筆)
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