▶色校正
梔、再び
いよいよ色校正が始まりました。
先週6月22日(金曜日)に富士美術印刷まで行ってきました。5年前に一度来ているにもかかわらず、道順もまったく覚えていなくて心細かったのですが、白石さんが西日暮里駅で待っていてくださいました。そのお顔を見てホッとしました。このあと午後まで一緒に色原稿を見てくださるそうです。
富士美術印刷についてじきに何人もの方と名刺交換をしたので、どなたがどなたなのか目が白黒してしまいましたが、何度かお目にかかっている加藤さんは営業の方だったと、この日に初めて知りました。前回のブログで、加藤さんが画像を担当してくださっていると紹介してしまいましたが、富士美術印刷と丸善プラネットや他の会社との橋渡しをして活躍している方だったのですね。大変失礼しました。
実際に色調整の難しい部分を担当してくださるのは大塚欣一さんでした。初めてお目にかかりましたが、私のいわんとすることをサッとのみ込んでメモをし、嫌な顔一つせずに注文を聞いてくださいました。白石さんも加藤さんも、あとで悔いが残らないように、何でも気がついたことは書き込んでおいてくださいと言ってくださったのです。ありがたいことです。雰囲気で面倒だと思っていたり、そこまで要求されてもと思われているのはわかるものです。でも、この富士美術印刷の方々はまったくそんな感じがなく、安心して大船に乗った気持ちがしました。
用意してくださった色校正原稿は、私以外の人が見たら、多分十分美しく、彫刻の表情もよく出ていると思えるものだったでしょう。ただ、私としてはこの部屋の壁の色合いが同じように出て欲しいとか、金色が輝きすぎるからもう少し抑えたいとか、肌のきれいなピンク色が出て欲しいとか、大変欲張りなのです。でも、パソコンを見たらまた少し違っている可能性も高いので、大塚さんとの打ち合わせを終え、「原稿は送っても良いですよ」と言ってくださったけれど、自分で持ち帰ることにしました。
お昼をいっしょにいただいたときに、白石さんが、「印刷するときも見てみますか?」とおっしゃるので、「え、そんなことできるんですか?」と驚いて聞き返してしまいました。「大丈夫だと思いますよ」とのこと。「それなら見てみたい!」という気持ちが入道雲のようにむくむく湧いてきました。ご用があって先に帰られた白石さんのことばを加藤さんに伝えてみたら、「う~~ん」と、ちょっと困った様子。多分大事な集中しなければならない作業の邪魔になるのではないのかなと思ったのですが、「今、見てみます?」と言ってくださったので喜んでついていきました。
会議室とは別の大きな建物に入るとツーンとインキ(加藤さんはインキとおっしゃっていましたので私もそう書くことにします)の匂いがします。ドアを開けると大きな機械音。私は突発性難聴をわずらって後、左耳が良く聞こえないので、右耳だけが頼りなのですが、機械音で加藤さんの説明もやっと聞き取れるぐらい。それでも大体の工程は理解できました。インキには青のシアン、赤のマゼンダ、黄色のイエロー、そしてブラックの4種があることは家のプリンターで知ってはいたものの、機械の横にたくさんのインキの缶が積んであるのを見て驚きました。その反対側には音響調整をするような調整機があって、ここで色合いを調整するそうです。大きな紙が次から次へと機械の中に巻き込まれ、色がついていく様子が少し見えました。ここで働く方々は私を見ても邪魔者扱いせず、にこやかでした。普段からいい人間関係が紡がれているのだろうなぁと感じました。思いがけず印刷工場見学までできてしまったので、とても有意義な色校正でした。
ただ、家に戻ってパソコンの色と比べたら、「頭の中の方が実際よりも緑色のイメージが強かったんだなぁ」とか、「この作品の後ろの壁は違う色だったじゃない!」と、冷や汗をかきました。やはり手元に基準の色見本がない状況での色のつき合わせは難しいものだと痛感しています。私の頭は、イメージが勝手に動き出す癖が強いのかもしれません。
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