優美、泣きながら車椅子を漕いで、下手方へ
行く。
春彦「危ない・・・!!私が付いて行こう!!(優美の方へ。)」
優美、春彦下手へ去る。
静「(晃の側へ。)晃・・・。優美ちゃん、及川君が亡くなった所で、
感情が昂ってるのよ・・・。気にしないで・・・。」
晃「・・・畜生・・・(涙を堪え、握り拳を握り、悔しさに体を震わす。)
」
静「晃・・・?」
晃「畜生・・・!!如何して俺はあの時・・・」
静「あなたの選択は、正しかったと思うわ・・・。」
晃「(フッと笑う。)正しかった・・・か・・・。如何してそう言い切れる
んだ・・・。もっと違う方法を選んでいれば、あいつは死ななくて
済んだかも知れないんだぞ!!」
静「あの時、ああするんだった・・・もっとこうすればよかった・・・な
んて考え方は、馬鹿げてるわ!!いくら悔やんでも、時は戻り
っこないもの!!あなたは生きて・・・彼は死んだのよ!!」
晃「おまえに俺の気持ちが分かるものか!!」
静「分からないわよ!!無二の親友を失った、あなたの気持ち
なんて分かりっこないわ!!だけど・・・だけど及川君が亡く
なって、悲しいのはあなただけじゃない!!それを考えられ
ないで、自分だけが親友を失った、可哀相な人間だなんて
甘ったれた考えを持ってるようじゃ、屹度、及川君も天国で
泣いてるでしょうね!!」
晃「(思わず、静の頬を叩く。)」
静「(涙を浮かべ、頬を押さえる。)・・・私は、あなたのことが好き
だった・・・。けれど、こんなあなたは大っ嫌い!!」
静、涙を堪えるように歌う。
“自分の気持ちに気付くのは簡単・・・
それを認めるのは至難の業
だから見て見ぬ振りするのね・・・
もっと目の前にある現実に
心開けば自ずと分かる
何も難しいことなんてない
ただ素直になること
それがたった一つの答え・・・”
晃「・・・分かってるんだ・・・分かってるんだ・・。だけど、この現実
を、自分の中でまだ認められないんだ・・・。あの時、無理だと
分かっていても、何故俺はあいつを引き摺ってでも山を下りな
かったのか・・・。自分の下した選択が、全て間違いで・・・だか
らあいつが死んだんだ・・・。その思いで、心が潰れそうだ・・・。
静・・・ご免・・・打ったりして・・・。おまえの言うことは正しいよ
・・・。俺は自分の心に素直になることが、一番不得意なんだ
・・・。」
静「分かってるわ・・・晃のことは・・・誰よりも・・・。」
晃「・・・静・・・」
その時、上手より一人の警官登場。
警官「(晃を認め。)大和晃さんでしょうか?」
晃「(頷く。)」
警官「(小さな紙袋を差し出す。)これはあなたのものですね。名
前が書かれていましたから・・・。亡くなった及川さんの側
に、転がっていたものです。どうぞ。」
晃「(袋を受け取る。)」
警官「じゃあ失礼します。」
警官、上手へ去る。
晃、袋から中身を取り出すと、携帯の
テープレコーダー。 ※
静「晃・・・?」
カセットを見詰める晃、スポットに浮かび上がる。
晃、カセットのボタンを押す。と、掠れた音楽流れ
る。暫くすると、プッツリ切れ、雑音に交じって、
尚斗の声が聞こえる。
尚斗の声「・・・よかった・・・まだ、使えそうだ・・・」
晃「(驚いたように。)尚斗・・・?」
尚斗の声「・・・晃・・・おまえが何時も・・・こんなものを持ち歩いて
たお陰で・・・俺は最後のメッセージを・・・おまえに残
せそうだ・・・(苦しそうな笑い声。)折角・・・おまえが急
いで助けを・・・呼びに行ってくれたのに・・・無駄になり
そうだよ・・・。悪いな・・・。覚えてるか・・・晃・・・?中学
の時の約束を・・・。どちらかが先に死んでも・・・必ず
また会える・・・ここへ来れば・・・。どうやら・・・俺が・・・
おまえの来てくれるのを・・・待つことになりそうだな・・・
(笑う。)何時でも・・・自由奔放に生きてたおまえは・・・
俺の憧れだったよ・・・。晃・・・優美を・・・頼む・・・(苦し
そうに咳き込む。)」
晃「尚斗!!(思わず叫ぶ。)」
尚斗の声「・・・綺麗な空だなぁ・・・おまえと過ごした青春時代は
・・・俺にとって、忘れられない思い出だ・・・。おまえと
出会った俺の人生は・・・最高に輝いてた・・・。ありが
と・・・う・・・晃・・・(静かになる。)」
晃「(絞り出すように。)・・・尚斗・・・」
音楽流れ、晃、声を振り絞って歌う。
“突然始まった出会いから・・・
おまえは俺の目指す所だった・・・
何時も少し前を行き
導く者の役目をしてくれた・・・
正しい心を与えてくれた・・・
突然突き付けられた別れでも
おまえは明るく笑って行った・・・
何時も穏やかな心を持ち
全ての者に溢れる愛を与え
自分の運命を悲しむことなく・・・”
涙を堪え、遠くを見遣る晃。一時置いて、物憂い
面持ちで、ゆっくり上手より客席へ。(下手方へ。)
その時、客席下手より、看護師、慌てて走り登場。
看護師「優美ちゃん!!優美ちゃん!!(回りを捜すように。晃を
認め、駆け寄る。)あっ!!大和さん!!」
晃「・・・どうかされたんですか・・・?」
看護師「大変なんです!!優美ちゃんが・・・!!」
晃「え・・・?」
看護師「一人になった隙に、病院を抜け出したらしくて・・・!!」
晃「何だって!?」
看護師「あの子、お兄さんが亡くなって、自暴自棄になってたから
・・・。」
晃「兎に角、捜しましょう!!」
看護師「ええ・・・!!」
晃、看護師と共に、上手へ走り去る。
――――― 第 9 場 ―――――
静かな音楽流れる。
スモーク流れ、舞台中央、眠っているような優美、
スポットに浮かび上がる。
八百屋舞台上、尚斗、スポットに浮かび上がる。
優美を認め、優しそうに微笑むとゆっくり側へ。
舞台、薄明るくなる。
尚斗「・・・優美・・・優美・・・」
優美「う・・・ん・・・(ゆっくり目覚める。目が見えているように、
尚斗を認める。)・・・だ・・・れ・・・?」
尚斗「(微笑む。)優美・・・」
優美「・・・お兄ちゃん・・・?お兄ちゃんね!!私には分かる!!
