とうやのひとり言

佐藤とうや ブログ

伝統のふ化事業を次世代へ

2016年08月07日 | 日記

 山形県遊佐町の桝川ふ化場整備事業を視察した。事業進捗率は32%と天候に恵まれ順調で、9月末には竣工が見込まれると言う。ふ化場整備は全国的にも実施例が少なく、年に1~2カ所が精一杯である。特に、桝川ふ化場整備は北海道北見漁業組合との技術連携がある。先進地である北海道の技術を取り入れ、ソフト面では青年組合員を北見に派遣して、技術を学んできている。
 「たくさんの鮭に遡上してもらうには、強い稚魚を育てる事が肝心」と話す組合長の尾形修一郎さん。そのために、総事業費3億5000万円を決断した意気込みは半端ではない。専門技術は理解出来ないが、飼育池の大きさに驚いた。今までの飼育池の面積が3倍、深さが2倍で、地形を生かした緩やかな勾配に水が流れ、稚魚にストレスを与えない工夫があると言う。打設コンクリートはシリカホワイトにして、水漏れを防ぎ、取水漕にも新しい工夫がされている。日本最新の技術の詰まったふ化場がここに誕生しようとしている。
 鮭は、川の中でも湧水が出る場所を好んで産卵すると言われている。ふ化には温度が一定で、酸素を多く含んだ水が不可欠である。遊佐町は「湧水の町」と言えるほど湧水が豊かな所。江戸時代の終わりごろ、鮭の自然産卵に限界を感じた堀傳兵衛が人工ふ化を始めたと記録が残っている。人工ふ化事業の初期は、劇的変化はなく苦労が続いた。しかし、長い先人の努力が実り、鮭の遡上が増え、昭和の初めには遊佐町に9カ所のふ化場があった。しかし、近年はふ化事業の衰退が続き、山形県も例外ではない。
 長い伝統の人工ふ化事業引き継ぎ、近代的な整備で未来に渡そうと挑んだ、桝川漁業組合の偉業は歴史に刻まれる。

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