転移者の多いシルバーギルド内では、ラテン文字で書かれた英語が使われるようになっていた。
エドワードのサウンドスペルをこのんで使おうとする者もいた。(地球世界には、ほかにも英語つづり字改革案はある。)
だが、旧来の英語とサウンドスペルが両方つかわれているうちに、どっちつかずの書き方も生じた。
発音がわからなければ発音の通りに書けないという表音主義の弱点が露呈することもあった。
あるいは、わかりやすさを優先するために、たとえば、I, eye, aye, buy, guy などは、ルールとは無関係にそのまま使われたし、buy, by, bye などの区別も生きていた。
by を bi と書きたがらない人も、less を les と書きたがらない人も、かなりいた。
sell と cell の区別も、sent, cent, scent などの区別も、黙認されていた。
本家のサウンドスペルを完璧に使いこなす人物など、異世界には皆無であった。
そもそも、本家サウンドスペルでさえ、旧ルールと新ルールがあるのだ。
air, bair, cair, fair, hair が、旧ルール。
aer, baer, caer, faer, haer が、新ルール。
これらについては、旧ルールに分があった。
エドワードは、旧ルールの時代の中心人物であった。