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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

プーチン大統領はロシア軍が侵略したウクライナ4州の確保と、ウクライナの非ナチ化=ゼレンスキー政権打倒、非軍事化=ウクライナ軍の武装解除、中立化=NATO非加盟が前提でなければ絶対停戦しない。

2024年02月28日 | ロシアによるウクライナ侵略

2024年2月20日、ロシア軍によるウクライナ東部の要衝・アウディーイウカの掌握をたたえ

「アウディーイウカ掌握は重要な成功だ。おめでとう。この成功をさらに拡大する必要がある」

と語るプーチン露大統領。

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 ウクライナ戦争に関して、侵略しているロシア政府とロシア軍に非があることを大前提に、侵略されているウクライナ政府に即時停戦を求め、ウクライナ政府に軍事支援をしている欧米諸国には軍事支援の停止を求めておられる青山学院大学経済学部教授の白井邦彦先生

 その根本には、まず戦争を続けているとウクライナ市民をはじめとする人命が失われ続けるからとにかく停戦をということで即時停戦を求めるということ。

 そして軍事では武力では結局真の平和は達成されないという徹底した非軍事思想から、軍事援助はできるだけするべきではないという発想がおありです。

 白井先生は近時の記事でも迫力のある主張をなされており、

『ウクライナ支援デモで「軍備増強」を訴えるプラカードも、「軍事支援→支援国の軍拡」でもいいのか、国連ではロシア非難決議提出されず・・・』

では

『ドイツでは、軍事産業拡大→軍拡の流れができています。
 軍事支援をし続けていけば、軍拡に帰着するのは必然です。武器供与でもまさか自国でいらなくなった武器だけをウクライナに渡すというわけにはいかないでしょう。またウクライナに渡した武器の分だけ自国用は削る、といきません。費用に関しても、「ウクライナに軍事支援するから、その分自国の軍事費は削減する」はあり得ません。結局、「軍事支援を続けていけば、軍拡へ」と必然的になります。

 その現実が生じており、ウクライナ支援デモの「軍備増強を」のプラカードも「軍事支援を求める」以上当然の主張となります。「軍事支援には賛成、しかし軍拡には反対」は同時には成り立ちえません。
 軍事支援賛成の方々は、「ウクライナへの軍事支援のためなら、軍事支援国の軍拡も認める」という立場なのでしょうか?そしてそれでいいのでしょうか?』

と、私のような軍事支援に基本的に賛成する立場の人間に鋭い問いかけをされています。

ウクライナ戦争開始から2年。ウクライナ市民の最新世論調査で「領土の割譲もやむなし」という和平派は19%、徹底抗戦派は74%で4倍。停戦か抗戦かを決めることができるのは主権者であるウクライナ人だけだ。

 

 

 しかし、侵略しているロシアとされているウクライナの軍事力や国力を比べれば、NATO諸国がウクライナ政府に対する軍事支援を止めれば、ウクライナはロシアに蹂躙され、多数のウクライナ人が殺され、または殺されるよりもつらい目にあわされることは必定です。

 そこで、白井先生も最近は

「ロシア政権によるウクライナ侵略は当然違法不当、領土占領も全く許されないことです。この点は当然の前提としてまず強調しておきます。」

『 しかし「そうしたアメリカの軍事支援には反対、ウクライナは独力で戦うべき」では、ロシア政権の侵略の容認論です。』

明言されるようになりました。

 そして、

『しかしただ軍事支援反対では、軍事力の差からいって「ロシア政権の侵略容認論」で、その立場にも絶対立ちたくないし立たない。

 だから「即時停戦・和平交渉での解決を」というのが、軍事支援を要求されている国の一市民である私の主体的選択の結果としての主張です。』

という主張を展開されています。

ノーベル平和賞団体のマトビチュク代表「占領は戦争の一形態であり、そこでは暴力が続いています。強制移送、拷問、性的暴力、アイデンティティーの否定、強制的な養子縁組が起きるのが占領されるということです」

