前にも書きましたが、若い頃、3年半ほど広島で勤務したことがあります。オフィスが、カープの本境地である広島市民球場と道路1本隔ててすぐ隣でした。移転前の市民球場です。
夏場の夜、冷房が止まり、窓を開けて仕事をしていると、喚声が聞こえてきます。
「わぁ~」 ふ~ん、これはただのヒットやな
「うぉぉぉ~~」 おっ、これは1発スタンド入りやな
喚声だけで試合経過を楽しめる地元の社員たちのワザも大したものですが、8時頃になると、皆んな、そわそわしてくるのが分かります。
「部長、試合気になりますねぇ。仕事は明日でも間に合いますから・・・どうですか?」とカープファンの上司に、水を向ければ、話はすぐにまとまって、5人、10人がぞろぞろと球場に向かうことになります。
目指すのは外野席。スタンドに通じる暗い通路に立っている切符もぎのおニイちゃんに声をかけます。
「もう7回、8回くらいかな?そろそろ試合も終わりやし、エエやろ?」
まさか、「どうぞ」とは言われませんが、聞こえないふりして、(たいていは)タダで入れてくれました。
当時はカープも弱かったですから、タダで入って、少しでも応援してもらえば・・・そんな思いを共有してたのかな、と思ったりもしますが、ユルい時代でした。
もちろん、現在はホームグラウンドも市の西の方に移転し、カープも「立派な」チームですから、そんなことはあり得ませんが。
まあ、そんなズルをしなくても、海外には格安に試合がみれる仕組みがあるんですね。化粧品会社の仕事で英国に滞在していた杉山慎策氏の「愛しのイギリス」(日本経済新聞社)で紹介されています。
1990年代、彼が住んでいたのは、ウィンブルドンの近くです。そう、年に1回、全英オープンテニスが開催される地元です。そこでのセンターコートでの試合チケットというと、極めて入手困難に思えますが、夕方の6時頃に行くと、ほぼ確実に2ポンドで、チケットが手に入ったというのです。こんな仕組みです。
最後まで試合を観戦する熱心なファンもいますが、格式高いスポーツの場を、社交の場として利用する紳士、淑女方が多いのも英国です。
で、その方々の中には、試合終了後の混雑を避けて、早めに会場を後にする人もいたり、普通のファンでも、試合が長引いたりした場合、途中退席というケースがあります。
その時、自分のチケットを決められたところに「寄付」として置いていくのです。それを2ポンドという格安な価格で、当日、再販売するというわけです。
「リターンチケット」と呼ばれる仕組みで、1954年から始まったとのことです。
彼が滞英当時で、年間の売り上げが、15万ポンド(当時のレートで、2400万円)の収益を産み、全額が、チャリティに寄付されました。
歌舞伎の一幕見じゃないですけど、足さえ運べば、ほぼ確実に、格安な料金で、観戦は短時間になることもあるでしょうが、試合を楽しむことができ、慈善事業にも貢献できるーーーいかにも英国的なシステムだと感心しました。
ふと思ったんですが、日本のプロ野球でも応用できませんかね。
早いイニングで大量リードしたり、されたりで(わが阪神タイガースの場合だと、「されたり」が多いようですが・・・)、途中で席を立つファンが、ままいますね。その時、チケットを置いていってもらって、格安で再販売したらと思うのです。置いて行くチケットは寄付、売り上げの収益は慈善事業へ、という基本線は守ってもらいます。
ボロ負けしてる方のファンでも、「今からでもオレの応援で大逆転や」。大量リードしてる方のファンなら「こりゃ安心して、余裕で見れるわ」と、いずれにしろ、それなりのニーズはあるはず。いいアイディアだと思うんですけど。
いかがでしたか?次回をお楽しみに。