🍜新時代のラーメン批評①－2【危機の時代を生き抜くための試行錯誤は始まっている】

2023年冒頭に、やや挑発的な記事を書きました。

新シリーズ【新時代のラーメン批評】
①食糧危機の時代にラーメンを問いなおす

です！

今回はこの①の実例となるお店を見つけたので、①の補足編として書き残しておきたいと思います。

以下、「である調」になります。

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この上の記事で書いた内容の正しさを「証明」するようなお店の張り紙を見つけた。

この張り紙には、「材料費の高騰が止まらず現在のラーメンで営業していく事が厳し（い）状況となりました」、と書いてある。これは、「現在のラーメンで営業していくこと」ができないという宣言書とも受け取れそうなものである。

上の僕の記事に対して様々な批判や反対意見も頂いたが、実際のお店で、「危機の時代において、現在のレベルのラーメンでは営業することができない」ということが実際に起こっていたのである！　（まだ「食糧危機」ではないが、当然この今の時代のスタグフレーションは念頭に置いており、材料費の高騰の中には、コロナ✖ウクライナ戦争によって「調達困難」に陥り、その結果として引き起こされたものも多々あるはずである）

この危機に直面したこのお店では、これからの時代を生き抜きために、

　①一旦、閉店する

　②スープの試作を行う

　③完成させたら、営業再開する

　④現在のスープと違う風味になる

　⑤現在のスープとは違う風味となるが、最大限の努力を行う

ということを宣言しているのだ。

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これを読む限り、二つの可能性が示唆されている。

①思い切り値段を吊り上げて、スープのクオリティーも上げる

②スープにかかる材料費を極限に抑え、今の値段で儲けがしっかり出るようなスープを創る

このいずれかであろう。

①の可能性もゼロではないが、おそらくは②の可能性に向かうだろう。

なぜなら、材料費の高騰で今のスープをこのまま維持することができないと宣言しているからだ。もし①であるなら、「味の劇的な進化」をほのめかすであろうし、わざわざ一時閉店などせずに「値上げ」するだけで終わることからである。

僕が先回の記事でこう書いた。

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高級料理となったラーメン以外のラーメン、つまり国民食としてのふつうの人々のためのラーメンは、今後もっともっとシンプルに、原始的なものになっていくしかない。だが、それは「絶望」ではない。逆だ。「希望」なのだ。

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と。

このお店も、こんな風に、「よりシンプルに」「よりプリミティブなものに」なっていくような気がする。

お店も、このことを自覚しているからこそ、「現在の味をお好みのお客様が満足して頂けるラーメンになるかは分かりませんが」と記しているのだろう。

材料費を思い切り上げるなら、こうは書かないはずである。逆に、より材料に依存しないスープを完成させるために、一度営業を止めて、試行錯誤を繰り返しているのだ（と思う）。

だから、このお店のことを悪く言うつもりもないし、憐れむ気持ちもない。むしろ逆に、「この試みこそが、次世代のラーメン店にとって必要不可欠な努力なのだ！」と強く言いたいのである。

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お店は、慈善団体ではないし、NPO団体でもないし、任意の団体でもない。お店がお店として存続するためには、最低以上のお金を稼げなければいけない。

仕事は何のためにするのかといえば、「お金」のためである。それ以上でもそれ以下でもない。生きがいがあればそれに越したことはないが、生きがいを感じなくても、お金がしっかり入るなら、人は頑張れる。

ラーメン店もまた、仕事であり、お金のために（＝生きる糧を得るために）存在しているのである。

現在直面している急激な材料費・エネルギー費（ガス、電気等）・人件費etc.の高騰を受け、ラーメン店はどこも大打撃を受けている（ラーメン店に限らず、飲食店全般において）。

