Dr.keiの研究室2-Contemplation of the B.L.U.E-

先に進もうとする学問とそれを食い止めようとする学問

人間は、前に進まないと気がすまない生き物だと思う。

常に、進歩・進化・発展・変化を求めてきているし、そのおかげで、今の文明社会が成り立っている。現状に満足できず、常に「よりよいもの」を求める。現状よりもより快適なものを求め、よりよいものを創造しようと苦心している。

先に先にと前のめりに前進することを求める学問がある。主にいわゆる「理系(サイエンス・自然科学)」である。理系の研究は、とにもかくにも「新発見」を求める。新たな法則性、新たな規則性、新たな配合、新たな物質、新たな構造…などなど。

理系は、人間の本能・欲求・能力にある種根づいた学問分野だとも言えなくもない。法則性や規則性は、それを知ることで、より快適で、より楽な活動を可能にする。電気を使い、モーターを使い、あらゆる知恵を行使して、人間は楽できるようになった。

それが資本主義や産業主義と結びついて、理系学問は、「新たな商品開発」と連動するようになり、常に「新商品」が登場するための基盤となって、膨大な資金がそこに充てられている。税金であっても、理系学問への資金投入は半端ない。

その根本にあるのが、人間の「現状への否定」と「よりよいものへの欲求」なのだろう。とにかく、人間は、新しいものを生みだし、金にし、儲けようとする。経済活動は、もはや止まることは許されず、次々に「新製品」を生みだして、庶民に叩き売る。その寿命は、わずか数年であるだろう。そして、その間にまた新たな商品を開発して、CMでガンガン紹介して、叩き売る。(今のスマートフォンをみれば一目瞭然だろう。あれ、本当にいるか?! i-Padだって、あれ、本当にいるか?)

人間は、変化しないことに不満を感じる。「退屈」に耐えられないのだ。変化しないこと=いけないこと=つまらないこと=飽き飽き、という構図が、ほとんどすべての人間にある。昨日と同じことに耐えられない。「変化」に、価値を見いだすのが、人間なのだ。

それに対して、「待った!」を突きつけるのが、文系学問(精神科学、文化科学、文学、社会科学、歴史学)だと思う。「変化」を求めるのが理系だとすると、その「変化」に待ったをかけるのが、文系だといえなくないだろうか。文系学問は、実際、ほとんど何も新しいことは言わない。商品開発にも結びつかないし、刺激的な発見などほとんどない。

「変化」に踊らされ、「新製品」に振り回される人間に、「ちょっと待て! それでいいのか?」と問いを投げつけるのが、文系学問の使命だとも言えなくもない。文系諸学問全体を通じて、それは言えるのではないだろうか。「変化」ではなく、「反省」を求めるのが、文系学問とも言えそうだ。

例えば、今話題の原発だけど、これはある種「文明の申し子」である。自然エネルギーでは到底出せないほどのエネルギーを瞬時に生みだす「人間の英知」の結晶だ。これだけ、電化製品に囲まれていたら、この今の生活は、原発なしでは実現できない。ある種、「最強の装置」であった。わずか100年前だったら、原発など不要だっただろう。身の回りに、電化製品はそんなになかったからだ。

でも、今は、TV、冷蔵庫、レンジ、洗濯機、掃除機、冷暖房、照明器具、自動洗浄機、IHコンロ、PC、電話、携帯電話、ありとあらゆるものを僕らのほとんどがもっている。それを生みだしたのは、産業社会+自然科学だ。これらを手放さずして、原発反対を訴えて、どれほど説得力があるのか。。。(原発反対が悪いとは決して言わないけど、そこに矛盾はないか?!)

文系学問は、常に人間の発展(?)(実は後退?)に反省を促している。「それでいいのか?」、と。

1450年頃から始まった「近代社会」(中世の後の人間中心主義社会)に、歯止めをかけ、新たな世界観を作ろうとするのが、文系学問の使命とも言えなくもない。

極論を言えば、「変化しない社会」を描くのが、文系学問の使命なのかもしれない。あるいは、なんでもかんでもすぐに飽きてしまい、新たなものを求める人間の嫌らしい心をぶち壊すのが、文系学問の使命なのかもしれない。

僕は、文系学問に従事する者として、このことはしっかりと胸に刻み込んでおきたい。

***

もしかしたら、学問をやめることが最大の「発展」なのかもしれない…(自爆)

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