今、ラーメン業界の中で、『冷やし麺』が注目されている。
歴史的には、つけ麺/油そば⇒冷やしラーメン⇒冷やし麺、という流れの中で、毎年色んなお店で、独創的な創作冷やし麺が作られている。最近は、イタリアの冷製パスタとほとんど区別のつかない冷やし麺も登場し、ますますパスタとラーメンの境界があいまいになりつつあるように思われる。
先日立川で食べた冷やし麺は、もはやラーメンではなく、パスタそのものにしか感じられなかった。こうした現象は全国各地で生じているようだ。夏になると、ラーメンの売れ行きが悪くなる。と同時に、ラーメンの代わりとなる麺料理が必要となる。つけ麺も大きな起爆剤となっているが、これだけラーメン屋さんがたくさんあると、つけ麺だけでも不十分となり、それ以上のものが求められる。
かつてはラーメンだけだった。つい数年前だとつけ麺があればよかった。今は、ラーメンとつけ麺と冷やし麺が求められるようになった。小さな店舗のラーメン屋さんにとってはたまったものじゃないが、この三種を提供するお店も増えてきた。夏季限定で冷やし麺を扱うお店は実に増えた。
が、そのクオリティーは実際どうなのだろうか。その面白さや目新しさや好奇心から、一時的に人気はでるかもしれないが、実際にどれだけの人の心を揺るがすことができるのだろうか。「珍しい麺料理だけれど、パスタより質的に劣る」と思われてはいないだろうか。
そこで、逆に美味しい冷製パスタは一体どんなものなのだろう。冷製パスタが食べたくなった。とりわけラーメン屋さんに食べてもらいたい冷製パスタを。そこで、(近所で)とても評判の高いイタリアンレストランの冷製パスタを頂くことにした。
そのお店は、都賀駅徒歩5分のところにある『イタリアンレストランVener(ヴェネル)』だ。このお店は、前々から事ある毎に立ち寄るお店で、ブログにこそ書かないが、ホントちょくちょく行くお店である。kei、お気に入りのイタリアンレストランなのだ。ここの店主さんは女性の方で、とても清潔感のあるお店になっている。店内の雰囲気も南欧風で、様々な様式の机や椅子が置いてある。インテリア的にもかなりコアなお店と見ていいだろう。
そんなヴェネルで、夏限定の冷やしパスタを二種類食べることができる。ヴェネルイチオシメニューだ。
『モッツァレラチーズとフルーツトマトの冷製カペリーニ(バジル風味)』(1400円)
『夏やさいと生ハムの冷製カペリーニ』(1300円)
*カペリーニ/カッペリーニ(capellini)=イタリア語で「天使の髪の毛」という意味で、ここでは1ミリ以下の長細麺のことを指す。(HERE)
「モッツァレラチーズとフルーツトマトの冷製カペリーニ」は、久々に僕が震えるほどに感動した逸品だった。この冷製カペリーニを食べて、冷やし麺への反省が始まったといっても過言ではない。惜しみなくバジルを使用して作られたこの冷製パスタは、モッツァレラチーズとフルーツトマトがたっぷり入ったスパイシーなパスタに仕上がっていた。隠し味にセロリを使用していて、微妙に感じるほのかな苦味がまたこのパスタの魅力となっている。タレはドレッシング風で、細かくされたにんじんなどの野菜がいい甘みを生み出している。
「夏やさいと生ハムの冷製カペリーニ」は、上のモッツァレラチーズのパスタよりはおとなしい味わいのパスタだが、逆に優しい味わいのパスタになっていて、気だるい夏にぴったりの清涼感あふれる一品になっていた。甘みと酸味がほどよく効いていて、ほんのりとじわ~っと美味しさが舌に伝わってくる。こちらも、個性こそ控えめだが、実に美味しい夏の冷やし麺と言えるだろう。
どちらも、本当に美味しくて、食べやすくて、深みがあって、魅力のある冷製パスタだった。
このパスタを食べて、ふと思った。「ここの冷製パスタは、冷やし麺を作っているラーメン屋さんに食べてもらいたい!」、と。イタリアン風の冷やし麺を作っている人には、きっと何か得るものがあるんじゃないかな、と。これまで色々と冷やし麺を食べてきたが、その冷やし麺になくて(欠けていて)、ここのパスタにあるものがあるのだ。
うまく言葉にできないが、身体の奥底にじわっと伝わる旨味というか、味わいというか。そういう魅力がここのパスタにはある、僕はそう思うのだ。だから、本記事のタイトルも、「ラーメン屋さんに食べてもらいたい冷製パスタ」としたのだった。
このVener(ヴェネル)は、とても真面目で、こだわりのある、庶民のためのイタリアンレストラン! 生パスタを低価格で味わえる本格的なレストランだ。夏の期間はずっとこの二つのメニューは提供されるみたいなので、是非食べていただけたら、と思います。