毎晩,NHKラジオで夜11時5分から翌朝5時まで生放送の「ラジオ深夜便」。今晩-3月25日(木)から26日(金)にかけて-は,NHK鹿児島放送局からの放送です。
・没後40年の節目を迎えた、作家・向田邦子の魅力。
向田邦子さん 「おしゃれの流儀」
10月22日に没後40年を迎える作家・脚本家の向田邦子(1929~81年)さん。没後三十余年を経てなお支持される。その理由(わけ)一端を向田さん流のセンスの磨き方、装い術などを、おしゃれ上手だった向田さんの衣装やポートレートからうかがい知ることができます。
向田邦子さんの装いには二十代の頃から「これぞ向田流」と呼べそうな、いくつかの特徴が見て取れます。その流儀を、向田さんと末妹・向田和子さんのエッセイ、そして若き日のポートレートから探ってみます。
◆いいもの好き
私は子供の頃から、ぜいたくで虚栄心が強い子供でした。いいもの好きで、ないものねだりのところもありました。ほどほどで満足するということがなく、もっと探せば、もっといいものが手に入るのではないか、とキョロキョロしているところがありました。玩具でもセーターでも、数は少なくてもいいから、いいものをとねだって、子供のくせに生意気をいう、と大人たちのひんしゅくを買ったのも憶えています。
「手袋をさがす」『夜中の薔薇』
◆末妹・向田和子さんのエッセイ『向田邦子の青春』-「手袋をさがす」
・p103-生き方
エッセイ「手袋をさがす」には、気に入った手袋が見つかるまで、ひと冬を手袋なしで過ごし、「ないものねだりの高のぞみが私のイヤな性格なら、とことん、そのイヤなところとつきあってみよう」と決心した二十二歳の自分を書いている。そして、エッセイの最後の方では、それを書いた四十六歳の自分の気持ちを素直に語っている。
・p104-とことん追求
姉の人生にはたしかにツキがあったと思う。でもそれだけではなくて、いろいろなことをやれたのは、自分に合う「手袋」を一生探し続けたからなのかもしれない。
姉がさらに「手袋」を探し続けていたとしたら、次は何を手に入れていたのだろうか。
・p129-「好き」「嫌い」がはっきりしていた
エッセイ「手袋をさがす」には、一つの気に入った手袋が見つからなくて、気に入ったものが見つからないなら見つかるまで、手袋ははめないと決心して冬を過ごす、というエピソードがある。「傘一本でも、私は一年かけて探す。嫌なものは嫌」と言っていたのを思い出す。「嫌なものは身につけたくない」ということははっきりしていた。いつも自分が好きかどうかだった。「好き」「嫌い」がはっきりしていた。それは、生涯一貫していたと思う。どんなにいいものでも、自分に似合わないと思うと絶対着なかった。
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