地方再生は保守政党には出来ない!? (再掲)
総選挙を前にして、自民党は選挙公約を公表したが、その中で‘地方創生’を一つの公約としている。
しかし保守自民党には‘地方創生’は出来ないと見られている。事実これまで長期に亘る保守政権において地方が再生されたためしがない。逆に、若干の例外はあるが、地方に過疎村、限界集落、空き家集落が広がっている。
多くの同党古参議員等は、地方への大型量販店、百貨店や大規模工場、企業の進出を内心嫌っている。これらの産業の進出により、労働組合が出来、野党勢力が進出し、保守地盤が侵食されることを懸念している。従って、地方の産業や市場の自由化や規制撤廃には本質的に消極的だ。
それが保守政党、保守政党議員の本質だろう。伝統的な保守地盤を維持することが再選への道なのである。地域社会をなるべく閉鎖し、新規の参入を止める、それが保守の本質だ。その最も好例が、世襲議員だ。先祖からの地盤、看板等を受け継ぎ、それを維持し続けることが競争相手を抑え、再選を確実にすることになる。従って、言葉とは裏腹に、経済にしろ、農林業、漁業にしろ、大型の新規参入には内心消極的となっても不思議はない。
しかしそのような閉鎖的な、保守的な姿勢が、地域の新陳代謝や活力を失わせている。新規の参入、若い世代の進出を阻み、活力が無くなった地域から、若い世代は出て行く。そして年長者だけが残って行く。それが現実に起こっている。
現在、地方の市町村に老齢者だけが残り、多くの900前後の市町村が消えて行くことが予想されている。それは長い間政権の座についていた自民党の政策がそのような結果を招いたと言えそうだ。
農業についても、農協の下で新規参入を拒み、同一地域のコメを一律に扱い、農家間の競争を排除する一方、コメへの需要が減少するたびに減反をさせ、減反した農家に補助金或いは所得補償を行って来た。それは生産しない者に所得を保証するということであり、そのような農業に若い働き手は必要もなく、残らない。それが農業の衰退と競争力の退化をもたらしたといえよう。来年もコメへの需要は低下すると予想されており、生産削減や減反が実施され、作物を作らないことに所得補償が行われる。自民党は農家にそれを約束して来た。しかし、それでまた農業は一層退化する。要するに、保守党の基盤に立って、農水省と農協が、税金を使って“俵”を買い上げ、議員が“票”を買っているようなものと映る。
国民はコメを含む農産物の有り難みを知っており、このような農業政策に寛容であった。しかし働かないことに補償が与えられるような制度は持続不能であることも知っている。現状で農業は退化し、若い働き手も残る見通しもない以上、農業への参入規制を緩和し、大規模化、企業化を図るしかないのではないか。
経済戦略特区についても、一方で全国一律に規制を維持しつつ、特定の都道府県を選択し、規制の一部解除を行うだけで、新たに地域選択という手続きを追加し、規制制度を更に複雑化させるだけだ。中央管理の複雑化、強化に繋がる。
また自民党は、選挙公約の中で、‘地方創生’の具体的施策として、中小企業対策や人口減少対策のために‘バラ撒きにならないような’交付金や、商店街などの地域経済の活性化を図るため、‘地域商品券’の発行等を行うとしている。正にバラ撒きではないか。公明党が嘗て‘地域振興券’なるものを推奨したが、地方のシャッター街が次々と増えるのを防ぐことは出来なかったことは誰もが知っていることだ。このような中央から地域振興のための予算、税金のおこぼれを受け取っている限り、地方の自発的、自律的な振興を図れないばかりか、中央―地方の支配関係や制度を保守する結果となり、地方分権の拡大にもならないだろう。もっともそれが保守政党の狙いなのだろう。
地方がそれに安住する限り、地方の再生はない。それは歴史が物語っている。
(2014.12.1.)(All Rights Reserved.)
