ロシアと北朝鮮の接近は、長く北朝鮮の後ろ盾だった中国にとって「内心、面白くない展開」(北京の外交関係者)だ。
【写真】極東連邦大学での夕食会で、訪ロした北朝鮮の金正恩総書記と乾杯するロシアのプーチン大統領
習近平政権はロ朝それぞれと友好関係にあるものの、中国を加えた3カ国が一体となって陣営を形成していると国際社会から見られたくないのも本音。ロ朝の「蜜月」にジレンマを抱きつつ、北朝鮮との距離の取り方に苦心している。
「ロシアと他国との伝統的友好関係の発展は歓迎する」。中国外務省の林剣副報道局長は13日の記者会見で、プーチン大統領の訪朝計画について問われ、こう答えた。中朝関係に関しては「意思疎通を維持している」などと述べるにとどめた。
北朝鮮はコロナ禍後、中国ではなくロシアとの首脳往来を先に実現した。今年は中朝国交樹立75年の「友好年」に当たるが、2019年以来となる習国家主席と金正恩朝鮮労働党総書記との首脳会談は、いまだ日程すら浮上していない。
米国との長期対立を見据える習政権にとって、朝鮮半島情勢への影響力保持の観点から、北朝鮮との関係維持は基本方針だ。昨年以降、中朝間で活発化した高官訪問でも、両国の「血で固めた友情」をアピールしてきた。
一方で、中朝間には微妙な「すきま風」も吹く。中国はコロナ禍前、約10万人とされる北朝鮮労働者を受け入れていたが、現在は大規模な労働者入国が確認されていない。中国からの観光ツアーも止まったままだ。
中国の外交・安保環境は、台湾や南シナ海問題、対ロ政策を巡って厳しさを増している。弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮に接近し過ぎれば、米国にさらなる対中制裁の口実を与えかねず、習政権は慎重になっているもようだ。
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6月
フィリピンのマルコス大統領は27日、南シナ海で17日に中国海警局船の衝突で自国軍兵が重傷を負ったことについて、中国の「違法行為」への抗議だけでなく「それ以上のこと」をする必要があると指摘した。
「われわれは100回以上抗議している」とした上で「それ以上のことをしなければならない」と述べた。
17日の中国海警局の行動について、発砲はなかったため武力攻撃とは言えないが、フィリピン軍の補給活動を阻止する意図的行動だと指摘した。
在マニラ中国大使館はマルコス大統領の発言にこれまでのところコメントしていない。
米国のサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は、米国がフィリピンと締結している相互防衛協定は「フィリピン軍のほか、沿岸警備隊のものも含む船舶や航空機に対する南シナ海での武力攻撃」にも適用されると指摘した。
これに対し中国国防省の呉謙報道官は、フィリピンと中国が領有権を争う南シナ海のアユンギン礁(英語名セカンド・トーマス礁)について「米国が関与する問題ではないと強調したい」とし、「米国がフィリピンによる侵害と挑発をあおり、支援するのは極めて危険で無責任だ」と非難した。
オースティン米国防長官とフィリピンのテオドロ国防相は26日に電話会談した。米国防総省は「国際法が許す限り、安全かつ責任を持って飛行、航行、作戦を行う権利を全ての国が守ることの重要性について話し合った」と発表した。
フィリピンのロムアルデス駐米大使は26日、領有権問題の解決ではなく、緊張緩和のための協議を中国当局者に申し入れたと明らかにし、来月初めに会談が実現することを望んでいると述べた。
「中国が深刻な紛争を望んでいるとは思わないし、われわれもそうだ。それが良い出発点になる」と指摘した。
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中国の習近平国家主席は28日、北京で開催された外交関連イベントで演説した。
ウクライナや中東、朝鮮半島などの問題において「建設的な役割を発揮する」と表明。「中国の力が増せば、世界平和への希望も高まる」などと主張した。
習氏は対立する米国を念頭に「陣営対立や、他国に対してどちらの側に付くか迫る行為に反対すべきだ」と強調。「腕力の強い者」の言いなりになってはならないと述べた。
