退職する労働者の求めに応じ、使用者は退職証明書を発行せねばなりません。退職事由が解雇ですと、解雇証明書となるでしょう。いずれも労働基準法22条に使用者の義務として課しています。なお、記載内容は法定されており、それ以外のことを記載することは禁止されています。逆に労働者の求めであっても法定事項以外の記載に応じる必要はありません。なお労働者の請求をうけたら速やかに交付する義務があります。それが退職前でも同様です。退職してずいぶん前でも、退職日からみて時効の2年経過していないなら、応じる義務があります。次に法定項目を網羅した書式例を掲載します。
退職証明書 殿 以下の事由により、上記の者は当社を令和 年 月 日(最終在職日)付けで退職した(する)ことを証明します。 令和 年 月 日
事業主氏名または名称 (使用者職氏名)
※労働者が請求しない項目は斜線抹消する。
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解雇証明書
解雇証明書として労働者から請求を受けた場合は、解雇事由として、就業規則記載のどの解雇事由に該当するか、そしてそれに該当する具体的事実をあわせて記載せねばなりません。また解雇事由は就業規則に記載しておかねば、解雇相当の事実であっても、解雇する事由なしとして扱われます。刑法にかかれていない行為を処罰できないのと同様です。今一度就業規則にあらゆる事象を想定して網羅対応させてあるか点検されるといいでしょう。
- 天災その他やむを得ない理由により事業継続が不可能による
- 事業縮小等事業場閉鎖による
- 職務命令に対する重大な違反行為
- 職務について不正行為
- 勤務態度、勤務成績の不良
- 相当期間の無断欠勤
雇止め証明書
有期雇用者を雇止め(現契約終期をもって、新しい契約期間の契約を結ばないとする使用者意思をさす)した場合、有期雇用者の求めに対し「解雇証明書」に代えて雇止めした理由を記した「雇止め証明書」の交付が、労基法14条紛争防止基準に盛り込まれています。法定義務ではありませんので、法定事項以外、記載するかは任意となります。また雇止め事由として「契約期間到来」は事実であって、理由ではありませんので、不適切です。例として
- 本契約締結当初から、新契約を結ばないことに同意してあったため
- 採用当初から、更新回数に上限を設け、本契約がその上限にあたるため
ほか、前述解雇事由に列挙したうち該当するものを記載することになるでしょう。
(2021年04月25日投稿 2025年1月19日編集)