対北朝鮮強硬姿勢に前のめりの危うさ! (再掲)
(はじめに)2013年1月に発足した第2次安倍政権は、「積極的平和主義」を掲げ、日米同盟の軍事支援化の推進と周辺事態への適用拡大を推進すると共に、北朝鮮の核・ミサイル開発の危険性を煽り、米欧諸国の軍事同盟NATO並のGNP2%の防衛補増強や敵地反撃能力の保持など、前のめりの安全保障政策を進めようとした。他方、安倍首相(当時)は2013年6月、参院選前に自民党総裁応接室において、地球上から共産主義の排除などを基本思想とし、また日本人信者から法外な商品、寄付をさせている統一教会会長や下部組織勝共連合幹部などと面談し選挙支援や政策協力を行っていたことが写真入りで報道され、思想、政策面で韓国を本部とする宗教団体の思想・政策に偏っていたことが明らかになっている。従って、安倍政権以降の情勢認識や安全保障政策等について見直す必要が出てきている。(2024.9.20.)
このような視点に立って本稿を再掲する。
対北朝鮮強硬姿勢に前のめりの危うさ! (再掲)
2017年1月に発足した米国のトランプ政権は、北朝鮮の核、ミサイル開発は限界ラインを越えたとして、従来とられて来た‘戦略的忍耐’を終了し、軍事的措置を含む‘すべての選択肢’はテーブルにあるとして強硬姿勢を表明している。もっともオバマ政権時代も、‘すべての選択肢’はテーブルにあるとしていたので新たな政策でもない。
一方北朝鮮は、年初よりミサイルの発射実験を繰り返すと共に、6回目の核爆発実験を準備していると見られている。
このような中で、4月8日頃、米太平洋司令部筋が原子力空母カールビンソンを朝鮮半島海域に展開することを明らかにしたとの報道を受けて、米朝関係の緊張が高まった。しかしその後、4月18日前後には同空母はシンガポールからオーストラリア、インドネシア海域で活動していたことが判明した。
1、対北朝鮮米・中協力の模索と軍事介入のための環境作り
4月16日、マクマスター米大統領補佐官(安全保障担当)は米TVインタビューにおいて、北朝鮮の核、ミサイル開発に関し、同国の挑発行為によって‘問題は頂点に達している’とする一方、‘平和的に問題を解決するため、軍事的手段に至らないすべての行動を取る時だ’と述べた。またトランプ大統領もこの日のツイッターにおいて‘中国が北朝鮮問題で米国と協力している時に、為替操作国と呼ぶ必要があるだろうか。何が起こるかに注目する。’とつぶやいている。
トランプ大統領は、4月6、7日に訪米した習近平中国主席とフロリダ州の別荘で会談している。この首脳会談においては、米中間の貿易不均衡や低く抑えられている元の為替問題とともに国際情勢につき広く意見交換された趣だが、第1回会談の後では、‘何も一致点はなかった’としていた。北朝鮮問題では、米国は、北朝鮮の核、ミサイル開発は限界ラインを越えており、‘中国の協力が得られなければ、米国1国で対応する’旨を伝えたものと見られる。中国は、朝鮮半島の非核化を支持しつつも、韓国における迎撃ミサイルTHAAD配備に反対すると共に、平和的手段による解決を主張したものと見られる。この間トランプ大統領は、化学兵器を使用したと報道されているシリアのアサド政権に対し、空軍基地へのミサイル攻撃を命じ、実施した。中国は、これに理解を示したと報じられているが、トランプ政権の強硬策を印象付けるには十分であったであろう。
習近平主席は、帰国後の4月11日にトランプ大統領と電話で会談している。習主席は、帰国後、北朝鮮への対応につき関係部局と協議し、米国の軍事介入を避けるため北朝鮮説得に踏み切ったと見られ、トランプ大統領に中国による北朝鮮説得努力の意向を伝える一方、THAAD配備にくぎを刺したものと見られる。トランプ大統領も電話会談結果を評価している。
原子力空母カールビンソンの北上を遅らせたのは、中国に時間を与えると共に、国際世論に対し平和的解決努力を尽くしていることを示すためなのであろう。
2、危うい日本の対応