米韓軍事同盟に日本は参加すべきではない (追補版)再掲
(はじめに)
米海軍原子力空母‘セオドア・ルーズベル’が、2024年6月22日、韓国釜山に入港した。韓国側は、今月末に予定されている米韓両国による軍事訓練‘フリーダム・エッジ’に日本が参加し共同軍事訓練が実施するためと発表した。
北朝鮮の対韓国挑発行動が繰り返される中、プーチン・ロシア大統領が訪朝し、6月19日、北朝鮮の金正恩総書記と平壌で首脳会談後、‘包括的戦略パートナーシップ条約’に署名した。この包括条約には、一方への第三国による攻撃が行われる支援することが含まれており、事実上の軍事同盟化を意味する。これにより、北朝鮮は、休戦中の朝鮮戦争が再発した場合には、既に相互軍事援助に合意している中国カードと共にロシア・カードを手に入れたことになる。また軍事、経済面での相互交流、協力が活発化することになる。
他方、米国は、中国に加えロシアが軍事同盟国として控えているため北朝鮮に侵攻することは実態上極めて困難な情勢になった。
韓国メデイアは「北とロシアが関係を深める中、米韓及び日の共同軍事訓練が北への警告のメッセージになる」旨報道している。北挑戦との紛争当事国である韓米両国にとってはその通りだ。しかし、北朝鮮攻撃を念頭に置いた米韓共同軍事訓練に日本が参加することは、紛争を招き入れるだけであり、自衛どころか国家国民の安全保障を著しく損ない国益に反する。ましてや日本が米韓軍事同盟に参加することは、休戦中の朝鮮戦争が再発する場合、北朝鮮だけでなく、中・ロ両国との軍事対立に巻き込まれることになり、論外である。このような重要事項を防衛当局や安全保障専門家等だけで判断出来るものでもない。このような情勢を念頭に、本稿を再掲する。(2024/06/26)
米韓軍事同盟に日本は参加すべきではない 再掲
Ⅰ、岸田首相は2023年5月7日訪韓し尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領と会談した。2013年以降安倍政権の下で靖国神社参拝問題、従軍慰安婦問題、戦時における韓国人徴用工問題など歴史認識問題を巡り停滞していた日・韓関係が改善されることは歓迎されるところである。
その中で、地域情勢、特に北朝鮮問題については、『日米同盟、韓米同盟、日韓・日韓米の安全保障協力により抑止力・対処力を強化することの重要性について一致した』とされ、5月19日より開催されるG7広島サミットの際にユン大統領を招き、日韓米首脳会合を開催することとなった旨公表されている。
核、ミサイル開発・配備を含む北朝鮮問題については、朝鮮半島情の緊張を激化すると共に、核拡散を助長するものとして強く非難されるところであるが、北朝鮮への『抑止と対処』については、次の通り米韓両国と日本とは立場を異にしていることを認識すべきであろう。
(1)朝鮮戦争は現在休戦状態にあるだけで、南北両国は敵対関係にあり、朝鮮戦争が再発する可能性がある。日本は朝鮮戦争の当事国ではなく、また日本の安全保障・防衛上このような地域紛争に関与すべきではない。従って日・韓が北朝鮮との関係においた協力して『抑止、対処』すべきものではない。
(2)米国は当初より韓国の庇護者として朝鮮戦争の当事国であり、韓国と共に休戦協定の当事国である。また米国は韓国軍隊の指揮権を有しているので、米韓は軍事的に一体となって軍事同盟を形成している。日米同盟は日本の防衛に主眼を置いたもので、基本的に米韓軍事同盟とは性格を異にすると共に、朝鮮半島における紛争当事国である米韓との安全保障上の具体的な協力や同盟関係は、朝鮮戦争を引き寄せ、飛んで火に入る虫のような結果となるので、日本の安全を著しく損なうことになる。日本側外交・防衛当局にこの認識が欠けている。
北朝鮮を巡っては日本としては米韓両国との情報交換を越えることは望ましくない。日本海における米韓・日の海空合同軍事演習も北を挑発する防衛当局の拙速行為であり望ましくない。