 

 

 私も非軍事的解決ができれば一番だと思っていますので、そんな魔法のような「即時停戦・和平交渉での解決」があるのならぜひ知りたいと、

『例えば、ゼレンスキー大統領がもう1年半も提案し続けている10項目の和平提案をどう修正したら、ロシアが交渉のテーブルについて即時停戦ができるのか。

ロシア軍に即時撤退を求めるよりも、むしろロシア政府とウクライナ政府に即時停戦させる方がまだしも容易で可能だという具体的なご提案があればいいのですが、見たことがありません。』

書いたんです。

 これに対して、とうとう白井先生から具体的な即時停戦論が出ました。

 今日の白井先生の記事

『仏大統領「ウクライナへの部隊派遣排除せず」と発言、スロバキア首相「一部の欧米諸国が派兵を検討」、しかしそれがなされたら世界大戦、その後は・・』

ではこう主張されています。

『私は世界大戦に通ずるようなことには絶対反対、ですから即時停戦・和平交渉での解決を、今改めて強く主張します。』

『ロシア政権による侵略は許されない、しかしNATOの東方拡大・ウクライナまでもの拡大がその引き金となったことは、否定できないし、上記の野口先生のxにもあるよう、NATO事務総長自体が再度認めている格好です。

「即時停戦、ウクライナ側はNATO非加盟、ロシア政権側は占領地返還撤兵」という形での和平合意で終結、すべきではないでしょうか?』

クリミア半島はもちろんのこと、ロシア軍が占領している地域はロシア政府が支配し続けることが、プーチン大統領が停戦交渉に応じる最低条件だ。

 

 

 NATOの東方拡大の話はいろいろ争いがあるのでさておき、

「即時停戦、ウクライナ側はNATO非加盟、ロシア政権側は占領地返還撤兵」

という即時停戦や和平協議なんて実現不可能です。

 ウクライナ側は今後ロシアの侵略を受けないという保障が確実にあればNATO非加盟は受ける余地があるし、できたらそうしてほしいです。

 しかし、ロシア政権側が占領地返還撤兵???

 それは絶対不可能です。

 何度も言っているように、プーチン政権は停戦の条件として、

1 ウクライナの非ナチ化=ゼレンスキー政権の打倒

2 ウクライナの非軍事化=ウクライナ軍の武装解除

3 ウクライナの中立化=NATO加盟断念

4 ロシアが強制併合したウクライナ4州とクリミア半島は当然返さない

を絶対条件にしています。

 白井先生は和平協議の中身は別にして、停戦だけはなんの前提条件もなしにいきなりできるのだと思っておられるのかもしれませんが、ロシアとウクライナ双方の合意による停戦は、実はウクライナ政府がロシア政府の要求を丸呑みして、事実上の無条件降伏を受け入れるしか実現しようがありません。

2022年3月30日付け読売新聞『ウクライナが「中立化」提示、プーチン氏には受け入れ困難な内容も…予断許さぬ停戦交渉』より

開戦当初の停戦交渉からロシアが占領地を返すといったことはないし、非軍事化と中立化はずっと言い続けている。そしてウクライナが戦争で粘ることで非ナチ化=ゼレンスキー政権排除が加わった。

プーチン政権が強制併合した4州の支配を恒久化する動き。

これでプーチン大統領がロシアの撤兵という要求を呑むわけがない。

 

 

