労働基準法などの見直しを議論している厚生労働省・有識者会議「労働基準関係法制研究会」の第16回研究会が本日(2024年12月24日)開催されましたが、議題は「労働基準関係法制について」ですが、資料は「労働基準関係法制研究会 報告書(案)」(修正版)となっています。
労働基準関係法制研究会 報告書(案)修正版ポイント
テレワーク時の みなし労働時間制について
次に、実労働時間規制のかからない自由度の高い働き方として、みなし労働時間制の活用が考えられる。既存の みなし労働時間制については、まず、事業場外みなし労働時間制はそもそも労働時間の算定が困難であるという要件がある。専門業務型裁量労働制については、業務の性質上その遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため業務遂行の手段、時間配分の決定等に関して具体的な指示をすることが困難なものとして省令及び告示で定められた業務であるという要件があり、企画業務型裁量労働制については、事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であって業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、使用者が業務遂行の手段、時間配分の決定等に関し具体的な指示をしないこととするという要件がある。これらの要件が満たさなければ、テレワークに みなし労働時間制を適用することができない。
一方で、テレワーク時の労働時間の管理について、フレックスタイム制であっても使用者による実労働時間管理が求められる以上、そのことを理由として使用者が自宅内での就労に対する過度な監視を正当化したり、一時的な家事や育児への対応等のための中抜け時間など実労働時間数に関する労使間の紛争が生じたりし得るといった懸念もある。
こうしたことから、仕事と家庭生活が混在し得るテレワークについて、実労働時間を問題としない みなし労働時間がより望ましいと考える労働者が選択できる制度として、実効的な健康確保措置を設けた上で、在宅勤務に限定した新たな みなし労働時間制を設けることが考えられる。この場合、その導入については集団的合意に加えて個別の本人同意を要件とすること、そして、制度の適用後も本人同意の撤回も認めることを要件とすること等が考えられる。
これに対し、在宅勤務を対象とする新たな みなし労働時間制について、テレワーク中の長時間労働を防止するという観点からは、
・ これまで裁量労働制の対象業務を厳密に定めてきたのは、みなし労働時間制の副作用を最小限にしようとしたものであるが、そうした規定を潜脱することになりかねない。
・ 健康管理の観点からは、高度プロフェッショナル制度のように健康管理時間を客観的に把握するなど、健康確保のための時間把握は必要になるのではないか。
・ 本人同意の撤回権を設定しても、例えば撤回するとテレワークができなくなるというような制度設計の場合、事実上撤回権を行使できなくなると懸念される。
前述するフレックスタイム制の導入を新たなみなし労働時間制の導入の要件とし、同意を撤回した者に対してはフレックスタイム制を適用することを条件とするなど、実効性を担保する仕組みを設計する必要があるのではないか。
・ 上記のような条件設定の仕組みについては、本人の同意の撤回の自由が実効的に確保できるかの検証も必要ではないか。
・ みなし労働時間制が適用されると、単月100時間未満、複数月平均80時間以内といった時間外・休日労働時間の上限規制も事実上外れることになり、長時間労働の懸念等が強まってしまう。新たな みなし労働時間制を適用したとしても、労働時間の上限や労働からの解放時間を決めるといった一定の規制を導入すること、その場合の労働時間の把握や管理の在り方を具体的に検討することも必要ではないか。
といった懸念や意見も示されているところである。
在宅勤務を対象とする新たな みなし労働時間制については、上記の実労働時間管理をする場合の課題やそれに代わる健康管理時間の把握をめぐる課題等を踏まえて、こうした点に関する検討も含め、在宅勤務における労働時間の長さや時間帯、一時的な家事や育児への対応等のための中抜け時間の状況等の労働時間の実態や、企業がどのように労働時間を管理しているのか、新たな みなし労働時間制に対する労働者や使用者のニーズが実際にどの程度あるのかということを把握し、また上記により改善されたフレックスタイム制の下でのテレワークの実情や労使コミュニケーションの実態を把握した上で、みなし労働時間制の下での実効的な健康確保の在り方も含めて継続的な検討が必要であると考えられる。(労働基準関係法制研究会 報告書 案 修正版より抜粋)
