夕立屋
男「暑いねぇ、こういう暑い日には、一雨ざーっと来てくれるとありがたいんだけど。」
夕立屋「えー夕立や夕立、えー夕立や夕立。」
男「なんだい、あの夕立屋ってのは、雨を降らそうってのかな、面白い、呼んでみよう、 おおーい、夕立屋。」
夕立屋「へい、毎度ありがとうございます。」
男「お前さん、夕立屋ってぇくらいだから、雨を降らせるのかい。」
夕立屋「へぇ、さようでございます。」
男「へぇ、で、いくらなんだい。」
夕立屋「へぇ、これはもうほんのおこころざし程度で結構でございます。」
男「そうかい、じゃさっそく、三百文ほど降らしてもらおうか。」
夕立屋「へ、かしこまりました。」
なんてんで、男はしばらく呪文を唱えておりましたが、やがて雨がざーっと降ってまい りまして。
男「おや、おかげて涼しくなったよ、だけど、こうして雨を自由に降らせたり、止ませた りできるなんて、お前さん、ただの人間じゃないね。」
夕立屋「はい、実はわたくしは、空の上に住んでおります、龍(たつ)、でございます。」
男「なるほど、道理で不思議な術を知ってなさる、だけどねお前さん、夏暑い時は、こう してお前さんが、雨を降らしていれば商売になるけど、冬、寒くなったら、商売はどう するんだい。」
夕立屋「へぇ、寒くなりましたら、倅の子龍(炬燵)をよこします。」
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