 実際この数か月でも、プーチン大統領は2023年12月に侵略当初からロシアの目標は

「変わっていない」

として、具体的にはゼレンスキー政権ら親欧米派勢力の排除を意味する「非ナチス化」や、「非軍事化」「中立化」だと説明しました。

 また、プーチン大統領は2024年2月1日にも

「紛争をできるだけ早く終わらせることを望んでいるが、それはロシアの条件に従う限りでだ」

と譲歩に応じない考えを強調しています。

 そして、プーチン大統領は2月16日に、ウクライナのゼレンスキー政権が対露交渉を否定していることについて

「彼らが交渉したくないならそれでいい。だが、ウクライナ軍の反攻は失敗し、主導権は完全に露軍に移った」

「このままではウクライナは取り返しのつかない深刻な打撃を受けるだろうが、それは彼らの責任だ」

と述べ、ウクライナは早期に降伏すべきだとの考えを示しました。

 さらに、プーチン大統領はウクライナ全土からの露軍の撤退を前提とするウクライナの停戦条件

「法外な要求だ」

と批判し

「戦利品をロシアに放棄させようとする試みは不可能だ」

として、占領地域を返還しない意思を明確にした。 

 これだけコッテコテにプーチン政権が領土返還はかたくなに拒んで、実質的なウクライナ政府の降伏を求めているのに、白井先生が

『「即時停戦、ウクライナ側はNATO非加盟、ロシア政権側は占領地返還撤兵」という形での和平合意で終結、すべきではないでしょうか?』

とまだおっしゃるのには首をかしげざるを得ません。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2023年12月14日、首都モスクワで、ウクライナ侵攻開始後初めてとなる年末恒例の記者会見や国民対話のイベントを開き、ウクライナの平和は「我々が目的を達成したとき」にしか実現しないと述べた。

BBC『プーチン氏、侵攻の目的達成すれば「ウクライナに平和訪れる」 非ナチス化の目的は「変わらず」と』より

 

 

 逆に、私は2023年9月に書いた

ロシア政府が強制的に併合したウクライナ4州でも地方選挙を強行して侵略を既成事実化。ウクライナに即時停戦を促す即時停戦派はウクライナ人に「たかが領土」は諦めて人命尊重を優先すべきだと正直に説くべきだ。

で、すでにこう書いています。

『ですから、人命尊重のために即時停戦を!と唱える人々が、「たかが領土」、と言うのは偶然ではなく、ウクライナが停戦してロシアと和平交渉をしても、4州が戻ってくる可能性はないのです。』

『しかし、少なくとも即時停戦を主張する論者に求められるのは、停戦後の協議でロシアから領土が返ってくるかもしれないという嘘のエサをぶら下げることではないはずです。

 即時停戦したらロシアに占領されたウクライナの領土は帰ってこない公算が大きいが、それでも失われる人命は減る可能性があるのだと、正直にウクライナ人に説くことでしょう。

 それならそれで一つの見識です。』

 プーチン政権が憲法と刑法で領土割譲を禁止したうえで、2022年9月にウクライナ4州を強制併合して自国の領土としてしまった以上、ロシアが占領しているウクライナの領土を返還させることが前提の停戦なんてありえません。

 もうそれはあり得ないとプーチン大統領とラブロフ外相が何回繰り返して言ってきたことかわかりません。

ロシアが加速させる ウクライナ占領地のロシア化 (油井's VIEW) - 国際報道 2024 - NHK

NHK『ロシアが加速させる ウクライナ占領地のロシア化』より

ロシアの占領地では人権弾圧が半永久的に続く。

なぜウクライナのゼレンスキー大統領は停戦できないのか。それはプーチン大統領が領土の割譲を禁じ刑罰を科する規定を憲法などに設けたため、停戦交渉でロシアが併合した地域を返還することが不可能だからだ。

 

ボグナー国連人権監視団団長「戦争犯罪だ。国際人権法の重大な違反」。ロシア軍は侵略開始してからウクライナで民間人864人を拘束し9割以上を拷問し77人を裁判なしで即決処刑。ロシア軍は即時撤退せよ。

 

 

 即時停戦・軍事支援反対派が即時停戦を魔法の杖のようにいつも取り出して、停戦すれば戦争が止まるんだから軍事支援もいらなくなるというのは、ウクライナが領土を保全しながらの停戦がおよそ非現実的なのに、ちょっとずるいと思うんですよ。