経済や安全保障面で米主導の対中包囲網が強まる中、習政権は新興国の取り込みを急ぐ。習氏は演説で、新興・途上国「グローバルサウス」との連帯を強調し、奨学金の提供やさらなる経済支援を約束した。
↑↑↑中国お得意の飴玉ですな
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9月:遠藤和也駐フィリピン大使は1日、南シナ海のサビナ礁でフィリピンの巡視船が8月31日に中国海警局の船に衝突され、穴が開くなど損傷したことを受け、X(旧ツイッター)で「深刻な懸念」を表明した。
遠藤氏は投稿で日本は「南シナ海の利害関係国」だと強調。中国を念頭に「武力による一方的な現状変更の試みに反対する」と訴え「日本はフィリピンを支え、海洋における法の支配を支持する」と書き込んだ。
日本の大使は南シナ海で中国との衝突が起きるたびにフィリピンを擁護する声明を投稿している。これに対し、在フィリピン中国大使館は29日「無責任な発言」に抗議する外交文書を日本大使館に出したと発表した。
米国務省も31日「中国の危険で過激な行動を非難する」とする声明を発表している。(共同)
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9月:
不動産バブル崩壊不況の底が見えない中国経済について、楽観的な中国経済予測を繰り返してきた国際通貨基金(IMF、本部・ワシントン)もさすがにまずいと思ったのか、8月初旬に大々的な財政出動を習近平政権に勧告した。ところが、習政権は強気の姿勢を崩さず、はね付けた。
【グラフでみる】中国の外貨準備と中国人民銀行の資金発行
9月2日付米ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)電子版の「中国の消費不足、世界需要に『300兆円の穴』」との見出しの記事によれば、IMFは中国政府に対し、4年間でGDPの5・5%を費やして未完成住宅を買い取るよう勧告したが、中国側は丁重に断った。「習氏は家計への財政支援について、怠慢を生む『福祉主義』だとして反対している」というのだ。
IMFアナリストたちは、中国経済は西側世界と同様の市場経済であり、不況の時は財政出動して需要を喚起させるというケインズ理論が適用されると信じているから面食らうのだろう。世界最高権威のシンクタンクとも言える、IMFにしてそんなざまなのだから、あとは推して知るべし、西側の名だたる経済学者、エコノミスト、経済メディアも習政権が財政出動しない訳がわからず、気をもんでいる。
実のところは、習政権は財政出動したくてもできないのだ。中国経済というのは、モノの取引については市場原理で動いているには違いないが、カネ、つまり金融に関しては共産党中央が発券銀行である中国人民銀行を支配し、カネの流れをコントロールするシステムで成り立つ。なぜそうするかと言えば、通貨の乱発が共産党独裁体制を崩壊させると恐れているからである。1940年代、国民党政権が国債と通貨を乱発したために悪性インフレを発生させ、自滅した歴史的な教訓を共産党政権は踏まえる。
日米欧中央銀行の資金発行の主な手段は国債買い上げだが、中国の場合は国債ではなく外貨である。人民銀行は中国の金融機関に入ってくる外貨を買い上げるために人民元資金を発行する。中国の国民や投資家が持ちたがるのは毛沢東のお札ではなく、金(きん)か米ドルである。外貨資産の裏付けのない人民元を大量に増発すれば、元の対ドルレートは暴落危機に見舞われるだろう。
グラフはリーマン・ショックが起きた2008年以降の中国外貨準備、人民銀行による資金発行額の前年比増減率と人民銀行外貨資産の元資金発行に対する比率の推移である。外貨比率は、リーマン危機当時100%を超えていたので、人民銀行は楽々と金融の量的拡大が可能で商業銀行は融資を大幅に拡大した。政府も財政資金を易々(やすやす)と確保し、インフラ投資などで景気の拡大策に踏み切れた。ところが、外貨準備は2015、16年に減少に転じた後、横ばいとなったままである。そして外貨比率は6割を切る寸前にまで減った。主力の外貨流入源である外資の対中投融資は減る一方だ。習政権の金融・財政政策は行き詰まったのだ。