一度も見たことはないけど!!お兄ちゃん!!(尚斗に
抱き縋る。)如何して私を一人ぼっちにいたの!?如何し
て一人で先に行っちゃうの!?私、これから如何すれば
いいの!?私も一緒に連れて行って!!」
尚斗「優美・・・覚えているか・・・?おまえは小さい時から、何時
も泣き虫だった・・・。何時も僕の後ろにひっ付いて・・・」
優美「私はお兄ちゃんが大好きだった・・・!!」
尚斗「そんな優美を、僕は何があっても守ってやろう・・・そう
何時も考えていたんだ・・・」
優美「じゃあ、これからも・・・!!」
尚斗「優美・・・!!あんなに泣き虫だったおまえが、何時の頃
からか、何があっても泣かなくなった・・・。僕の後ろに隠
れてばかりいたおまえが、何時の間にか僕の前を歩くよ
うになったんだ・・・。明るく笑うようになった・・・。僕はその
変化が、とても嬉しかったよ・・・。それだけで、晃と友達
になってよかった・・・と、心から思ったものだ・・・。」
優美「・・・お兄ちゃん・・・」
尚斗「僕には分かる・・・。優美が如何して自分の殻を破って、
外の世界へ出て来たのか・・・。頑張るんだ、優美・・・。
僕は、何時もおまえの側にいるよ・・・。」
優美「私、頑張れない・・・!!(泣く。)お兄ちゃんがいなきゃ、
私頑張れない!!」
尚斗「(首を振る。)そんなことないよ・・・(微笑んで。)優美なら
頑張れる・・・」
尚斗、フェード・アウト。
優美、再びスポットに浮かび上がる。
優美「・・・お兄ちゃん・・・?お兄ちゃん・・・?お兄ちゃん!!私
を一人ぼっちにしないで!!私も一緒に連れて行って!
!(回りを捜す。)」
優美、八百屋舞台上、放心したように後方を
向いたまま立ち尽くす。
舞台、明るくなる。その時、上手より晃、走り登場。
優美を認める。
晃「優美ちゃん!!」
優美「こないで・・・。私は今から、お兄ちゃんの所へ行きます・・・
。」
晃「何を言ってるんだ、君は・・・!!(駆け寄ろうとする。)」
優美「こないでって言ってるでしょ・・・!!来たら、今直ぐここか
ら飛び降りて死ぬわ!!」
晃「そんなことをして如何なるんだ!!」
優美「私・・・今、お兄ちゃんに会ったわ・・・。」
晃「え・・・?」
優美「お兄ちゃんも、私に一緒に行こう・・・って言ってくれた・・・。
だから行かなきゃ・・・」
優しい音楽流れる。
晃「優美ちゃん・・・。尚斗がそんなことを言う筈ないよ・・・。尚斗
は何時も・・・どんな時も、君のことを一番に考えていた・・・。
誰よりも優しく・・・何よりも深い愛情で、何時も君を見守って
いたんだ・・・。あいつが何時も望んで止まなかったもの・・・
それは、君の幸せだよ・・・。」
晃、歌う。
“例え 今が辛くとも
屹度 何時か乗り越えられる
だから生きてみないか・・・”
優美、呼応するように歌う。
“生きる希望を失った
見たいものもなくなったわ
だからそっとして!”
晃、歌う。
“希望ならまた見つかる
見せたいものは山ほどある
力強く生きるんだ!”
優美、歌う。
“嘘よ 全部出鱈目よ
生きてても何の喜びも得られない
大切な者を失った
あなたには分からない”
晃、歌う。
“君の悲しみは僕の悲しみ
君の涙は僕の涙
同じ苦しみを味わってるんだ
君の気持ちは僕の気持ち!!”
晃「一緒にこの苦しみを乗り越えよう・・・。尚斗は、君の死なん
か望んでやしない・・・。もし君が、尚斗に会ったと言うなら・・・
君はもう知ってる筈だよ。あいつが何を君に望んでいるのか
・・・。あいつの本当の心が、見えた筈だ・・・。死ぬことは、
簡単かも知れない・・・。生きることは辛いことが多いだろう
・・・。だけど、ほんの少しだけ、生きる勇気を持てば、今の
辛さは、これからの君の人生の中で、何十倍もの幸せとなっ
てかえってくるんだ・・・。その幸せは、尚斗から君への、最後
の贈り物なんだよ・・・。それを受け取ってやらないで、如何
するんだ!!」
優美「・・・でも・・・私は一人ぼっちだわ・・・」
晃「君は一人なんかじゃない・・・。俺がいる・・・。君が死んだら、
俺は全く今の君と同じ気持ちになるだろう・・・。(笑う。)君は
俺まで殺しちまうことになるんだ・・・。それに、君が生きる限
り、君の心の中には、尚斗が生きるんだよ・・・。」
優美「(涙が溢れる。)・・・晃さん・・・」
その時、優美にだけ聞こえるように、
尚斗の声が響く。
尚斗の声「(優しく。)・・・優美・・・おまえが幸せになれば、僕も
幸せなんだ・・・。分かるだろ・・・?」
優美「(一瞬、声の主を捜すように、頭を上げる。)・・・お兄ちゃ
ん・・・?ご免なさい・・・ご免なさい!!(声を上げて泣く。
)」
晃「(優美に駆け寄り、抱き寄せる。)分かってるよ・・・(微笑む
。)」
盛り上がった音楽で、暗転。
――――― “大和晃”エンディングへつづく―――――
※ かれこれ10年以上前に書いた作品の為、“テープレコーダ
ー”などと、古めかしい小道具が登場します^^;・・・が、今回
は、書き直すことはせず、書いた時のまま登場させたいと思い
ます(^.^)
もう一つ、もし現在の私が“テープレコーダー”などと言った小道
具を登場させるなら、どこか途中で、晃君がその物を使用して
いる場面を一つくらい作っていると思います・・・(^_^;)
まだまだ未熟な作品だと、中途半端な小道具使用ですが、気に
せずお読みください^^;
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪
http://www.geocities.jp/littlepine2005/
http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta
http://blog.goo.ne.jp/axizgoo7227
晃「(優美の隣へ腰を下ろす。花束を差し出して。)はい、プレゼ
ント・・・。」
優美「わぁ・・・ありがとう!(香りを嗅ぐ。)薔薇ね!!しかも私の
好きなピンクかしら?」
晃「ご名答!相変わらずいい勘してるなぁ。」
優美「(クスッと笑って。)見えない分、勘は鋭いのよ!山・・・行く
のね?」
晃「うん。次の休みにね。」
優美「晃さんって、昔っからそう!お兄ちゃんと山へ行く前には、
必ず花束を持って、会いに来てくれるの!」
晃「優美ちゃんに、大事な兄貴を少しの間お借りしますって、ちゃ
んと挨拶しとかなきゃね。」
優美「でも、お兄ちゃんも晃さんも本当に好きよねぇ・・・。中学で
知り合って以来、ずっとでしょ?そんなに2人が魅了されて
る山・・・私も一度でいいから行ってみたいなぁ・・・。」
晃「じゃあ今度、一緒に行こう!」
優美「え・・・?」
晃「大丈夫!俺が手をひいて連れてってやるよ!その鋭い勘で
感じるんだ、山の偉大さを・・・。屹度気に入るさ!!けど、尚
斗の奴に“許さない!!”って言われそうだな。(笑う。)あいつ
は、優美ちゃんのことになると、見境がなくなるから・・・。」
優美「(笑う。)お兄ちゃんも言ってたわ、同じようなこと!“晃は
一人っ子だから、おまえを本当の妹みたいに可愛がって
くれるのはいいんだが、どうも些細なことで見境がなくなる
のは・・・”って・・・。」
晃「なんだ、自分だって同じくせに、偉そうな奴だな。」
優美、声を上げて楽しそうに笑う。顔を空へ向け、
心で何かを感じるように。
優美「・・・行けるといいわね・・・。」
晃、優美を見詰める。
暗転。
――――― 第 4 場 ―――――
上手前方、スポットに春彦、暗い面持ちで
浮かび上がる。独り言を言うように。
春彦「何で、あいつが上手くいって、私が駄目なんだ・・・!!私
の方があいつより、遥かにいい大学だって出てる!!将来
有望と言われて入社したんだ!皆の期待の星だった!!