(3)北朝鮮の核開発、生産・配備は核拡散をもたらし、国際的な緊張を激化すのみであり非難される。しかし核不拡散の実態は、インド、パキスタン、イスラエル及び北朝鮮が核保有しており、既に核拡散防止条約(NPT)の枠外で拡散している現実がある。またNATO諸国の内、ドイツ、ベルギー、イタリア、オランダなどが米国と核共有(核シェアリング)していることが知られており、核NPTで禁止されている「非核兵器国による核兵器の獲得又は保有」に実態上違反しているとも言える。従って国際的な核不拡散レジームは後退しているのが現実である。更に5核兵器国(国連常任理事国)はNPT上核軍縮を行う義務があるが、実行されていない。
その上5核兵器国は核の生産・保有・使用を禁止する核兵器禁止条約にも反対している。日本もこの条約に反対しているが、岸田首相が安倍政権下の外相だった時だ。広島で開催されるG7首脳会議では、この条約を支持する非核兵器諸国にどのような『橋渡し』が出来るのだろうか。
なお、北朝鮮による日本人拉致問題については首脳会談で言及された趣だが、日本国民の生命と財産の安全ということであれば、ソウルに本部がある国際統一家庭連合(=統一教会)の活動が多くの日本国民の財産と安寧な生活を奪っていると共に、多額の金が韓国や北朝鮮などに送金されているので、統一教会の日本での非社会的な活動の是正に言及されていないことは、この問題を黙認した形となり問題が残る。この時期にソウルで開催された統一教会合同結婚式についても、日本から600人ほど男女が参加したと言われるが、既に農村部に5千人以上の日本人が韓国農村部で生活していると言われているので、邦人保護の観点からこれらの人々の人権、人道、そして尊厳が守られているかも問題であり、韓国側の善処を求めると共に、調査することが望ましい。(2023/05/09追記)
Ⅱ、韓国の対応
韓国の康京和(カン ギョンファ)外交部長官は2017年10月30日、議会での外交関係の国政監査において、対北朝鮮防衛強化のため配備された米国の迎撃ミサイルTHAADを巡り悪化している中国との関係について、中韓首脳会談開催への期待を表明しつつ、次の3つの立場を明らかにした。
・THAADの追加配備は行わない。
・米国のミサイル防衛(MD)システムに参加しない。
・韓日米安保協力は軍事同盟に発展しない。
これはTHAADの配備を巡り悪化している中韓関係の‘復元’、正常化を狙った発言と見られており、‘三不’政策とも言われている。
これに対し中国外務省は、同日午後に報道官が康長官の発言に関連して、「韓国側のこうした3つの立場を重視する」とし、韓国側がこれを実際に行動に移すことを願う旨述べた。しかし中国側が、韓国外交部長官の発言を‘約束’との表現を用いたため、韓国内でも議論となっている。
中国側は、韓国におけるTHAAD配備と共に、米韓日の軍事同盟化を強く警戒していると見られ、中国が10月の全人代で習体制を固めて以降、日本との関係を改善する姿勢になっているのはこれを阻止するためとも思われる。
韓国が、米韓日の軍事同盟を望んでいなければそれに参加する必要はない。日本側がそのような意向を表明したこともない。もっとも軍事同盟については、一方の同盟国への北朝鮮を含む第三国からの攻撃は日本への攻撃とみなされ、参戦しなくてはならなくなるので、日本の現行憲法ではそのような軍事同盟に参加することは困難であろう。従って韓国側から言われるまでもない。
そもそも朝鮮戦争は1953年の休戦協定により軍事対決こそ回避されているが、米韓両国と北朝鮮は現在でも敵対関係にあり、北の核、ミサイル開発は基本的に米韓への対抗措置として進められているものである。日本は、朝鮮戦争の当事国でもない。また第二次世界大戦後、北朝鮮とは平和条約を締結していないが、2002年9月に小泉首相(当時)と金正日総書記(当時)とで調印された日朝ピョンヤン宣言において、拉致家族問題の他、日朝国交正常化交渉の開始などが盛り込まれており、この宣言は自・公連立政権において破棄はされていない。