*(修正される前の)前回の報告書(案)には「自宅等でのテレワークを対象とする みなし労働時間制については、上記の実労働時間管理をする場合の課題を踏まえて、こうした点に関する検討も含め、現実のテレワークにおける一時的な家事や育児への対応等のための中抜け時間が客観的にどういう状況か、企業がどのように労働時間を管理しているのか、みなし労働時間制に対する労働者や使用者のニーズが実際にどの程度あるのかということを把握し、また上記により改善されたフレックスタイム制の下でのテレワークの実情を把握した上で継続的な検討が必要であると考えられる」と記載されていました。
勤務間インターバル
働き方改革関連法で導入された時間外・休日労働時間の上限規制は、過重労働を防止する観点から、月を単位として、労使協定によっても超えることのできない上限を設定したものである。一方で、労働者の暮らしと健康を考えると、月を単位とした労働時間管理だけでなく、日々の生活を送る上でのワーク・ライフ・バランスの確保が必要となる。このため、欧州等では、日々の勤務と勤務の間に一定の時間を空けることを義務とする勤務間インターバル制度が設けられている。
我が国では、勤務間インターバル制度は、労働時間等設定改善法第2条において、「健康及び福祉を確保するために必要な終業から始業までの時間の設定」として努力義務が課されており、また労働時間等設定改善指針(平成20年厚生労働省告示第 108 号)においても一定の記述があるが、概念的な内容にとどまり、勤務間インターバルの時間数や対象者、その他導入に当たっての留意事項等は法令上示されていない。
厚生労働省において、勤務間インターバル制度の導入・運用マニュアルを作成し、時間数や対象者等の設定に当たっての留意点を示しているものの、2023年(令和5年)1月時点の導入企業割合は 6.0%にとどまっている。他方、制度の導入予定がなく検討もしていない 81.5%の企業のうち、51.9%は「超過勤務の機会が少なく、当該制度を導入する必要性を感じないため」と回答している24点にも留意が必要である。また、既に勤務間インターバルを導入している企業の制度設計や、諸外国の勤務間インターバル制度を見ると、様々な適用除外が設けられた上で制度が運用されている。
このような現状を踏まえ、本研究会としては、抜本的な導入促進と、義務化を視野に入れつつ、法規制の強化について検討する必要があると考える。企業に勤務間インターバル制度の導入を求める場合に、具体的にどのような内容の制度を求めるかについては、例えば、
・ 勤務間インターバル時間として11時間を確保することを原則としつつ、制度の適用除外とする職種等の設定や、実際に11時間の勤務間インターバル時間が確保できなかった場合の代替措置等について、多くの企業が導入できるよう、より柔軟な対応を法令や各企業の労使で合意して決めるという考え方
・ 勤務間インターバル時間は11時間よりも短い時間としつつ、柔軟な対応についてはより絞ったものとする考え方
・ 規制の適用に経過措置を設け、全面的な施行までに一定の期間を設ける考え方
等が考えられる。いずれにしても、多くの企業が導入しやすい形で制度を開始するなど、段階的に実効性を高めていく形が望ましいと考えられる。
勤務間インターバル時間が確保できなかった場合の代替措置については、健康・福祉確保措置の一環として実施される健康観察や面接指導等といった事後措置を目的としたモニタリングではなく、代償休暇など労働からの解放を確保するものであることが望ましいとの考え方や、代替措置によることが可能な回数について各事業場の労使協議で上限を設定するという考え方が示された。
また、義務化の度合いについても、労働基準法による強行的な義務とするという考え方、労働時間等設定改善法等において勤務間インターバル制度を設けることを義務付ける規定や、勤務間インターバルが確保できるよう事業主に配慮を求める規定を設けるという考え方、これらと併せて労働基準法において勤務間インターバル制度を就業規則の記載事項として位置付け行政指導等の手法により普及促進を図るという考え方、現行の抽象的な努力義務規定を具体化するという考え方等が示されており、様々な手段を考慮した検討が必要と考えられる。(労働基準関係法制研究会 報告書 案 修正版より抜粋)
つながらない権利
本来、労働契約上、労働時間ではない時間に、使用者が労働者の生活に介入する権利はない。しかし現実には、突発的な状況への対応や、顧客からの要求等によって、勤務時間外に対応を余儀なくされ、私生活と業務との切り分けが曖昧になり、仕事が私生活に介入してしまうことになる状況も容易に発生し得る。