何で私が休日返上で働いてるのに、あいつは有意義な休
日を過ごし、呑気に山登りなんかしてるんだ!!」
音楽流れ、春彦歌う。
“可笑しい!可笑しい!
何かが違う
可笑しい!可笑しい!
何処かで狂った
私の人生の進む道
あいつには負けられないんだ
如何しても・・・
あんなヘラヘラした調子者
ただ明るいだけの考えなし
皆騙されてる あいつの仮面に
早く気付くんだ あいつの素顔
可笑しい!こんな筈じゃない!!”
静かな怒りに瞳を輝かせ、遠くを見遣る春彦。
暗転。
――――― 第 5 場 ―――――
静かな音楽流れ、薄明るくなると、山の星空の
風景。舞台中央、晃と尚斗、星を見上げ横に
なっている。尚斗、座る。
尚斗「久しぶりだな。おまえとこうやって、一緒にここへ来るのは
・・・。初めてここへ来たのは高校の時だよな・・・。あの時
のおまえ、途中でリュックの・・・(晃が聞いていないことに
気付いて、晃が耳に嵌めていたイヤホンを、取り上げる。
と、一瞬音楽大きく流れる。)」
晃「(起き上がって。)何すんだよ!!」
尚斗「おまえ・・・折角来たのに、それはないだろ?」
晃「・・・悪い、昔から好きなんだ、この曲・・・。(笑う。)」
尚斗「(溜め息を吐いて。)やれやれ・・・。(上を見上げて。)見て
みろよ・・・。綺麗な星空だなぁ・・・。」
晃「ああ・・・。(見上げる。)」
尚斗「こんな美しい夜空を見上げてると、都会の雑踏の中で生活
している自分が、丸で嘘のようだ・・・。」
晃「ああ・・・。」
尚斗「・・・優美にも見せてやりたいな・・・。(立ち上がる。)」
晃「そうだな・・・。」
尚斗「・・・また会いに行ってくれたんだって?」
晃「(立ち上がる。)・・・暇が出来たんでね。」
尚斗「あいつ、喜んで報告してたよ。“私の大好きなピンクの薔薇
を持って、会いに来てくれた・・・”ってさ。(笑う。)女に花な
んか、死んでも贈らないおなえが、優美にだけは昔っから
例外のように接してくれる・・・。これからも、あいつのこと、
見守ってやってくれよな・・・。」
晃「何、変なこと言ってんだよ・・・。(笑う。)当たり前だろ?」
尚斗「それから・・・好い加減、暮原さんの気持ちに応えてやれよ
・・・。」
晃「・・・静の気持ち・・・って何だよ、それ・・・。」
尚斗「分かってるだろ?彼女がおまえに思いを寄せていること・・・
。」
晃「(少し焦ったように。)ばっ・・・如何してあいつが俺に・・・!!」
尚斗「聞けよ!おまえだって彼女と同じ気持ちの筈だ。違うか?」
晃「ちょっ・・・ちょっと待てよ・・・!」
尚斗「おまえね・・・何時までも知り合った頃の、中学生の餓鬼じゃ
ないんだぜ・・・。自分の気持ちを俺に教えられなきゃ、分か
らないようなもんでもないだろ?」
尚斗歌う。
“自分の気持ちに気付くのは簡単
それを認めるのは至難の業
だから見て見ぬ振りする”
晃、呼応するように歌う。
“違う
それは単なるおまえの思い過ごし”
尚斗歌う。
“他人のことは見えるのに
自分のことは 丸で盲目
他人の為なら惜しみなく貸す力
自分の為には使う理由も見つからない”
晃歌う。
“違う
それは単なるおまえの思い込み”
尚斗歌う。
“もっと目の前にある現実に
心開けば自ずと分かる
何も難しいことなんてない
ただ素直になること
それがたった一つの答え・・・”
晃「さぁ、もう寝るぞ!!明日も早いんだ!!おやすみ!!(ゴロ
ンと横になり、毛布を頭から引っ被る。)」
尚斗「(微笑んで晃の横に腰を下ろす。)素直じゃないな・・・、昔
からおまえは・・・。(空を見上げる。)思い出すな・・・。初め
て、おまえと出会った時のこと・・・。」
晃「(毛布を取って。)・・・あの頃、俺は転校したてで、一人も友達
がいなかったんだ・・・。おまけに不良ときたもんだから、誰も
相手にしてくれなかったのに、おまえだけ・・・(思わず吹き出す
。)“俺達、友達になれないかな!?”なんて・・・」
尚斗「何言っていいか、分かんなかったんだ。ただ仲間を見つけ
たようで、嬉しくてさ・・・。如何しても友達にならなきゃって
思ったんだ・・・。」
晃「・・・俺も・・・嬉しかったぜ・・・凄く・・・。」
尚斗、嬉しそうに微笑む。
暗転。
――――― 第 6 場 ―――――
下手より、静登場。
静「(くしゃみする。)いやだ・・・、誰か噂してるのかしら・・・。(遠く
を見上げるように。)あの2人・・・今頃、何してるのかなぁ・・・。
男2人のロマン・・・か・・・。他の女に現を抜かすより、ずっと
マシよね・・・。」
ゆっくり上手方へ行きかけると、上手よりひと組
のカップル、楽しそうに語り合いながら登場。
静の横を通り過ぎ、下手へ去る。2人の様子を
羨まし気に見詰める静。歌う。上手へ。
“折角のサタデーナイト
私にとってのブルーホリデイ・・・
今日は恋人達の夜
なのに私は一人・・・
でも何時か私も恋をするわ
屹度 素敵なあなたを見つけ
もう側にいる
分かってるの私には・・・”
暗転。
――――― 第 7 場 ―――――
カラカラと、小石の落ちる音がする。
その時、“ドーン”と言う轟音が響き渡る。
晃の声「落石だ!!逃げろ!!尚・・・!!」
尚斗の声「わあーっ!!(叫ぶ。)」
晃の声「尚斗ー!!(叫ぶ。)」
一時置いて、落石の轟音が静まり返り、
嵐の後の静けさが、辺りを包む。
八百屋舞台上スポットに、尚斗を抱き抱えた
晃、浮かび上がる。
晃「尚斗!!尚斗!!確りしろ!!尚斗!!」
尚斗「う・・・ん・・・(気付く。)」
晃「尚斗!?」
尚斗「・・・晃・・・」
晃「尚斗・・・(ホッとしたように。)」
尚斗「・・・如何しちまったんだ・・・一体・・・」
晃「(上をチラッと見上げて。)あそこから、岩と一緒に落っこちた
んだ・・・。大丈夫か?」
尚斗「・・・う・・・(苦痛に顔を歪める。)・・・あんまり・・・感覚がない
や・・・」
晃「そりゃそうだ・・・。あれだけ大きな落石にあって、命が助かっ
ただけでも儲け物だぜ・・・。」
尚斗「(フッと笑う。)・・・そうだな・・・。おまえの方は・・・大丈夫な
のか・・・?」
晃「ああ・・・、俺はなんともない・・・。(微笑む。)さぁ・・・これから
如何やって、あそこまでおまえを担いで登るかな・・・。」
尚斗「(笑って。)無理だよ・・・、担いでなんて・・・(咳き込む。)」
晃「大丈夫か!?」
尚斗「・・・一人で行ってくれ・・・」
晃「馬鹿野郎!!俺がおまえを置いて・・・」
尚斗「(晃の言葉を遮るように。)一人で行くんだ・・・!おまえが
助けを呼んで、戻って来るまで・・・俺は何とか頑張る・・・。
だから・・・一人で行くんだ・・・」
晃「尚斗・・・」
尚斗「何て顔してんだよ・・・。ほんの数時間じゃないか・・・」
晃「だけど・・・!!」
尚斗「(微笑む。)・・・おまえと一緒で・・・俺も生命線は長いんだ
・・・死にやしないよ・・・おまえが戻って来るまで・・・」
晃「・・・分かった・・・。必ず助けを連れて、直ぐに戻って来る!!
