となりの売り場は 靴屋さんで、
そこのにーちゃんは、たぶんもともと東京の方のひとだ。
って、よく知んないんやけど。
言葉が 東京弁やったからね。
ちょうどわしとおんなじくらいの頃に うちの店にやってきて
やたら声がでかいのに 販売で一日中喋ってるから うるせーうるせー。
隣の売場のうちらまで、にーちゃんが いま何やってるか
丸わかりやったのだ。
「にーちゃん、元気やのう。」というと
「気合いだ、ばーか。」 と言い返してきてた奴が
最近は もともとの東京弁に
誰に習ったのか関西弁がミックスされて
テレビドラマなんかでよく見る、
どう見てもおまえ 関西来たことないやろ？ってやつが喋る 関西弁もどきみたいな
うちらから言わせると ひじょうに気色のわるい言語を
ごく普通に発していた。
だいたいそんなんで「つっこんでくれよ。」と 言われてもなー
え？今のは もしかしてボケやったんかい？みたいのに どう返していいかわからんぞ。
うちのバイトちゃんも たいてい変わったやつが揃ってるが、
そいつらに 「あのひと変わってますよねー。」言われていたんやで、きみ。
それでも、隣の売り場の人たちには とっても愛されてるみたいやったので、
「たぶん向こうも おんなじように うちらのこと言っとるやろ。」
バイトちゃんたちには いっといたけどさ。
そして、ボケた会話に わざと知らん顔するスカシも 立派なコミュニケーションのひとつというのが
いつまでもわかってなかったやろう、きみは。
言ってもたぶん聞いてないと思ったから 言わなかったけど。
今日 いいとも みたら おぎやはぎが、
「ぼくら今まで 日常で つっこむなんてしたことなかったから
急にやろうとしても 出来なかった。
のりつっこみなんて とてもとても。」
とか 喋ってたので、わしは初めて 「あーそうやったの。」と思ったよ。
おとといも なんだか忙しいときに よくわからんことを
わざわざうちの売り場まで言いに来て 「つっこめ。」とか言ってやがるので
ちょっともう ほんとに忙しかったから 雰囲気を読めよ！と思いつつ
「おお、すごいすご～い、」と拍手して、「今忙しいからこれでいいか？」と聞いたら
「よく出来ましたあ。」
商売道具の靴べらで わしの頭をなでるまねをして 去っていきやがったのだ。
ところがきのう、
なんだか隣の様子が変だ。
休みやったはずの子が 急に出てきてたりして 変にばたばたしてる。
こんな時期に えらいさん勢ぞろいで巡回なんだなー とは思ってたけど。
急に、にーちゃんがいつものように うちの売り場にはいってきて
「あのね、いま忙しい？」とか 珍しくしおらしく聞くので
「みたらわかるやろ？忙しいで？なに？用事？」
きいても返事がない。
あんまり返事が無いので 「どした？」下からのぞきこむと
やっと
「あのさー、おれ 転勤なっちゃった。」と言う。
あー、そうなのー・・・
あ、また黙ってるな、どした？下からまた見上げると
「だからね、おれいなくても さびしがんないでね。」
うん、わかったー。
がんばってねーって言ったけど、もういなかった。
道理で 隣のパートさんが泣きそうな顔してたはずだよ。
でも、うちらの仕事って、そんなもんやからさ。
本人の意思なんて 関係なしに
どこ行っても おんなじように頑張んなきゃいけないのは
今に始まったこっちゃない、あたりまえの日常茶飯事やもんね。
時々テレビで 「自分の仕事はストレスがたまる。」とか
「周りはいい人ばかりとは限らない。」とか 有名人の方が語ってらっしゃったりするが
お気楽そうな庶民には庶民で それなりにいろんなことがあるんやで。
うちらは有名人ちゃうから いまさら誰も聞いてくれないけど（笑）
ちょっと時間があいたので、
いつまでなん？ と聞きに言ったら
「だから、今日までだよ。」とちょっとしおれた声で言う。
お世話になりました。ほんとに元気でね。
ちょっと間があいて じゃあね 帰ろうとすると、
なにを思いついたのか
「これからも よろしくね。」
？
なんじゃ？
「またどっかで ぜったい会おうね。」
うん わかった、さびしくなったら いつでも電話しておいでねー
そう言ったら やっとちょっと笑ってた。
ゴミ捨て行く時に 靴屋の売り場を通りぬけると
にーちゃんが ひとりで 誰にいうともなく 「いらっしゃいませー。」
声を出してた。
いつもなら 大抵 どうでもいい茶々を入れてたわしなんやけど
その声と背中があんまり さみしそうやったので
わしは なんも声かけることが出来なくって そのまま通り過ぎたよ。
ゴミ捨てから帰ったときには もう仕事終えて帰っちゃってたみたいやから
ほんま、あんときが最後やったんやなー。
なんか言っとけばよかったかな。
いまだに思いつかないけど。
でも、新しいとこに行ったら行ったで
たぶん きみならすぐに 慣れるよ
どこ行っても大丈夫。
いまは しょげた顔してるけどさ。
この店に来た時も きっとそうやったんやろ？
またどっかで ぜったい会おうね。って、
転勤先は反対方向でも 電車で20分やし、引っ越すわけじゃないから
古巣のぞくついでに またのぞいてやってくれよ、うちの店も。
ここまで書いて いつでも電話しておいで って言いながら
電話教えてないのにきづいた。
そうか、いままで 教える必要なんかなかったもんな。
ほんとにすまん、最後まで。
いつものように冗談くさいけど ちゃんと思ってるんやで。
がんばってね、きみならぜったい大丈夫。
