リーメンシュナイダーを歩く 

ドイツ後期ゴシックの彫刻家リーメンシュナイダーたちの作品を訪ねて歩いた記録をドイツの友人との交流を交えて書いていく。

322. 18回目のドイツ旅行(2) 2人旅 コペンハーゲンからリューベックまで

2023年12月06日 | 旅行

▶ドイツからコペンハーゲン、シュレースヴィッヒ、リューベックを訪れた目的とは?


シュレースヴィッヒ、聖ペトリ大聖堂の「ボルデスホルマー祭壇」1521年  Hans Brüggeman
 ※元々はボルデスホルムにあるアウグスティヌス教会参事会教会に設置されていました。

 

▶ハンス・ブリュッゲマンがテーマの旅

 昨年の秋には初めてシュレースヴィッヒの大聖堂を訪れ、この頁のトップ写真として掲載した偉大なる「ボルデスホルマー祭壇」を拝観しました。北ドイツで最大の祭壇(高さ12.6m)だそうです。そのとき、私たちはハンス・ブリュッゲマンの力量に感銘を受け、その場で『Bordesholmer Altar(1521)』という冊子を買い求めました。その冊子を資料として今年は近隣にあるブリュッゲマンおよび工房等の作品を訪ねておこうと以下のように計画したのです。

 ★デンマークのコペンハーゲン国立博物館・歴史博物館:ブリュッゲマン作 聖ゲオルク像を見る
 ★シュレースヴィッヒ大聖堂を再訪:昨年はうまく写せなかった祭壇を丁寧に写す
 ★シュレースヴィッヒ、
ゴットルフ城博物館:ブリュッゲマン作、または周辺作家による作品を見る
 ★リューベック、聖アネン博物館:ブリュッゲマン作 「跪く聖人(大ヤコブか?)」を見る

 旅の1)は、こうしてハンス・ブリュッゲマンを訪ね歩くというテーマで5日間動き回りました。


▶まずはデンマークへ出発

 デンマークのコペンハーゲンまではドイツから列車で行けるので、私たちはフランクフルト空港で1泊し、翌日列車でコペンハーゲンに向かう予定でした。ドイツの友人たちは飛行機で行くと思っていたようですが、グローバルユーレイルパスを持っているので、わざわざ飛行機の切符を買う必要もありません。こうした列車旅も時間がゆっくりある老夫婦の特権でしょうか。

 8月1日。朝8時にフランクフルト空港駅を出発し、ハンブルクで乗り換えてコペンハーゲンへ。乗り換え時間に余裕を持っての列車選択に頭を悩ませ、一度乗り換えればコペンハーゲンまで行ける列車で行くことにしたのです。どちらも5時間前後の長旅なので座席予約は必須。日本にいる間にインターネットで汗をかきかき座席を予約できたときにはホッとしました。乗り換え時間が50分あるのでまずは大丈夫でしょう。大きな遅れも事故もなく、無事にこの2本の列車でコペンハーゲンに到着したのは午後8時近くとなりました。
 コペンハーゲン中央駅を出ると町は暗くて景色もわからず、少しウロウロして何とかたどり着いたホテルは、人は良さそうだけどエレベーターがありません。階段でトランクを運ばなければならないと予め情報は届いていましたが、それにしてもこの年寄り夫婦を3階の部屋にしなくても…とぼやきながら疲れた身体で何とか運び上げました。途中若い女性が少し手伝ってはくれましたが、なかなかきつい体験でした。部屋もベッドも狭くて、旅の始まりとしてはちょっと意気消沈した夜となりました。

 8月2日、早速コペンハーゲン国立博物館に向かって歩き、念願の「聖ゲオルク像」を堪能しました。これはリーメンシュナイダーの静かでアンニュイな雰囲気を持つ聖ゲオルク像とは正反対で、長い槍を既に竜の喉に突き刺して最後のとどめを打とうと鋭い剣を振りかざしている姿。今にも「我こそお前を征伐する者だ!」という音声が聞こえてきそうな迫力を感じました。この彫刻も皆さんにお目にかけたいところですが、残念ながら美術館・博物館の作品は勝手に載せられないので興味のある方はネット検索をしてみてください。


コペンハーゲン国立博物館・歴史博物館


博物館の奥にある宮殿 丸く並んだ石がおもしろくて写しました。

 