・・・だからそれまで頑張るんだ!!(木霊する。)」
暗転。
――――― 第 8 場 ―――――
厳かな音楽流れ、鐘の音が響き渡る。
静かにミサ曲が歌われる。
明るくなると中央、車椅子に黒のワンピースに
身を包んだ優美、放心状態で座っている。
横に礼装した春彦、静佇む。
静「(涙を堪えるように。)優美ちゃん・・・元気出してね・・・。何か
あったら、何時でも言って頂戴・・・。何でも力になるから・・・。」
春彦「頑張るんだよ・・・。」
春彦、静ゆっくり下手へ。
春彦「(小声で。)まさか、及川君が亡くなるとはね・・・。(チラッと
優美の方を見て。)これであの子も、天涯孤独の身ってこと
ですね・・・。」
静「そんな風に言うのはよして・・・!!あの子には晃だって・・・
私だっているもの!!そんな独りぼっちみたいに・・・。」
春彦「すみません・・・。それにしても今日、大和君は如何したん
でしょうね・・・?仮にも親友だった及川君の、最後の別れ
に現れないなんて・・・。」
静「・・・晃・・・大丈夫かしら・・・。」
春彦「え・・・?」
静「あの2人・・・ずっと親友だったの・・・。私なんかが割り込む隙
のないくらい・・・。堅い絆で結ばれてるようだった・・・。」
優美「・・・でも・・・お兄ちゃんを見捨てたわ・・・。」
静「・・・優美ちゃん?」
優美「・・・晃さんは大怪我して、動けなくなったお兄ちゃんを見捨
てて、自分だけ助かったのよ・・・。」
静「そんなことないわ。晃が及川君を見捨てたりする訳ないじゃ
ない!」
優美「じゃあ・・・何故お兄ちゃんは死んだの・・・?」
静「・・・それは・・」
優美「・・・答えられる筈ないわ・・・。私が言ったことが正解だもの
・・・。」
その時、上手より晃登場。ゆっくり3人の側へ。
晃「・・・優美ちゃん・・・。」
静「晃・・・」
優美「・・・何しに来たの・・・。私は今・・・晃さんに一番会いたくな
いの・・・。」
晃「ご免・・・」
優美「・・・謝るくらいなら、お兄ちゃんを返して・・・。返してよ!!
如何してお兄ちゃんを一人で放っといて戻って来たの!!
お兄ちゃん、大怪我してたのよ!!それなのに、晃さんが
見捨てたからお兄ちゃんは死んじゃったんだわ!!私に
とって、たった一人のお兄ちゃんだったのよ!!パパの
代わり、ママの代わり・・・掛け替えのない人だったのに!
!(泣き叫ぶ。)」
――――― “大和晃” 3へつづく ―――――
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪
(どら余談^^;)
改めてこの作品の文字を書き並べてみて、学生の頃に
よく読んでいた、とっても大好きな小説があるのですが、
その言葉の表現にすごく影響を受けているな・・・と・・・^^;
なんだか、ものすごく古めかしい感じがするのは、その小説
が、私のママ時代に流行った小説だからです(^_^;)
すごく・・・“雑読”とでもいいましょうか、昔からジャンルを問
わず、興味のあるものには、何でも手を付けてみたりしたの
で、私の中であまり拘りと言うか、これ!と言った一貫性は
ありません。が・・・その中で、“童話”や“伝記”などの、小学
生的な読み物から卒業し、ちょっと大人な作品を読み始めた
頃に、一番初めに興味を持って読破した小説が、この影響を
受けた小説だったと思います。
その後、中世ヨーロッパ辺りの、実話的な物語に興味を惹か
れ、今現在も大好きなジャンルの一つですが、そんな作品も
書いてみたことがあるので、その内にご紹介致します(^^)v
その頃の実在の人物達が、余りにも魅力的で・・・彼らは私の
永遠の憧れかも知れません♥
http://www.geocities.jp/littlepine2005/
http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta
http://blog.goo.ne.jp/axizgoo7227
“勇気の石”より、ピエローラとミカエル。
ミカエル「あの時の・・・気持ち・・・」
ミカエル、佇み歌う。
“勇気の石なんか
まやかしの石だ
こんな石なくても
強ければそれでいい
誤魔化しの勇気だ
負けなければそれでいい
こんな石なくても
誤魔化しはいらない”
ミカエル「勇気の石なんか・・・いるもんか・・・」
音楽変わる。
下手より、ヒョウガ登場。
ヒョウガ「よぉ。」
ミカエル「(振り返ってヒョウガを見る。)」
ヒョウガ「何、落ち込んでんだ?」
ミカエル「・・・落ち込んでなんか・・・!!」
ヒョウガ「まぁ、いいや。それよりサーカスって奴は、本当に楽しい
とこだぜ、全く。毎日、誰かの歓声や声援、笑い声に包
まれて・・・。オイラが何で、兄貴に付いて回ってるか知っ
てるか?」
ミカエル「・・・知らない・・・」
ヒョウガ「兄貴は、吊り橋から落っこちて、瀕死の重傷を負ってた
オイラを見つけて、必死で看病してここまで元気にして
くれたんだ。」
ミカエル「それはおまえが、僕達のことを食べようとして襲ってきた
からじゃないか!!悪いのはおまえだ!!自業自得だ
よ!!」
ヒョウガ「そう!オイラが悪かったんだ。だけど兄貴は、悪いことを
したオイラのことを、許して受け入れてくれたんだ・・・。
だからオイラも、兄貴の為に何か出来ることがないかと
考えたんだ。なぁ、ミカエル・・・勇気があっても、優しさが
なけりゃ、それはただの強がりだ。」
ミカエル「強がり・・・」
ヒョウガ「おまえも、もうちょっと大きくなったら分かるさ。(ミカエル
の頭に、手を置く。)」
ミカエル「な・・・子ども扱いするなよ!!」
ヒョウガ「じゃあな。(笑いながら、下手へ去る。)」
ミカエル「もう僕は子どもじゃないんだ!!」
ヒョウガの笑い声。
ミカエル歌う。
“勇気があればいいと思ってた・・・
強くなりたいと・・・ただ思ってた”
ミカエル佇み、場面変わる。
――――― 第 3 場 ―――――
上手方に一本の木。
その木に風船を引っ掛け、女の子が泣いている。
ミカエル、チラッとその方を見るが、知らん顔して
通り過ぎようとする。
女の子「あーん・・・あーん・・・!!風船が飛んじゃった・・・!!
あーん・・・」
ヒョウガの声(エコー)「勇気があっても、優しさがなけりゃ、ただ
の強がりだ・・・」
ミカエル「煩い!!」
女の子「(その声にビクッとする。一層大きな声で泣く。)あーん!
!あーん!!お兄ちゃんが怒った!!あーん・・・!!」
ミカエル「あ・・・ごめん!!君のことを怒鳴ったんじゃないんだ!
