安倍は、とにかく、外交上の問題を、配慮を欠いた言動で、無用の混乱を引き起こす点で浅はかとしか言いようがありません。彼は稚拙な歴史認識を公式の場で披瀝する点で、本当に軽薄な人物です。自らがどのような立場にいるのか、世界各国からどう思われるのかを考えることができない人物です。
今年は、第一次大戦から100年ということで、ヨーロッパでは第一次大戦の歴史認識、検証が特に話題となっている中で、日中関係にたとえて発言するなどは「バカな政治家」としか見られない歴史認識です。そもそも第一次大戦は、ドイツがプロシャを中心として大ドイツ(現在のドイツ)に移行する過程で、引き起こされた大規模な戦争でした。ドイツ支配層、軍部はフランスの侵略を何回となく受けて、フランス攻撃、フランス侵略を計画として持っていました。そのために、オーストリアにおける暗殺事件を口実としてロシアへの侵攻、フランスへの侵略を開始し、その結果、イギリスの参戦にまで発展したのが第一次大戦でした。この第一次大戦の結果が、ドイツナチス党の台頭につながり、第二次大戦勃発の要因となった最初の世界大戦でした。
このような、政治的、軍事的利害が極度に対立する歴史的な戦争を、現実の世界、しかも、隣国との関係に例えとして持ち出すことが以下に危険で、思慮に欠ける発言かは自明のことです。
<ウォールストリートジャーナル日本版>
安倍晋三首相は23日、スイスのダボスで開催されている世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、日中関係を不吉な歴史にたとえて話した。
イギリスBBC放送と英紙フィナンシャルタイムズ電子版によると、首相はダボス会議での基調講演の後、日中関係について触れ、両国の関係を第1次世界大戦前の英国とドイツの関係にたとえた。
FTによると、首相は密接な通商関係と緊張関係という点で両者が似ていると説明。日本にとって「偶発的な」衝突は災難をもたらすと述べた。英国とドイツは経済的に密接な結びつきがあったにもかかわらず、海軍同士が敵対し、破壊的な世界大戦へと突入していった。
第1次世界大戦から100周年に当たる今年、アジアの力関係の変化がもたらす危険性を20世紀入りした頃の不安定な欧州情勢にたとえるのは安倍首相が初めてではない。特に、1914年当時の英独関係を現在の米中関係に重ね合わせる歴史家は多い。中国が安倍首相の靖国神社参拝を日本の新たな挑発と非難しているときに、安倍首相がその例えを自国に当てはめたとなれば、その発言が注目を集めても無理はない。
菅義偉官房長官は23日、首相の発言は認識していないと述べた。発言は非公式の場で行われたもようだが、各国記者との会合での発言で、記事にされることを前提としたものだった。
安倍首相は昨年、日本が戦時にアジアで行った行為に関する「侵略」という言葉の定義に疑問を呈し、厄介な立場に追い込まれると、その解釈は歴史家に任せるべきだと述べた。歴史通の首相は自らの助言に耳を傾けることはなかなかできないようだ。(皮肉)
<ヨーロッパの参戦国>
当時のヨーロッパ列強は複雑な同盟・対立関係の中にあった。列強の参謀本部は敵国の侵略に備え、総動員を含む戦争計画を立案していた。1914年6月、オーストリア=ハンガリー帝国(当時はヨーロッパの大国)の皇位継承者フェルナント大公夫妻が銃撃されるというサラエボ事件を契機に、各国の軍部は総動員を発令した。各国政府および君主は開戦を避けるため力を尽くしたが、戦争計画の連鎖的発動を止めることができず、瞬く間に世界大戦へと発展したとされる。
各国はドイツ・オーストリア・オスマン帝国・ブルガリアからなる中央同盟国(同盟国とも称する)と、三国協商を形成していたイギリス・フランス・ロシアを中心とする連合国(協商国とも称する)の2つの陣営に分かれ、日本、イタリア、アメリカ合衆国も後に連合国側に立ち参戦した。多くの人々は戦争が早期に終結すると楽観していた。しかし、機関銃の組織的運用等により防御側優位の状況が生じ、弾幕を避けるために塹壕を掘りながら戦いを進める「塹壕戦」が主流となったため戦線は膠着し、戦争は長期化した。この結果、大戦参加国は国民経済を総動員する戦争を強いられることとなり、それまでの常識をはるかに超える物的・人的被害がもたらされた。
長期戦により一般市民への統制は強化され、海上封鎖の影響により植民地との連絡が断たれた同盟諸国は経済が疲弊した。1918年に入るとトルコ、オーストリアで革命が発生して帝国が瓦解。ドイツでも、11月にキール軍港での水兵の反乱をきっかけに、ドイツ皇帝ウイルヘルム2世は退位に追い込まれ大戦は終結した。足かけ5年にわたった戦争で900万人以上の兵士が戦死し、戦争終結時には史上2番目に犠牲者の多い戦争として記録された。
また、この戦争はボルシェビイキがロシア革命を引き起こす契機となり、20世紀に社会主義が世界をに広がる契機ともなった。
<北海道新聞:首相、第1次大戦前の英独に例える 日中関係、新たな火種に>
安倍晋三首相がスイスで開かれた世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)の外国メディア関係者との意見交換で、悪化している現在の日中関係を、第1次世界大戦で対決する前の英独関係に例えて説明していたことが23日分かった。中国側は、安倍首相が日本の「侵略の歴史」を直視すべきだと早くも反発しており、新たな対立の火種になる可能性がある。
複数の海外メディアが首相の発言を報じたことを踏まえ、菅義偉官房長官が記者会見で明らかにした。
菅氏によると、首相は記者から「日中が軍事衝突に発展する可能性はないか」と問われ、「今年は第1次大戦から100年を迎える年だ」と述べた。
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