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わりなき恋-その1 「驚異的な若さの理由-岸惠子さん-85歳」

2017-12-15 16:20:30 | 岸惠子
わりなき恋 (幻冬舎文庫)

 

国際的なドキュメンタリー作家・伊奈笙子、六十九歳。大企業のトップマネジメント・九鬼兼太、五十八歳。偶然、隣り合わせたパリ行きのファーストクラスで、二人がふと交わした「プラハの春」の思い出話。それが身も心も焼き尽くす恋の始まりだった……。成熟した男女の愛と性を鮮烈に描き、大反響を巻き起こした衝撃の恋愛小説。待望の文庫化!

 

幻冬舎刊 岸惠子著 650円 

◆p104

 侵入してきた九鬼兼太を受け入れながらも激痛が走った。固く閉じたオブジェの扉は開くことができないでただ裂けた、ように笙子は感じた。身を反らせながら発した自分の叫び声に自分で傷つき、蒼ざめていった。この世の果てのような暗がりのなかで笙子はもがいた。
           
 ほっそりとした体が慄(おのの)いた。自分では恥じいる枯渇したその姿態にしたたかなエロティシズムが潜むことなど笙子は知る由もなかった。
「ごめんなさい」
 九鬼兼太の手が、滑るように背中を這って、襟首をつたい髪の毛に潜った。「ごめんなさい」再びささやく兼太に、笙子は声も出なかった。
「ごめんなさい……でも、ぜったいに離れないで。ぜったいに消えてしまわないで。ぼくにとってあなたがどれほど大切か……」


 ◆p112~P113

 九鬼兼太さま

 むかし、『かくも長き不在』 という映画がありました。あなたは映画というものを観る方かしら? たしかマルグリット・デユラスの原作で、アリダ・ヴァリが主演でした。一九六〇年代はじめにカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した作品です。
 ストーリーはよく覚えてはいないけれど、長く暗い話だったように思います。
 ナチスのゲシュタポが絡んでいたように思いますが、長いこと生き別れになっていた夫に酷似した記憶喪失のホームレスを見て、愕然とするアリダ・ヴァリのクロ-ズアップが,昨夜から今朝にかけて脳裏いっぱいにひろがっています。不朽の名作『第三の男』であれだけ知的で美しかった顔が年月に晒されて無残に老いていた。その無残さに当時感銘を受けたのを覚えています。さいわい結末は忘れました。
 かくも長き不在のあとの私のみじめを、どうぞお捨て置きくださいませ。私の長すぎた不在は、私の孤独癖と異端にちかい私流の美学が選びとったものだっただけに、そのしっぺ返しのひどさに茫然としています。あなたは私にとっても、かけがえなく大事に思われる人になっています。
 このまま大事にさせてください。ごく自然に、ごく日常的に、歩調を合わせて、ただ時折、いっしょに人生を歩く人でいてください。
今朝の私は凍えています。
                                伊奈笙子

 岸惠子さん-85歳

仏パリ在住の女優・岸惠子さん。(85歳)。いつまでも若々しく美しい。東京・なかのZERO大ホールで半生を振り返る「スペシャルトークショー 夢のあとさき」開演前の会見で今年85歳になることを問われると,「そ~なのよ、85歳」と臆することなし。そして,「同じ薬を間違って2回続けて飲んでしまったり、頭もボケているが、見栄とはったりで生きてますよ。でも苦労が絶えないから、老けたり腰の曲がったおばあさんにはなれないのね」と日常と若さの源泉を独白。受け答えの反応もシャープそのもの。

あの頃映画 君の名は 第1部 [DVD]

眞知子と春樹、その純真な愛と波乱の人生。
      佐田啓二 (出演),‎ 岸惠子 (出演),‎ 大庭秀雄 (監督) 形式: DVD

「あの頃映画 松竹DVDコレクション 第2シリーズ」 対象。お求めやすい価格\2,800(税抜)で登場!

すれ違いの悲恋を綴った大庭監督の本格派メロドラマ 昭和20年5月24日、東京大空襲の夜に数寄屋橋の上で互いの命を助け合った若い男と女。ふたりは名も明かさず、「もしも生き延びていたのなら、半年後の11月24日の夜、この橋の上で再会を…」と、約束を交わし別れる。

時がたち約束の夜、男は待ち合わせ場所へ。しかし、女は無理解な縁談を強いられ、遠く佐渡ヶ島にいたのだった。幾多の障害にあいながらも、互いに想いを絶ちきれず、それから1年後の11月24日、ふたりは再会し名乗り会うことに。

男は春樹、そして女は眞知子。だが眞知子は、明日は人の妻になる身であった。真実を打ち明けられた春樹は・・・。

松竹 価格: ¥ 1,982 

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