欧州等では、「つながらない権利」を行使したことや行使しようとしたことに対する不利益取扱いの禁止、使用者が労働者にアクセス可能な時間帯の明確化や制限、「つながらない」状態を確保するための措置の実施(より具体的には労使交渉の義務付け)等を内容とした、「つながらない権利」が提唱されている。例えば、「つながらない権利」を法制化しているフランスの例を見ると、具体的な内容の設定の仕方・範囲は労使で協議して決めており、その内容は企業によって様々であるが、労使交渉で合意に至らない場合には、つながらない権利の行使方法等を定めた憲章を作成することが使用者に義務付けられている。
また、実際に勤務時間外に労働者に連絡をとる必要が生じる際は、労働者と使用者の関係だけでなく、顧客と担当者の関係等も含めた複合的な要因が生じていることが多いと考えられ、当該連絡の内容についても、具体的な仕事が発生して出勤等をしなければならないこともあれば、電話等での対話を行わなければならないもの、メール等が送られてくるだけといったような、様々な段階のものが存在し得る。
こうした点を整理し、勤務時間外に、どのような連絡までが許容でき、どのようなものは拒否することができることとするのか、業務方法や事業展開等を含めた総合的な社内ルールを労使で検討していくことが必要となる。このような話し合いを促進していくための積極的な方策(ガイドラインの策定等)を検討することが必要と考えられる。(労働基準関係法制研究会 報告書 案 修正版より抜粋)
おわりに
これまで述べてきたとおり、本研究会では、労働基準関係法制にかかわる諸課題について検討し、それぞれを早期に取り組むべき事項、より良い制度に向けて中長期的に検討を進めるべき事項に分け、方向性を示すこととした。
本研究会としては、本報告書において早期に取り組むべきとした事項を中心として、今後、公労使三者構成の労働政策審議会において、労働基準関係法制に係る諸課題についての議論が更に深められることを期待するものである。一方で、中長期的に検討を進めるべきとした事項については、国内外の実態把握や国際的な動向の把握を進めつつ、引き続き学術的な検討を進めることが必要と考えられる。
本研究会は厚生労働省労働基準局長の開催する研究会である。厚生労働省においては、この報告書をもって労働基準関係法制に係る研究を終了するのではなく、本研究会のような労働基準関係法制に係る研究を行う場を引き続き設けていくことを要望する。(労働基準関係法制研究会 報告書 案 修正版より抜粋)
労働基準関係法制研究会 報告書(案)修正版(PDF形式)
なお、日本経済新聞(デジタル版)は「厚生労働省は24日、労働法や労使関係の専門家が集まる『労働基準関係法制研究会』を開き、報告書の最終案を大筋で了承した。連続勤務日数を最長13日間に制限するなど、労働基準法の見直しを提言した。今後は労働政策審議会(厚労相の諮問機関)で議論し、早ければ26年の法改正を目指す」と報じています。
また、日本経済新聞の記事には「労基法は制定から70年以上が経過し、現状にそぐわない規制もある。在宅勤務日に使える新たなフレックスタイム制の導入や、会社員に本業と副業の労働時間を通算して割増賃金を支払う仕組みの廃止を提起した。家庭が直接雇用契約を結ぶ『家事使用人』を労基法の対象に加えることも検討するよう求めた」と書かれています。
連続勤務は最長13日に、労基法改正を提言 厚労省研究会(日本経済新聞)
また、共同通信は「労働基準法改正に向けた厚生労働省の学識経験者らによる研究会が24日開かれ、14日以上の連続勤務の禁止や副業の割増賃金算定方法の見直し、テレワークに関する労働時間管理制度の改善などを盛り込んだ報告書案がおおむね了承された。研究会での意見を踏まえ報告書としてまとめ、その後、労使参加の労働政策審議会で具体的な内容が話し合われる見通し」と報じています。
そして「報告書案では、現行の休日制度が運用によって長期間の連続勤務も可能となることから、労災認定基準などを踏まえ14日以上の連続勤務を禁止する規定を労基法上設けるべきだと指摘」「副業の割増賃金算定では、本業と副業の労働時間を細かく管理して合算する複雑な制度を見直し、割増賃金の算定では合算しないようにする一方、健康確保にはこれまで以上に万全を尽くすといった考え方が示された」「労働と家事・育児の時間が混在しやすいテレワークでは、柔軟な働き方に対応するために通常の勤務日と混在するような場合でも部分的にフレックスタイム制を活用できるよう制度の改善に取り組むべきだとしている」と共同通信の記事には記載されています。
14日連続勤務の禁止案を了承 労基法改正に向けた厚労省研究会(共同通信)
