鹿児島国際大学経済学部地域創生学科では, 県内の実業家,地域活性化に取り組む地域リーダー,市長などを招いて,オムニバス授業「地域創生」 を行っています。 大学広報誌「南風」掲載記事から,その講義内容を紹介します。
◆新感覚の商業施設マルヤガーデンズ
10月29日の講師はマルヤガーデンズの玉川恵社長。7年前、東京から鹿児島に帰り、不動産・賃貸を主業とする家業を継いだ。09年に提携していた三越鹿児島店が撤退。「鹿児島の中心地が空き店舗ではしのびない。リスクは大きいが自前で商業施設を」 と、店舗跡をリノベーションして今咋4月、マルヤガーデンズを開業した。
新店舗のコンセプトは「Unitement」 (すべてをつなぐ)。テナントとコミュニティを有機的に結びつけ、「天文館のオアシス」を目指した。各フロアには市民がワークショップ等を楽しめる空間を設けたのが特徴で、「これまでにないものをつくれたのではないか。商業施設は生き物なので、お客様の動向をみながらこまめに対応していきたい」 と今後の方針を示した。
◆子孫からの借り物自然との共存大切
地域創生学科のオムニバス公開授業「地域創生」 は10月22日、笠沙町漁業協同組合代表理事組合長の中尾雄作氏が漁協の現状や環境問題への提言を行った。
同町近海は魚種が豊富で、漁業は域内の主要産業となっている。同漁協はこれまで露天だった魚市場を5年前、高度衛生管理型の屋内施設に替え、安心安全な魚を供給。定置・曳き綱で採取したサメやエイなどを全国の水族館に提供している。
中尾氏は海産資源の採れる環境を 「子孫からの借り物」 ととらえ、「現世の人が、未来の人類が得るべき権利まで収奪すべきでない。農山漁村が自然と共存した活力あるコミュニティを形成し、その国産農林水産物が安全かつ適正に消費されることで、環境も守られ人類も末永く幸福に暮らせると考えられる」 と話した。
◆行政は市民下支え若者の発想を期待
11月5日は鹿児島市の森博幸市長が登壇。鹿児島市の広報ビデオを上映した後で、学生たちからの質問に答えた。九州新幹線全線開業で日帰り客が増えるデメリットを懸念する質問に、「回遊性は増すのではないか。
夜も楽しめる街づくりや食の魅力で集客を強化したい。『きつまうんまか維新』 として新しい食材の開発に努
めている」。
また市長は、「市民の発想を下支えするのがこれからの行政の役割。若い感覚は財産なのでどんどん提言してほしい」と学生に求めた。
◆ ニーズを明確にし強いリーダー必要
11月12日は新日本科学専務取締役の高梨健氏が、同社もかかわる指宿市の 「メティポリス指宿」の概要を紹介しながら、新事業を始めるときに考えるべきポイントを提示した。
「メディポリス指宿」 は、がん治療に対する新たなニーズと最先端技術を導入し、「グリーンピア」 の跡地という
大自然と広大な敷地を生かした施設。地域の理解やプロジェクトを牽引するリーダーの存在もあって、「事業的に成功している」。
高梨氏はこのことをもとに、①事業の目的を明確にする②顧客のニーズをしっかりつかむ③資金や人材などの経営資源を確保する④リーダーシップの大切さ、の4点の重要性を強調した。