私の家は庄内平野の北側で、山形県地図の目ん玉付近にある。菩提寺の過去帳によれば最初の没者は享保7年と記載されており、江戸時代中期から300年は続いたことになる。住職によれば寺院の火災でそれ以前は分からないと言う。数えると私で15代か16代目にあたり代々コメ農家として継承されてきた。自作農家だったのでひどい小作料はなかったようだが、百姓は絞れば絞るほど出ると生かさず殺さずの歴史だった。
米は貴重品で白いご飯が生活の目標であった。換金性も高く酒田県令三島通庸は納税が金本位制になったにも関わらず、コメで物納させ、差額に気づいた農家がワッパ事件を起こした歴史もある。
文藝春秋4月号は「日本の食が危ない」の特集記事を69ページにわたって警鐘を鳴らしている。特に鈴木亘弘教授はコロナ禍、中国の爆買い、異常気象、ウクライナ戦争と日本の安全保障は防衛予算だけではない。日本の食糧に危機がある。有事になれば食糧自給率は実質10パーセントに落ちる。鶏卵、肉類、牛乳、コメの生産基礎であるトウモロコシ、ヒナ、肥料はほとんどが輸入品である。国内農家に「コメは作るな、牛は殺せ」は亡国への道へと進む。
今日の山新サロンに「コメの消費拡大は急務」と57歳の女性の方から投稿があった。一俵2万円のコメが今は9千円、半分は減反、それに肥料の高騰でやっていけない。今の農家はもっと声を上げて日本中に知らせて欲しいと訴えている。
地域の周りを見ると若い農業後継者はほとんどいない。年ごとに農家の高齢化は進み、委託者の増加に受託者がいない状況が加速している。農業は黄色信号から赤信号に変ろうとしている。その我が家も危ない域にある。