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労働基準関係法制研究会 報告書(案)修正版ポイント
テレワーク時の みなし労働時間制について
次に、実労働時間規制のかからない自由度の高い働き方として、みなし労働時間制の活用が考えられる。既存の みなし労働時間制については、まず、事業場外みなし労働時間制はそもそも労働時間の算定が困難であるという要件がある。専門業務型裁量労働制については、業務の性質上その遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため業務遂行の手段、時間配分の決定等に関して具体的な指示をすることが困難なものとして省令及び告示で定められた業務であるという要件があり、企画業務型裁量労働制については、事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であって業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、使用者が業務遂行の手段、時間配分の決定等に関し具体的な指示をしないこととするという要件がある。これらの要件が満たさなければ、テレワークに みなし労働時間制を適用することができない。
一方で、テレワーク時の労働時間の管理について、フレックスタイム制であっても使用者による実労働時間管理が求められる以上、そのことを理由として使用者が自宅内での就労に対する過度な監視を正当化したり、一時的な家事や育児への対応等のための中抜け時間など実労働時間数に関する労使間の紛争が生じたりし得るといった懸念もある。
こうしたことから、仕事と家庭生活が混在し得るテレワークについて、実労働時間を問題としない みなし労働時間がより望ましいと考える労働者が選択できる制度として、実効的な健康確保措置を設けた上で、在宅勤務に限定した新たな みなし労働時間制を設けることが考えられる。この場合、その導入については集団的合意に加えて個別の本人同意を要件とすること、そして、制度の適用後も本人同意の撤回も認めることを要件とすること等が考えられる。
これに対し、在宅勤務を対象とする新たな みなし労働時間制について、テレワーク中の長時間労働を防止するという観点からは、
・ これまで裁量労働制の対象業務を厳密に定めてきたのは、みなし労働時間制の副作用を最小限にしようとしたものであるが、そうした規定を潜脱することになりかねない。
・ 健康管理の観点からは、高度プロフェッショナル制度のように健康管理時間を客観的に把握するなど、健康確保のための時間把握は必要になるのではないか。
・ 本人同意の撤回権を設定しても、例えば撤回するとテレワークができなくなるというような制度設計の場合、事実上撤回権を行使できなくなると懸念される。
前述するフレックスタイム制の導入を新たなみなし労働時間制の導入の要件とし、同意を撤回した者に対してはフレックスタイム制を適用することを条件とするなど、実効性を担保する仕組みを設計する必要があるのではないか。
・ 上記のような条件設定の仕組みについては、本人の同意の撤回の自由が実効的に確保できるかの検証も必要ではないか。
・ みなし労働時間制が適用されると、単月100時間未満、複数月平均80時間以内といった時間外・休日労働時間の上限規制も事実上外れることになり、長時間労働の懸念等が強まってしまう。新たな みなし労働時間制を適用したとしても、労働時間の上限や労働からの解放時間を決めるといった一定の規制を導入すること、その場合の労働時間の把握や管理の在り方を具体的に検討することも必要ではないか。
といった懸念や意見も示されているところである。
在宅勤務を対象とする新たな みなし労働時間制については、上記の実労働時間管理をする場合の課題やそれに代わる健康管理時間の把握をめぐる課題等を踏まえて、こうした点に関する検討も含め、在宅勤務における労働時間の長さや時間帯、一時的な家事や育児への対応等のための中抜け時間の状況等の労働時間の実態や、企業がどのように労働時間を管理しているのか、新たな みなし労働時間制に対する労働者や使用者のニーズが実際にどの程度あるのかということを把握し、また上記により改善されたフレックスタイム制の下でのテレワークの実情や労使コミュニケーションの実態を把握した上で、みなし労働時間制の下での実効的な健康確保の在り方も含めて継続的な検討が必要であると考えられる。(労働基準関係法制研究会 報告書 案 修正版より抜粋)