4月18日、ペンス米副大統領は、韓国訪問後訪日し、安倍首相と会談した。その際、同首相より、‘トランプ政権がこれまでの「戦略的忍耐」を了し,「全ての選択肢がテーブルの上にある」という考え方に立って問題に対処しようとしていることを評価する’旨表明した。これは、日本として、米国の軍事行動を含む強硬策を容認することを意味する。
このような情勢を受けて、マスコミも連日のように、米国による対北朝鮮軍事介入の可能性を報じると共に、北朝鮮が日本を攻撃してくる可能性などを報じ、危機を煽る形となっている。
原子力空母カールビンソンは、中国の動向を見極めつつ朝鮮半島海域に向けて北上して来ると見られている。そして防衛省は、海上自衛隊の護衛艦が同空母と合流させ、共同訓練を実施することを検討していると報じられている。
このような日本の前のめりの姿勢は北朝鮮もキャッチしているであろう。
北朝鮮は、朝鮮動乱後、韓国と休戦状態にあり、米国が庇護者となっている。韓国軍の指揮権は未だに米国が持っており、38度線を境として北朝鮮と対峙して、紛争当事国である。北朝鮮は、来るべき第2次朝鮮戦争に備え、米国との対峙関係から核とミサイル開発を行ってきている。攻撃目標は第1義的には米国と韓国である。日本は朝鮮戦争の当事国ではないのだ。
しかし現自・公連立政権となって、安保法制が成立し、同盟国である米国との軍事連携が拡大すると共に、2月の首相訪米において北朝鮮への強硬策を打ち出しているトランプ大統領との間で同盟関係の強化が確認されたことなどから、北朝鮮は最近、‘日本の米軍基地’も標的であることを公式に表明している。
その中で、朝鮮戦争の当事国でもない日本が何故、米国の北朝鮮への軍事行動を含む強硬策を内外に表明し、更に米国原子力空母カールビンソンに護衛艦を差し向け、共同訓練を実施するなど、突出した行動をとるのか。また沖縄嘉手納基地に米軍戦闘機が集結していると報じられているが、沖縄からの北朝鮮への直接攻撃を容認するのだろうか。米国が北朝鮮を攻撃すれば、南北間の休戦は破棄され、南北朝鮮は戦争状態となる。そうなると日本は第2次朝鮮戦争の当事者になるというリスクを負うことになる。誰のための安全保障か。米国の意向を忖度しての対応であろうが、防衛省はそれにより日本国民の安全を危うくすることになるリスクを考えているのだろうか。
4月17日、北朝鮮の日朝国交正常化交渉担当宋日昊大使は、平壌において記者団を集め、‘日本人拉致被害者などの再調査を行う特別調査委員会は解体された’等としつつ、‘朝鮮半島で戦争の火がつけば、日本に一番被害が及ぶ’旨強調した。これは、対北強硬路線に転換した米国を支持する日本の姿勢を受けて、日本への揺さぶりと見られる。それが日米同盟強化の代償ということにもなる。
日米は同盟関係にあるので、日本有事となれば連携して対処しなくてはならない。しかし対岸の戦争に何故日本が前のめりで首を突っ込まなくてはならないのか。朝鮮動乱の歴史を理解しない熟慮とバランスに欠ける対応と言えないだろうか。もっとも、政治的には米朝関係が緊張し、危機が煽られれば、森友学園問題等から世論の目をそらせることが出来るので好都合であろうとの見方もある。
日米同盟は重要であるが、日本国民は、日米同盟を強化すればするほど、米国に引きずられて日本の安全を犠牲にしなくてはならないリスクを負っていることを認識すべきであろう。またこのように日米同盟を強化すればするほど、ロシアとの北方領土問題や平和条約締結問題も遠くなるであろう。このようなリスクを十分認識の上、安全保障や外交姿勢を判断すべきなのであろう。特に今回の場合は、休戦状態にある米・韓と北朝鮮間の問題が根底にあり、日本はその当事者ではない。日本の熟慮あるバランスのとれた政策選択と言動が求められる時であろう。
3、過去のものとされた日本人拉致被害者問題(別稿)(2017.4.21.)
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