従って政策論としても、朝鮮半島有事の場合には米軍への必要な後方支援は行うことになろうが、日本及び日本国民の安全のためにも、米韓との軍事同盟に参加しないことが賢明な選択肢と言えよう。(2017.11.23. )
対北朝鮮強硬姿勢に前のめりの危うさ! (再掲)
(はじめに)2013年1月に発足した第2次安倍政権は、「積極的平和主義」を掲げ、日米同盟の軍事支援化の推進と周辺事態への適用拡大を推進すると共に、北朝鮮の核・ミサイル開発の危険性を煽り、米欧諸国の軍事同盟NATO並のGNP2%の防衛補増強や敵地反撃能力の保持など、前のめりの安全保障政策を進めようとした。他方、安倍首相(当時)は2013年6月、参院選前に自民党総裁応接室において、地球上から共産主義の排除などを基本思想とし、また日本人信者から法外な商品、寄付をさせている統一教会会長や下部組織勝共連合幹部などと面談し選挙支援や政策協力を行っていたことが写真入りで報道され、思想、政策面で韓国を本部とする宗教団体の思想・政策に偏っていたことが明らかになっている。従って、安倍政権以降の情勢認識や安全保障政策等について見直す必要が出てきている。(2024.9.20.)
このような視点に立って本稿を再掲する。
対北朝鮮強硬姿勢に前のめりの危うさ! (再掲)
2017年1月に発足した米国のトランプ政権は、北朝鮮の核、ミサイル開発は限界ラインを越えたとして、従来とられて来た‘戦略的忍耐’を終了し、軍事的措置を含む‘すべての選択肢’はテーブルにあるとして強硬姿勢を表明している。もっともオバマ政権時代も、‘すべての選択肢’はテーブルにあるとしていたので新たな政策でもない。
一方北朝鮮は、年初よりミサイルの発射実験を繰り返すと共に、6回目の核爆発実験を準備していると見られている。
このような中で、4月8日頃、米太平洋司令部筋が原子力空母カールビンソンを朝鮮半島海域に展開することを明らかにしたとの報道を受けて、米朝関係の緊張が高まった。しかしその後、4月18日前後には同空母はシンガポールからオーストラリア、インドネシア海域で活動していたことが判明した。
1、対北朝鮮米・中協力の模索と軍事介入のための環境作り
4月16日、マクマスター米大統領補佐官(安全保障担当)は米TVインタビューにおいて、北朝鮮の核、ミサイル開発に関し、同国の挑発行為によって‘問題は頂点に達している’とする一方、‘平和的に問題を解決するため、軍事的手段に至らないすべての行動を取る時だ’と述べた。またトランプ大統領もこの日のツイッターにおいて‘中国が北朝鮮問題で米国と協力している時に、為替操作国と呼ぶ必要があるだろうか。何が起こるかに注目する。’とつぶやいている。
トランプ大統領は、4月6、7日に訪米した習近平中国主席とフロリダ州の別荘で会談している。この首脳会談においては、米中間の貿易不均衡や低く抑えられている元の為替問題とともに国際情勢につき広く意見交換された趣だが、第1回会談の後では、‘何も一致点はなかった’としていた。北朝鮮問題では、米国は、北朝鮮の核、ミサイル開発は限界ラインを越えており、‘中国の協力が得られなければ、米国1国で対応する’旨を伝えたものと見られる。中国は、朝鮮半島の非核化を支持しつつも、韓国における迎撃ミサイルTHAAD配備に反対すると共に、平和的手段による解決を主張したものと見られる。この間トランプ大統領は、化学兵器を使用したと報道されているシリアのアサド政権に対し、空軍基地へのミサイル攻撃を命じ、実施した。中国は、これに理解を示したと報じられているが、トランプ政権の強硬策を印象付けるには十分であったであろう。
習近平主席は、帰国後の4月11日にトランプ大統領と電話で会談している。習主席は、帰国後、北朝鮮への対応につき関係部局と協議し、米国の軍事介入を避けるため北朝鮮説得に踏み切ったと見られ、トランプ大統領に中国による北朝鮮説得努力の意向を伝える一方、THAAD配備にくぎを刺したものと見られる。トランプ大統領も電話会談結果を評価している。
