あけましておめでとうございます。
ウィーンフィルのニューイヤーコンサート、いま観たところです。
パンデミック下、無観客でのこの偉大な、歴史的なコンサートをぼくらが忘れることはないでしょう。長く長く語り継がれるはずです。
ムーティのスピーチには胸が熱くなりました。
ムーティとウィーンフィルが伝えようとした希望のメッセージは、ぼくらに、世界中に確かに届きました。
パンデミックとの戦いはまだ続いているけれど、負けることはない。そう思えた夜でした。
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◎指揮者ムーティの挨拶(3分43秒)
ムーティ ありがとう、ダニエル、それにここで席を共にしている友人二人にもお礼を言いましょう。実のところ、私にとって6回目となるニューイヤー・コンサートを指揮することが決まった時点で、このような状況になるなんて想像もしていませんでした。私の宿泊しているホテルにも人っ子一人いません。奇妙なことです。だから時折、自分がホラー映画の一場面にでもいるような感覚になるのです。ウィーンの街は全く空っぽなんですよ。これまで、ニューイヤー・コンサートを開催するか、それともしないか、何度も議論を重ねてきました。そして私たちが到達した結論はこうですーー音楽という文化や劇場を捨て去るわけにはいかない・・・このような感染状況にあっても、です。音楽は時に喜びに溢れ、時にノスタルジーや悲しみに満ちていますが、これは聴衆のみなさんへのプレゼントなのです。聴衆のみなさんは音楽を受け取って、それぞれに異なった反応をなさいます。例えば、ポルカ・シュネル(テンポの速いポルカ)は、飛行機あるいは列車が駅に到着するように、素早いテンポで進みます。私たちの演奏が情熱に溢れて終わるとーーーオーケストラもさきほどのリハーサルで素晴らしい演奏をしてくれましたよーーーコンサートでは、何らかの反応が欲しいものです。そうしたものは今回はありません。しかし私たちは、世界中の数多くの聴き手とつながっているのを十分に知っています。ですから私たちは1月1日のニューイヤー・コンサートで、美しい音楽をお届けするだけではないのです。「希望」をお届けしたいのです。イタリア語では「希望」のことを「La Speranzaラ・スペランツァ」と申します。私たちにはまさに「希望」が必要です。1月1日、ムジークフェラインに音楽が鳴り響かなければ、それは墓場みたいなものです。これでは世界にとって最悪の、ネガティブなメッセージになってしまう。このホールには、何世紀にもわたって積み重ねられてきた音楽を信じる心が大切なのです・・・たとえホールの中に聴き手がいなかったとしても、です!世界中でこのコンサートを見てくださる皆さんに届けたいのは、「希望」であり「平穏」への思いなんです。