こういう時こそ、前回の記事でも書いたように、「ラーメン店が生き延びるためには、そういう「技の世界への回帰」が求められているのではないか」、と思うのである。

こちらのお店では、おそらく「どうしたらより少ない材料で、より美味しいスープが作れるか」の実験？研究？をしているのだと思う。

それで、もし「これまでより少ない素材で、これまでより美味しいスープ」が作れたら、このお店はきっと、これからの「冬の時代」を生き抜くことができるだろう。逆に、何もしなければ、そのまま「利益」「収益」がどんどん減っていって、たちまち営業は立ち行かなくなるだろう。

僕はこのお店の「英断」を強く支持したい。

「より簡素な素材で、どこまで美味しいラーメンを作れるか」

「この時代にあって、安く仕入れられる（安定して仕入れられる）素材を駆使して、どこまで人を感動させるラーメンを作れるか」

ここにこそ、プリミティブなラーメン作りの精神が映し出されているように思う。

高級な食材をふんだんに使った過度に贅沢なラーメンではなく、どこにでもある（高級ではない）食材を使ったシンプルで誰もが「おいしい」と思えるラーメンを。

おそらく、そのための努力を今、このお店は水面下で必死に行っているのだろう。

…

今後の道はやはり二つ（＋一つ）だろう。

➀今のラーメンの水準を維持するために、価格を上げる（現状維持派）

➁価格を維持するために、ラーメンの水準を下げる（復古主義派）

➂今以上の水準のラーメンを、今以上の価格にして提供する（未来派）

どの道も、間違いではないし、どの道にも希望はある。

この今の段階では、➀の道を選ぶお店が多いように思われる。今回のこの張り紙のお店は➁の道を歩もうとしているように思われる。新しいお店では、➂の道を選ぶお店も多々ありそうな気がする。

この中で、僕が一番推したいのが、②だ、ということになる。

その理由は、②が一番「知恵」と「技」と「思考」が必要となるからである。それは、ラーメン職人自身を成長させてくれることにもなる。「よいラーメンを低価格でお求めやすく」、というのは、ある意味で一番ハードルが高い、ともいえる。そこにチャレンジしてこそ、「南京そば」以来の日本のラーメンの伝統なのではないか。

この今の時代に、（しっかり儲けられる）500円でおいしいラーメンを出せたら、それこそが「持続可能な社会における持続可能なラーメン店」なのではないだろうか。

これだけラーメン界のレベルが上がり、1000円のラーメン、2000円のラーメンが作られ、耽溺で贅沢なラーメンが数多ある中でも、僕はいつも、わずか130円ほどのこのラーメンに心惑わされるのである。

Back to the ramen future！

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ってな感じで、、、

新シリーズ『新時代のラーメン批評➀ー2」をお届けいたしました。

このシリーズもどう展開していくか分かりませんが、いずれ『新時代のラーメン批評』という本にまとめたいと妄想しています。8年前に書いた本は「ラーメン職人の学び」に関する本でした。次は、しっかりとした「ラーメン批評」の本にしたいと思っています。

もうあと半年で、48歳になる僕。これまでみたいに、度を超えたラーメンの食べ歩きは避けなければならなくなってきました。「ラーメンを死ぬまで食べ続けるために」、という動機からです。

2023年は「ラーメン以外はグルテンフリー」という目標を立てています。食生活を見直して、これからもずっとラーメンの食べ歩きができる身体を維持していきたいと思います。

今年は、ラーメンレポだけでなく、こういう「ラーメン評論」「ラーメン批評」をいろんな形でしていこうと思います。今の僕には、こっちの方が意味あることかなって。。。

最後に…

そんな勇気ある英断をしたお店のご紹介をしておきたいと思います。

ジャーン！！！

京成船橋駅近くのメインストリートにあります、

豚骨らーめんマルハ軒

であります！！

＞僕のこのマルハ軒の実食レポはこちら！！

このマルハ軒にもまた来たかったんだよなぁ、、、

まさか、一時閉店になってしまっているとは、、、😢

でも、営業再開後のラーメンを心から待っています！！！