原子力空母カールビンソンの北上を遅らせたのは、中国に時間を与えると共に、国際世論に対し平和的解決努力を尽くしていることを示すためなのであろう。
2、危うい日本の対応
4月18日、ペンス米副大統領は、韓国訪問後訪日し、安倍首相と会談した。その際、同首相より、‘トランプ政権がこれまでの「戦略的忍耐」を了し,「全ての選択肢がテーブルの上にある」という考え方に立って問題に対処しようとしていることを評価する’旨表明した。これは、日本として、米国の軍事行動を含む強硬策を容認することを意味する。
このような情勢を受けて、マスコミも連日のように、米国による対北朝鮮軍事介入の可能性を報じると共に、北朝鮮が日本を攻撃してくる可能性などを報じ、危機を煽る形となっている。
原子力空母カールビンソンは、中国の動向を見極めつつ朝鮮半島海域に向けて北上して来ると見られている。そして防衛省は、海上自衛隊の護衛艦が同空母と合流させ、共同訓練を実施することを検討していると報じられている。
このような日本の前のめりの姿勢は北朝鮮もキャッチしているであろう。
北朝鮮は、朝鮮動乱後、韓国と休戦状態にあり、米国が庇護者となっている。韓国軍の指揮権は未だに米国が持っており、38度線を境として北朝鮮と対峙して、紛争当事国である。北朝鮮は、来るべき第2次朝鮮戦争に備え、米国との対峙関係から核とミサイル開発を行ってきている。攻撃目標は第1義的には米国と韓国である。日本は朝鮮戦争の当事国ではないのだ。
しかし現自・公連立政権となって、安保法制が成立し、同盟国である米国との軍事連携が拡大すると共に、2月の首相訪米において北朝鮮への強硬策を打ち出しているトランプ大統領との間で同盟関係の強化が確認されたことなどから、北朝鮮は最近、‘日本の米軍基地’も標的であることを公式に表明している。
その中で、朝鮮戦争の当事国でもない日本が何故、米国の北朝鮮への軍事行動を含む強硬策を内外に表明し、更に米国原子力空母カールビンソンに護衛艦を差し向け、共同訓練を実施するなど、突出した行動をとるのか。また沖縄嘉手納基地に米軍戦闘機が集結していると報じられているが、沖縄からの北朝鮮への直接攻撃を容認するのだろうか。米国が北朝鮮を攻撃すれば、南北間の休戦は破棄され、南北朝鮮は戦争状態となる。そうなると日本は第2次朝鮮戦争の当事者になるというリスクを負うことになる。誰のための安全保障か。米国の意向を忖度しての対応であろうが、防衛省はそれにより日本国民の安全を危うくすることになるリスクを考えているのだろうか。
4月17日、北朝鮮の日朝国交正常化交渉担当宋日昊大使は、平壌において記者団を集め、‘日本人拉致被害者などの再調査を行う特別調査委員会は解体された’等としつつ、‘朝鮮半島で戦争の火がつけば、日本に一番被害が及ぶ’旨強調した。これは、対北強硬路線に転換した米国を支持する日本の姿勢を受けて、日本への揺さぶりと見られる。それが日米同盟強化の代償ということにもなる。
日米は同盟関係にあるので、日本有事となれば連携して対処しなくてはならない。しかし対岸の戦争に何故日本が前のめりで首を突っ込まなくてはならないのか。朝鮮動乱の歴史を理解しない熟慮とバランスに欠ける対応と言えないだろうか。もっとも、政治的には米朝関係が緊張し、危機が煽られれば、森友学園問題等から世論の目をそらせることが出来るので好都合であろうとの見方もある。
日米同盟は重要であるが、日本国民は、日米同盟を強化すればするほど、米国に引きずられて日本の安全を犠牲にしなくてはならないリスクを負っていることを認識すべきであろう。またこのように日米同盟を強化すればするほど、ロシアとの北方領土問題や平和条約締結問題も遠くなるであろう。このようなリスクを十分認識の上、安全保障や外交姿勢を判断すべきなのであろう。特に今回の場合は、休戦状態にある米・韓と北朝鮮間の問題が根底にあり、日本はその当事者ではない。日本の熟慮あるバランスのとれた政策選択と言動が求められる時であろう。
3、過去のものとされた日本人拉致被害者問題(別稿)(2017.4.21.)
