淹れる私がいる。それをごく
自然に受け取り、静かに
「ありがとう」と言うあな
たがいる。
目をこすった後の瞳が潤ん
で、あなたは余計柔らかい
表情になっている。
そんな静かで、穏やかで、
自然な私たちの世界が回る。
そして私にだけ見せる、
眼鏡を取ったさわやかな
素顔。こんなに素敵な人を
ひとりじめにして、いいの
だろうかと思う。
「ここへおいでよ」
あなたが言った。
私は、なるべくふわりと空気
のように、隣へ座る。
「愛している」と口にださな
くても、私たちはわかり合え
た。室内のまわりの空気がそ
う語っていた。
『恋や愛に図式があるとし
たら複雑で入り組んでいな
いほうがいいに決まっている
シンプルだけれど 柔らかに
穏やかに調和の取れた心具合
に越したことはない
特に 暮らしていくとしたら
なおさら素のままで 無理
もしない 心具合は作ろうと
しても出来るものでもない
ごく自然に ふらちの調和
空気 呼吸なじんでいけば
目に見えない赤糸というより
もっと自然な 運命 結びつき
ゆうるやかに 時と愛は進み
確かめなくとも 確実に
ふたりの空間ゆるがない』