江戸の町に一年ぶりに、扇風機こと
扇風機衛門(おうぎ ふうきえもん)が帰ってきた。
Coco之進が声をかけようとすると
「後ろから近づくとは不届者め。
わんこの風上にもおけぬやつ」
と、風機衛門は眉を吊り上げた。
すかさず言い返すCoco之進。
「ちょこざいな。利いた風なことを言うな。
そのような無礼なせりふは、柳に風と受け流すわい。
拙者はただ、風邪をひかぬように、
用心しているまでのことよ」
「ほう。それで風を食らって逃げ出そうというわけか。
かつては肩で風を切って歩いていたおぬしが
今じゃそのていたらくか。笑止千万。は、は、はは・・・」
これには温厚なCoco之進も、
さすがに腹を立てた様子。
「けしからん。昨年の夏にはぐくんだ
おぬしとの友情はもはや風前の灯。
風雲急を告げる事態と思え!」
一触即発。
このまま二人は決闘でも始めるつもりかと
思われたそのとき、突然二人は顔を見合わせて
笑い出したのだった。
「いやあ。Coco之進。おぬしもなかなかでござるな」
と扇風機衛門。
「かたじけない。おぬしこそ」
Coco之進も朗らかに笑う。
実は二人は、
「風」のつく言葉を使ってどれだけ会話が続くかを
競いあっていたのだ。
一年ぶりの再会であっても
気心の知れた仲のこと。
細かな説明など無くとも、
互いの思いはすぐに伝わっていたというわけだ。
「Coco之進。それでは再会を祝して
なにかうまいものでも食おうじゃないか。
今日は拙者のおごりだ」
「おや。扇風機衛門。
どうした風のふきまわしだい」
「いやなに。なかなか景色のいい風流な場所をみつけたので
Coco之進に会えたら
是非誘いたいと思っていたのさ・・・」
「ほう。それは楽しみだ。
おぬしの気に入った場所なら、さぞかし風情があろう。
では共に参ろう」
「風」のつく言葉で会話を続ける勝負は
まだまだ続くのであった・・・。
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