(All Rights Reserved.)
政党交付金を候補者個人への支援金とすべし!(一部改訂、再掲)
2019年7月の参院選挙で、広島選挙区(改選2議席)から当選した自民党公認の河井案里候補(現参院議員)に、選挙を前にして党本部が約1億5000万円提供したことが明るみに出た。同候補は、選挙カーの「うぐいす嬢」に規定(15,00円)の2倍を支払う選挙違反をしたのではないかとの疑いを掛けられている。
選挙違反問題は当局に委ねるとして、新人候補に自民党が1億5000万円相当提供した事実については驚きだ。
自民党には、1候補に1億5000万円も提供出来るほど潤沢な金があるのか!
新人候補が当選することは難しいとしても、当選するためにはこれほど金が掛かるのか!一般人にはとても立候補など雲の上の話だ。
選挙と金、選挙に金が掛かるという話は以前よりあり、1990年代に、選挙区を中選挙区から1人区とする他、選挙を公費(税金)で支援するために政党助成金を設け、党より候補者に資金的な援助をする制度などが導入された。
今回の事件は、このような措置が所期の目的通り適正に機能しておらず、弊害が多いことを如実に物語っている。
次の理由により、「政党助成金」を廃止して、選挙区ごとに投票総数と得票数に基づき一定の基準を設け、各候補者に選挙資金を一部補助する制度とするべきではないだろうか。現在の供託金制度は維持する。
1、政党助成金は党の恣意的な介入により、有権者の判断が反映されなくなる
同じ広島の選挙区で、参議院議員を5期努め、6選を目指していた同じく自民党公認の溝手顕正候補(元防災担当相)が落選した。同候補は自民党からの1,500万円しか提供されていなかった。選挙に際し公認候補は自民党より1,500万円前後の助成を受けるのが相場とされているようだ。党の裁量が強く働く。
これでは公費による選挙資金助成の意義は失われる。税金を負担している有権者の意思は何ら反映されないばかりか、党の裁量で歪められる可能性が強い。
更に政党助成金につては、党が各議員の選挙資金や活動費を握っているため、党議拘束が余りにも強くなり、議員の個性や個人の主張を失わせており、文字通り、党に‘金縛り’になっているに等しく、党独裁の色彩が強くなり、多様性を基本とする民主主義にも反する。
一定の基準を設け各候補者個人に選挙資金を補助する制度とするべきだ。
2、最大の問題は政党助成金依存が強くなり、各政党の党員、党友が一向に増えないこと
2020年8月28日、安倍首相が健康上の理由で辞任の意向を表明したのを受けて、自民党の新しい総裁が選出され、国会で新たな首班が指名される。安倍首相には健康回復をお祈りしたいが、9月中旬に自民党総裁選が行われる。しかし本来であれば、党の両院議員だけではなく、同数の党員の投票を含めた総裁選挙が行われるが、今回は、緊急を要する等として議員票を中心とした両院議員総会で決定される見通しだ。主要派閥が特定候補の支持を早々に表明し、党員に人気のある都合の悪い候補を排除するため、議員総会で決めようとしているなどと伝えられている。安倍首相は新総裁が決まるまで執務を行う見通しなので、「首相が欠けた場合」でも「緊急」でもない。となると派閥で決めるため、党員投票を外すということになる。国の政党助成金(税金)と企業献金があるので、党員会費などそれほど重要ではないということだろうか。自民党の党員でも110万人前後に止まっているが、政党助成金依存で党員を増やそうという熱意も薄れる。これでは党レベルでの民主主義は後退し、旧態依然の派閥中心、派閥人事となり、国民からますます遠くなってしまう。
3、政党には企業・団体より多額の政治献金が入っている
