○コメリの需要創造 - 農家に問題解決支援
ホームセンター業界の勝ち組の旗頭でもあるコメリ(全国約1000店舗 上場1部・本社新潟 売上高 2,775億57百万円)は,生き残りのカギは,「需要創造」にあるとしています。“農村のホームコンビニ”を指向する同社は,金物や資材(ハード),そして園芸用品(グリーン)に特化したコンビニ型小型店「ハード&グリーン」(H&G)の展開にとり組んでいます。90年代までは農家は飼料や農機具の大半は農協から購入していましたが,いまではコメリが農家需要を取り込んでいます。
同社が農業分野に進出したのは,市場規模2兆円超の農業分野は,手付かずの「宝の山」と見込んでのことです。農具・金具と園芸資材を中心に1万5千の商品をそろえる売り場面積一千平方メートル弱の小型店「H&G」を主力に運営。1店舗あたり,1億円で利益を生み出せるローコスト経営とバイイングパワーによる価格競争力で,農業生産資材の市場でJAを凌駕しています。一例を挙げると,定番肥料として需要の多い「オール14」の08年度の販売価格はJAの全国平均で2800~3000円,これに対しコメリは2400~2600円。
同社は,JAに対抗して農家の生産から販売までを支援するサービス体制の構築にも力を注いでいます。農家が金銭収入のある収穫期に合わせて購入商品の一括支払いが可能になる「アグリカード」を発行,カードの保有者数は02年の発行以来,年率20%ペースで増えています。一方,販売支援では,農家が出品した作物を販売する目的で04年に立ち上げたネット通販「産直市場」も2桁増が続いています。
08年からは,さらなる農業の需要創造を目指して農家に対する相談業務の実験を始めています。農業経験のある社員を「農業アドバイザー」として配置。作物の病気への対応や農薬,肥料配布の時期といった相談に対応。相談内容に合った商品を薦め,農業資材のさらなる需要創造を目指しています。
▼店舗数の推移(コメリHPより)
▼営業収益(売上高)の推移・単位 億円-コメリHPより
▼ローコストの徹底で商圏人口1万人でも出店可能
コメリの出店戦略は,10万人の商圏人口に2800坪を標準とするPOWER,商圏人口1万2000~1万3000人,商圏5キロメートル基準とするハード&グリーン(HG),その中間を埋めるのがホームセンター(HC)とし,これを「船団方式」と呼称する出店戦略をとっていることです。また,ローコスト経営の徹底による標準化も大きな特徴で,これも多店化を可能としている要因でもあります。
▼関連ブログ
・コメリ,今期50店舗出店 150億円投じ中四国・九州中心に
http://blog.goo.ne.jp/rk_kobayashi/e/52faba73b739239b3ad539ae42ac12cc
・「身の丈を強みとする経営」 31--コメリの需要創造 - 農家に問題解決支援コメリ
http://blog.goo.ne.jp/rk_kobayashi/e/e4f97d32c628315db9363dd6b5abca86
・「身の丈を強みとする経営」 ホームセンター勝ち組企業にみる時代対応
http://blog.goo.ne.jp/rk_kobayashi/e/d81d752f486073143c74aa309cad7d21
・九州のホームセンター業界動向-ナフコ,コメリ
http://blog.goo.ne.jp/rk_kobayashi/e/7066ba83984e1cd4d5154effc4b0d868
・ホームセンター コメリ 今年新卒100人を追加採用
http://blog.goo.ne.jp/rk_kobayashi/e/a0c59ac802d1bdb349f8a43dadfe7164
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▼『 「身の丈」を強みとする経営』(日本経済新聞社刊)。
堅実経営を貫き,長期にわたり成長を維持している企業を凝視すると,ある共通性が浮かんできます。それは,性急な拡大発展を目指すことなく,マイペースを貫きながら,現状に満足することなく常に革新にとり組むみ,存在感を発揮するという経営姿勢を貫いている点です。本書ではこのような経営姿勢を「身の丈経営」と称して,縮小の時代の企業業経営のあり方を考察しています。
⇒本書のp87~p89,110~112,193~202で,「ホームセンター」を事例分析しています。
「身の丈」を強みとする経営―縮小の時代に勝つ「新リージョナルマーケティング」 | |
小林 隆一 | |
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