ジョーは死につつある妻を看取っていた。妻の声はほとんどささやきに近かった。
「ねえ、ジョー…」あえぎながら妻は言った。
「お別れする前に言っておきたいの…。金庫から一万ドル盗んだのは、このあたしなの…。そのお金は、あなたの親友のチャールズとの浮気に使ったの…。
まだあるわ、
あなたの女をこの街にいられないようにしたのも、このあたしよ、
あなたの脱税をお役所に密告したのもあたしなの…」
「もういいじゃないかダーリン、くよくよ考えるのはよしなさい」
ジョーは答えた。
「おまえに毒を盛ったのは、このわたしなんだ」