!」
女の子「あーん!!あーん!!」
ミカエル「何だよ・・・謝ってるだろ!?・・・分かったよ・・・取って
来るよ・・・取って来りゃいいんだろ!?待ってな!!
(木に登り始める。)よいしょっと・・・何だい・・・こんな
木登りくらい・・・簡単だ・・・。よいしょ・・・よっ・・・たっか
いなぁ・・・前までの僕は、高い所に登るなんて、考え
もしなかったんだよなぁ・・・」
女の子「あーん!!あーん!!」
ミカエル「あっ、そうだ!!風船だ!!待って!!今、取るから
・・・あれ・・・手が届かない・・・もうちょい・・・よっ・・・あっ
・・・あっ!!わぁーっ!!(落ちる。)いってぇ・・・」
女の子「・・・大丈夫?お兄ちゃん・・・」
ミカエル「うん・・・。ほら、取って・・・」
ピエローラの声がダブる「・・・取って来たよ・・・勇気の石・・・」
ミカエル「ピエローラ・・・」
女の子「(風船を受け取る。)ありがとう、お兄ちゃん!!」
女の子、嬉しそうに下手へ走り去る。
音楽流れる。
ミカエル「・・・ピエローラ・・・分かったよ、僕・・・。ピエローラの言っ
た言葉の意味が・・・。“勇気”と言う言葉に置き換えて、
僕はいけない子だったね。筆箱くらいであんなに怒って、
トムにも謝らないと・・・。ヒョウガとも、友達になれるかな
・・・。」
ミカエル歌う。
“勇気の石
誰の心の中にも持っている
不思議な輝き・・・”
上手よりロン、ミック登場。
ロン「(ミカエルを認めて。)ミカエル・・・」
ミカエル「ロン!!ミック!!遊ぼう!!」
ミック「また・・・バスケットボール・・・?」
ミカエル「いやなのか?」
ロン「いや・・・いやじゃないけど・・・」
ミック「俺達・・・ミカエルみたいに上手くないし・・・」
ミカエル「あ・・・分かってるよ・・・そんなこと!!だから・・・教えて
やるよ!!」
ロン「え・・・?」
ミック「今、何て・・・?」
ミカエル「おまえら、ゴールにボールを入れるの下手糞だから、教
えてやるって言ってるんだよ!!」
ロン「嘘だろ・・・?」
ミカエル「何だよ!いつまでも下手糞でいいのか!?」
ミック「だって、ミカエルが教えてくれるなんて・・・」
ロン「あの意地悪な・・・」
ミック「しっ!!」
ミカエル「・・・今まで・・・ごめん・・・。僕は偉そうだったよ・・・。ちょ
っとくらいバスケットボールが得意だからって・・・」
ロン「ミカエル・・・」
ミカエル「偉そうにすることが、格好いいんじゃないんだって分かっ
たんだ・・・。」
ロン、ミック「(首を傾げる。)」
ミカエル「だから早く、コートに行こうぜ!!」
ロン「う・・・うん!!」
ミック「やったー!!」
ロン、ミック下手へ走り去る。
入れ代って上手より、ピエローラ登場。
ピエローラ「ミカエル・・・」
ミカエル「(ピエローラを認め。)ピエローラ!!僕はまた、ピエロ
ーラに教えられたね・・・。」
ピエローラ「ミカエルのことは、僕が一番良く知っているよ。君は
本当の勇気と優しさを持っている子だってね。間違っ
た心に、いつか必ず気付くと分かっていたよ。」
ミカエル「ピエローラ・・・」
ピエローラ歌う。
“勇気の石
君の心の中に輝いてる
素敵なきらめき”
ミカエル歌う。
“勇気の石
この心の中に輝きだした
優しい強さが・・・”
ピエローラ「僕はまた次の町へ行くけれど・・・今度、君に会う時を
楽しみにしているよ・・・。(上手方へ。)」
ヒョウガ「(上手方からチラッと覗いて。)あばよ!(去る。)」
ミカエル「ありがとう、ピエローラ・・・ヒョウガ・・・!!また、会いに
来てねー!!(手を振る。)」
――――― 幕 ―――――
「お・し・ま・い(^^)v」
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪
さて、次回からの掲載作品は、現時点での公開可能作品
としての最後になります(^^♪
“クリスマスの贈り物”の次に書いたお話しで、最近の作品
に比べると、比較的小さい子向きに書いたものなのですが、
読み直してみて、バブ~ちゃん作品の少ない“リトルパイン”
には、まだまだ用途がありそうなので、手持ち作品の一本
として、作り直そうかな・・・と、現在考えています(^^)v
題名が不明な・・・^^;“ククくん”作品、お楽しみ下さい♥
どら。
http://www.geocities.jp/littlepine2005/
http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta
http://blog.goo.ne.jp/axizgoo7227
ヒョウガ君。
この“ヒョウ”君は、お友達に無理言って作ってもらいました♥
布と、なんとなくこんな感じ・・・の言葉だけで、作ってもらった
のですが、出来上がりがとても可愛くて、この後、色んな作品
に登場することになるのです(^^♪
どら。
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪
〈主な登場人物〉
ミカエル ・・・ “勇気の石”の主人公。
ピエローラ ・・・ サーカス団員。
ヒョウガ ・・・ サーカスで働いている。
ロン ・・・ ミカエルの友達。
ミック ・・・ ミカエルの友達。
その他。
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪
「・・・と、ここでミカエルとピエローラのお話しは“目出度し
目出度し”・・・だったのですが、勇気の意味が分かった
ミカエルとピエローラのその後・・・気になりませんか?
2人が一体、どんな風に過ごしているのか、少し覗いて
みるとしましょう。
あの後、ピエローラはサーカス団と共に、各地を回る旅
に出て行きました。一方、クラスの中で自信なさ気だった
ミカエルは、どうしているでしょうね。そして1年後・・・
あっ!!誰か来ましたよ!!」
――――― 第 1 場 ―――――
下手より2人の少年(ロン、ミック)話しながら
登場。
ロン「何だよ、あいつ・・・。ちょっとばかしバスケットボールが上手
くなったからって・・・。」
ミック「そうだよな。こないだまで“バスケットボールは苦手なんだ
もん・・・”なんて言ってたくせに・・・」
ロン「バスケットが出来るようになったからって、態度まで大きく
なって・・・。」
ミック「何か最近のあいつ、ちょっとエラソー・・・」
ロン「しっ!!あいつが来た!!」
ミック「やばい!!あいつだ!!」
2人「ミカエルが来た!!」
ロン、ミック、慌てて下手へ走り去る。
音楽流れ、バスケットボールを持ったミカエル、
上手より登場。歌う。
“何だってできる 僕は一番さ
怖いものはない 出来ないこともない
昨日までとは違うんだ確実に
もう 勇気が溢れる
心に”
ミカエル「(下手方を見て。)おーい!!ロン!!ミック!!こっち
に来いよー!!バスケットやろうぜ!!」
ロン、ミック、渋々下手より登場。
ミカエル「ロン!!ミック!!早く来いよ!!休み時間が終わって
しまうだろ!!」
ロン「だって・・・」
ミック「なぁ・・・」
ミカエル「バスケやろうぜ!!」
ロン「え・・・いいよ、僕達・・・」
ミック「うん・・・ボールが入らないと、ミカエル怒るし・・・」
ミカエル「さぁ、やろうぜ!!(聞いていないように、勝手にボール
をドリブルしてバスケを始める。)」
ロン「(ボールを受け損なう。)あ・・・!!」
ミカエル「何やってんだよ、ロン!!パスしたボールは、ちゃんと
受けろよ!!」
ロン「だって・・・(ミックと顔を見合わせる。)」
ミカエル「だってじゃないだろ!!全く・・・」
ピエローラ、下手より登場。
(ロン、ミック去る。)
ピエローラ「ミカエル。」
ミカエル「(振り返り、ピエローラを認める。)ピエローラ・・・?ピエ
ローラ!!(駆け寄る。)本当にピエローラなの!?どう
したの!?ああ・・・本当に久しぶりだね!!、またこの
町に来たの!?元気だった!?会いたかったよ!!
