緊急で来院したこの猫ちゃんなのですが……もだえ苦しみながら手足をばたつかせ、ひどい血便を垂れ流していました。
この子がいた近くには吐いた跡があり、この状態だったのですが、もう一匹いた猫ちゃんは既に亡くなっていたそうです。
眼を見ると、瞬膜が突出し、左右とも瞳孔が縮小しています。
このように左眼の方がひどく、縦線のようになっています。
このような典型的症状あれば、毒物を推測し拮抗する薬を投与できるのですが…なかなか難しいケースが多いですね。
飼い主さんによると、かなり前から近所でパンや肉団子に青い薬?がぬられものがばらまかれているようなのです。
近所には農家の方が多く、カラスやアライグマ、ハクビシンなどによる農作物の被害があるとのこと――その被害を食い止めることが目的なのか?
それによって時々カラスやタヌキが亡くなっていることがあるようなのですが、地域の猫ちゃんだけでなく、散歩中のワンちゃんも2匹犠牲になってしまっているようなのです。
(この地域は田んぼや畑だけでなく大きな森があり、なんとアライグマが10匹くらいはいるらしいのですが、なぜかアライグマが死んでいたという話は聞かないそうです)
そして、5年以上前にも同じ地域で青い薬をぬられたものがまかれており、それを食べたと思われる猫ちゃんが来院していたことを思い出しました(今回の子のような急性の症状ではない)。
飼い主さんは警察に相談し、青い薬がぬられたパンを提出したらしいのですが、上述のこともあってか、しっかり捜査してくれるかわからないようです(法律上こんなことが許されるのでしょうか?)。
近所には保育園もあるとのことで、飼い主さんはとても心配していました。
拮抗薬を注意深く投与したら次第に症状は落ち着いたものの、夜中に嘔吐しました。
嘔吐したものは投与した活性炭ために黒く、ついでに農薬の成分で死んだ回虫が4匹も出てきました(使われた農薬は、既に製造されていない害虫駆除のための薬と思われました)。
翌日には、横になってもだえ苦しんでいた状態から猫座りができるようになり、瞳孔の大きさも正常になりました。しかし、血液検査をしてみると、肝臓と腎臓の数値が高くなっていました。
かなり腸粘膜が傷つけられたらしく、血便がなかなか治まらなかったのですが、3日目には食欲も出てきて来ました。元気が出てくると、ゴロゴロと喉を鳴らしながら前肢をモミモミする、とても人懐っこくてかわいい子でした!
この子は元気に退院できましたが、食べてしまった量が多かったり、発見が遅れたりすると救命が難しくなってしまいます。
◎佐倉市馬渡(四街道市みそらも近いので要注意!)周辺に住む方は、ワンちゃんの散歩中も気をつけて下さい!そして青いパンや肉団子を見つけたら排除し、警察に提出&相談しましょう!!