 まして、白井先生のように

『「即時停戦、ウクライナ側はNATO非加盟、ロシア政権側は占領地返還撤兵」という形での和平合意で終結』

なんて、絶対に実現不可能です。

 もちろん、和平交渉の中でロシア軍が占領地から撤兵してロシア政府がウクライナ政府に占領地を返還するだなんて、およそ考えられません。

 むしろ、私は白井先生が人命尊重のためには何よりも即時停戦だ、だからウクライナがロシアに領土を割譲するのも仕方ないではないか、とおっしゃるのだと期待していました。

 それは伊勢崎賢治氏の浅薄な「たかが領土」論とは一線を画しており

『それならそれで一つの見識です。』

というのが心底私の意見です。

 徹底した人命尊重、徹底した非軍事を貫くなら、世間からの批判を恐れず、親露派というレッテル張りも恐れず、何よりも尊いのは一度失われたらにとど戻らない人命だ、降伏に近くても停戦すれば八方丸く収まるではないか、と勇気をもって言い切られるのかと思っていました。

 反米拗らせ論者や親露派陰謀論者ではなく、白井先生らまじめな即時停戦・軍事支援反対派がそうおっしゃっても、その主張が真に人命尊重と徹底した平和主義から出ていることをよく知っている私と当ブログは、絶対にそれを親露派だなどと謗らないことだけはお約束します。

「即時」停戦でロシアの占領が固定化すれば待っているのは大量殺戮。

 

「 ロシア占領下のウクライナ南部拘置施設に拘束されていた多数のウクライナ人が拷問や性的暴行を受けていた」とする調査結果を国際的専門家チームが公表。ロシア軍占領の現状を固定化する停戦は今はできない。

 

 

 

 

もし、即時停戦が不可能だという前提に立つと、白井先生のおっしゃる

ただ軍事支援反対では、軍事力の差からいって「ロシア政権の侵略容認論」で、その立場にも絶対立ちたくないし立たない。』

という立場からは論理必然的に、欧米がウクライナに軍事支援をするために軍拡をすることもやむなしとなります。

その結論を回避するために、即時停戦すれば問題は全部解決するのだというのは、停戦が不可能だと思う私には安直な気さえします。

国連憲章に違反して他国を侵略して戦争犯罪を積み重ねるロシア政府を徹底的に批判することが、国際法秩序を守ることになり、それが結局多くの人命が救う。

このような点から、侵略されているウクライナへの即時停戦を求めるのではなく、侵略しているロシア軍にあくまで即時撤退を求めるべきです。

また逆に今のまま停戦してロシア軍の占領が固定化してしまうと、強姦・拷問・処刑・子供の強制連れ去りというロシア政府・軍の戦争犯罪が継続する。

そして、軍事支援をウクライナにしないとロシア軍がウクライナ全土を蹂躙して大虐殺を繰り広げる危険性がある。

このように考えると、ウクライナへの欧米からの軍事支援は認めざるを得ないんです。

しかしともかく、高く非軍事の旗を掲げ続けてこられた白井先生の誠実さは疑いようがなく、先生がいわれなきレッテル張りや批判を受けるようなことがあれば、私も体を張ってお守りする覚悟です。

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「主導権は完全に露軍に移った」プーチン氏、ウクライナに降伏要求 「戦勝」へ自信深める

ロシアのプーチン大統領(タス=共同)

プーチン氏は先月16日、ウクライナのゼレンスキー政権が対露交渉を否定していることについて「彼らが交渉したくないならそれでいい。だが、ウクライナ軍の反攻は失敗し、主導権は完全に露軍に移った」と主張。「このままではウクライナは取り返しのつかない深刻な打撃を受けるだろうが、それは彼らの責任だ」と述べ、ウクライナは早期に降伏すべきだとの考えを示した。

さらにウクライナ全土からの露軍の撤退を前提とするウクライナの停戦条件を「法外な要求だ」と批判。「戦利品をロシアに放棄させようとする試みは不可能だ」とし、占領地域を返還しない意思を明確にした。

