Dr.keiの研究室2-Contemplation of the B.L.U.E-

生と心 心理学に捧げるGadamerの言葉

H.G.Gadamerの講演録です。

テーマはずばり「生と心」!

***

心理学を研究する人にとって、哲学、とりわけ最も古い初期のギリシャ思想を学ぶことは意義のあることでありましょう。このことを私はこの講演で示したいと思います。
 
今回選ばれた「生と心(命と魂;Leben und Seele)」というテーマは、ソクラテスのou smikron ti、つまり「これはただごとではない」という言葉で答えるしかないほどに巨大な問題であります。皆様は、このテーマが「意識、自己意識、精神」という言葉では説明がつかないということはお気づきのことでしょう。ある確かな先理解から、どのように心理学の分野が哲学にかかわっているかを要約することはできるかと思います。とはいえ、心理学を名乗る哲学の専門領域はもはや存在しません。それは、「理性ノ心理学(psychologia rationalis)」を論じたカントの批判によって、そしてとりわけメンデルスゾーンが自ら行ったプラトンのパイドンの偉大な新解釈によって、終わったのです。メンデルスゾーンがプラトンのパイドンを大胆に解釈しなおすことで再度試みたように、心の不滅を単なる概念で証明することができるなどということは、もはや議論にもなりません。ドイツ観念論でさえも、根本的に、心理学のみならず、そもそもすべての学問全般を哲学へと立ち戻らせて統合しようと企てた観点とは別の観点を呈していました。シェリングとヘーゲルの企ては確かに傲慢であり、その結果、経験科学の方から反発が起こったのです。この反発こそが、最終的に19世紀の哲学全体において、かろうじて心理学の形態でのみ形を残すようにと迫ったのです。
 
私はマールブルクの出身です。マールブルク学派の指導者で新カント派であったヘルマン・コーエンが退官し、エーリッヒ・イェーンシュという実験心理学者が後任として招聘されたことは、ドイツのアカデミックな世界の中で大きな事件の一つでありました。このことは、一般的にセンセーションと受け取られ、実際にこの日は重要な日となりました。といいますのも、心理学者も哲学者も、こうした哲学の解体が続くことを認めてはならず、むしろ心理学独自の講座を新設しなければならないということで意見が一致していたからなのです。しかし、哲学においても、実験心理学においても、ドイツ観念論の経験的な遺産が両者に深い傷を残し、その結果、意識や自己意識といったテーマは力をもったままだったのです。それに対して、事実、19世紀の精神の歴史全体は、ショーペンハウアーやニーチェやフロイト、そしてそうした方向性に向かった全ての人々によって明らかに意識の境界が跳び越えられた、という背景をもっています。夢という現象においてのみならず、夢の助けを借りて、われわれが無意識の世界と呼んでいる夜の世界全体が新しいテーマとなったのです。この「無意識なもの」という言い方こそまさに、どれほど意識の思考の優位性が思考を支配していたかを示す決定的な証拠なのです。この点で、私のテーマが「生と心(命と魂)」となっていること自体、すでにほとんど告白のようなものなのです。古代に精通している人ならば誰でも、この二つの言葉がギリシャ語ではほぼ同じことを意味していた、ということを知っています。そして、20世紀になってようやく生の概念は哲学の中心概念になったのです。
 
そもそも私たちは、Seeleというドイツ語が実際に何を意味しているのかを分かっていません。この言葉には、本当にたくさんの経験が含まれています。Seeleという言葉には、決定的な語源がないのです。このSeeleは、確かに、別の言語でanimusやanimaやl’ameなどと表記される一連の同系の語から外れているのです。すでに、私たちが今日の心理学に対して「生」や「心」といった概念で本質的なポイントを記述することができると信じている事柄の内に、極めて明確な考えが隠れています。その際、哲学の現象学的転回が大きな役割を果たしました。フッサール、シェーラー、ハイデッガー、ならびに哲学的解釈学の人々がこうした方向に影響を与えたのです。

コメント一覧

kei
あゆみさん

是非読んでみてください。でも、ちょっと難しいよ。

よかったら翻訳全訳のコピーあげるよ。そっちはもっと難しいです。

でも、まずはソフィーの世界かな?!
あゆみ
あぁ、なんだか面白そうな記事!!
・・ですが、今はちょっと気持ちが落ち着いていなくて読めないので・・・。
コピーして保存して、落ち着いた頃に改めて読もうかと思いますvvv

「ソフィーの世界」も、哲学について、古代の人たちから始まったなぁ・・・。
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