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米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ、電子版)は26日、中国で就役前の最新鋭原子力潜水艦が5月下旬から6月上旬の間に沈没したと報じた。複数の米政府関係者の話として伝えた。中国軍や地元当局は沈没が起きたことを隠蔽(いんぺい)し、公表していない。どのような経緯で沈没したかは不明だが、習近平政権が米国に対抗するために進めている海軍増強計画に大きな打撃となっているもようだ。
同紙によると、沈没したのは攻撃型原子力潜水艦「周」級の1番艦。同艦は5月下旬に湖北省にある長江に面した造船所で航海に出る前の最終整備が行われていた。その後沈没したとみられ、6月上旬の衛星写真で、大型のクレーンが現場に到着し、沈没した潜水艦を川底から引き揚げている様子が確認された。
米政府は沈没時に核燃料を積んでいたかどうか把握していないが、専門家は積載していた可能性が高いとみている。また、中国当局が放射能汚染の有無を調べた形跡や死傷者について米政府は確認していない。同紙によれば、専門家は、航海前だったため放射能漏れの恐れは低いと語った。
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中国の不動産バブル崩壊が始まってから、早くも数年の時が過ぎた。中国政府が対策しているにもかかわらず、住宅価格の下落に歯止めがかからない。むしろ、中国主要都市の住宅価格の下落ペースは加速する傾向さえ見える。
地方都市の中には、住宅の在庫圧縮に10年程度を要すると試算されるケースもある。中国政府は、地方政府に対して住宅市場の下支えのため買い取り策などを指示したが、今のところ目立った効果は出ていない。地方政府は財政の悪化により、不動産市場への介入を緩めざるを得ないところも出ている。地方政府が新築住宅の価格指導を停止し、住宅価格が急激に下落するケースもある。
ここから先、どこまで価格が下がるか予想は難しい。中国の家計部門が抱える不動産ローンを見ても、不動産バブル崩壊の影響が経済全体に重大な影響を与えていることがわかる。当面、個人消費が盛り上がることは考えにくい。不動産市況の回復なくして、中国経済の本格的な回復は望めないだろう。
中国国家統計局が発表した8月の新築住宅価格は、主要70都市のうち67都市で前月から下落した。下落した都市の数は前月から1都市増えた。前月から価格が上昇したのは上海と南京、前月から横ばいだったのは陝西省西安だけだった。
政治の中心地である北京や、IT先端企業が集積する“中国のシリコンバレー”と呼ばれる深圳でも新築住宅の価格は下落した。海外の金融データ企業の試算では、70都市の新築価格は単純平均で前年同月比5.3%下落した。約9年ぶりの下落率といわれている。
住宅の需給動向を反映する中古住宅の価格も、下落トレンドは明確になっている。8月、全70都市のうち、下落したのは前月から2都市増えて69だった。70都市全体で前年同月比の下落率は8.2%だ。
2023年半ば、不動産デベロッパーの破綻懸念を背景に、中国の新築・中古住宅ともに下落に拍車がかかった。足許の価格下落ペースは当時を上回る。不動産バブル崩壊により住宅市場の厳しさは増している。
長期的なトレンドとして、2020年8月に3つのレッドラインが実施されるまで、変動を伴いつつ中国の住宅価格は相応にしっかりした歩調にあった。2015年の年央、本土の株価が急落した局面では、株式からマンションに投資資金を再配分する人は増えた。
当時、成長期待の高いIT先端企業が集積する深圳市などでは、数カ月間で平均価格が60%近く上昇するケースもあった。中国の不動産バブルは膨らんだ。その後、基本的に中国政府は緩和的な金融環境を維持しつつ、主に住宅購入者の借り入れ規制を調整し、住宅市場の成長を目指した。投機熱は高まりマンション建設は増加した。
不動産業者の財務内容を規制する3つのレッドラインは、業者の借り入れなどに重大な影響をもたらした。大手デベロッパーであるカントリーガーデンなど、不動産業者の経営体力は急速に低下した。2021年秋ごろから、住宅価格は下落に転じた。マンション建設の減少、資金繰り確保のための値下げなど、バブル膨張とは逆に、「売るから下がる、下がるから売る」という弱気心理が連鎖し、不動産バブルは崩壊した。