あれからどうしてたの!?話したいことが、一杯あった
んだ!!」
ピエローラ「(笑って。)ミカエル、そんなに一遍に質問されても答
えられないよ。」
ミカエル「あ・・・ごめん。懐かしくてつい・・・。また会えて嬉しいよ
!!」
ピエローラ「僕もだよ。ミカエルこそ真っ黒に日焼けして、元気そう
じゃないか。(バスケットボールに気付いて。)バスケッ
トボールは上手くなったかい?」
ミカエル「勿論さ!!バスケだけじゃないんだ!!僕はもう、何だ
って誰よりも一番得意に出来るんだ!!駆けっこだって
クラスで一番なんだよ!!」
ピエローラ「へぇ・・・凄いじゃないか。」
ミカエル「勇気の石なんかなくても、勇気が溢れてる!!ピエロー
ラは!?何か得意なものは出来たの?」
ピエローラ「うん。僕も玉乗りが出来るようになったんだ。」
ミカエル「本当に!?じゃあ、もうサーカスの人気者だね。」
ピエローラ「どうかな。(笑う。)」
ミカエル「僕の方は反対に、今度は皆が下手過ぎてさ。バスケット
ボールがつまらないんだ。バスケットだけじゃなくて、何
やらせたって、あいつらは駄目なんだ。」
ピエローラ「(ミカエルの顔を見る。)」
ミカエル歌う。
“何だって今は僕の方が得意”
ピエローラ歌う。
“そうかな・・・ミカエル・・・”
ピエローラ「本当に・・・?」
ミカエル歌う。
“僕が一番強いんだ”
ミカエル「でも本当、懐かしいなぁ・・・」
ピエローラ「そうだね。」
上手より、一人の少年(トム)、俯き加減に
登場。
トム「・・・ミカエル・・・」
ミカエル「(トムを認める。)トム・・・」
トム「ちょっといいかな・・・」
ミカエル「何?僕、今忙しいんだけど。」
トム「僕・・・」
ミカエル「何だよ!早く言えよ!」
トム「僕・・・君の大切にしている・・・筆箱を落としちゃ・・・」
ミカエル「何だって!?」
トム「ご・・・ご免よ、態とじゃないんだ・・・」
ミカエル「態と筆箱を壊されたんじゃ堪らないよ!!何で、もっと
気をつけないんだよ!!トムは全く、うっかりしてるんだ
から!!」
トム「ご免、ミカエル・・・」
ピエローラ「ミカエル、彼は謝ってるんだから、許してあげたら?」
ミカエル「駄目だ!!同じ筆箱を弁償してもらうからな!!」
トム「でも・・・あの筆箱は、一つしか売ってないオリジナルのもの
だって、君がいつも言って・・・」
ミカエル「同じものを探してくるんだ!!」
トム「そんな・・・」
ピエローラ「(トムに。)もういいから、お行き。」
トム「え・・・」
ミカエル「ピエローラ!!」
ピエローラ「(トムを見て頷く、)」
トム「う・・・うん・・・」
トム、ミカエルを気にしながら、下手へ去る。
ミカエル「あ・・・待てよ!!何、勝手にそんなこと言うんだよ!!
(トムを追い掛けようとする。)」
ピエローラ「ミカエル!(ミカエルの腕を掴む。)」
ミカエル「いくらピエローラだって、僕のことに口出しするのは
やめてくれよ!!」
ピエローラ「少し落ち着くんだ、ミカエル。」
ミカエル「あいつは僕の大切な筆箱を壊したんだよ!!許せない
よ!!それとも、ピエローラが弁償してくれるの!?」
ピエローラ「筆箱より・・・これをあげるよ。(一枚の紙を、ミカエル
の方へ差し出す。)」
ミカエル「・・・何?僕の筆箱より、いいもの?(受け取る。)」
ピエローラ「サーカスのチケットさ。」
ミカエル「え・・・?」
ピエローラ「一度、サーカスを見においで。君を招待するよ。」
ミカエル「本当に?」
ピエローラ「うん、待ってるよ。」
ピエローラ、上手へ去る。
ミカエル「(チケットをマジマジ見る。)へぇ・・・サーカスだって・・・。
僕、サーカスって初めてだ・・・。」
明るい音楽、流れる。
――――― 第 2 場 ―――――
サーカスの様子。
ピエローラの玉乗りや、サーカス団員の
輪投げなど。
上手よりミカエル、下手よりピエローラ、
其々登場。
ミカエル「(ピエローラを認めて。)ピエローラ!!」
ピエローラ「やぁ、来たね。」
ミカエル「ピエローラの玉乗り、すごく上手かったよ!!僕、もう
ドキドキしっぱなしで、本当に楽しかった!!」
ピエローラ「よかった。」
その時、下手より一匹のヒョウ(ヒョウガ)登場。
ヒョウガ「(ピエローラの側へ。)兄貴!!」
ピエローラ「おいおい、その呼び方はやめてくれよ。ピエローラで
いいよ。(笑う。)」
ヒョウガ「だって、オイラにとっちゃ、あんたは命の恩人・・・」
ミカエル「おまえ・・・あの時の・・・ヒョウ?」
ピエローラ「うん。」
ミカエル「あの、吊り橋の下に落ちていった・・・」
ピエローラ「そうだよ。ヒョウガって言うんだ。今は、僕らのサーカ
スの一員なんだよ。ヒョウガ、ミカエルは知ってるだろ
?」
ヒョウガ「勿論・・・」
ミカエル「どうして・・・?このヒョウは、僕らを食べようとしたんだ
よ!!」
ピエローラ「彼は心を入れ替えたんだ。」
ミカエル「でも・・・」
ピエローラ「だから、僕は彼を許したんだよ。ミカエル、君も彼の
ことを許しておあげ。」
ヒョウガ「・・・あの時は・・・悪かったな・・・」
ミカエル「僕、あの時は本当に怖かったんだ!!そんな簡単に
許せないよ!!」
ヒョウガ「あの時のオイラは、腹が減って腹が減って・・・」
ミカエル「いやだ・・・許さない!!(背を向ける。)」
ピエローラ「(溜め息を吐く。)ヒョウガ!向こうの片付けを手伝っ
て来ておくれ。」
ヒョウガ「・・・分かった・・・。本当に・・・ごめんよ、ミカエル・・・。
(下手へ去る。)」
ミカエル「謝って済むなら、この世は警察いらずだ!!」
ピエローラ「そりゃそうだ・・・。(笑う。)だけどミカエル・・・トムの
ことにしても、ヒョウガのことにしても、少し心を大きく
持って考えてごらん。誰かの過ちを許すことは、一番
勇気のいることだと思わないかい?」
ミカエル「・・・思わない・・・!!」
ピエローラ「ミカエル・・・これを覚えているかい?(“勇気の石”を
出す。)」
音楽、流れる。
ミカエル「それは・・・勇気の石・・・」
ピエローラ「(ミカエルに石を渡す。)」
ミカエル「・・・こんなの、勇気の石でもなんでもない、ただの石コ
ロじゃないか!!」
ピエローラ「そうだよ。これは、君の言うようにただの石コロだ・・・。
でも、あの時の気持ちを思い出してごらん、ミカエル
・・・」
ミカエル「あの時の・・・気持ち・・・?」
ピエローラ「あの時、君は勇気が欲しいと、ただ一生懸命だった。
その石が勇気の石だと信じて、手に入れようと色々
頑張ったじゃないか。その石を手に入れる前の気持ち
・・・そして、手に入れてからの気持ち・・・その気持ち
を思い出してごらん。何故、君は勇気の石が欲しいと
思ったか・・・。そして手に入れて、どう思ったか・・・。
君には分かる筈だよ・・・。」
ミカエル「分からない・・・分からないよ、そんなこと!!」
ピエローラ歌う。
“勇気が欲しいと
必死で手に入れ”
ピエローラ「たとえ偽物の石だと分かっても・・・、そんな石に頼ら
なくても勇気を持つことが出来ると分かった、あの時の
気持ちだよ、ミカエル・・・。」
ミカエル「あの時の・・・気持ち・・・。」
