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第7段 兼好さんは今だけを生きる人なの?
途絶えることなく人の焼かれている煙を見て、人生をどう過ごすかを思った兼好さん。
長生きを望まないようだ。長生きすると背中が曲がり、顔には皺ができて醜くなる、恥をかくことも積み重なるからと。この辺り、カッコよさにこだわるデキる人って感じのするところ。
長生きを望まないようだ。長生きすると背中が曲がり、顔には皺ができて醜くなる、恥をかくことも積み重なるからと。この辺り、カッコよさにこだわるデキる人って感じのするところ。
40歳まえに死ぬのがほどよいと、その歳を意図的にゴールにした三島由紀夫も兼好さんに感化されたのだったろうか。
三島の同齢の人たちは若くして戦場で散っていった。それに引き換え自分は戦場にも行けず生き長らえている情けなさ。
潔く戦場で死ねなかったことが、なんか一人前でなさそうで恥ずかしかったという思い。
天才と称され、華々しい活躍をしたが、それでも埋められなかった悔い。
それを解決するには、まだ若さの残る40歳を過ぎてはならないのだったのだ。自分も若いうちに死のうと。
三島と兼好の違いはここに歴然としてある。
三島は青春に固着し続けた。
美しいままに死にたいと思う心は同じでも、三島の場合は、過去を断ち切れなかったがためだ。
ところが、兼好の場合はあくまで現在だ。
7段を見る限り、兼好にはこだわる過去の描写がない。
責任あるポストに居座り続けて失敗を重ねる人たち、隠居してボケながらも、自分一人に留まらず末代まで繁栄することに執着する人たちを列挙して、長き命の醜悪さを際立てるが、それは目の前のことだ。
彼には、死ねなかったという三島のような後悔はないのだろうか。
社交の舞台から身を引いて、山に隠遁生活をする身になった彼に後悔はなかったとは思えない。
すると、彼は過去へのこだわりを潔く捨てた人物なのかということが思い浮かんでくる。
過去を振り返らない生き方は、悟ったようでカッコいい。でも、その強がりはいつまで続けられるのか。だから、さっさと死にたいと思うのかなあ。
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