それ以降、マンションなどの需給バランスは悪化傾向だ。過去、中国では住宅在庫の面積を成約面積で割った消化月数は、12~14カ月が適正な水準といわれてきた。易居研究院によると、2023年末時点で主要100都市の消化月数は22カ月程度、2024年4月時点では26.5カ月まで伸びたようだ。供給が需要を上回る状況に拍車がかかった。
中国全体で、マンションなど集合住宅の売れ残り在庫は6000万戸あり、未完成の物件は4800万戸との試算もある。相場の格言に「落ちてくるナイフをつかんではならない」とある。住宅の買い手や投資家は、今後もマンション価格は下落すると警戒を強めている。足許、完成前にマンションを販売し住宅ローンの返済を始める、いわゆる“予約販売”の比率が18年ぶりの低水準に落ち込んだ。人々の警戒心が高まっていることを物語っている。
今年5月、需給バランスの改善を目指し、中国政府は200以上の都市に住宅在庫の買い取りを指示した。開始から3カ月程度で、その指示に従ったのは29の都市にとどまったようだ。地方財政の悪化による買い取り資金の不足に加えて、今後の住宅価格下落リスクから地方政府でさえ手を出せないのが実情だろう。中国人民銀行が設定した資金枠(3000億元、約6兆円)も少なかった。
今のところ、中国政府の経済運営は手詰まり状態といってよい。中国政府は、基本的には投資を軸にした経済運営に固執しているようだ。重視する目標は、鉄鋼やアルミなどの基礎資材、EV、太陽光パネル、デジタル家電などの供給増加にあるようだ。EVなどに関しては、民間主要企業と国有・国営企業に土地や産業補助金を支給して価格競争力を高め、世界シェアを高めたいのだろう。
ただ、その発想だとデフレ圧力の上昇は避けられない。不動産市況対策が思ったような効果を上げていないこともあり、政府内部でも2024年の経済成長率目標(5%前後)の達成は難しいとの危惧も出ているようだ。
不動産市況の悪化に伴い、これからさらに地方政府の財政は悪化する恐れがある。住宅需要の減少によって、地方政府の土地使用権譲渡収入は減少傾向だ。2024年前半は前年同期比18.3%減だった。2021年と比較すると土地使用権の譲渡益は4割近く減少したとみられる。経済対策などとしてのインフラ投資、公務員給与の支払いなど歳出の削減を余儀なくされる地方政府が増加するだろう。
今年8月、国際通貨基金(IMF)は中国が住宅在庫の圧縮などを進めるには、最低でも140兆円程度が必要と指摘した。不動産バブル崩壊対応のための不良債権処理などのコストも含めると、政府の対策費はそれを上回る可能性は高い。
それに対して中国政府は、既存の政策で十分であるとIMFに反論した。中国は中央政府の財政支出拡大による地方政府の救済、不動産デベロッパーなどの破綻処理、規制緩和による成長産業の育成などの必要性は低いと判断しているのかもしれない。
財政の悪化を食い止めるため、交通違反など罰金収入の増加に取り組む地方政府が増加傾向だ。内陸部など経済規模が小さい都市ほど、罰金依存は高い傾向にあると考えられる。公安と連携し、脱税などの摘発に取り組むケースもある。電気、ガスなど公共料金を引き上げる都市もある。
IMFの予測によると、地方融資平台の債務残高は2024年の約66兆元(1320兆円)から、2029年に約92兆元(1840兆円)に増加する。今後、財源確保のため罰金の徴収など、苦肉の策に頼らざるを得ない地方政府は増えるだろう。
地方政府の財政悪化により、産業補助金政策などの持続性は低下するだろう。公共料金の引き上げなどは、個人消費にマイナスだ。低価格競争の激化などでコストカットに追い込まれる企業も増え、雇用・所得環境も悪化する可能性は高い。それにより、中国の株式や不動産などの価格は下落し、デフレ圧力は高まるだろう。
足許、中国の新規融資が伸び悩んでいることを見ても、先行きの経済環境悪化に身構える中国の企業や金融機関は増加傾向にある。中国経済の本格的な持ち直しは容易ではないだろう。
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