そこのにーちゃんは、たぶんもともと東京の方のひとだ。
って、よく知んないんやけど。
言葉が 東京弁やったからね。
ちょうどわしとおんなじくらいの頃に うちの店にやってきて
やたら声がでかいのに 販売で一日中喋ってるから うるせーうるせー。
隣の売場のうちらまで、にーちゃんが いま何やってるか
丸わかりやったのだ。
「にーちゃん、元気やのう。」というと
「気合いだ、ばーか。」 と言い返してきてた奴が
最近は もともとの東京弁に
誰に習ったのか関西弁がミックスされて
テレビドラマなんかでよく見る、
どう見てもおまえ 関西来たことないやろ？ってやつが喋る 関西弁もどきみたいな
うちらから言わせると ひじょうに気色のわるい言語を
ごく普通に発していた。
だいたいそんなんで「つっこんでくれよ。」と 言われてもなー
え？今のは もしかしてボケやったんかい？みたいのに どう返していいかわからんぞ。
うちのバイトちゃんも たいてい変わったやつが揃ってるが、
そいつらに 「あのひと変わってますよねー。」言われていたんやで、きみ。
それでも、隣の売り場の人たちには とっても愛されてるみたいやったので、
「たぶん向こうも おんなじように うちらのこと言っとるやろ。」
バイトちゃんたちには いっといたけどさ。
そして、ボケた会話に わざと知らん顔するスカシも 立派なコミュニケーションのひとつというのが
いつまでもわかってなかったやろう、きみは。
言ってもたぶん聞いてないと思ったから 言わなかったけど。
今日 いいとも みたら おぎやはぎが、
「ぼくら今まで 日常で つっこむなんてしたことなかったから
急にやろうとしても 出来なかった。
のりつっこみなんて とてもとても。」
とか 喋ってたので、わしは初めて 「あーそうやったの。」と思ったよ。
おとといも なんだか忙しいときに よくわからんことを
わざわざうちの売り場まで言いに来て 「つっこめ。」とか言ってやがるので
ちょっともう ほんとに忙しかったから 雰囲気を読めよ！と思いつつ
「おお、すごいすご～い、」と拍手して、「今忙しいからこれでいいか？」と聞いたら
「よく出来ましたあ。」
商売道具の靴べらで わしの頭をなでるまねをして 去っていきやがったのだ。
ところがきのう、
なんだか隣の様子が変だ。
休みやったはずの子が 急に出てきてたりして 変にばたばたしてる。
こんな時期に えらいさん勢ぞろいで巡回なんだなー とは思ってたけど。
急に、にーちゃんがいつものように うちの売り場にはいってきて
「あのね、いま忙しい？」とか 珍しくしおらしく聞くので
「みたらわかるやろ？忙しいで？なに？用事？」
きいても返事がない。
あんまり返事が無いので 「どした？」下からのぞきこむと
やっと
「あのさー、おれ 転勤なっちゃった。」と言う。
あー、そうなのー・・・
あ、また黙ってるな、どした？下からまた見上げると
「だからね、おれいなくても さびしがんないでね。」
うん、わかったー。
がんばってねーって言ったけど、もういなかった。
道理で 隣のパートさんが泣きそうな顔してたはずだよ。
でも、うちらの仕事って、そんなもんやからさ。
本人の意思なんて 関係なしに
どこ行っても おんなじように頑張んなきゃいけないのは
今に始まったこっちゃない、あたりまえの日常茶飯事やもんね。
時々テレビで 「自分の仕事はストレスがたまる。」とか
「周りはいい人ばかりとは限らない。」とか 有名人の方が語ってらっしゃったりするが
お気楽そうな庶民には庶民で それなりにいろんなことがあるんやで。
うちらは有名人ちゃうから いまさら誰も聞いてくれないけど（笑）
ちょっと時間があいたので、
いつまでなん？ と聞きに言ったら
「だから、今日までだよ。」とちょっとしおれた声で言う。
お世話になりました。ほんとに元気でね。
ちょっと間があいて じゃあね 帰ろうとすると、
なにを思いついたのか
「これからも よろしくね。」
？
なんじゃ？
「またどっかで ぜったい会おうね。」
うん わかった、さびしくなったら いつでも電話しておいでねー
そう言ったら やっとちょっと笑ってた。
ゴミ捨て行く時に 靴屋の売り場を通りぬけると
にーちゃんが ひとりで 誰にいうともなく 「いらっしゃいませー。」
声を出してた。
いつもなら 大抵 どうでもいい茶々を入れてたわしなんやけど
その声と背中があんまり さみしそうやったので
わしは なんも声かけることが出来なくって そのまま通り過ぎたよ。
ゴミ捨てから帰ったときには もう仕事終えて帰っちゃってたみたいやから
ほんま、あんときが最後やったんやなー。
なんか言っとけばよかったかな。
いまだに思いつかないけど。
でも、新しいとこに行ったら行ったで
たぶん きみならすぐに 慣れるよ
どこ行っても大丈夫。
いまは しょげた顔してるけどさ。
この店に来た時も きっとそうやったんやろ？
またどっかで ぜったい会おうね。って、
転勤先は反対方向でも 電車で20分やし、引っ越すわけじゃないから
古巣のぞくついでに またのぞいてやってくれよ、うちの店も。
ここまで書いて いつでも電話しておいで って言いながら
電話教えてないのにきづいた。
そうか、いままで 教える必要なんかなかったもんな。
ほんとにすまん、最後まで。
いつものように冗談くさいけど ちゃんと思ってるんやで。
がんばってね、きみならぜったい大丈夫。