プーチン氏は同1日にも「紛争をできるだけ早く終わらせることを望んでいるが、それはロシアの条件に従う限りでだ」と譲歩に応じない考えを強調した。

プーチン氏はこの日、ロシアの考える停戦条件には言及しなかった。ただ、プーチン氏は昨年12月、侵攻当初からロシアの目標は「変わっていない」とし、具体的にはウクライナの親欧米派勢力の排除を意味する「非ナチス化」や、北大西洋条約機構(NATO)加盟断念を指す「非軍事化」「中立化」だと説明。停戦にはウクライナがこれらの要求に応じることが必要だとプーチン氏が考えていることは明白だ。

プーチン氏の強気姿勢の背後には、戦場での露軍の前進があるもようだ。露軍はウクライナ軍が昨年6月に着手した反攻で疲弊したとみて、昨年秋ごろから東部で攻勢を強化。12月にはドネツク州の激戦地マリインカを制圧し、今年1月にも同州や東部ハリコフ州で集落を制圧したと主張した。

一方、ウクライナ軍は人員や砲弾の不足が深刻化していると伝えられている。ハンガリーが反対していた欧州連合(EU)の支援案は合意に至ったものの、米国でバイデン政権のウクライナ支援案が議会の承認を得られるかは予断を許さない。

ただ、ロシアが望むような「戦勝」を得られるかは未知数だ。ゼレンスキー氏は対露交渉の可能性を完全に否定している上、ウクライナ軍は現在、攻撃から防御に転じ、陣地を守りつつ露軍の損害を拡大させる戦術に移行している。軍事専門家の間では、双方とも相当期間は勝敗を決することができず、戦局は全体的に膠着状態が続くとの見方が強い。

 

 

ウクライナ侵攻・2年

「停戦可能」揺さぶる露 欧米の外交的対応焦点

ロシアのプーチン大統領=モスクワで2月20日、スプートニク通信・ロイター

 ロシアのプーチン政権がウクライナへの軍事侵攻を始めてから24日で2年。前線ではロシアが攻勢に出る中、ウクライナは米国の軍事支援が滞るなど、苦しい状況にある。近い将来、この戦争は収束できるのか。

 「もし本当に戦いを止めたいのなら、(米国が)武器供与をやめる必要がある。(そうすれば)戦争は数週間で終わる」。今月上旬、米国の保守派ジャーナリストの取材に応じたプーチン大統領の発言はさまざまな臆測を呼んだ。

 プーチン政権は、隣国への軍事侵攻を「西側との代理戦争」とも位置付けてきた。ロシアはウクライナの頭越しに、その後ろ盾の米国と停戦や和平の交渉に臨むつもりなのか。

 「今のプーチン氏は完全に勝利できると考えているのだろう」。ロシア情勢に詳しい笹川平和財団の畔蒜(あびる)泰助主任研究員はこう指摘する。「完全勝利」とは、米国が和平を優先して軍事的関与を低下させ、ウクライナの事実上の中立化に同意することだという。

 ウクライナでは、昨年の反転攻勢の失敗を受け、ゼレンスキー大統領が、長く指揮してきたザルジニー軍総司令官を解任した。米国では連邦議会がウクライナ向けの軍事支援予算案を承認できない事態が続く。畔蒜氏は、こうした複合的な要因がロシアに有利な状況を生み、現状ではプーチン氏の側に譲歩の理由が見当たらないと指摘する。

 では、ウクライナを支える西側はどうすべきか。滞りなく兵器を供与し続けることを大前提として、欧米はロシアとの対話チャンネルの再構築にも努め、将来的な停戦の可能性を探る――。畔蒜氏は、このような従来と違った形でロシアに向き合わなければ、西側やウクライナが受け入れ可能な均衡点を見つけるのは難しいと分析している。

 現在のウクライナでは、ロシアが国土の17%を占拠している。このまま和平や停戦を受け入れることには、世論の拒絶感は強い。理由の一端には、侵攻直後の悪夢のような経験がある。