▶次はシュレースヴィッヒへ

 8月3日。この日はコペンハーゲンからハンブルクに向かう特急が停車するシュレースヴィッヒに宿を取りたかったのですが、駅の近くには宿の空きがなく、2駅手前のタープという町に宿を予約していました。しかし1時間に1本しかない列車では行ったり来たりが大変。できればシュレースヴィッヒ駅でコインロッカーはないか見てみて、無ければ2駅準急列車で戻るしかないと覚悟はしていたのですが、タープまで行く列車で戻り、ホテルにチェックインしてまたシュレースヴィッヒまで戻ってくると2時間はロスしてしまいます。シュレースヴィッヒはもっと大きな町かと思いきや、鉄道駅近くは閑散としたものでコインロッカーはおろか、荷物預かり所も見当たりません。すぐ近くに何か聞けそうなのはと見回したところ、下に掲載した写真のKioskだけしか見当たりませんでした。
 中に入って「この近くにコインロッカーか荷物預かり所はありませんか?」と店の女性に尋ねると、気の毒そうな顔で「ここには無いんですよね」とのこと。困ったなぁという顔をしながら「夕方まで預かってくれるところを探しているんですが」と言うと、「何時頃までですか?」と。「夕方4時か5時頃までお城博物館を見て、ここに宿が取れなかったからタープまで戻るんですけど」「このキオスクは午後6時までですから、確実に戻ってきてくれるのであればここで預かることはできますが」との返事。その瞬間、心がパーッと明るくなりました。「はい、必ず6時前には戻ってきます」と約束して大きなトランクを2個預けることができたときには、その親切なおば様と神様(無宗教ですけれど)に心から感謝しました。そして、まずはここでお昼の食べものと飲み物、少しおやつも買って、近くの芝生で食べました。第一難関突破。幸先の良い旅です。


とても親切なシュレースヴィッヒ駅のキオスク

 駅から歩いて行けるゴットルフ城博物館を訪ね、ブリュッゲマン、あるいは弟子か周辺作家の作品をいくつか拝観しました。それほど大きな博物館ではなく、午後3時半頃、博物館の目の前にあるバス停へ。来るときにはまだ元気でしたが、博物館が修復工事中で大回りしたため思っていたより長い時間歩いたことに旅の疲れも加わって、今日はバスで帰ろうということになったのです。夕方4時頃には駅に戻り、親切なおば様にお礼を言ってトランクを引き取ることができました。
 列車は16時15分発。タープまでは準急列車で14分。とはいえビュンビュン飛ばすのに驚きました。そして小さな駅 Tarp に着き、無事に宿に入ることができました。

 この宿は静かで部屋も広く、大きなテーブルセットと浴室がついています。トランクを4個ぐらい広げても大丈夫なほどで心もゆったり。夕食は宿で食べ、翌朝までゆっくり休みました。

 
 翌8月4日はタープからシュレースヴィッヒへ。駅を下りて早速キオスクのおば様に挨拶に行くと、今日も元気に働いていらしたので、再度お礼を言ってメッセージカードと日本の飴を手渡しました。

 昨年はヨーラとヘルヴィックが車で連れて来てくれたのですが、駅から大聖堂までは3km以上あり、歩くのは少し大変です。この日はバスで直接大聖堂に行くことにしました。まだツアー客もほとんどいない静かな大聖堂でゆっくり拝観し、撮影をさせてもらいました。この祭壇には彫刻がおよそ400体あるそうです。以前は日常的に翼が閉じられており、塔の上に立つキリストやアダムとエヴァなどの彫刻しか見られなかったそうです。一般の信者たちは年に数回、特別な行事の折りにしか見られなかったこれらの精緻な祭壇彫刻を、私たちはいつでも見せてもらえるというのは幸運なことだと思います。
 

 


「ボルデスホルマー祭壇」部分 いずれも奥行きのある細かな彫りに目を見張ります。

 

▶リューベックへ

 8月5日。ゆったりしたタープのホテルに別れを告げ、リューベックに着いたのは10時半頃でした。ホテルを見つけてトランクを預け、まずは駅まで戻って腹ごしらえ。ホルステン塔を通りぬける頃には真夏の太陽が照って喉が渇きました。何回か地元の人に聞きながらアネン博物館にたどり着くと、中には思っていた以上に多くの宗教彫刻がありました。そしてブリュッゲマン作「跪く聖人(大ヤコブか?)」も拝観することができ、一番の目的は達成。その後、いくつもある教会を巡り、最後にカタリーネン教会でエルンスト・バルラッハの彫刻を歩道から撮影しました。深く人間の悲哀や苦しみを感じさせる彫刻群です。よくご覧になりたい方は双眼鏡などお持ちになることをおすすめします。




エルンスト・バルラハの彫刻群:リューベック、カタリーネン教会ファサード


エルンスト・バルラハ:「聖者の集い」左から風の中の女・松葉杖の乞食・歌う修道僧 1930~1935 


エルンスト・バルラハ:上記3点の作品名は見つけられませんでした。 

 

 取りあえず、ここでハンス・ブリュッゲマンをテーマにした旅は一区切り。このあとは今までの取りこぼし、再訪、新規開拓の作品を見る旅が始まります。

※このブログに掲載したすべての写真のコピーをお断りします。© 2015-2023  Midori FUKUDA

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