労基法の定める労使協定には、労基署に届け出義務があるものとないものがあり、一覧にしてまとめました。届け出義務のあるものは、協定届の様式があるものの、協定書として流用できる旨があり、その場合記載事項にない締結項目があるようなので、整理してみました。マークしたところが協定届け出様式に記載欄がない項目ですので、届け出様式をもって協定書とする場合は、枠外か別紙に付記せねばならないでしょう。これに反して、法定の協定項目以外の、労使に権利義務を課す内容を盛り込み、就業規則には反映させないなら、その協定書自体、就業規則の一部を構成しますので、届け出義務のある事業所は所定の手続きをせねばなりません。なお、協定締結は企業単位でなく、事業所ごとに締結を要しますので、内容が全社共通でも事業所ごとに過半数組織労働組合、なければ労働者過半数代表を選出しての締結となり、事業所管轄の労基署への届け出となります。
根拠条項 |
内容 |
協定事項
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届け出義務(ありの場合、様式) |
コメント |
18(2) |
強制貯金 |
- 預金者の範囲(以下則5条の2による)
- 1人当たりの預金限度額
- 利率及び利子の計算方法
- 受払い手続
- 保全の方法
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あり、様式一号 |
24(1)ただし書 |
賃金の一部控除(法定控除以外) |
(なし) |
(なし) |
規定例は、厚労省サイト、またはネット検索ください。口座振込の例は通達によるものです。 |
32-2(1) |
一カ月単位の変形労働時間制 |
- 1箇月以内の期間を平均し一週間あたりの法定労働時間を超えない定め
- 起算日(就業規則またはこれに変わる書面でも可)則12条の2
- 有効期間(労働協約による場合を除く)則12条の2の2第1項
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あり、様式第三号の二 |
協定締結は必須ではない。就業規則またはこれに変わる書面(就業規則制定義務のない事業所に限る)でも可。協定締結した場合でも、就業規則に変形での就業を規定していないなら就業規則変更のうえ、協定ともども届け出義務がある。 |
32-3(1) |
フレックスタイム制 |
- 対象労働者の範囲
- 清算期間
- 清算期間における総労働時間
- 施行規則12条の3第1項に定めるところの
- 標準となる一日の労働時間
- コアタイムの開始終了時刻(任意)
- フレキシブルタイムの開始終了時刻(任意)
- 有効期間(清算期間1カ月を超える場合で労働協約による場合を除く)
- 起算日(就業規則またはこれに変わる書面でも可)則12条の2
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あり(清算期間1カ月を超える場合)、様式第三号の三 |
清算期間は3カ月以内。 |
32-3(3) |
フレックスタイム制を完全週休二日制で運用する場合の例外適用 |
労働時間の限度について、当該清算期間における所定労働日数を日の法定労働時間に乗じて得た時間とする定め |
(なし) |
同条のフレックスタイム協定に盛り込むことも可。通達運用だった法定総枠の例外を、今回の働き改革法にて法定化。法定総枠<例外の月に、この協定しておけば例外時間超えたところから時間外労働。なお例外<法定総枠の月は、例外時間超えたところから時間外労働。 |
32-4(1) |
一年単位の変形労働時間制 |
- 対象労働者の範囲
- 対象期間(一箇月を超え一年以内の期間に限る)
- 特定期間(繁忙期間、任意)
- 対象期間における労働日と労働日ごとの労働時間※
- 施行規則12条の4第1項に定めるところの
- 有効期間(労働協約による場合を除く)
- 起算日(就業規則またはこれに変わる書面でも可)則12条の2
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あり、様式第四号 |
※対象期間をつうじての労働日、労働時間の定めにかえて、例外あり |
32-5(1) |
一週間単位の非定型的変形労働時間制 |
(なし) |
あり、様式第五号 |
規定例は、厚労省サイト、またはネット検索ください。 |
36(1) |
時間外、休日労働 |
- 対象労働者の範囲
- 対象期間(1年限定)
- 対象ケース
- 限度時間(日、月、年)、休日労働日数
- 施行規則17条第1項に定めるところの
- 有効期間(労働協約による場合を除く)
- 1年の起算日
- 月100時間未満、2カ月ないし6カ月平均80時間以下を満たすこと
- 特別条項を適用するケース(以下、任意)
- 健康福祉確保措置
- 割増賃金率
- 特別条項適用手続き
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あり(届け出が発効要件)様式第九号、第九号の2ほか |
他の労使協定届け出は刑罰付きの事務手続きであり、協定締結をもって発効している。 |
37(3) |
代替休暇(割増賃金部分支払い免除) |
- 代替休暇の時間数算定方法
- 休暇の(一日、半日といった)単位、他の有給休暇との組み合わせの可否
- 休暇取得可能期間(最長二カ月)
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なし |
月時間外60時間超のプラス25%部分の免除。150%の50部分、もしくは全額まるまるではない。 |
38-2(2) |
事業場外みなし労働の必要時間の定め |
- 前項ただし書の通常所定労働時間を超えて労働する場合の当該業務の遂行に通常必要とされる時間
- 施行規則24条の2第2項に定めるところの
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あり、様式第十二号(三六協定に付記可) |
そもそも事業場外のみなし労働時間策定そのものが労使協定の対象でない。所定を超える必要時間数を協定するかは任意、協定した時間が日の法定労働時間を超える場合に届け出義務となる。 |
38-3(1) |
専門型裁量労働時間制 |
- 労働者の裁量に委ねる対象業務
- 算定する労働時間(いわゆる1日のみなし労働時間)
- 対象業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、当該対象業務に従事する労働者に対し使用者が具体的な指示をしないこと
- 使用者が講ずる健康福祉確保措置
- 使用者が講ずる苦情処理措置
- 施行規則24条の2の2第3項に定めるところの
- 対象労働者の同意取り付け、および不同意労働者への不利益取り扱いしないこと
- 同意労働者の撤回手続き
- 有効期間の定め(労働協約を除く)
- 健康福祉確保措置、苦情処理措置、同意及び撤回の記録保存期間を前項有効期間終了後5年(当分3年)とすること
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あり、様式第十三号 |
対象業務は施行規則に限定列挙。次条の企画型は労使協定でなく、労使委員会結成決議による |
39(4) |
時間単位年次有給休暇 |
- 対象労働者
- 対象年休日数(5日以内)
- 施行規則24条の4に定めるところの
- 一日あたりの時間数(日所定労働時間を下回らない)
- 1時間以外で付与数場合の時間数(日所定労働時間未満)
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なし |
計画年休、使用者の時季指定義務の対象でない。 |
39(6) |
計画年休 |
有給休暇を与える時季に関する定め |
なし |
規定例は、厚労省サイト、外部サイトを参照ください。労基法の定める他の労使協定とことなり、免罰効力のほか協定した日程に規範性(労働者に権利義務)を生じさせる。 |
39(9)ただし書 |
休暇日賃金の選択 |
休暇日賃金を健保標準報酬月額の30分の1による定め |
なし |
【お断り】正確性は法令記載の条項が優先するもとし、本ブログは理解の一助としてください。
(2021年12月25日投稿、2024年5月13日編集)
関連項目
・労働者過半数代表
・就業規則制定(変更)届
・労働協約と労使協定
・労使協定の締結