*(修正される前の)前回の報告書(案)には「自宅等でのテレワークを対象とする みなし労働時間制については、上記の実労働時間管理をする場合の課題を踏まえて、こうした点に関する検討も含め、現実のテレワークにおける一時的な家事や育児への対応等のための中抜け時間が客観的にどういう状況か、企業がどのように労働時間を管理しているのか、みなし労働時間制に対する労働者や使用者のニーズが実際にどの程度あるのかということを把握し、また上記により改善されたフレックスタイム制の下でのテレワークの実情を把握した上で継続的な検討が必要であると考えられる」と記載されていました。
勤務間インターバル
働き方改革関連法で導入された時間外・休日労働時間の上限規制は、過重労働を防止する観点から、月を単位として、労使協定によっても超えることのできない上限を設定したものである。一方で、労働者の暮らしと健康を考えると、月を単位とした労働時間管理だけでなく、日々の生活を送る上でのワーク・ライフ・バランスの確保が必要となる。このため、欧州等では、日々の勤務と勤務の間に一定の時間を空けることを義務とする勤務間インターバル制度が設けられている。
我が国では、勤務間インターバル制度は、労働時間等設定改善法第2条において、「健康及び福祉を確保するために必要な終業から始業までの時間の設定」として努力義務が課されており、また労働時間等設定改善指針(平成20年厚生労働省告示第 108 号)においても一定の記述があるが、概念的な内容にとどまり、勤務間インターバルの時間数や対象者、その他導入に当たっての留意事項等は法令上示されていない。
厚生労働省において、勤務間インターバル制度の導入・運用マニュアルを作成し、時間数や対象者等の設定に当たっての留意点を示しているものの、2023年(令和5年)1月時点の導入企業割合は 6.0%にとどまっている。他方、制度の導入予定がなく検討もしていない 81.5%の企業のうち、51.9%は「超過勤務の機会が少なく、当該制度を導入する必要性を感じないため」と回答している24点にも留意が必要である。また、既に勤務間インターバルを導入している企業の制度設計や、諸外国の勤務間インターバル制度を見ると、様々な適用除外が設けられた上で制度が運用されている。
このような現状を踏まえ、本研究会としては、抜本的な導入促進と、義務化を視野に入れつつ、法規制の強化について検討する必要があると考える。企業に勤務間インターバル制度の導入を求める場合に、具体的にどのような内容の制度を求めるかについては、例えば、
・ 勤務間インターバル時間として11時間を確保することを原則としつつ、制度の適用除外とする職種等の設定や、実際に11時間の勤務間インターバル時間が確保できなかった場合の代替措置等について、多くの企業が導入できるよう、より柔軟な対応を法令や各企業の労使で合意して決めるという考え方
・ 勤務間インターバル時間は11時間よりも短い時間としつつ、柔軟な対応についてはより絞ったものとする考え方
・ 規制の適用に経過措置を設け、全面的な施行までに一定の期間を設ける考え方
等が考えられる。いずれにしても、多くの企業が導入しやすい形で制度を開始するなど、段階的に実効性を高めていく形が望ましいと考えられる。
勤務間インターバル時間が確保できなかった場合の代替措置については、健康・福祉確保措置の一環として実施される健康観察や面接指導等といった事後措置を目的としたモニタリングではなく、代償休暇など労働からの解放を確保するものであることが望ましいとの考え方や、代替措置によることが可能な回数について各事業場の労使協議で上限を設定するという考え方が示された。
また、義務化の度合いについても、労働基準法による強行的な義務とするという考え方、労働時間等設定改善法等において勤務間インターバル制度を設けることを義務付ける規定や、勤務間インターバルが確保できるよう事業主に配慮を求める規定を設けるという考え方、これらと併せて労働基準法において勤務間インターバル制度を就業規則の記載事項として位置付け行政指導等の手法により普及促進を図るという考え方、現行の抽象的な努力義務規定を具体化するという考え方等が示されており、様々な手段を考慮した検討が必要と考えられる。(労働基準関係法制研究会 報告書 案 修正版より抜粋)
つながらない権利
本来、労働契約上、労働時間ではない時間に、使用者が労働者の生活に介入する権利はない。しかし現実には、突発的な状況への対応や、顧客からの要求等によって、勤務時間外に対応を余儀なくされ、私生活と業務との切り分けが曖昧になり、仕事が私生活に介入してしまうことになる状況も容易に発生し得る。
