「恋」の性質の中には征服欲
がある。これは男の側には特
に強いもので、男は猛烈に
ファイトを燃やして恋する女を
獲得することに熱中するが、
一たん獲物を手中におさめる
と、実にあっけないほど、獲物
への興味を失ってしまう。
女は、たいてい男が自分を
獲得するまでに示した熱情や
誠意や賛美や、時には泪を
大切に胸の底におさめ、それ
を反芻(はんすう)することに
よって生きているようなものだ。
おんなにとっては理由のわから
ない男の心変わりがどうしても
納得が出来ない。
なぜならば、自分は、相手が
かつて熱愛してくれたままの
自分であり、少々、歳月に
皮膚や顔の構造は古びて
きていても、あの時のままで
ある。
熱心に考えれば考えるほど、
かつて彼から受けた、ささい
な愛の証しばかりがつぎつぎ
思いだされてくるのである。
こういう時、女は自分で気づか
ず、一途に深情けぐりを発揮
してしまう。
やさしい女を嫌いな人間、いや
男がいるであろうか。やさしさは
まぎれもない美徳の一つである。
それなのに、やさしさから生まれ
る深情けが、必ずしも男にとって
は女の美徳になり得ないところに、
永遠の男女のズレがあり、
悲劇がおこる。
がある。これは男の側には特
に強いもので、男は猛烈に
ファイトを燃やして恋する女を
獲得することに熱中するが、
一たん獲物を手中におさめる
と、実にあっけないほど、獲物
への興味を失ってしまう。
女は、たいてい男が自分を
獲得するまでに示した熱情や
誠意や賛美や、時には泪を
大切に胸の底におさめ、それ
を反芻(はんすう)することに
よって生きているようなものだ。
おんなにとっては理由のわから
ない男の心変わりがどうしても
納得が出来ない。
なぜならば、自分は、相手が
かつて熱愛してくれたままの
自分であり、少々、歳月に
皮膚や顔の構造は古びて
きていても、あの時のままで
ある。
熱心に考えれば考えるほど、
かつて彼から受けた、ささい
な愛の証しばかりがつぎつぎ
思いだされてくるのである。
こういう時、女は自分で気づか
ず、一途に深情けぐりを発揮
してしまう。
やさしい女を嫌いな人間、いや
男がいるであろうか。やさしさは
まぎれもない美徳の一つである。
それなのに、やさしさから生まれ
る深情けが、必ずしも男にとって
は女の美徳になり得ないところに、
永遠の男女のズレがあり、
悲劇がおこる。