 2022年2月に侵略が始まった直後から、ウクライナは防戦の一方で対露交渉にも臨んでいた。同3月末の協議では、停戦に合意できるかもしれないとの期待感が生じた。だがその直後、ロシア軍が撤収したばかりの首都キーウ(キエフ)近郊ブチャで、市民の遺体が路上などで多数見つかる。和平協議は頓挫した。

 そのため、今のウクライナでは、停戦が実現してもロシアが占領地域で同様の事態を起こしたり、さらなる侵攻へ向けた準備期間にしたりすることへの恐怖感や警戒感が根強いようだ。

 ただ、戦況が改善せずに死者が増える中、全土奪還を目指すかどうかについては、ウクライナ社会も揺らぎ始めている。

 世論調査機関「キーウ国際社会学研究所」の2月上旬の調査では、この戦争を解決する手段に関する2択の質問で、「犠牲者の数にかかわらず、軍事的手段によってのみロシアを打倒できる」との見方に賛同した回答者は23%。22年5月時点から12ポイント減少した。他方、「人的犠牲を最小限に抑えるため、軍事に加えて外交的な手段も追求すべきだ」との見方を支持したのは72%で、22年5月から13ポイント増えている。

 後ろ盾となってきた欧米の政府は公の場では、戦争の解決策はウクライナが決めるべきだとの立場を取り続けている。ただ、昨秋には、欧米側がウクライナ政府に外交的な解決策も検討するように提案した、と米NBCニュースが報道。「戦う」以外の選択肢の模索を促す声が国内外で徐々に広がりつつあるようだ。

 今月16日付の英紙フィナンシャル・タイムズに、米国が盟主の北大西洋条約機構(NATO)が事態打開への役割を果たすべきだとのコラムも掲載された。

 筆者は東欧ブルガリアの著名な政治学者、イワン・クラステフ氏だ。寄稿では、ロシアとの和平交渉を始められるのならば、ウクライナと欧米は「全土奪還」に固執すべきではないと指摘。むしろ、NATOがウクライナの加盟を承認し、占領されていないウクライナ領土の保全を試みて、それを対露交渉のカードに使うべきだと論じている。【大前仁】

プーチン氏、圧勝5選狙う

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 プーチン大統領は3月半ばの露大統領選を見据え、戦果の誇示に努めている。そのさなか、政権にとって都合の良いタイミングで伝えられたのが、ウクライナ東部ドネツク州の要衝アブデーフカの制圧という「朗報」だった。

 アブデーフカは、ウクライナ軍が2014年から続いた親露派武装勢力との戦闘でも守り抜いてきた拠点だ。プーチン氏は20日、ショイグ国防相に「疑う余地のない戦果だ」と語った。

 昨年2月に「特別軍事作戦」開始1年を迎えた当時、ロシア軍は各地の前線で苦戦を強いられており、政権は目立った行事を催さなかった。今月29日には年次教書演説が予定され、戦線での優勢を一層アピールするものとみられる。

 こうした姿からは、間近に迫る大統領選を圧倒的な得票で制したい思惑が透けて見える。今回の選挙には他に3人の立候補者がいるが、いずれも政権に協調的な「体制内野党」からの出馬。プーチン氏の通算5選が確実視されている。それでも、政権は国内での警戒感を緩めていない。

 大統領選では当初、ウクライナでの作戦継続を批判する元下院議員のナデジディン氏が立候補を目指していた。1月に候補登録へ必要な署名を集めた際には、モスクワなどで支持者らの長蛇の列ができた。2月16日に反体制派指導者のナワリヌイ氏が北極圏の刑務所で獄死すると、追悼の動きが広がった。政権は「危険」とみなす動きは封じる姿勢で、来る選挙を通じて体制強化を図る狙いとみられる。【モスクワ山衛守剛】