欧州等では、「つながらない権利」を行使したことや行使しようとしたことに対する不利益取扱いの禁止、使用者が労働者にアクセス可能な時間帯の明確化や制限、「つながらない」状態を確保するための措置の実施(より具体的には労使交渉の義務付け)等を内容とした、「つながらない権利」が提唱されている。例えば、「つながらない権利」を法制化しているフランスの例を見ると、具体的な内容の設定の仕方・範囲は労使で協議して決めており、その内容は企業によって様々であるが、労使交渉で合意に至らない場合には、つながらない権利の行使方法等を定めた憲章を作成することが使用者に義務付けられている。
また、実際に勤務時間外に労働者に連絡をとる必要が生じる際は、労働者と使用者の関係だけでなく、顧客と担当者の関係等も含めた複合的な要因が生じていることが多いと考えられ、当該連絡の内容についても、具体的な仕事が発生して出勤等をしなければならないこともあれば、電話等での対話を行わなければならないもの、メール等が送られてくるだけといったような、様々な段階のものが存在し得る。
こうした点を整理し、勤務時間外に、どのような連絡までが許容でき、どのようなものは拒否することができることとするのか、業務方法や事業展開等を含めた総合的な社内ルールを労使で検討していくことが必要となる。このような話し合いを促進していくための積極的な方策(ガイドラインの策定等)を検討することが必要と考えられる。(労働基準関係法制研究会 報告書 案 修正版より抜粋)
おわりに
これまで述べてきたとおり、本研究会では、労働基準関係法制にかかわる諸課題について検討し、それぞれを早期に取り組むべき事項、より良い制度に向けて中長期的に検討を進めるべき事項に分け、方向性を示すこととした。
本研究会としては、本報告書において早期に取り組むべきとした事項を中心として、今後、公労使三者構成の労働政策審議会において、労働基準関係法制に係る諸課題についての議論が更に深められることを期待するものである。一方で、中長期的に検討を進めるべきとした事項については、国内外の実態把握や国際的な動向の把握を進めつつ、引き続き学術的な検討を進めることが必要と考えられる。
本研究会は厚生労働省労働基準局長の開催する研究会である。厚生労働省においては、この報告書をもって労働基準関係法制に係る研究を終了するのではなく、本研究会のような労働基準関係法制に係る研究を行う場を引き続き設けていくことを要望する。(労働基準関係法制研究会 報告書 案 修正版より抜粋)
労働基準関係法制研究会 報告書(案)修正版(PDF形式)
なお、日本経済新聞(デジタル版)は「厚生労働省は24日、労働法や労使関係の専門家が集まる『労働基準関係法制研究会』を開き、報告書の最終案を大筋で了承した。連続勤務日数を最長13日間に制限するなど、労働基準法の見直しを提言した。今後は労働政策審議会(厚労相の諮問機関)で議論し、早ければ26年の法改正を目指す」と報じています。
また、日本経済新聞の記事には「労基法は制定から70年以上が経過し、現状にそぐわない規制もある。在宅勤務日に使える新たなフレックスタイム制の導入や、会社員に本業と副業の労働時間を通算して割増賃金を支払う仕組みの廃止を提起した。家庭が直接雇用契約を結ぶ『家事使用人』を労基法の対象に加えることも検討するよう求めた」と書かれています。
連続勤務は最長13日に、労基法改正を提言 厚労省研究会(日本経済新聞)
また、共同通信は「労働基準法改正に向けた厚生労働省の学識経験者らによる研究会が24日開かれ、14日以上の連続勤務の禁止や副業の割増賃金算定方法の見直し、テレワークに関する労働時間管理制度の改善などを盛り込んだ報告書案がおおむね了承された。研究会での意見を踏まえ報告書としてまとめ、その後、労使参加の労働政策審議会で具体的な内容が話し合われる見通し」と報じています。
そして「報告書案では、現行の休日制度が運用によって長期間の連続勤務も可能となることから、労災認定基準などを踏まえ14日以上の連続勤務を禁止する規定を労基法上設けるべきだと指摘」「副業の割増賃金算定では、本業と副業の労働時間を細かく管理して合算する複雑な制度を見直し、割増賃金の算定では合算しないようにする一方、健康確保にはこれまで以上に万全を尽くすといった考え方が示された」「労働と家事・育児の時間が混在しやすいテレワークでは、柔軟な働き方に対応するために通常の勤務日と混在するような場合でも部分的にフレックスタイム制を活用できるよう制度の改善に取り組むべきだとしている」と共同通信の記事には記載されています。
14日連続勤務の禁止案を了承 労基法改正に向けた厚労省研究会(共同通信)
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