ずしん、と地響き。亀は腹を見せてジタバタともがいている。
そんな亀を、アジュアは無表情に見つめている。
「単純な『てこ』です。卑怯者にはお似合いですよ」
やばい。今は声かけちゃいけない。あの状態を見たのは久しぶりだ。
俺は出来るだけ、アジュアから目を逸らした。
すると、俺の掘った穴の近くに、何かが埋まっているのを見つけた。
掘り出してみると、それは松明だった。
当然ながら、火はともっていない。
「魔力を感じますわね。これは持って行きましょう」
エリュテイアが松明を荷物に加えた。
もう暫く歩いた頃、後ろの方から、草を踏むような音が聞こえてきた。
馬が近づく音だ。が、辺りを見ても、そんな相手は見当たらない。
後ろに気配を感じた。振り向くと、黒い奴がいた。
漆黒の馬に乗った騎士。フルプレートの一切も、艶消しの黒。
馬上の騎士は、身の丈を超える長槍――それもやはり黒――を振り上げる。
流れるような動きは、そう、とても綺麗に見えた。
「!」
バカな事を考えてると気づいた時には、もう遅かった。
金縛りに遭ってしまっている俺たちの中へ、槍は飛んだ。
俺の胸を刺し貫い……たように見えたが、我に返った時にはもう、
槍ごと奴は消えていた。
「今のはマティウスの術ですわ。用心なさって。ヴァイス」
そんな亀を、アジュアは無表情に見つめている。
「単純な『てこ』です。卑怯者にはお似合いですよ」
やばい。今は声かけちゃいけない。あの状態を見たのは久しぶりだ。
俺は出来るだけ、アジュアから目を逸らした。
すると、俺の掘った穴の近くに、何かが埋まっているのを見つけた。
掘り出してみると、それは松明だった。
当然ながら、火はともっていない。
「魔力を感じますわね。これは持って行きましょう」
エリュテイアが松明を荷物に加えた。
もう暫く歩いた頃、後ろの方から、草を踏むような音が聞こえてきた。
馬が近づく音だ。が、辺りを見ても、そんな相手は見当たらない。
後ろに気配を感じた。振り向くと、黒い奴がいた。
漆黒の馬に乗った騎士。フルプレートの一切も、艶消しの黒。
馬上の騎士は、身の丈を超える長槍――それもやはり黒――を振り上げる。
流れるような動きは、そう、とても綺麗に見えた。
「!」
バカな事を考えてると気づいた時には、もう遅かった。
金縛りに遭ってしまっている俺たちの中へ、槍は飛んだ。
俺の胸を刺し貫い……たように見えたが、我に返った時にはもう、
槍ごと奴は消えていた。
「今のはマティウスの術ですわ。用心なさって。ヴァイス」