私が三十八歳の時。
その頃、、、午前零時前に就寝し午前五時前に起きる ── 判で押したような生活を送っていた。
其の日、、
いつもの様に午前零時前に寝床に入り消灯すると眠りにつこうとした。
十五分ほど経ったのであろうか・・?
凄い勢いで一階の雨戸が開く音がすると、非常な大男三人が軍靴の様な足音を乱暴に立て室内に侵入をして来た。
其の頃は治安が悪い時期で、私の住宅街でも近所で数件の中国人による強盗事件が発生し、毎夜のようにパトカーが警戒を呼びかけ巡邏をしていた。
『あぁ、、こりゃ駄目だ。これは殺されるな・・。
母はさぞ悲しむだろうな・・』
覚悟を決めて暗闇の中、天井を眺めていた。
母はこの一年ばかり殆ど遠く福井県の実家に帰っており、私はずっと一人暮らしをしていた。
家は角地にあり、灯りを眺めると室内全部の様子が外部から解るのであった。
私が一人でいることを調べ、二階に上がったところを狙いすまして侵入をした、と思われた。
ところが、、、
五分ほど経っても何の物音も階下からは聞こえないのであった。
(これは奴らに私が起きているのがばれたな?) ─ そう思い息を潜める様にして様子を窺い続けた。
何か武器はないか、と辺りを見廻すと幸いにも木刀が室内に立てかけてあった。
『よし、こちらから一階に行ってやる。。』
相手が三人もいて、しかも武装しているからこそ、こちらから攻めていって意表をついた方がかえって好ましいと思ったのだ。
度胸を決めて暗い一階を慎重に探り、、ついで家の周りを非常に気をつけて見て廻った。
狭い庭なりに家の建物の角を曲がる時に、とても緊張したのを今でもよく覚えている。
そして、家の外にも出て周りの道路を木刀をぶら下げながら見て廻った。
この時、不思議と人の視線を強く感じた。
中国人の強盗仲間なのかと思い、「見ていろ、日本人の度胸を見せてやる。二度とこんなことをするなよ。」と気負いつつ見て廻った。
四十前の若造特有の馬鹿馬鹿しさではあった。
今にして思えば、、
この時、本当に人が私を観察していたのである。
一種のテストをされていたのであろう。
この日を境に私の人生に突然、奇妙なことが続発するようになった。