ピエローラ「(頷く。)」
サーカス団員の声「ピエローラ!!ちょっと、こっち手伝って頂戴
!!」
ピエローラ「今、行く!!じゃあミカエル、またいつでもおいで。」
ピエローラ、上手へ去る。
ミカエルとの思い出の“勇気の石”を取り出した
ピエローラですが、ミカエルにその思いは、届くの
でしょうか・・・?それでは“ミカエルとピエローラの
勇気”2へ参りましょう・・・。
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪
その風貌から、悪者的に使用していた“ヒョウ君”ですが、
一度くらい改心した姿をお見せしたくて、登場させたのが
この作品です(^^)v
どら。
http://www.geocities.jp/littlepine2005/
http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta
http://blog.goo.ne.jp/axizgoo7227
日本物・・・って、あまりな馴染みがないせいでしょうか、
登場人物達の名前・・・エライ“古風”な感じが・・・しなく
もないですね・・・^^;
書き上げた時期的なことを言うと、“ブラック”君の作品
と、同時期です(^^)v
“看護婦”と書いていることからも、最近ではないことが
伺えますね(^_^;)本文中では“看護師”と、変えさせ
て頂きます(^^)
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪
〈主な登場人物〉
大和 晃 ・・・ 山が好きな青年。
及川 尚斗 ・・・ 晃の親友。
及川 優美 ・・・ 尚斗の妹。
暮原 静 ・・・ 晃の同僚。晃に思いを寄せる。
近藤 春彦 ・・・ 晃の同僚。
その他
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪
開演アナウンス。
――――― 第 1 場 ―――――
静かな音楽流れ、幕が上がる。(八百屋舞台。)
中央、一人の少年(大和 晃)、口笛を吹きながら
ゴロンと横になっている。
手に持っていた雑誌の写真に見入る。
晃「・・・山かぁ・・・行ってみたいなぁ・・・。(雑誌を顔の上へ置いて
、眠ったように。)」
その時、上手より3人の少年(一人は及川尚斗。)、
楽しそうに歌いながら登場。
少年1“今日の宿題 もうやったかい?”
少年2「まだ!」
少年1「全然!」
尚斗「バッチリさ!」
少年1、2「(肩を窄めて。)相変わらず・・・。」
少年2“これからの予定は?”
少年1「別に。」
少年2「なぁんにも。」
尚斗「バイトに行かなきゃ。」
少年1、2「勤労学生!」
尚斗“やりたいことはあるかい?”
少年1「バスケットボール!!」
少年2「腹減った!!何か食いに行きたい!!」
尚斗「俺は山へ行きたい!!」
少年1、2「(顔を見合わせて。)えーっ・・・!?山!?」
少年1「何しにそんなとこへ行くんだよ。」
少年2「疲れるだけだぜ?」
尚斗「あの聳え立つ峰の続きを想像するだけで、男のロマンを
感じないか?」
少年1「分かんないよ、そんなこと・・・。」
少年2「“男のロマン”って、偉く爺臭いな。(笑う。)」
少年1、2歌う。
“俺達はまだまだ若いんだ
やりたいことなんて これから探すさ
見つかるさ!
今は今しかできないことやろう
今は今しかやれない楽しみ探そう!”
尚斗「(溜め息を吐いて。)今しかできない楽しみ?」
少年2「ああ!ハンバーガー食いに行こうぜ!」
少年1「結局おまえは何時もそれだな。(笑う。)」
晃「煩いなぁ・・・(雑誌を除けて、起き上がる。)」
少年1、2、尚斗、驚いて晃の方を見る。
少年1「(少年2と尚斗に聞こえるように。)今度、2組に転校して
来た、大和晃だ・・・。」
少年2「え?あの素行に問題のあるって言う・・・?」
少年1「行こうぜ!係わり合いにならない方がいい。」
少年2「ああ。」
少年1、2下手方へ行きかける。呆っと晃の方を
見ている尚斗に気付く。
少年1「尚斗!!早く来いよ!!」
尚斗「あ・・・ああ!」
少年1、2下手へ去る。
尚斗「(晃の側へ。手に持っていた雑誌を見るように。)矢っ張り
・・・!!」
晃「・・・なんだよ、おまえ!!」
尚斗「君、山が好きなんだろ?(晃の横に正座する。)」
晃「煩いな!!それが如何したんだよ!!」
尚斗「俺も山が好きなんだ!!」
晃「へぇ・・・、それで・・・?」
尚斗「俺達、友達になれないかな?」
晃「(驚いたように尚斗を見る。)・・・なれねぇよ!!」
尚斗「なれるよ!!色んな山の話しができるじゃないか!!沢山
の山に、一緒に登りに行こうよ!!」
晃「いやだ。(立ち上がる。)」
尚斗「(立ち上がって。)友達になろうよ!!山が好きな友達って、
中々いなくってさ!!」
晃「しつこいな。(上手方へ行きかける。)」
尚斗「待ってくれよ!!(晃の手首を掴んで、捻じるように。)」
晃「いてててて・・・!!何すんだ・・・離せよ!!」
尚斗「(ハッとして手を離す。)あ・・・ご免!つい・・・。俺、幼稚園
の時から柔道やってんだ。(笑う。)」
晃「何、笑ってんだ馬鹿!!(手首を摩って。)細い腕で、何て力
だよ・・・。」
尚斗「腕力には自信があるんだ!!どんな山にだってアタック
できるぜ!!」
晃「・・・どんな山・・・?」
尚斗「うん!!日本中・・・外国中の山にだって登れるさ!!」
晃「(雑誌をチラッと見て、ゆっくり差し出す。)」
尚斗「(雑誌を受け取って見る。)アルプス山脈・・・」
晃「・・・行ってみたいんだ・・・マッターホルン・・・」
尚斗「俺も!!行こう!!一緒に!!」
晃「(一瞬、躊躇ったように。嬉しそうに頷く。)」
尚斗「やった!!これから俺達、親友だ!!」
晃「・・・親友・・・?変な奴だな、おまえ・・・。(笑う。)」
尚斗「ああ、親友だ!!もし、どちらかが先に死んでも、山へ行け
ば必ず会える!!だから、ちゃんと親友に会いに来るんだ
ぜ!!爺さんになっても!!」
晃「(笑って。)何、縁起でもないこと言ってんだよ。」
尚斗「馬鹿!もし、晃が先に死んだら、俺が会いに行ってやるよ。
(笑う。)」
晃「(呟くように。)・・・晃・・・?う・・・煩いな!!俺は生命線が長い
んだ!!」
尚斗「俺、3年1組及川尚斗!!よろしく!!大和晃君!!(手
を差し出す。)」
晃「(手を服で拭いて差し出す。)・・・ああ・・・!!」
尚斗「俺達の約束だ!!」
晃、尚斗、握手して微笑み合う。
暗転。 ※
――――― 第 2 場 ―――――
音楽流れ、舞台明るくなる。
下手に一人のオフィスレディ(暮原 静)、書類を
手に持ち登場。歌う。
途中、上手より一人のインテリっぽいオフィスマン
(近藤春彦)、鞄を手に登場。歌う。
静“仕事 仕事 ああ忙しい
何時も 何時も 休む間もない
悲しいかな働く女性の定め”
春彦“仕事 仕事 さあ働こう
毎日 毎日 休んでなんかいられない
負けられないんだあいつには”
2人“働こう 何かの為に
見つけよう 何か大切なもの
直ぐ見つからなくても
屹度見つかる 必ず見つかる
自分の道が!!”
