ジャーナリストで雑誌「話の特集」創刊の矢崎泰久(やざきやすひさ・89歳)さんが、昨年12月30日亡くなりました。89歳でした。1965年創刊した「話の特集」は「反権威、反権力」を掲げ、永六輔、野坂昭如、和田誠、横尾忠則さんといったリベラルな文化人、言論人を起用した人気の雑誌でした。矢崎さんは、1995年に休刊するまで編集長を務めました。
また、テレビなどのプロデューサーとしても活躍したほか、『人生は喜劇だ』『永六輔の伝言』」などを著しています。
晩年、矢崎さんはご家族とあえて離れて一人暮らしをされていました。そのライフスタイル、人生観を、2017年7月から50回にわたり「介護ポストセブン」に連載のエッセイ"84才、一人暮らし。ああ、快適なり"で、吐露しています。その一節を書き添えます。
- 嫌な老人の典型は、何かにつけ助けを求める。いわゆる憐みを乞う。施しを受けることを当然と思っている。その気持ちが間違っていることに一向に気づかない。尊厳のない老人は、生きる価値を自ら棄てているとしか言いようもない。-
◆矢崎泰久(やざきやすひさ)
1933年、東京生まれ。「話の特集」を創刊。30年間にわたり編集長を務める。テレビ、ラジオの世界でもプロデューサーとしても活躍。永六輔、中山千夏さんらと開講した「学校ごっこ」も話題に。著書に『永六輔の伝言 僕が愛した「芸と反骨」 』『「話の特集」と仲間たち』『口きかん―わが心の菊池寛』『句々快々―「話の特集句会」交遊録』『人生は喜劇だ』『あの人がいた』など。
▼盟友・永六輔さんと語る
出典:『生き方、六輔の』永六輔・矢崎泰久著 p188~p189 平成14年10月 飛鳥新社発行
「施す」気持ちが原点
矢崎- たとえば、永さんからカネ借りるじゃないですか。たとえばじゃなくて、僕なんか実際に借りたことあるからね。「貸して」って言うじゃない? そうすると、永さんから届くじやない、カネが。届いたカネのところに「これは差し上げます」って書いてある。
永-嫌みだねエ! (笑)
矢崎-ドキッとするわけですよ、もともと返す気はないんだからね。こっちも返す気はないのに借りてるんだから、本当は「ください」って言えばいいわけですよ、最初から。でもね、「貸して」のほうが言いやすいんですよ。それに、「ちょうだい」って言うと、とても恥ずかしいじゃない、乞食みたいで(笑)。
永-乞食じゃなかったの? (笑)
矢崎-そうすると「返漬不要」って書いてある。もう、それはがっくりくるわけですよ。しかも次に借りにくい。もう、一度もらっちゃったから。
永-どうだ! (笑)