▶これでリーメンシュナイダー写真集は完結です。
❤『完・祈りの彫刻 リーメンシュナイダーと同時代の作家たち』(丸善プラネット 2020年11月15日発行)
▶リーマンショックで始まり、コロナで終わった4冊の写真集
今まで何回も書いてきたように思いますが、4冊の写真集を目の前に、もう一度だけここに至る思いを書いておきたいと思います。
私が『祈りの彫刻 リーメンシュナイダーを歩く』(丸善プラネット)を自費出版したのは2008年のことでした。この年は秋からリーマンショックが始まり、世界中の景気が悪くなった大変な年でもありました。当時、株を持たない私たちはあまりそのショックを大きく感じないでいましたが、働く人たちや経済にとっては大きな衝撃だったことを思い出します。ようやく2008年12月末に写真集第一巻ができあがりました。
この『祈りの彫刻 リーメンシュナイダーを歩く』は自分で見ても誤字や脱字が多く、せっかく写真を提供してくれた故ヨハネス・ペッチュからは「この赤い色は一体どうしたんだ。いつ印刷し直させるんだい?」と怒られたことが忘れられません。印刷会社と色合いについてのやりとりができるかどうかも全く知らず、毎回「もっと赤みをとってください」と言い続けたのに…と正直悲しく、残念な思いが残りました。
このままではヨハネスに申し訳ないと、「ヨハネスのためにも、彼の満足のいく写真集をもう一冊出そう」と思い直すようになり、まず彼の赤くなってしまったローテンブルクの聖血の祭壇を彼の望む色合いで焼き直すことを第一に、そしてこのときには撮影が許可されなかったヘルゴット教会のマリア祭壇も、トーマス・ブルク牧師さんがご自分で撮影した写真とクレークリンゲン市の担当者が撮影した写真とで載せることを第二の目的に、そしてその後撮影し続けたリーメンシュナイダー作品を紹介する事を第三の目的として作ったのが『続・祈りの彫刻 リーメンシュナイダーを歩く』でした。
この2巻目は最終段階で初めて色の調整に印刷会社まで出向き、色の調整も強く働きかけて仕上げていただきました。今まで拝観し、撮影してきたリーメンシュナイダー関係作品の一覧も載せたので、「リーメンシュナイダーの追いかけ人(びと)」としての集大成とも言えます。
こうしてできあがったばかりの2巻目を持ってヨハネスの家を訪ねたのが2013年の1月です。ヨハネスは、2010年に脳梗塞を患って以来ことばが話せなくなっていました。お連れ合いのフリーデルともコンタクトが取りにくくなって不機嫌なことが多くなっていたのですが、2巻目の彼の写真頁を見せたときには笑顔でOKと示してくれました。ようやくホッとして、「これで私の任務は終了!」と思ったのでした。
ところが、同時代の作家の魅力にはまっていた三津夫から、「中世の作家の作品はリーメンシュナイダーだけじゃないんだよ。あなたはそれを僕と一緒にたくさん見てきたでしょう? 良い写真も撮ってきたでしょう? それをもう一冊写真集にまとめて日本に紹介したいんだよ」と強く薦められ、とうとう3冊目の写真集を出すことになりました。
そして2018年にできあがったのが『新・祈りの彫刻 リーメンシュナイダーと同時代の作家たち』でした。ここにはリーメンシュナイダーだけでなく、同時代の作家たちの作品を38点載せました。どちらかというとリーメンシュナイダーよりもそちらに力点を置いた写真集となりました。
さらに、2019年11月~12月には第一回目の福田 緑写真展「祈りの彫刻 リーメンシュナイダーを歩く」を開催しました。日本自費出版文化賞でグラフィック部門の特別賞を受賞するという幸運が重なって2週間で500人を超える方が足を運んでくださいました。
「もう本当にこれで完結編」と思っていたのに、さらに三津夫に「まだ同時代の作家たちのもっと良い作品写真が一杯ある。それをまとめた本が日本にはまだないからこそ紹介したいんだ」と何度も促され、作品のパワーと三津夫の熱意に根負けして作ることにしたのが『完・祈りの彫刻 リーメンシュナイダーと同時代の作家たち』です。「もう本当にこれで最後だからね」と三津夫にも念を押して、今まで集めた資料から膨大な作品一覧を作りました。コロナ禍のStay Home の中でじっくりと時間をかけ、エネルギーを注いでまとめた一覧です。
その4冊目の写真集が10月31日、わが家に届きました。
色合いは、もう少し暗めの教会や博物館の雰囲気を伝えたかったのですが、比較的明るいトーンの、でもきれいな写真集となりました。三津夫と二人でじっくり眺め終えて、ホッと一息ついたところで彼が言うには、「この1枚1枚に思い出があるんだよね。写真だけでは伝わらないなぁ…。ねぇ、解説本を書かない?」。でも、私は書きません。一つ一つの語りたい思い出は、写真展でみなさんに伝えていこうと思っています。
❤2冊目の写真集を届けた日のペーターとイングリッド
ヴュルツブルクのペーター宅にて
▶クリスマスの贈り物に…。
ペーターを始め、大変お世話になった方々(ご家族)にはちょうど時期もクリスマスに近いので、クリスマスの贈り物として送り出したいと思っています。ペーターは11月6日に中央墓地に葬られるそうです。それには間に合いませんが、イングリッドか息子さんのペーターにできあがった第4巻を墓前で見せてもらえたらと思っています。
『完・祈りの彫刻 リーメンシュナイダーと同時代の作家たち』(福田 緑著・撮影 丸善プラネット)が書店に出回るのは恐らく今月中旬になると思われます。三津夫のアマゾンプレイスの本屋「猫家族」でも、いずれ取り扱う予定です。でも、なにしろ価格が 6000円+税 と高価ですので、あまり無理をなさらずに、お近くの図書館に購入希望を出していただけると大変嬉しいです。
❤友人宅の庭で 薔薇
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