政党助成金が導入された際、議員や党と企業・団体との癒着が問題視され、企業・団体献金に頼らない選挙とすることが考慮された。しかし政党助成金が導入された後も、企業・団体献金が復活し、横行している。
2018年の政党への献金総額は、約29億円、その内企業・業界団体献金が約25億円となっており、個人による献金は何と 1.2億円でしかない。企業・業界団体献金が、政治献金の86%強を占めており、企業・業界団体が突出しており、政治への金による影響力を強めている形だ。企業別では、2017年ではトヨタ、東レ、キヤノン、日産などが上位を占めている。
この企業献金については、経団連が一時控えていたが、現在では政党別の星取り表、序列を作成して企業・団体に政治献金を誘導している。
だからと言って政治と企業の癒着などとは言えないところではあるが、経団連の役員や献金の多い企業・団体のトップが政府の各種の委員会の座長や委員になっているなど、金の影響力は明らかだ。その委員を‘民間議員’などと誤解を生む怪しげな呼称をしているメデイアもある。
企業・団体の議員個人への献金は禁止されているので政党への献金となるが、個人からの献金が伸びていない。共産党は共産党組織、公明党は創価学会という下部組織が強固であるので個人献金等も多いが、自民党はじめほとんどの党は、党員や党友なども低迷しており、本来あるべき個人献金は伸びていない。最大与党の自民党でさえ、2012年12月の総選挙で勝利し、自・公連立政権の下で7年余、103万党員から120万党員を目標に党員増を図って来たが、それでもせいぜい108万にしか届いておらず、その後は低迷している。日本の有権者総数は1億658万人(2019年7月現在)で、自民党員はその1.0%にしか達していない。最大与党でも有権者の1%程度でしかなく、有権者を代表するとも言えない政党を何故税金で助成するのか。そもそも民意で作るべき民主主義の基本に反する上、共産党を除き、政党側の努力が足りない。税金で政党を助成している限り、政党は税金助成に依存し、自ら努力はせず、成長もしないであろう。
政党助成金や企業・団体献金があるので、個人献金を募るインセンテイブもないのだろうが、本来、議員や政党は有権者への政策説明や活動報告など日常的な活動を通じ支持を増やし、少額でも個人献金を増やしていくべきであろう。政党助成金は、そのような議員や政党の努力を阻んでいる。
いずれにしても政党は企業・団体や政治団体双方から献金を受けているので、国(税金)による助成は、政党ではなく、一定の基準に基づき候補者個人に配賦されるべきであろう。
4、有権者のほぼ4割の無党派層にとっては「政党助成金」はありえない
2019年7月の参院選挙で、選挙区の投票率が48.8%と低迷した。そもそも参議院の存在については、衆議院のコピー、クローンのようなもので、その存在意義が問われている。その上有権者の約40%が無党派層であるので、比例区では投票すべき政党もないので投票に行かない有権者も多く、また投票に行った人が、支持政党がないので白票で出し、無効票となった人も多く、無駄だった言う人もいる。いずれにしても、投票率が5割を割った中で当選しても国民の代表などと言えるのか疑問でもある。
無党派層にとっては、支持する「政党」を書けと言われても無理な話だ。
「政党助成金」についても、無党派層にとっては支持もしていない政党に払った税金が使われるというのは合点がいかないであろう。
更に選挙後に、特定政党が分裂し、新たな政党となった場合、政党助成金を分割して引き継いでいるが、そんな政党を選挙で支持したわけではないので疑問が残る。
政党助成金や政党を選ばせるということは、有権者の意思を無視した、政党のご都合主義であり、候補者個人への資金支援、議員個人への投票という民主主義の基本に戻すべきであろう。
(2020.2.1.8.31.一部改訂)