ゼレンスキー氏、支持低下 反攻失敗

 「ロシアの狂気は敗北しなければならない。そのために私たちはあらゆることをする」。ウクライナのゼレンスキー大統領は22日のビデオ演説で改めて国民に結束を訴えた。ただ、反転攻勢に失敗し、戦争による疲弊が深まる中、ゼレンスキー政権は国内での支持率低下に直面している。

 キーウ国際社会学研究所によると、ゼレンスキー氏の支持率は2022年12月の84%から62%(23年12月)まで下落した。政府への信頼度に至っては52%から26%へと大きく落ち込んでいる。

 ゼレンスキー氏は今月8日、軍トップのザルジニー総司令官を解任し、シルスキー陸軍司令官を後任に据える人事を発表した。「鉄の将軍」とも呼ばれたザルジニー氏は国民からの人気が高かった。

 ウクライナ政治に詳しい研究者、コンスタンティン・スコルキン氏は、米シンクタンクのサイトに寄せた10日付の分析で、ゼレンスキー氏が世論の大勢に逆らったのは初だと指摘したうえで、「彼の決断はザルジニー氏を英雄視する有権者らをはねつけるものだ」と批判した。

 後任のシルスキー氏は、ザルジニー氏が打ち出した無人兵器やサイバー戦重視への戦術転換の方針を踏襲する考えとみられる。だが、欧米による兵器や弾薬の供与は追いつかず、ウクライナ軍は前線で守勢に立たされているのが現状だ。

 兵員不足も深刻だ。米メディアは23年8月、ウクライナ側の戦死者は約7万人、負傷者は10万~12万人との米政府当局者の推計を報道。ゼレンスキー氏は同12月、最大50万人の追加動員を検討中と表明した。一方で軍への志願者は激減し、「徴兵逃れ」が大きな問題となっている。【ベルリン念佛明奈】

 

 

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4 コメント

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弘法も筆の誤り (村野瀬玲奈)
2024-02-29 01:25:12
「絶対にそれを親露派だなどと謗ることだけはお約束します。」って、

「絶対にそれを親露派だなどと謗ることだけはしないとお約束します。」

の書き間違いだと思うのですが、いかがでしょうか。
返信する
Unknown (raymiyatake)
2024-02-29 01:29:10
うわ!ほんまや!!
村野瀬代表、ありがとうございます😭
助かりました!!

白井先生、お読みになってたら、弘法ならぬ身の過ちです
お許しくださいませ!!
返信する
理想論 (津木野宇佐儀)
2024-03-04 05:10:51
プーチン・ロシアも
兵士と家族が不満を募らせているそうですし(母親の会)とか、弾圧を恐れずナワリヌイ氏の追悼とか…
プーチン・ロシアが内側から自壊する期待もなきにしもあらずかと…(本当に理想論!)
それに伴う暴力を考えたら…とらぬ狸のナントカの胸が痛みます。が、そうあって欲しいと思います。ウクライナだけでなく今後のロシアのためにも。
領土問題は「プーチン・ロシア」後に交渉で解決すべき問題だと思います(あくまで「崩壊」が前提の話(理想論!)ですが)。

本当にあくまで理想論です
返信する
Unknown (秋風亭遊穂)
2024-03-10 16:30:54
 プーチンの戦争目的をタッカー・カールソンのインタビューから拾ってみる。

1,ロシアが戦争目的を達成したかどうか→「いいえ、我々はまだ目的を達成していない。その一つが非ナチス化だからだ」
さらに、「根拠なくナチズムを「支持」している(つまり反ロシア思想の人々をーその判断はロシア治安・諜報機関が恣意的にするのだが)我々は排除しなければならない」
2,ロシアが現在占領している領土にプーチン大統領が「満足」するか→「前の質問への答えはまだ終わっていない」と回答を拒否。

Tucker Carlson’s Putin interview: 9 takeaways
politico.eu/article/9-takeaway-vladimir-putin-interview-tucker-carlson/
([https://www.]を冒頭に付けてください)

