シャープ退職者に食指… 奈良県知事の仰天構想
荒井正吾知事
「優秀な中途退職者を県内に」とのコンセプトで、奈良県の荒井正吾知事が5月28日の知事定例会見で突然切り出した再就職支援事業。家電大手「シャープ」が3500人規模の希望退職者を募る計画を発表したことから構想したらしく、6月県議会に事業費の補正予算案を提出する意向を示した。
荒井知事が県内の中小企業に呼び込む“ターゲット”としているのは、高いスキルを持った優秀な中途退職者。例えば、技術者や品質管理、商品販売に実績のある人たちだ。具体的なスキームは「まだ説明できるものは何もない。これから策定する」(担当課)というが、既存のハローワークなど関係機関との差別化はどうするのか、中途退職者からの需要がどの程度あるのか、県がどこまで企業の求人情報を取れるのか…。詰めなければならない内容は山ほどある。
シャープ退職者をめぐっては、県と奈良労働局が約3年前に対策本部を立ち上げ、情報共有や連携態勢を強化する方針を確認している。同労働局によると3500人の希望退職者計画を受け、今月中にも関係機関と支援対策について話し合う予定だ。担当者は「県がどのような支援事業を行うのかは分からないが、シャープについては連携をとって万全を期していきたい」とする。
県が事業を進める際には、こうした関係機関との連携をどうするのかも重要だ。「事業を担当する職員は、まずは数人から。店を構えて客が来るかどうか。ちゃんと成果を出すためには、相当な努力がいる」と荒井知事。優秀な人材を確保したいという意気込みは分かるが、県のマッチング能力も相当なレベルを求められるのは間違いない。県議会では、メリットやデメリット含めて、しっかりと議論してほしい。
(有川真理)
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