安愚楽牧場旧経営陣,詐欺罪では不起訴 (東京地検)
「和牛オーナー制度」で全国の会員から多額の資金を集めながら,経営破綻した「安愚楽牧場」(栃木県那須塩原市)の元社長らが特定商品預託法違反の罪に問われている事件で,東京地方検察庁は「より刑の重い詐欺罪を適用しなかったのは不当だ」とする検察審査会の議決を受けて再捜査をしていたが,10月3日,改めて詐欺罪は不起訴とし,捜査を終えた。
「和牛オーナー制度」で全国の会員から多額の資金を集めた末,経営破綻した「安愚楽牧場」の元社長、三ケ尻久美子被告(70)ら経営陣2人は保有する牛の数を過大に説明し出資を募ったとして,特定商品預託法違反の罪に問われ1審で有罪判決を受けて控訴している。
この事件で東京地方検察庁が被害を受けた会員が求めていた,より刑が重い詐欺罪の適用を見送ったのに対し、検察審査会が「だますつもりがなかったという弁解は受け入れられず詐欺罪の不起訴は不当だ」と議決した。
これを受けて東京地検は再捜査をしていたが,「だまそうという故意を認定できず起訴するだけの証拠はない」と結論づけ、詐欺罪について改めて不起訴とした。
検察審査会の議決が「不起訴不当」の場合,検察が再び不起訴とすれば2回目の審査は行われないため,これで捜査は終わる。
なお,「安愚楽牧場」の元社長、三ケ尻久美子被告(70)ら経営陣2人は保有する牛の数を過大に説明し出資を募ったとして,特定商品預託法違反の罪に問われ1審で懲役2年4カ月の実刑判決を受け,現在控訴中である。
>>> 「安息楽牧場」の三ケ尻元社長 -現在控訴中-
戦後最大級となる総額約4200億円もの消費者被害を出した、『安息楽牧場』事件。高利回りの和牛オーナー制度を謳った『安息楽牧場』 が破綻し たのは2011年8月。全国7万3000人から約4200億円を集めたものの、もとより自転車操業だったことに加え、福島第一原発事故が資金繰り悪化の致命傷となった。
「当初、大型詐欺事件に発展すると見られていたが、結局、警視庁は昨年6月、三ケ尻元社長ら3人を特定商品預託法違反で逮捕し、幕引きを図った。 元社長の三ケ尻久美子被告(70)は一審で懲役2年4カ月の実刑判決を受け、現在控訴中である。
「安息楽牧場」の三ケ尻元社長は,いま皇居にほど近い閑静な住宅街に建つ、超高級マンションの最上階部分の7、8階を占めるメゾネットタイプの部屋で暮らしているという。それが発覚したのは、5月26日に東京高裁で開かれた控訴審第2回公判でのことであった。
検事が、元社長の三ケ尻久美子被告の現在住んでいる部屋の広さや家賃なども問い質した。元社長は、“部屋数は5部屋くらい。息子家族と5人で生活している。家賃は月90万円くらいと聞いているけれど、息子の会社がなぜ便宜を図ってくれるのかはわからない″と答えた。ちなみに部屋の広さは288平方㍍、付近の家賃相場では130万前後だという。
警察庁担当記者によると,安息楽牧場のレストラン経営などを手掛けていた関連会社の社長は、それとはまったく別に,傘下に飲食店やクラブ、IT企業を収める企業グループのトップも務めていた。元社長の息子は、そのうちの一社で働いているという。それにしても家賃90万の社宅を提供されるという待遇は尋常ではない。
『安息楽牧場』事件は,詐欺に問われなかったため、捜査の手は資金の流れの解明まで及ばなかった。隠し資産の疑念は拭えないのである。
現状、被害者が手にすることのできた弁済額はわずかに5%。このまま泣き寝入りで一件落着となるのであろうか……。
出典:「週刊新潮」 2014年6月12日号 p42~p43
◆「安愚楽牧場」
安愚楽(あぐら)牧場 1981年12月に有限会社安愚楽共済牧場として設立。繁殖牛の権利を出資者と売買し、生まれた子牛の売却益を還元する「和牛オー ナー制度」を始めた。90年代に詐欺容疑などで相次いで摘発された和牛商法業者の最古参で、17社程度あった業者の中で唯一生き残っていた。破綻した 2011年8月までに集めた出資金は全国約7万人から約4200億円に上る。同社資料によると、牛肉料理を楽しむ庶民の姿を描いた小説「安愚楽鍋」が会社 名の由来。
>>>詐欺容疑に関しては不起訴
安愚楽牧場をめぐる事件で、詐欺容疑で告訴された元社長三ケ尻久美子被告(69),元専務大石勝也被告(74)=特定商品預託法違反罪で公判中=ら3人について、東京地検は10月11日、嫌疑不十分で不起訴処分とした。
このうち元専務の増渕進(59)被告については、同法違反容疑も処分保留となっていたが、同じく不起訴とした。
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