静、上手方へ。春彦、下手方へ。
静「(春彦を認め。)あら、近藤さん、出掛けるの?」
春彦「ええ・・・。今週中に如何してもまとめたい、大口契約がある
もので。」
静「大変ねぇ、営業マンは・・・。」
春彦「まぁ・・・。(時計を見て。)あ、そろそろ行かないと・・・。じゃあ
・・・。(下手方へ行く。)」
静「そうだ!ねぇ、近藤さん!晃、戻ってたかしら?」
春彦「な・・・何で私が、大和君が帰って来たかどうか、知ってるん
ですか、全く・・・。」
静「そう・・・。頑張るなぁ、晃・・・。」
春彦「暮原さん・・・それは嫌味でしょうか・・・。」
静「あら、そんな風に聞こえたらご免なさい。」
春彦「(溜め息を吐いて。)じゃあ・・・。」
春彦、下手方へ行くと、下手よりスーツ姿の
晃、尚斗、話しながら登場。
尚斗「だから、それは契約をまとめる為に・・・」
晃「接待なんて、馬鹿げてるよ・・・。(笑う。春彦を認めて。)あれ
?近藤、今頃から外?」
春彦「悪かったですね!!」
春彦、下手へ去る。
晃「如何したんだ、あいつ・・・」
尚斗「さぁ・・・」
静「(晃を認めて、駆け寄る。)おかえりなさい、晃!!」
晃「また、おまえか・・・」
静「何よ、その言い方!折角、お迎えしてあげてるのに!」
尚斗「そうだよ、晃・・・。」
晃「悪いな。俺はおまえみたいに、女に優しい言葉をかけてやる
甘い口は、持ち合わせてないんだ。」
静「でも、晃が及川君みたいだと、気持ち悪いかも・・・」
晃「静・・・態々こんな所まで出迎え・・・寒かっただろ・・・?(静の
手を取る。)」
静「いやだ!(笑う。)」
尚斗「俺はそんなこと言わないよ!」
晃「じゃあ、気付かずに言ってるのか?怖いよなぁ・・・(笑う。)」
尚斗「そ・・・それより晃、今度の連休、何か予定があるのか?」
晃「いや、別に・・・」
静「何処か行くの!?(嬉しそうに。)」
尚斗「久しぶりに、俺達の恋人に会いに行かないか?」
静「恋人ですって!?」
晃「ああ!!丁度、俺も会いたいと思ってたんだ!!」
静「誰よ、恋人って!!何処の女なの!?」
晃「おまえには関係ないよ。(笑う。)さぁ、彼女の為にどんなプレ
ゼントを買って行くとするかな。」
晃、上手へ去る。
静「嘘・・・」
尚斗「大丈夫!山のことだよ!じゃあ!(手を上げて、晃の後を
追うように上手方へ。)
尚斗、上手へ去る。
静「山ですって!?久しぶりどころか、しょっちゅう行ってるじゃ
ないのよ!!・・・それにしても好きよねぇ、あの2人・・・。
(溜め息を吐く。)女に興味ないのかしら・・・。」
音楽で暗転。
――――― 第 3 場 ―――――
明るくなると、野原の風景。
下手より、看護師の腕に摑まりながら、一人の
目の見えない少女(及川優美)登場。
話しながら、ゆっくり中央へ。
優美「ねぇ、看護師さん・・・。看護師さんは好きな人いる?」
看護師「そうねぇ・・・、いるわよ、沢山。」
優美「違うわよ!恋人いるの?」
看護師「恋人かぁ・・・。残念ながら・・・。(肩を窄める。)優美ちゃん
は?」
優美「私は駄目・・・。だって、目が見えないんですもの・・・。いくら
私が好きになったって、相手が私のことを、好きになってく
れる筈ないもの・・・。」
看護師「そんなことないわ!(後方を見て。)座りましょうか・・・。」
看護師、優美、(八百屋舞台上に)腰を下ろす。
看護師「いくら目が見えなくても、優美ちゃんには、それをカバー
するだけの取り柄が沢山あるわ。例えば優しくて思い遣り
のある所だとか・・・。頑張り屋さんな所だとか・・・。それに
とっても美人よ。」
優美「看護師さんったら!」
看護師「・・・誰か好きな人、いるの?」
優美「私はお兄ちゃんが好きよ!」
看護師「そうね、優美ちゃんはお兄さんっ子よね。」
優美「パパやママは、私が小さい時に事故で亡くなって、2人っ
きりの兄妹だもの・・・。他にはね・・・晃さん!私が小学生
の時、初めてお兄ちゃんがうちへ連れて来たの。最初は
余り話さないし、どんな人か分からなかったわ。お兄ちゃん
とは、とても仲良さそうだったけど・・・。でも、しょっちゅう
うちに来るようになって、そのうち3人で遊びに行くように
なったの。晃さん、目の見えない私のこと、可哀相とか、
そんな風にちっとも思わないのよ!道路を歩いてても、手も
貸してくれないの。でも、危ない場所があると、必ず安全な
方へちゃんと導いてくれた・・・。打切棒にね。(笑う。)だから
私も、晃さんの前では目が見えないことに、引け目を感じな
くていいの。」
看護師「そうなの・・・。」
その時、晃、上手より花束を持って登場。
優美を認め、ゆっくり側へ。看護師、晃を認める。
看護師「あら、大和さん。」
優美「晃さん?(嬉しそうに。)」
晃「こんにちは・・・。受付で、ここだと聞いたんでね。今日は日向
ぼっこするには最適な陽気だね。」
優美「日向ぼっこだなんて!」
晃「ご免、ご免。そうだ、203号室の患者さんが、ウロウロあなた
のことを捜してましたよ。」
看護師「本当?あのお婆さん、私の姿が見えなくなると、直ぐああ
なの・・・。仕方ないわね・・・。優美ちゃんのことは、大和さ
んにお任せしていいかしら?」
晃「どうぞ。」
看護師「じゃあ、後はよろしくね。(立ち上がる。)」
看護師、上手へ去る。
――――― “大和晃” 2へつづく ―――――
※ なんとな~く、これからどうなって行くのか、想像しやすい
会話内容ですね・・・^^;
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪
http://www.geocities.jp/littlepine2005/
http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta
http://blog.goo.ne.jp/axizgoo7227