周平の『コトノハノハコ』

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小説第1弾『草食系貧乏』~第3章~

2011年01月15日 | 小説
彼女の名前は岩本あや。
身長は低く150センチ台と推測される。黒髪が肩の下まで伸びている。
どちらかというと大人しそうなタイプで、彼氏はいなさそうだ。

おっと!最後のは僕の願望が入ってしまった。

彼女のシフトは夕方以降や深夜がほとんどになるらしい。
いずれも3時間だけのシフト。
昼間は服飾の専門学校に通っているらしい。
誕生日は1月25日。
住所を見る限り、彼女の家は僕の家からもコンビ二からも近そうだ。
今年の3月に田舎から上京して来て、今は一人暮らしらしい。

現時点で集まっている彼女に関するデータはこれくらいだ。
もちろん全て店長や店長のデスクに置き忘れられた彼女の履歴書から得た情報だ。
これらのデータを僕の頭の中に保存し、軽い足取りでバイト先へと向かう。

僕の今日のシフトは午後11時からで、彼女は午前0時から3時までの3時間だ。
その間でレジの打ち方や、缶ビールやペットボトルのジュースなどの補充の仕方、タバコや新聞の種類などを教えてあげなければならない。
そして逆に僕は彼女からたった3時間の間で、彼氏の有無や連絡先、好きな男のタイプ、僕の頭の中にあるデータが正しいものなのかどうかなどを教えてもらわなければならないのだ。

いつも通り店に着き、自分のロッカーの前で上着を脱ぎエプロンを着る。そして店内へ出て減っている商品の補充をする。
店内には僕と店長だけ。客は仕事で帰りの遅いサラリーマンや、若いカップル、お家を持っていなさそうなおじさんなど数名だけ。
トータルしても両手の指で十分に数えられるほどの人数しかいない。

やがてそれらの客も買い物を済ませ店を出て行く。
そして時計は午後11時52分を指した。
彼女が店内に入って来た。
「すみません、今日からお世話になる岩本と申します。」
すばらしい。5分前行動どころか、さらに3分の余裕を持たせている。
最初の挨拶の出来もほぼ満点と言って良いであろう。
どうやら面接の日にチラッとだけ僕を見たのを覚えている様子だった。

おっと!またしても僕の願望が入ってしまった。

店長が彼女をバックヤードへと連れて行き、エプロンやネームバッチなどを渡す。
数分後、二人は再び店内へと戻って来た。
「二瓶君、岩本さんに色々教えてあげて! まずは、そうだなぁ、レジの打ち方からかな。それとついでにタバコの種類も。よろしく!」
「はい、分かりました~。」
今日の僕の返事は自然と語尾があがるのだった。