国際刑事裁判所(ICC)検察局トップのカリム・カーン主任検察官は2日、日本メディアで初めて読売新聞のインタビューに応じた。パレスチナ自治区ガザを攻撃するイスラエルへの捜査を巡り、米国から圧力を受けているとして「裁判所への攻撃は許されない。ルールに基づいたシステムが成り立たなくなる」と述べ、「法の支配」が揺らぎかねないとの懸念を示した。
【表】ウクライナ侵略やガザでの戦闘を巡るICCの動き
ICCは個人の戦争犯罪を裁く国際機関。カーン氏が率いる検察局は5月、ガザの人道危機を引き起こした疑いで、イスラエルのネタニヤフ首相ら2人への逮捕状を請求した。イスラエルを支持する米国はICC非加盟だが、米下院は6月、ICC関係者への制裁法案を賛成多数で可決した。上院で可決され、大統領が署名すれば成立する。
カーン氏は、職員がロシアやイスラエルの支持者から個人的な脅迫を受けていると明らかにし、「司法は恒久であるべきだ。法制度の解体や侵食を目的に攻撃や脅迫を許せばICCは終わる」と非難した。日本については「ICC加盟国の中で最大の資金拠出国だ。ICCは『日本の子供』と言える」と述べ、米国に働きかけるよう外交面の協力を求めた。
ICCが逮捕状を出しているプーチン露大統領は2日からICC加盟国のモンゴルを訪問している。加盟国には身柄拘束の義務があり、カーン氏は「(ロシアに)便宜を図るより、原則に立つ勇気を持つ方が国のため、世界のためになる。国際法の義務の尊重を願う」と拘束執行を求めた。
Karim KHAN 英国北部エディンバラ出身。国際刑事法や国際人権法を専門とする弁護士。旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所やルワンダ国際刑事裁判所などで勤務し、イスラム過激派組織「イスラム国」の犯罪を裁く国連の捜査チームも率いた。2021年にICCの主任検察官に選出され、任期は30年まで。
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