 プーチンの意図は、1で見るとおり。停戦合意してもウクライナ全土で徹底した弾圧を続けることになる。無条件降伏とはそういうことだ。軍事史家の大木毅が独ソ戦を世界観戦争と呼んだが、ヒトラーが「スラブ人という劣った人種を殲滅ないしは奴隷化し、その後にドイツが植民地帝国を作るための闘争」と位置づけたことによる。プーチンの世界観にもそれが色濃く存在しているだろう。だから2の質問は意味をなさない。机上の理論でしかものを考えない野口和彦氏のような人には軍事的合理性を超えた世界観戦争を理解することはないだろう。世界観戦争はイスラエルがパレスチナを攻撃する精神的支柱とも言える。だから戦争犯罪と批判をされようがやめることはない。
 
 ゼレンシキーは次のように述べている。

プーチンは一部の領土ではなくウクライナ全土をロシアに併合したがっている=ゼレンシキー宇大統領
ukrinform.jp/rubric-polytics/3837452-puchinha-yi-buno-ling-tudehanakuukuraina-quan-tuworoshiani-bing-heshitagatteiruzerenshiki-yu-da-tong-ling.html
([https://www.]を冒頭に付けてください)

引用開始----
私たちが見ているのは彼らの行動である。民間施設への攻撃、ミサイルによるウクライナ民間人への脅迫、彼らのメディア、プーチンの周辺人物、様々な公の場での発言、彼らの情報機関代表者や軍人や、彼ら全てのメッセージが、彼らは課題を履行し終えていない、彼らは今後もミッションを継続していくということを物語っているのだ
引用終わり----

 この戦争におけるプーチンの世界観を具体的な行動にしたのがこのようなことだった。単なる領土欲、NATOの脅威という理由では子どもの連れ去りといった戦争犯罪を説明できない。

 ゼレンシキーは記事の中で、「プーチン氏はベラルーシを政治的手段で支配した。・・・ウクライナでは、彼は政治的にそれ(編集注:政治的手段での支配)を実現できなかった。政治的計画が破綻したら、彼は軍事作戦を開始した。」としている。まさにそのとおりだ。プーチンがいう「非ナチス化」の意味を考えなければ、ウクライナ国民が徹底抗戦を続ける理由はわからない。
 非ナチ化によって少なくないウクライナ国民が国外へ逃れるかもしれない。その後にロシア人が入植する(すでにマリウポリはそうなっている)。まさにイスラエルがパレスチナでやってきたことだ。冒頭に引用したヒトラーの世界観をここに置き換えれば「ウクライナ人という劣った人種を殲滅ないしは奴隷化し、その後にロシアが植民地帝国を作るための闘争」というものだ。

‘Focus on the apartment’s potential’ A Russian propaganda film explores the ‘unconventional housing market’ in war-ravaged Mariupol
meduza.io/en/feature/2024/02/06/focus-on-the-apartment-s-potential
([https://]を冒頭に付けてください)

引用開始----
Orekhova は、市内のさまざまな場所で売りに出されている物件を紹介してくれた地元の不動産業者3人に話を聞いた。結局のところ、これらの物件はほとんどが半壊したアパートで、身の回りのものをすべて置いて逃げた住民が急遽放棄したものだ。しかし、不動産業者によれば、そのような物件でさえも高い需要があるという。場合によっては、壁の一部だけが爆撃を免れた実際の廃墟が売りに出されている。しかし、ロシアの建設会社がこれらの建物を後から無料で修復するため、価格は大幅に上昇する。また、戦争から手つかずの希少な物件や、修復された建物の中に新しく改装されたアパートメントもある。これらの価格は400万から600万ルーブル(約50,000ドルから66,000ドル)である。マリウポルの中心部にあるスターリン時代の歴史的建造物にあるアパートで、中庭(つまり囲われた駐車場)が残っていたり、玄関が改装されていたり、海が見えたりするものは、高級住宅とみなされている。
引用終わり----
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